俺は新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてもらえませんか~
第三章 第14話 ダンジョン攻略、小さな危機と小さな気付き。
「ペルカ! 肉弾戦は無理だから下がって!」
「ハイなのです!」
俺の言葉に、ペルカはすぐに後ろに下がる。俺は手にしたメイスをバトントワリングのようにグルグルと旋回させて簡易の防壁を作り出した。でもこれだと起点になってる持ち手部分を狙われたらおしまいだ。
「だぁぁぁーーーーーーっ、チョッ、ちょっとこの数はマズいですよ女将さん!」
わらわらと奥からやってくるのはケイブ・ワスプ。
体長は一〇センチほど、蜂のような外見で、尻に付いている針には強力な麻痺毒があるらしい。
しかも嫌なことにコイツら肉食だ。
何故こんなことがわかるかというと、探査を発動しているからだ。
あのスキル報告会のあと、俺たちはダンジョンの探索を本格的に開始した。
隊列は変わらず、ペルカと俺が前衛、女将さんが一歩下がったところで周りを警戒しつつ、柔軟に援護をしてくれる。クリフが後衛として弓を使っての牽制と攻撃だ。
そして探索中に新たに出会ったモンスターに対して探査を使うのは俺の役目になった。
これは内緒なのだが、スキル報告会の後も、道すがらスキルについて話していた。
するとスキルには、常時発動型スキルと、能動型スキルがあるという話が出たのだ。
これについては知っていたのだが、驚いた事にペルカが言うには、アクティブ・スキルはスキルポイントというのがあって、それを消費して発動するらしいのだ。
俺は、内心の驚きを隠して慎重に話を聞いたところ、ポイント制のスキルにはそれ自体に経験値のようなものがあるのだとか。
使用した回数によって経験値がたまってレベルが上がり、スキルを使える回数が増えるのだという。
それだけをみると、何回も使えば良いんで簡単じゃないかと思うかもしれない。
しかし問題はスキルポイントだ。
一ポイントの回復時間がおよそ一日かかるというという。
つまり、回数をこなすこと自体が難しいのだ。
ペルカは、俺がスキルを与えたあと、興味もあって何回も使ったらしい。現在のペルカの探査スキルはレベル7で最大使用回数は七回だということだ。
そんな事もあって、探査を使うのに制限のない俺が探査を使うことにしたのだ。
みんなには、生まれつきの能力なので、子供のころから使っていたからレベルが高いんだとごまかしている。
やはり神だからなのだろうか、俺の探査には使用回数の制限がない。
そう考えてみると、人化降臨しているのだからといって、完全に人間の能力になるわけではないらしい。
いま俺たちは、転送でもされていないかぎり、ダンジョンの第二層にいるはずだ。
それにしても、この層に入ってから出会ったのは、何かしらの毒を持ったモンスターばかりだ。
「ケイブ・ワスプだ、麻痺毒を持ってるから気をつけて!」
ブーンという嫌な気分になる羽音を響かせて襲ってくるケイブ・ワスプを、振り回すメイスの風圧で威嚇する。
奴らのHPは少ない。だが問題はその数だ。ぱっと見ただけで一〇〇匹以上は居る。
「ダイ! 少し時間を稼ぎな! いいかい、合図をしたらアタシの後ろに下がるんだよ!」
「早くお願いします! もうもたない!」
俺が振り回すメイスにぶち当たったケイブ・ワスプたちが足もとにバラバラと落ちていく。
これ、終わりがあるのか。ダンジョンの奥からはまだまだケイブ・ワスプがやってくる。
それでも、後ろで女将さんが何をやっているのか気になって、間隙を縫ってチラチラと後ろに視線を送ると、彼女は腰のポーチから何やら取り出してた。
それはポーチのサイズからは考えられない大きさのものだ。あのポーチは、俺の界蜃の袋と同じようなものらしい。
あのようなマジックアイテムを持っているとは、さすがに元冒険者ということだろうか。
実はしばらく前、女将さんが持っている松明がいつまでたっても燃え尽きる様子がないので不思議に思っていたら、あのポーチから新しい松明を取りだして燃え尽きかけた松明と交換していたのだ。
「よし今だ。逃げな!」
俺は女将さんの声に踵を返して後ろえと飛びすさった。
その俺の動きとタイミングを合わせるように、ボゥヲォォォッと赤い光がダンジョン内に広がった。
ボゥヲォォォッ、ボゥヲォォォッ、っと数度赤い光がダンジョンを照らす。
その度に大量のケイブ・ワスプが炎に包まれボトボトと地面に落ちる。
「女将さん、魔法が使えたんですか…………!?」
後ろに下がった俺を護るように、女将さんが前に進み出た。彼女の口からは、まるで火炎放射器のように炎が吹き出されていた。
片手に持った小樽から、中のものを口に含むと、さらにボゥヲォォォッ、と火が放たれる。
女将さんは手に持った松明の炎を種火として、口に含んだ――おそらくアルコールだろう。を、ケイブ・ワスプに吹き出しているのだ。
どこの大道芸人だ!!
俺は、そう盛大に突っ込みたい気持ちをギリギリ押さえ込んだ。
ボゥヲォォォッ、ボゥヲォォォッ、さらに数度、女将さんが火炎放射をすると、あれだけ居たケイブ・ワスプは一網打尽にされていた。
女将さんは松明の光を照らして、辺りに生き残ったケイブ・ワスプがいないことを確認する。
「いや~、消毒用に持ってきたんだけどさ、思わぬところで役に立ったね」
俺は探査の効いたままの目で女将さんの手にある樽を見た。
〈携帯用酒樽〉
ホワイトオーク材で作られた樽。2リットル用。
内容物:錬金術によって生成された高純度の酒精。
「だけどさ――クリフ、下手したら今ので全滅だよ。あたしは撃つなって言ったよね」
隊列のいちばん後ろで固まっているクリフに、女将さんは厳しい表情を向けた。
この戦闘が始まった原因。
それは、通路の先に無警戒に飛んでいたケイブ・ワスプをクリフが不用意に射撃したからだった。
「……ぅ、すみません。……オレ……」
クリフが何かを言おうとするが、言葉が続かずに口ごもった。
「まさか、覚えたばかりのスキルを試してみたかったってわけじゃないよね」
そうなのだ、クリフはダンジョン内での戦闘の結果、新たに精密射撃というスキルを発現していた。
スキルのことを意識していたからか、自分の中で何かが変わったと分かったのだろう、そのときにはもう探査は俺がすることに決まっていたので、クリフの奴それは嫌そうに俺に頼んできた。
クリフに発現したイネアサイドというスキルは、射程内であれば動くものであろうと狙った的を外すことがないというものだった。
しかしそのあとの戦闘では、ずっとスキルを試せるような戦闘はなかった。
そんな時に、あのケイブ・ワスプを見つけたのだ。
弓をつがえたクリフに気付いた女将さんが素早く制止の声を上げたのだが、クリフはそれを無視して矢を放った。その結果が先ほどの戦闘だったのだ。
「あんたは猟師なんだ。蜂が群れることぐらいわかってるだろ。村周辺にいる蜂の毒だって命に関わることがあるんだ。ましてやダンジョンにいるモンスターなんだよ。慎重に慎重を重ねたってまだたりないくらいなんだ!」
「カーサさん、そんなに叱ったら可哀想なのですよ」
女将さんの剣幕にペルカがたまらずふたりの間に割って入った。
「ペルカさん……、うぅッ、オレ――、まさか、あんな大事になるなんて」
「みんな無事だったのです。だいじょうぶなのですよ」
「そういう訳にはいかないんだよ。今のはたまたま助かったんだ。ダイの判断が一瞬遅かったらペルカ嬢ちゃん。あんたヤツらの毒を食らってたよ。そうなれば回復手段はアタシの持ってる数少ない魔法薬だけになっちまったんだ。……それにしても、パーティーの唯一の回復魔法の使い手が肉弾戦上等の巫女兵だなんてね」
「あううぅ、ごめんなさいなのですよ」
「女将さん、そればっかりはしかたないでしょ。ペルカは癒やしの魔法を覚えたのが最近だって話なんですから。主客が入れ替わってますよ」
「……ああ、まあ、そうだね。悪かったよペルカ嬢ちゃん。アタシも頭に血が上りすぎてるね。いいかいクリフ。あんたが嬢ちゃんに良いところを見せたいのはわかってるけどさ。その気持ちが嬢ちゃんを殺すかも知れないってことは肝に銘じておきなよ」
「そっ、そんなこと……。……オレは、……わかりました」
……えっ? えっ! そういうことなの!? クリフの奴、ペルカのこと……。
ウチの娘は簡単にはあげませんよ!!
あっ、いや、口から出なくて良かった。
「……?」
ペルカを見るとキョトンとした表情で困り顔をしている。あれペルカ、分かってない?
その手の経験が少ない俺ですら分かったのに。なるほど、そう考えるとクリフが執拗に俺に突っかかって来るのが………………? 分かるか?
べつにペルカは、うぅむ、コホン、俺のことを好きだっていうようなそぶりなんか見せてないよね。恋敵っていうには俺とペルカじゃ歳が離れすぎてるし、いまの外見年齢からみても一〇歳近くはなれてる感じだもんな。
逆にペルカとクリフは同じ歳なんだよね。考えてみると。
それに人族であるクリフも、十五歳で成人というこの世界では、一般的な年齢を超えている。そう考えるとたしかに意識するのが分かる。ペルカみたいな嫁さんがもらえたらそれは最高だろう。
ペルカは、けして美人というタイプではないけど、クリクリとした目は綺麗な光を湛えていて、愛嬌のあるそれは可愛らしい笑顔の女の子だ。サテラのようなボーイッシュな外見の女性が好きな俺ですら、ペルカの太陽のような性格には引かれるものがあるのだから。
もしかして、俺がペルカに長い時間治療されていたのを、何か勘違いしてるんじゃないだろうか?
うん、それならまあ、すこしは納得できるかも。
なるほどなあ。
恋敵認定されていたと考えれば、クリフの必要以上の敵意が分かろうというものだ。
俺は、クリフに近づくとその肩に手を置いた。
「クリフ、次は気をつけようぜ」
「ウルサい!」
パシンと、手を払われましたよ。
慰めようと思ったんだが、う~ん逆効果でした。
「ハイなのです!」
俺の言葉に、ペルカはすぐに後ろに下がる。俺は手にしたメイスをバトントワリングのようにグルグルと旋回させて簡易の防壁を作り出した。でもこれだと起点になってる持ち手部分を狙われたらおしまいだ。
「だぁぁぁーーーーーーっ、チョッ、ちょっとこの数はマズいですよ女将さん!」
わらわらと奥からやってくるのはケイブ・ワスプ。
体長は一〇センチほど、蜂のような外見で、尻に付いている針には強力な麻痺毒があるらしい。
しかも嫌なことにコイツら肉食だ。
何故こんなことがわかるかというと、探査を発動しているからだ。
あのスキル報告会のあと、俺たちはダンジョンの探索を本格的に開始した。
隊列は変わらず、ペルカと俺が前衛、女将さんが一歩下がったところで周りを警戒しつつ、柔軟に援護をしてくれる。クリフが後衛として弓を使っての牽制と攻撃だ。
そして探索中に新たに出会ったモンスターに対して探査を使うのは俺の役目になった。
これは内緒なのだが、スキル報告会の後も、道すがらスキルについて話していた。
するとスキルには、常時発動型スキルと、能動型スキルがあるという話が出たのだ。
これについては知っていたのだが、驚いた事にペルカが言うには、アクティブ・スキルはスキルポイントというのがあって、それを消費して発動するらしいのだ。
俺は、内心の驚きを隠して慎重に話を聞いたところ、ポイント制のスキルにはそれ自体に経験値のようなものがあるのだとか。
使用した回数によって経験値がたまってレベルが上がり、スキルを使える回数が増えるのだという。
それだけをみると、何回も使えば良いんで簡単じゃないかと思うかもしれない。
しかし問題はスキルポイントだ。
一ポイントの回復時間がおよそ一日かかるというという。
つまり、回数をこなすこと自体が難しいのだ。
ペルカは、俺がスキルを与えたあと、興味もあって何回も使ったらしい。現在のペルカの探査スキルはレベル7で最大使用回数は七回だということだ。
そんな事もあって、探査を使うのに制限のない俺が探査を使うことにしたのだ。
みんなには、生まれつきの能力なので、子供のころから使っていたからレベルが高いんだとごまかしている。
やはり神だからなのだろうか、俺の探査には使用回数の制限がない。
そう考えてみると、人化降臨しているのだからといって、完全に人間の能力になるわけではないらしい。
いま俺たちは、転送でもされていないかぎり、ダンジョンの第二層にいるはずだ。
それにしても、この層に入ってから出会ったのは、何かしらの毒を持ったモンスターばかりだ。
「ケイブ・ワスプだ、麻痺毒を持ってるから気をつけて!」
ブーンという嫌な気分になる羽音を響かせて襲ってくるケイブ・ワスプを、振り回すメイスの風圧で威嚇する。
奴らのHPは少ない。だが問題はその数だ。ぱっと見ただけで一〇〇匹以上は居る。
「ダイ! 少し時間を稼ぎな! いいかい、合図をしたらアタシの後ろに下がるんだよ!」
「早くお願いします! もうもたない!」
俺が振り回すメイスにぶち当たったケイブ・ワスプたちが足もとにバラバラと落ちていく。
これ、終わりがあるのか。ダンジョンの奥からはまだまだケイブ・ワスプがやってくる。
それでも、後ろで女将さんが何をやっているのか気になって、間隙を縫ってチラチラと後ろに視線を送ると、彼女は腰のポーチから何やら取り出してた。
それはポーチのサイズからは考えられない大きさのものだ。あのポーチは、俺の界蜃の袋と同じようなものらしい。
あのようなマジックアイテムを持っているとは、さすがに元冒険者ということだろうか。
実はしばらく前、女将さんが持っている松明がいつまでたっても燃え尽きる様子がないので不思議に思っていたら、あのポーチから新しい松明を取りだして燃え尽きかけた松明と交換していたのだ。
「よし今だ。逃げな!」
俺は女将さんの声に踵を返して後ろえと飛びすさった。
その俺の動きとタイミングを合わせるように、ボゥヲォォォッと赤い光がダンジョン内に広がった。
ボゥヲォォォッ、ボゥヲォォォッ、っと数度赤い光がダンジョンを照らす。
その度に大量のケイブ・ワスプが炎に包まれボトボトと地面に落ちる。
「女将さん、魔法が使えたんですか…………!?」
後ろに下がった俺を護るように、女将さんが前に進み出た。彼女の口からは、まるで火炎放射器のように炎が吹き出されていた。
片手に持った小樽から、中のものを口に含むと、さらにボゥヲォォォッ、と火が放たれる。
女将さんは手に持った松明の炎を種火として、口に含んだ――おそらくアルコールだろう。を、ケイブ・ワスプに吹き出しているのだ。
どこの大道芸人だ!!
俺は、そう盛大に突っ込みたい気持ちをギリギリ押さえ込んだ。
ボゥヲォォォッ、ボゥヲォォォッ、さらに数度、女将さんが火炎放射をすると、あれだけ居たケイブ・ワスプは一網打尽にされていた。
女将さんは松明の光を照らして、辺りに生き残ったケイブ・ワスプがいないことを確認する。
「いや~、消毒用に持ってきたんだけどさ、思わぬところで役に立ったね」
俺は探査の効いたままの目で女将さんの手にある樽を見た。
〈携帯用酒樽〉
ホワイトオーク材で作られた樽。2リットル用。
内容物:錬金術によって生成された高純度の酒精。
「だけどさ――クリフ、下手したら今ので全滅だよ。あたしは撃つなって言ったよね」
隊列のいちばん後ろで固まっているクリフに、女将さんは厳しい表情を向けた。
この戦闘が始まった原因。
それは、通路の先に無警戒に飛んでいたケイブ・ワスプをクリフが不用意に射撃したからだった。
「……ぅ、すみません。……オレ……」
クリフが何かを言おうとするが、言葉が続かずに口ごもった。
「まさか、覚えたばかりのスキルを試してみたかったってわけじゃないよね」
そうなのだ、クリフはダンジョン内での戦闘の結果、新たに精密射撃というスキルを発現していた。
スキルのことを意識していたからか、自分の中で何かが変わったと分かったのだろう、そのときにはもう探査は俺がすることに決まっていたので、クリフの奴それは嫌そうに俺に頼んできた。
クリフに発現したイネアサイドというスキルは、射程内であれば動くものであろうと狙った的を外すことがないというものだった。
しかしそのあとの戦闘では、ずっとスキルを試せるような戦闘はなかった。
そんな時に、あのケイブ・ワスプを見つけたのだ。
弓をつがえたクリフに気付いた女将さんが素早く制止の声を上げたのだが、クリフはそれを無視して矢を放った。その結果が先ほどの戦闘だったのだ。
「あんたは猟師なんだ。蜂が群れることぐらいわかってるだろ。村周辺にいる蜂の毒だって命に関わることがあるんだ。ましてやダンジョンにいるモンスターなんだよ。慎重に慎重を重ねたってまだたりないくらいなんだ!」
「カーサさん、そんなに叱ったら可哀想なのですよ」
女将さんの剣幕にペルカがたまらずふたりの間に割って入った。
「ペルカさん……、うぅッ、オレ――、まさか、あんな大事になるなんて」
「みんな無事だったのです。だいじょうぶなのですよ」
「そういう訳にはいかないんだよ。今のはたまたま助かったんだ。ダイの判断が一瞬遅かったらペルカ嬢ちゃん。あんたヤツらの毒を食らってたよ。そうなれば回復手段はアタシの持ってる数少ない魔法薬だけになっちまったんだ。……それにしても、パーティーの唯一の回復魔法の使い手が肉弾戦上等の巫女兵だなんてね」
「あううぅ、ごめんなさいなのですよ」
「女将さん、そればっかりはしかたないでしょ。ペルカは癒やしの魔法を覚えたのが最近だって話なんですから。主客が入れ替わってますよ」
「……ああ、まあ、そうだね。悪かったよペルカ嬢ちゃん。アタシも頭に血が上りすぎてるね。いいかいクリフ。あんたが嬢ちゃんに良いところを見せたいのはわかってるけどさ。その気持ちが嬢ちゃんを殺すかも知れないってことは肝に銘じておきなよ」
「そっ、そんなこと……。……オレは、……わかりました」
……えっ? えっ! そういうことなの!? クリフの奴、ペルカのこと……。
ウチの娘は簡単にはあげませんよ!!
あっ、いや、口から出なくて良かった。
「……?」
ペルカを見るとキョトンとした表情で困り顔をしている。あれペルカ、分かってない?
その手の経験が少ない俺ですら分かったのに。なるほど、そう考えるとクリフが執拗に俺に突っかかって来るのが………………? 分かるか?
べつにペルカは、うぅむ、コホン、俺のことを好きだっていうようなそぶりなんか見せてないよね。恋敵っていうには俺とペルカじゃ歳が離れすぎてるし、いまの外見年齢からみても一〇歳近くはなれてる感じだもんな。
逆にペルカとクリフは同じ歳なんだよね。考えてみると。
それに人族であるクリフも、十五歳で成人というこの世界では、一般的な年齢を超えている。そう考えるとたしかに意識するのが分かる。ペルカみたいな嫁さんがもらえたらそれは最高だろう。
ペルカは、けして美人というタイプではないけど、クリクリとした目は綺麗な光を湛えていて、愛嬌のあるそれは可愛らしい笑顔の女の子だ。サテラのようなボーイッシュな外見の女性が好きな俺ですら、ペルカの太陽のような性格には引かれるものがあるのだから。
もしかして、俺がペルカに長い時間治療されていたのを、何か勘違いしてるんじゃないだろうか?
うん、それならまあ、すこしは納得できるかも。
なるほどなあ。
恋敵認定されていたと考えれば、クリフの必要以上の敵意が分かろうというものだ。
俺は、クリフに近づくとその肩に手を置いた。
「クリフ、次は気をつけようぜ」
「ウルサい!」
パシンと、手を払われましたよ。
慰めようと思ったんだが、う~ん逆効果でした。
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