女の子を撮影したら、惚れされることができる能力をてにいれた件
実験
チャームの効果を検証してみようと決めたものの、電車のなかでは実行しなかった。これをキッカケに普段の盗撮なんかがバレたら厭だし、もっと安全な場所で確認したかった。まぁ、目ぼしい女性が同じ車両に乗っていなかった、という下卑た思惑もあった。
学校。2年C組。教室。
ミオンはさきに学校についていた。クラスメイトたちに取り囲まれていた。ミオンを取り巻くのはほとんど女子だ。シマコウをはじめとする陽キャ男子たちは、性別の壁なんて気にすることなく、その輪にまじっていた。
「昨日さ。NONOの写真集買ったんだよ」
と、シマコウが言う。
「ホントウですか? うれしーっ」
と、ミオンは両手を合わせて、はにかむように笑う。
男子たちを喜ばせる満点の応対。
昨日ミオンと接して、感じることがあった。楚々とした雰囲気をまとっているにも関わらず、惜し気もなく肌を露出する。肝心な部分は見えないていどに見せてくる。
それをわざとやってるんだったら、見かけによらず計算高いところがある。
無意識にやっているのならば、天性の小悪魔だ。
シマコウたちと接しているときもそうだ。相手がどうすれば喜ぶのか、チャントわかってる。
「でもあの写真集けっこう過激だったよな。マジ可愛かったけどさ、カメラマンとかに、おっぱい見られたりしないわけ?」
やだー。
シマコウのエッチ。
ほかの女子たちが黄色い声をあげていた。
「大丈夫ですよ。みんな女の人ですから。それにチャント見えないようにしてます」
写真集。どんなヤツだろう? あとで調べてみよう。
シマコウとミオンの会話に耳をすませながらも、気にしていないフリをして、オレは自分の席にむかった。
オレの席は窓際。最後尾。たいするミオンの席はクラスの中心。ド真ん中。
オレが自分の席へ向かっている途中。ミオンがオレにたいして視線を投げかけてきた。小首をかしげてウィンクして見せた。
誰にも気づかれないほど自然な仕草だった。オレはただただ狼狽することしかできなかった。
学校では、おたがい知らないフリをしていようと約束している。それをわかったうえで、秘密裡にウィンクを送ってきたのだろう。
「ミオンさんは部活とか、何に入るつもりなんだ? 良ければサッカー部のマネージャーになてくれよ」
「うーん。部活動とかはできないかもしれません」
「あ、そっかー。アイドル活動とかいそがしいもんな」
と、ふたたびシマコウとの会話に戻っていた。
シマコウは、ウィンクには気づいていない。
知ってるか、シマコウ?
ミオンさんは昨日、オレの部屋に泊まったんだ。風呂にも入ったんだぜ?
シマコウにそう打ち明けてやりたい衝動に突如として駆られた。どうしてそんな衝動に駆られたのか、オレには良くわかっていた。
嫉妬。
シマコウは勉強も運動もできる。イケメンだし背も高い。ふつうの人間にはないものを、全部備えている。
ミオンがオレのことなんか忘れて、シマコウに好意を寄せるんじゃないかと不安だった。シマコウの陽キャのかがやきは、オレの存在なんて簡単に打ち消してしまうチカラがある。
その醜悪な感情はすぐにおさめることが出来た。さっきのウィンクが、オレを安心させてくれた。
「ッたく」
と、オレは独りごちた。
呆れる。
なにをオレみたいなヤツが一人前に嫉妬なんかしてるんだ。たった1日部屋に泊めた。それだけの関係だ。付き合ってるわけでもない。
それよりも、オレには確かめなければならないことがある。
スマホを取り出す。カメラを起動する。フォーカスを教室の隅にいる女子に向けた。オレが窓際の隅ならば、その娘は廊下側の隅っ子。そこそこ可愛いのだけれど、いつも読書してる大人しい女子。ミオンたちの輪にも入らずに、今日も読書に励んでいる。
実験台になってもらおう。
あまり目立たないし、適任だ。罪悪感なんて気にする必要はない。だって、チャームの魔法なんてあるはずないんだから。
カシャ。
シャッターボタンに指をかけた。シャッター音はもちろん鳴らない。これはオレの頭のなかでだけ鳴っている音。盗撮癖から染みついた幻聴。画面におさめられた読書している少女の後ろ姿。
依然――その女子は読書にふけっている。
何か変わった様子はない。
「ふぅ」
と、安堵の息を吐いて、スマホをポケットにしまった。
やっぱり昨日のリリンの一件は、オレの勘違いか何かだったんだろう。チャームの魔法なんて、ありはしないんだ。同人誌の見すぎで、頭が変になっていたのかもしれない。
もしもチャームの魔法があるとすれば、それはオレがミオンの心を歪曲してしまったことになるのだ。
他人の心を捻じ曲げることが、許されざる行為だなんてことは、オレにだって理解できる。盗撮なんかよりも、もっと怖ろしいことだ。
そんな意味不明なチカラは法律では裁けないかもしれないが、裁かれるべき事態だろう。もし裁かれるとしたら、どんな罰がくだされることになるんだろうか? 死刑に相当するかもしれない。そう考えるとやっぱりチャームなんて、ないほうが良いと思うのだ。
安堵の裏側には、落胆もあった。
もしもチャームが実在したならば、世の中のどんな女性も思い通りにすることが出来るかもしれないのだ。
オレは自分の心の底意に気づいていた。
チャームが、実在していれば良かったのに。その気持ちのほうが大きかったのだ。
酷く不健全で犯罪者染みた考えだってことは、わかっていた。わかっていたから、落胆からは目をそむけたのだ。
キーンコーンカーンコーン。
始業のチャイムが鳴る。
学校。2年C組。教室。
ミオンはさきに学校についていた。クラスメイトたちに取り囲まれていた。ミオンを取り巻くのはほとんど女子だ。シマコウをはじめとする陽キャ男子たちは、性別の壁なんて気にすることなく、その輪にまじっていた。
「昨日さ。NONOの写真集買ったんだよ」
と、シマコウが言う。
「ホントウですか? うれしーっ」
と、ミオンは両手を合わせて、はにかむように笑う。
男子たちを喜ばせる満点の応対。
昨日ミオンと接して、感じることがあった。楚々とした雰囲気をまとっているにも関わらず、惜し気もなく肌を露出する。肝心な部分は見えないていどに見せてくる。
それをわざとやってるんだったら、見かけによらず計算高いところがある。
無意識にやっているのならば、天性の小悪魔だ。
シマコウたちと接しているときもそうだ。相手がどうすれば喜ぶのか、チャントわかってる。
「でもあの写真集けっこう過激だったよな。マジ可愛かったけどさ、カメラマンとかに、おっぱい見られたりしないわけ?」
やだー。
シマコウのエッチ。
ほかの女子たちが黄色い声をあげていた。
「大丈夫ですよ。みんな女の人ですから。それにチャント見えないようにしてます」
写真集。どんなヤツだろう? あとで調べてみよう。
シマコウとミオンの会話に耳をすませながらも、気にしていないフリをして、オレは自分の席にむかった。
オレの席は窓際。最後尾。たいするミオンの席はクラスの中心。ド真ん中。
オレが自分の席へ向かっている途中。ミオンがオレにたいして視線を投げかけてきた。小首をかしげてウィンクして見せた。
誰にも気づかれないほど自然な仕草だった。オレはただただ狼狽することしかできなかった。
学校では、おたがい知らないフリをしていようと約束している。それをわかったうえで、秘密裡にウィンクを送ってきたのだろう。
「ミオンさんは部活とか、何に入るつもりなんだ? 良ければサッカー部のマネージャーになてくれよ」
「うーん。部活動とかはできないかもしれません」
「あ、そっかー。アイドル活動とかいそがしいもんな」
と、ふたたびシマコウとの会話に戻っていた。
シマコウは、ウィンクには気づいていない。
知ってるか、シマコウ?
ミオンさんは昨日、オレの部屋に泊まったんだ。風呂にも入ったんだぜ?
シマコウにそう打ち明けてやりたい衝動に突如として駆られた。どうしてそんな衝動に駆られたのか、オレには良くわかっていた。
嫉妬。
シマコウは勉強も運動もできる。イケメンだし背も高い。ふつうの人間にはないものを、全部備えている。
ミオンがオレのことなんか忘れて、シマコウに好意を寄せるんじゃないかと不安だった。シマコウの陽キャのかがやきは、オレの存在なんて簡単に打ち消してしまうチカラがある。
その醜悪な感情はすぐにおさめることが出来た。さっきのウィンクが、オレを安心させてくれた。
「ッたく」
と、オレは独りごちた。
呆れる。
なにをオレみたいなヤツが一人前に嫉妬なんかしてるんだ。たった1日部屋に泊めた。それだけの関係だ。付き合ってるわけでもない。
それよりも、オレには確かめなければならないことがある。
スマホを取り出す。カメラを起動する。フォーカスを教室の隅にいる女子に向けた。オレが窓際の隅ならば、その娘は廊下側の隅っ子。そこそこ可愛いのだけれど、いつも読書してる大人しい女子。ミオンたちの輪にも入らずに、今日も読書に励んでいる。
実験台になってもらおう。
あまり目立たないし、適任だ。罪悪感なんて気にする必要はない。だって、チャームの魔法なんてあるはずないんだから。
カシャ。
シャッターボタンに指をかけた。シャッター音はもちろん鳴らない。これはオレの頭のなかでだけ鳴っている音。盗撮癖から染みついた幻聴。画面におさめられた読書している少女の後ろ姿。
依然――その女子は読書にふけっている。
何か変わった様子はない。
「ふぅ」
と、安堵の息を吐いて、スマホをポケットにしまった。
やっぱり昨日のリリンの一件は、オレの勘違いか何かだったんだろう。チャームの魔法なんて、ありはしないんだ。同人誌の見すぎで、頭が変になっていたのかもしれない。
もしもチャームの魔法があるとすれば、それはオレがミオンの心を歪曲してしまったことになるのだ。
他人の心を捻じ曲げることが、許されざる行為だなんてことは、オレにだって理解できる。盗撮なんかよりも、もっと怖ろしいことだ。
そんな意味不明なチカラは法律では裁けないかもしれないが、裁かれるべき事態だろう。もし裁かれるとしたら、どんな罰がくだされることになるんだろうか? 死刑に相当するかもしれない。そう考えるとやっぱりチャームなんて、ないほうが良いと思うのだ。
安堵の裏側には、落胆もあった。
もしもチャームが実在したならば、世の中のどんな女性も思い通りにすることが出来るかもしれないのだ。
オレは自分の心の底意に気づいていた。
チャームが、実在していれば良かったのに。その気持ちのほうが大きかったのだ。
酷く不健全で犯罪者染みた考えだってことは、わかっていた。わかっていたから、落胆からは目をそむけたのだ。
キーンコーンカーンコーン。
始業のチャイムが鳴る。
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