俺は新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてもらえませんか~
第三章 第7話 その癒やし、役得ですが……
ピチャピチャ、ピチャピチャ……
……何かを舐めるような音が聞こえる。
同時に俺の脇腹のあたりで、ザラッとしたむずがゆいような暖かさを感じた。
そして、濡れた身体から水分が気化して体温が下がるときのようなスーッとする感覚が続く。
そんな感覚が交互に絶え間なく続いている。
えっ、なになになに?
うぉッ。そこ、こそばゆい。
「チョッ、そこダメッ!」
「まだ、じっとしていてくださいなのです。お兄さん重傷だったのですよ!」
脇腹のこそばゆさに、身体をひねって逃げようとしたら諭すように叱られた。
でもこの声って……
目を開けると、俺の脇腹をペルカが舐めていた。
いやちょっと待て、どういう状況だこれ!?
「ペッ――え~っと、君は?」
「ワタシ、ペルカというのです。ヤマト神さまの巫女なのですよ」
俺の脇腹を舐め舐めしながら言うペルカの言葉はどこか誇らしげだ。
彼女の三角耳がピクピクと俺の方向に向いている。
耳で俺の状態を観察しているんだろうか?
顔は俺の脇腹に密着したような状態だからね。
ああっ、ペルカだめぇ! そこ性感帯……あふぁ、とか声が出ちゃう。
「……ペルカ――さん、……この状況は?」
俺は、悶え声を上げそうになるのを懸命にこらえて聞いてみる。
「これは、癒やしの魔法なのです。それからペルカで良いのです。「さん」なんてこそばゆいのですよ」
癒やしの魔法って……、いやたしかに動物は傷を舐めたりするけど……って、ちょっと待て!
「えー、じゃあペルカ……、ひとつ聞いていいいかな。その――癒やしの魔法は舐めないとダメなの? 魔法だったら手を添えてとかでも使えるんじゃない?」
個人的には、ペルカみたいな可愛い子にペロペロと脇腹を舐められている状況は……いやいやいや、十二歳から彼女を知ってる俺としては、彼女に欲情するなんて……無い、無いですからね!
「手……なのですか? ワタシ癒やしの魔法覚えたばかりなのです。それに村のみんなは傷は舐めるのですよ?」
「いやっ、ここは君の村じゃないから! 君はおそらく狼人族だよね? ここは人族の村だから、そんな治療法をしたら問題になるよ!」
「そうなのですか!? ううぅ、ごめんなさいですぅ」
脇腹に密着したままのペルカの頭の上で三角耳がシュンとうなだれた。
ペルカは癒やしの魔法を覚えたばかりだって言ったな……良かった。
ならたぶん俺が初めてだよね。ほかの奴にペルカがこんなサービスを……じゃなかった。
こんな治療をしたらうらやま……じゃなくて、どんな問題になるか。
「いや怒ったわけじゃないんだ。人族はあまり舐め合ったりはしないからね。できるなら手を使うほうがいいよ」
「わかったのです。やってみるのです」
ペルカは頭を俺からはなすと俺の脇腹に手を添える。
「いやペルカ、さすらないでいいから――癒やしの力を患部に浸透させるような気持ちで」
「ハイなのです」
「そう、そんな感じで……」
素直なペルカは俺に言われたとおり手から癒やしの力を俺の脇腹に注ぎ込む。
何故俺にこんな指示ができるかというと、サテラやシュアルさんに何回もお世話になったからだ。
癒やしの魔法を使われるプロといってもいいだろう……あれ? なんか情けない気分になってきた。
考えてみれば気絶するまえの俺は、Gジェネ・ゴブリンからの打撃で肋骨を砕かれ、おそらく肺にも骨が突き刺さっていたはずだ。
いったいペルカはどれだけの時間、治癒の魔法を使っていたんだろうか?
時間が分かるようなものが…………いまさらだが、よくよく見てみるとここは俺の部屋。放浪亭の二階だ。
ベッドと簡単な荷物が置けるチェストが配置されただけの狭い空間。
そこにペルカと俺だけがいた。
そしてペルカは、チェストを椅子代わりにして俺に治癒魔法をかけている。
目が覚めてからちょっと違和感があったんだが、ペルカの髪色が以前とは少し違っていた。
彼女の髪はもともと灰色と茶色の、ちょっと縞々っぽい感じだった。
成長したからなのか、茶色の部分がうすくなり、灰色だった部分はさらに色素が抜けたようで銀色っぽくなっている。
あのとき、Gジェネ・ゴブリンにぶつかっていった灰銀の弾丸はペルカで間違いないみたいだ。
そういえば、ゴブリンたちはどうなったんだろう。
うっすらとGジェネ・ゴブリンが倒れたあたりまでは覚えている。
まさか、ペルカが俺をここまで運んできたんだろうか?
それにキロと、ついでにクリフはどうしただろう?
などと考えていると部屋のドアが開け放たれた。
「ダイのようすはどうだい!」
言うなり部屋にズカズカと入ってきたのは女将さんだった。
「カーサさん。だいぶ良くなったのですよ。でも治癒には体力が必要なのです。栄養のあるものを食べさせて上げてくださいなのです」
ペルカがそう言う間に、女将さんは俺を観察するように見詰めていた。
「――なら、そろそろ良いかい? 村の主だった連中は下に集まってる」
「ハイなのです」
「女将さん? 何かあったんですか?」
「あんた……実際に見てきたんだろう。重傷まで負ってさ。その話だよ……どうする? ダイ、あんたも下へ来るかい。実際に奴らを見たあんたの話も聞きたいだろうしねぇ」
なるほど。そりゃあそうだよな。
あんなのが村のあたりにうろついてるんだ。対策を話し合わなけりゃならないよな。
「俺も下に行きます」
「ああ、あの――ダイさん。まだ動かないほうが……」
「なに大丈夫さ、あんたの癒やしはちゃんと効いてるよ。それにこいつは男の子なんだ、甘やかしすぎるのも問題だよ」
女将さん……『男の子』って、本来の俺はそろそろ36歳になるはずなんですが……。年齢的には女将さんに近いはずなんだけど。そんなに子供っぽいんだろうか? たしかに今の外見は二十代前半だけど、こう、年をかさねた重みってもんがそこはかとなく漂って……無いんだろうな、残念ながら。
「ほら、なにをボーッと、してるんだい行くよ!」
地味に男としての重みの無さにショックを受けていた俺に、女将さんの叱咤がとぶ。
女将さんに尻を叩かれて、ペルカに続いて階段へと向かおうとしたら、「ダイ、あんたあの子に癒やしの魔法の使い方を教えたあげたのかい。あたしは役得を決め込むもんだと思ってたよ」と、女将さんが人の悪い表情を俺に向けたのだった。
……何かを舐めるような音が聞こえる。
同時に俺の脇腹のあたりで、ザラッとしたむずがゆいような暖かさを感じた。
そして、濡れた身体から水分が気化して体温が下がるときのようなスーッとする感覚が続く。
そんな感覚が交互に絶え間なく続いている。
えっ、なになになに?
うぉッ。そこ、こそばゆい。
「チョッ、そこダメッ!」
「まだ、じっとしていてくださいなのです。お兄さん重傷だったのですよ!」
脇腹のこそばゆさに、身体をひねって逃げようとしたら諭すように叱られた。
でもこの声って……
目を開けると、俺の脇腹をペルカが舐めていた。
いやちょっと待て、どういう状況だこれ!?
「ペッ――え~っと、君は?」
「ワタシ、ペルカというのです。ヤマト神さまの巫女なのですよ」
俺の脇腹を舐め舐めしながら言うペルカの言葉はどこか誇らしげだ。
彼女の三角耳がピクピクと俺の方向に向いている。
耳で俺の状態を観察しているんだろうか?
顔は俺の脇腹に密着したような状態だからね。
ああっ、ペルカだめぇ! そこ性感帯……あふぁ、とか声が出ちゃう。
「……ペルカ――さん、……この状況は?」
俺は、悶え声を上げそうになるのを懸命にこらえて聞いてみる。
「これは、癒やしの魔法なのです。それからペルカで良いのです。「さん」なんてこそばゆいのですよ」
癒やしの魔法って……、いやたしかに動物は傷を舐めたりするけど……って、ちょっと待て!
「えー、じゃあペルカ……、ひとつ聞いていいいかな。その――癒やしの魔法は舐めないとダメなの? 魔法だったら手を添えてとかでも使えるんじゃない?」
個人的には、ペルカみたいな可愛い子にペロペロと脇腹を舐められている状況は……いやいやいや、十二歳から彼女を知ってる俺としては、彼女に欲情するなんて……無い、無いですからね!
「手……なのですか? ワタシ癒やしの魔法覚えたばかりなのです。それに村のみんなは傷は舐めるのですよ?」
「いやっ、ここは君の村じゃないから! 君はおそらく狼人族だよね? ここは人族の村だから、そんな治療法をしたら問題になるよ!」
「そうなのですか!? ううぅ、ごめんなさいですぅ」
脇腹に密着したままのペルカの頭の上で三角耳がシュンとうなだれた。
ペルカは癒やしの魔法を覚えたばかりだって言ったな……良かった。
ならたぶん俺が初めてだよね。ほかの奴にペルカがこんなサービスを……じゃなかった。
こんな治療をしたらうらやま……じゃなくて、どんな問題になるか。
「いや怒ったわけじゃないんだ。人族はあまり舐め合ったりはしないからね。できるなら手を使うほうがいいよ」
「わかったのです。やってみるのです」
ペルカは頭を俺からはなすと俺の脇腹に手を添える。
「いやペルカ、さすらないでいいから――癒やしの力を患部に浸透させるような気持ちで」
「ハイなのです」
「そう、そんな感じで……」
素直なペルカは俺に言われたとおり手から癒やしの力を俺の脇腹に注ぎ込む。
何故俺にこんな指示ができるかというと、サテラやシュアルさんに何回もお世話になったからだ。
癒やしの魔法を使われるプロといってもいいだろう……あれ? なんか情けない気分になってきた。
考えてみれば気絶するまえの俺は、Gジェネ・ゴブリンからの打撃で肋骨を砕かれ、おそらく肺にも骨が突き刺さっていたはずだ。
いったいペルカはどれだけの時間、治癒の魔法を使っていたんだろうか?
時間が分かるようなものが…………いまさらだが、よくよく見てみるとここは俺の部屋。放浪亭の二階だ。
ベッドと簡単な荷物が置けるチェストが配置されただけの狭い空間。
そこにペルカと俺だけがいた。
そしてペルカは、チェストを椅子代わりにして俺に治癒魔法をかけている。
目が覚めてからちょっと違和感があったんだが、ペルカの髪色が以前とは少し違っていた。
彼女の髪はもともと灰色と茶色の、ちょっと縞々っぽい感じだった。
成長したからなのか、茶色の部分がうすくなり、灰色だった部分はさらに色素が抜けたようで銀色っぽくなっている。
あのとき、Gジェネ・ゴブリンにぶつかっていった灰銀の弾丸はペルカで間違いないみたいだ。
そういえば、ゴブリンたちはどうなったんだろう。
うっすらとGジェネ・ゴブリンが倒れたあたりまでは覚えている。
まさか、ペルカが俺をここまで運んできたんだろうか?
それにキロと、ついでにクリフはどうしただろう?
などと考えていると部屋のドアが開け放たれた。
「ダイのようすはどうだい!」
言うなり部屋にズカズカと入ってきたのは女将さんだった。
「カーサさん。だいぶ良くなったのですよ。でも治癒には体力が必要なのです。栄養のあるものを食べさせて上げてくださいなのです」
ペルカがそう言う間に、女将さんは俺を観察するように見詰めていた。
「――なら、そろそろ良いかい? 村の主だった連中は下に集まってる」
「ハイなのです」
「女将さん? 何かあったんですか?」
「あんた……実際に見てきたんだろう。重傷まで負ってさ。その話だよ……どうする? ダイ、あんたも下へ来るかい。実際に奴らを見たあんたの話も聞きたいだろうしねぇ」
なるほど。そりゃあそうだよな。
あんなのが村のあたりにうろついてるんだ。対策を話し合わなけりゃならないよな。
「俺も下に行きます」
「ああ、あの――ダイさん。まだ動かないほうが……」
「なに大丈夫さ、あんたの癒やしはちゃんと効いてるよ。それにこいつは男の子なんだ、甘やかしすぎるのも問題だよ」
女将さん……『男の子』って、本来の俺はそろそろ36歳になるはずなんですが……。年齢的には女将さんに近いはずなんだけど。そんなに子供っぽいんだろうか? たしかに今の外見は二十代前半だけど、こう、年をかさねた重みってもんがそこはかとなく漂って……無いんだろうな、残念ながら。
「ほら、なにをボーッと、してるんだい行くよ!」
地味に男としての重みの無さにショックを受けていた俺に、女将さんの叱咤がとぶ。
女将さんに尻を叩かれて、ペルカに続いて階段へと向かおうとしたら、「ダイ、あんたあの子に癒やしの魔法の使い方を教えたあげたのかい。あたしは役得を決め込むもんだと思ってたよ」と、女将さんが人の悪い表情を俺に向けたのだった。
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