俺は新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてもらえませんか~
第三章 間話 ペルカの一人旅
青い空に薄い雲が糸を引くように流れているのです。
 冬が近づき、朝晩はもうだいぶ寒くなってきたのですよ。
母さまとアマラが作ってくれた新しい巫女装束は、巫女兵でもあるワタシに合わせて、動きやすいようにと裾が短くなっているので、足下が少し寒いのです。
眠るときにはマントを羽織るので我慢はできるのですよ。
村を出て十日。
遙か向こうにロンダン村のある御山が、まだ山々の間に霞んだ頭を覗かせているのです。
あと何日か西に進むと、もう御山も見えなくなるのです。
眼下に深い森が続く小さな山の上。ワタシは道中に仕留めた兎のお肉を捌いて、少し遅いお昼なのです。
ワタシが今こんな場所にいるのはヤマトさんを探す為なのですよ。
ヤマトさんが、そのお姿を変えて地上に降臨されたという話を、サテラさまから聞いたのは、大陸西方のエルトーラで起きたあの出来事のすぐ後だったのです。
ヤマトさんを探す決心をしたワタシは、父さまにお願いして村を出る資格を得るために試練を受けたのです。
資格を手に入れるのは大変だったのですが何とか試練を乗り越えることができたのですよ。
村の巫女の仕事は、資質を持った数人の娘に引き継いだのです。
驚いたのですがワタシ、ヤマトさんの筆頭巫女なのだそうですよ。
これはサテラさまから聞いたのですが、筆頭巫女には新たな巫女を選定する力があたえられるのだそうです。
ヤマトさんの巫女になってすぐの頃には、まだ巫女としての修行がたりなかったのでしょう。その力は発現していなかったのです。
ですがエルトーラから帰った後。サテラさまにうながされるままに探査のスキルを使ったところ〔神職教示〕というスキルが発現していたのですよ。
狼人族は仲間の結束が固いので、村から出る者はとても珍しいのです。
大崩壊の後村から出ていくのはワタシで二人目なのだそうです。
ワタシが村を出る前の日。
みんなが送別のお祭りを開いてくれたのです。
長老さまがおっしゃっていたのですが、あれほど盛大なお祭りはロンダン村始まって以来の事だったそうなのです。
……大鹿のお肉美味しかったのです。
……フリェの茸、生け贄になったとき以来だったのです。
サントの煮物も大鍋で振る舞われてみんな大騒ぎだったのですよ。
成人した者たちは、お酒をあおって踊り出して最後には広場のそこかしこで寝込んでしまったのです。
ワタシが出発するときに起きていたのは、父さまと母さま、長老にドゥランのおじさん、幼なじみのアマラと旦那さんのラバルさん、そしてワタシがヤマトさんの巫女として選んだ娘たちなのです。
確かに、それは盛大なお祭りだったのでしかたないのですが……、生け贄として御山に運ばれたときには、父さまと母さまは居ませんでしたし、アマラとは遠くで視線を交わしただけだったので、今回はきちんと言葉も交わせたのです……ワタシ、みんなに嫌われているわけではないのですよ。ほんとですよ。
ドゥランのおじさんが「今度は生け贄に召し出されるわけじゃぁないんだ。みんなお前が元気に戻ってくると思っているから……まあ、羽目を外しすぎだがな」と、呆れたように笑っていたのですよ。
村のみんなとお別れするのは辛かったのですが、たしかに、こんどは先の無い出発ではないのですよ。
それにヤマトさんの信徒を増やすために、村を出るつもりでいたのです。それが少しばかり早くなっただけなのですよ。
遠くに霞む御山を目に、村のことを考えていたワタシの頭の中にピンッと何かがつながったような感覚がしたのです。
途端、凜とした女の人の声が響いたのです。
『ペルカ、聞こえていますか?』
「はやや!? サテラさま――なのですか?」
ワタシは、口の中に入っている兎の肉を素早く咀嚼して呑み込みました。
『ひと月振りになりますね。……そこはロンダン村ではないようですが……、ヤマトを探すために村を出たのですね。あなた、ひとりで村を出るのは初めてなのではないのですか? 旅の方は問題ありませんか?』
「ハイ、なのです。こうして食事も出来ているのですよ」
『――そうですか、それはなによりです』
サテラさまの質問に対してワタシの返した答えは、少しズレていたような気もするのですが、サテラさまは優しく声を掛けてくださりました。
『ところでペルカ、ひとつあなたにお願いしたいことが出来てしまったのです』
サテラさまの声は、どこか言い辛そうな雰囲気をその響きに紛れさせているのです。
「どういったご用件なのでしょうか?」
『あなたはダンジョンという言葉を聞いたことはありますか?』
「ハイなのです。村の語り部のお婆さんたちから、昔語りで聞いたことがあるのです」
『では、そのダンジョンがどういったものかは知っていますか?』
「その……、怖いモンスターが沢山いる場所というくらいしか知らないのです」
『やはり、今の地上の子供たちにはその程度の知識しかありませんか……』
サテラさまは、何か諦めたように軽く息をついたのです。
『いいですかペルカ。私たち神々と魔神の間にはとある制約があります。その詳細についてはあなたたち地上の子供たちに語ることはできません。しかしその中であなたたちに大きく関係するいくつかの事柄については語ることが許されています。それをこれから話します。心して聞きなさい』
「はい、分かりましたのです」
ワタシは居住まいを正すと、神妙にサテラさまの言葉を待ったのです。
『ダンジョンというのは魔神の軍勢が地上に攻め込むために生み出されるものなのです。魔神や魔の者たちが邪気を力とすることは知っていますね。彼らは邪気を蓄え魔神に奉じます。その邪気を蓄えた魔神は地上へと続くダンジョンを生み出します』
「ダンジョンは魔神が生み出すのですか……」
『そうです。そしてダンジョンの最下層には時を同じくして一匹の魔族が産み落とされるのです。その魔族はダンジョンと命を共有する存在です。つまり魔族が死ねばダンジョンも死に、ダンジョンはただの洞窟となります』
「では、その魔族を斃さないとダンジョンはずっとそのままなのですか?」
『いいえ。ダンジョンをそのまま放置しておくと、ダンジョンはモンスターたちをどんどんと生みだし、彼らが発した邪気を糧に迷宮は成長します』
「はわわ、成長するのですか!?」
『そうです。迷宮は十層まで成長した段階ではじめて地上に口を開きます。そしてそのまま最下層の魔族を斃せずにいると百層まで成長します。百層までダンジョンが成長すると、魔族は新たな眷属魔族を生みだし、自身はダンジョンから軛を解かれて地上を自由に徘徊できるようになるのです』
サテラさまの説明を聞いて、ワタシは自分の血の気が引いていくのが分かったのです。
『しかもそれだけではありません。ダンジョンから解き放たれた魔族が下層から外に向かうのに追われ、恐慌を来たした多くのモンスターたちが迷宮から脱出しします。近郊に村や街があった場合、その恐慌に巻き込まれて崩壊する可能性があるのです』
「それは大変なのです!!」
『ええ……そしてそのダンジョンが、地上に口を開きました』
「はわっ!!」
『ペルカ、あなたにはそのひとつのダンジョンの攻略をお願いしたいのです』
「はわわわわ、そっ、その――ワタシで大丈夫なのですか……」
『今のあなたの力ならば、ダンジョンに挑むにたる資格は充分にあるでしょう。しかし、ひとりでは無理です。幸い、あなたに攻略をお願いするダンジョンの近くには村がありますので、そこを拠点にすれば、ダンジョン攻略の仲間を集めることもできるでしょう。……その、本来ならばヤマトの巫女であるあなたに、私がお願いすることではないのは分かっているのです。ですが、私は戦女神の眷属であり、神職や巫女との繋がりは多くないのです……それに、結果としてヤマトの為にもなることですし……』
サテラさまの最後の言葉は、どこか自分に言い聞かせているような響きを放っているのです。
「あうぅ、あっ、あの、お気になさらないでくださいなのです。ワタシもサテラさまのお役にたてるのは嬉しいのですよ。……それにサテラさまがヤマトさんの事を思っているのはワタシ分かっているのですよ」
『なななッ――何を言っているのですかペルカ! ヤマトを思っているなどと――私はそんな……』
何でしょう? サテラさまは何故か慌てているのです。ワタシの言葉が足りなかったのでしょうか?
「その……、サテラさまははじめてヤマトさんと私の前に現れたときから、それはヤマトさんの事を母親が見守るように優しくも厳しく見守っていたのです」
『……コホン。えっ、ええ、そうですね。ヤマトはまだまだ手のかかる子供のようなものですからね』
「ところでサテラさま、ヤマトさんは……」
『ヤマトの居場所ですね。おおよその範囲には絞れたのですが……いまだハッキリとした場所はつかめていません。ですがこれからあなたが向かうことになるダンジョンは、その範囲内にあります。ヤマトのこと、ダンジョンの話を聞きつければ、きっと自分から首を突っ込んでくるでしょう。姿を変えていることは間違いありませんが、あなたならもしかしたら分かるかもしれませんね』
それはとても嬉しい言葉でした。
ワタシが村を出たのは、すべてヤマトさんの力になりたいからなのですよ。
だから……不謹慎なのですが、直接ヤマトさんのお役に立てるかもしれないのはとても嬉しいのです。
「ヤマトさんとまた会えるのですね!」
『そうなると良いですね……。私は暫しの間、地上に降臨することがかないません。あなたには定期的に連絡するようにします』
「分かったのです。それでワタシはどちらの方向に向かったらいいのでしょうか」
『あなたのいる位置からですと西北西の方向になります。方角は分かりますね』
「ハイなのです。太陽の位置で分かるのですよ」
『ならばヤマトのこと、お願いしましたよ』
その言葉を最後に、ワタシの頭の中につながっていた微かな力が途切れました。
サテラさまからの神託を受け取ったワタシは、サテラさまが示された西北西の方角を見据えました。
青い空には、雲が糸を引くように流れています。サテラさまが示された西北西から流れてきているのです。
それはワタシをヤマトさんの元に導く確かな絆に見えたのですよ。
 冬が近づき、朝晩はもうだいぶ寒くなってきたのですよ。
母さまとアマラが作ってくれた新しい巫女装束は、巫女兵でもあるワタシに合わせて、動きやすいようにと裾が短くなっているので、足下が少し寒いのです。
眠るときにはマントを羽織るので我慢はできるのですよ。
村を出て十日。
遙か向こうにロンダン村のある御山が、まだ山々の間に霞んだ頭を覗かせているのです。
あと何日か西に進むと、もう御山も見えなくなるのです。
眼下に深い森が続く小さな山の上。ワタシは道中に仕留めた兎のお肉を捌いて、少し遅いお昼なのです。
ワタシが今こんな場所にいるのはヤマトさんを探す為なのですよ。
ヤマトさんが、そのお姿を変えて地上に降臨されたという話を、サテラさまから聞いたのは、大陸西方のエルトーラで起きたあの出来事のすぐ後だったのです。
ヤマトさんを探す決心をしたワタシは、父さまにお願いして村を出る資格を得るために試練を受けたのです。
資格を手に入れるのは大変だったのですが何とか試練を乗り越えることができたのですよ。
村の巫女の仕事は、資質を持った数人の娘に引き継いだのです。
驚いたのですがワタシ、ヤマトさんの筆頭巫女なのだそうですよ。
これはサテラさまから聞いたのですが、筆頭巫女には新たな巫女を選定する力があたえられるのだそうです。
ヤマトさんの巫女になってすぐの頃には、まだ巫女としての修行がたりなかったのでしょう。その力は発現していなかったのです。
ですがエルトーラから帰った後。サテラさまにうながされるままに探査のスキルを使ったところ〔神職教示〕というスキルが発現していたのですよ。
狼人族は仲間の結束が固いので、村から出る者はとても珍しいのです。
大崩壊の後村から出ていくのはワタシで二人目なのだそうです。
ワタシが村を出る前の日。
みんなが送別のお祭りを開いてくれたのです。
長老さまがおっしゃっていたのですが、あれほど盛大なお祭りはロンダン村始まって以来の事だったそうなのです。
……大鹿のお肉美味しかったのです。
……フリェの茸、生け贄になったとき以来だったのです。
サントの煮物も大鍋で振る舞われてみんな大騒ぎだったのですよ。
成人した者たちは、お酒をあおって踊り出して最後には広場のそこかしこで寝込んでしまったのです。
ワタシが出発するときに起きていたのは、父さまと母さま、長老にドゥランのおじさん、幼なじみのアマラと旦那さんのラバルさん、そしてワタシがヤマトさんの巫女として選んだ娘たちなのです。
確かに、それは盛大なお祭りだったのでしかたないのですが……、生け贄として御山に運ばれたときには、父さまと母さまは居ませんでしたし、アマラとは遠くで視線を交わしただけだったので、今回はきちんと言葉も交わせたのです……ワタシ、みんなに嫌われているわけではないのですよ。ほんとですよ。
ドゥランのおじさんが「今度は生け贄に召し出されるわけじゃぁないんだ。みんなお前が元気に戻ってくると思っているから……まあ、羽目を外しすぎだがな」と、呆れたように笑っていたのですよ。
村のみんなとお別れするのは辛かったのですが、たしかに、こんどは先の無い出発ではないのですよ。
それにヤマトさんの信徒を増やすために、村を出るつもりでいたのです。それが少しばかり早くなっただけなのですよ。
遠くに霞む御山を目に、村のことを考えていたワタシの頭の中にピンッと何かがつながったような感覚がしたのです。
途端、凜とした女の人の声が響いたのです。
『ペルカ、聞こえていますか?』
「はやや!? サテラさま――なのですか?」
ワタシは、口の中に入っている兎の肉を素早く咀嚼して呑み込みました。
『ひと月振りになりますね。……そこはロンダン村ではないようですが……、ヤマトを探すために村を出たのですね。あなた、ひとりで村を出るのは初めてなのではないのですか? 旅の方は問題ありませんか?』
「ハイ、なのです。こうして食事も出来ているのですよ」
『――そうですか、それはなによりです』
サテラさまの質問に対してワタシの返した答えは、少しズレていたような気もするのですが、サテラさまは優しく声を掛けてくださりました。
『ところでペルカ、ひとつあなたにお願いしたいことが出来てしまったのです』
サテラさまの声は、どこか言い辛そうな雰囲気をその響きに紛れさせているのです。
「どういったご用件なのでしょうか?」
『あなたはダンジョンという言葉を聞いたことはありますか?』
「ハイなのです。村の語り部のお婆さんたちから、昔語りで聞いたことがあるのです」
『では、そのダンジョンがどういったものかは知っていますか?』
「その……、怖いモンスターが沢山いる場所というくらいしか知らないのです」
『やはり、今の地上の子供たちにはその程度の知識しかありませんか……』
サテラさまは、何か諦めたように軽く息をついたのです。
『いいですかペルカ。私たち神々と魔神の間にはとある制約があります。その詳細についてはあなたたち地上の子供たちに語ることはできません。しかしその中であなたたちに大きく関係するいくつかの事柄については語ることが許されています。それをこれから話します。心して聞きなさい』
「はい、分かりましたのです」
ワタシは居住まいを正すと、神妙にサテラさまの言葉を待ったのです。
『ダンジョンというのは魔神の軍勢が地上に攻め込むために生み出されるものなのです。魔神や魔の者たちが邪気を力とすることは知っていますね。彼らは邪気を蓄え魔神に奉じます。その邪気を蓄えた魔神は地上へと続くダンジョンを生み出します』
「ダンジョンは魔神が生み出すのですか……」
『そうです。そしてダンジョンの最下層には時を同じくして一匹の魔族が産み落とされるのです。その魔族はダンジョンと命を共有する存在です。つまり魔族が死ねばダンジョンも死に、ダンジョンはただの洞窟となります』
「では、その魔族を斃さないとダンジョンはずっとそのままなのですか?」
『いいえ。ダンジョンをそのまま放置しておくと、ダンジョンはモンスターたちをどんどんと生みだし、彼らが発した邪気を糧に迷宮は成長します』
「はわわ、成長するのですか!?」
『そうです。迷宮は十層まで成長した段階ではじめて地上に口を開きます。そしてそのまま最下層の魔族を斃せずにいると百層まで成長します。百層までダンジョンが成長すると、魔族は新たな眷属魔族を生みだし、自身はダンジョンから軛を解かれて地上を自由に徘徊できるようになるのです』
サテラさまの説明を聞いて、ワタシは自分の血の気が引いていくのが分かったのです。
『しかもそれだけではありません。ダンジョンから解き放たれた魔族が下層から外に向かうのに追われ、恐慌を来たした多くのモンスターたちが迷宮から脱出しします。近郊に村や街があった場合、その恐慌に巻き込まれて崩壊する可能性があるのです』
「それは大変なのです!!」
『ええ……そしてそのダンジョンが、地上に口を開きました』
「はわっ!!」
『ペルカ、あなたにはそのひとつのダンジョンの攻略をお願いしたいのです』
「はわわわわ、そっ、その――ワタシで大丈夫なのですか……」
『今のあなたの力ならば、ダンジョンに挑むにたる資格は充分にあるでしょう。しかし、ひとりでは無理です。幸い、あなたに攻略をお願いするダンジョンの近くには村がありますので、そこを拠点にすれば、ダンジョン攻略の仲間を集めることもできるでしょう。……その、本来ならばヤマトの巫女であるあなたに、私がお願いすることではないのは分かっているのです。ですが、私は戦女神の眷属であり、神職や巫女との繋がりは多くないのです……それに、結果としてヤマトの為にもなることですし……』
サテラさまの最後の言葉は、どこか自分に言い聞かせているような響きを放っているのです。
「あうぅ、あっ、あの、お気になさらないでくださいなのです。ワタシもサテラさまのお役にたてるのは嬉しいのですよ。……それにサテラさまがヤマトさんの事を思っているのはワタシ分かっているのですよ」
『なななッ――何を言っているのですかペルカ! ヤマトを思っているなどと――私はそんな……』
何でしょう? サテラさまは何故か慌てているのです。ワタシの言葉が足りなかったのでしょうか?
「その……、サテラさまははじめてヤマトさんと私の前に現れたときから、それはヤマトさんの事を母親が見守るように優しくも厳しく見守っていたのです」
『……コホン。えっ、ええ、そうですね。ヤマトはまだまだ手のかかる子供のようなものですからね』
「ところでサテラさま、ヤマトさんは……」
『ヤマトの居場所ですね。おおよその範囲には絞れたのですが……いまだハッキリとした場所はつかめていません。ですがこれからあなたが向かうことになるダンジョンは、その範囲内にあります。ヤマトのこと、ダンジョンの話を聞きつければ、きっと自分から首を突っ込んでくるでしょう。姿を変えていることは間違いありませんが、あなたならもしかしたら分かるかもしれませんね』
それはとても嬉しい言葉でした。
ワタシが村を出たのは、すべてヤマトさんの力になりたいからなのですよ。
だから……不謹慎なのですが、直接ヤマトさんのお役に立てるかもしれないのはとても嬉しいのです。
「ヤマトさんとまた会えるのですね!」
『そうなると良いですね……。私は暫しの間、地上に降臨することがかないません。あなたには定期的に連絡するようにします』
「分かったのです。それでワタシはどちらの方向に向かったらいいのでしょうか」
『あなたのいる位置からですと西北西の方向になります。方角は分かりますね』
「ハイなのです。太陽の位置で分かるのですよ」
『ならばヤマトのこと、お願いしましたよ』
その言葉を最後に、ワタシの頭の中につながっていた微かな力が途切れました。
サテラさまからの神託を受け取ったワタシは、サテラさまが示された西北西の方角を見据えました。
青い空には、雲が糸を引くように流れています。サテラさまが示された西北西から流れてきているのです。
それはワタシをヤマトさんの元に導く確かな絆に見えたのですよ。
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