俺は新(異)世界の神となる! ~そのタイトル、死亡フラグにしか見えないんで止めてもらえませんか~
第一章 第7話 スキルがあっても、レベルがね……(後)
「ほれ、後はお前が証明してくれるんだろ」
ドゥランに抱えられていた俺は、ドサッと地面に落とされました。
ここは、俺たちが下界に下りて、ペルカが生け贄として拘束されていあたりだ。
ドゥランのヤロウ……。
むかっ腹が立つが、運んでくれたことは確かだから大目に見てやろう。
俺は神としての慈悲を持ってスルーすることにした。
べつに……ビビってる訳じゃないからね!
「ヤマト……」
立ち上がった俺の肩に、サテラが手を置いて視線を合わせた。
「……私も楽しみにしています。この事態をどう解決するのか」
「ワタシも、ヤマトさんが一族を救ってくれるのを信じているのですぅ!」
ペルカは、上目遣いで俺を見上げ眼をキラキラさせ、両手をギュッと胸のあたりで握りこむような感じで全身で期待を表している。
……なに、これ? 物凄く期待値上がってません? 予想が外れてたらどうすんの。「外れちゃったテヘッ!」ってことになったら殺されそうな感じだけど。
俺は、妙に上がってしまっている期待を背に、ペルカが拘束されていた場所へ進み出た。
ふーっと一息呼吸をすると語りだした。
「おいっ! お前の企みはもう判ってんだ。姿を現したらどうだ? この山の神様を騙ったそうだけど、設定が甘いんだよ!! まず、神罰ってことで食べ物なんかを毒にしたってことだけど、植生に異変が起き始めてから大きな害が出るまでに五年も掛かってる。これは、どう考えても蓄積型の極端に弱い毒だ(実際的なことを考えれば、人間に必要な塩だって取り過ぎれば毒になるんだしな)。次に神託だ! 狼人族の人たちは知らなかったみたいだが、神託は巫女や神官の資質を持っていなければ、種族の創造神か守護を約束した神以外から受けることはできない。その資質が無い長老が神託を受けたこと自体がおかしいんだ!!」
俺は、ビシッ、と……取りあえず、崖の壁面を指さしてみた(そういえばあの辺りをサテラさんがぼーっと見てたよな)。神託の下りは、はい、サテラさんの受け売りです。ああっサテラさんの視線が痛い。
ペルカは、「ヤマトさん凄いのですぅ」って感じで、ドゥランは……分ってないね彼は。
「しかも、こんな所まで呼び出しておいて、お告げとやらは声だけ。極めつけは、生け贄にされた娘達は巫女の資質を持つ者たちときた。本来自分と人々を結ぶ役目を果たす巫女を生け贄に求める時点で、偽物決定だろ!! しかも、捧げられた生け贄に、何者かに襲われた形跡すらなく白骨化していた。つまり、お前は、拘束されているモノにさえ手が出せないほど弱い魔物か何かだ! コレまでの特徴を考えれば答えは一つだ! 犯人はアースドラゴンの幼生体。俺には全部分ってるんだよ!!」
俺は名探偵気分で、もう一度、崖の壁面をビシッと指さした。
さぁーっ、もう後には引けないぞ。
俺は、指を差したまま、サテラさんやペルカの様子を窺った。
サテラさんは、ノーリアクションです。お願いです、何か反応してください。
ペルカは、「そうだったのですね!」って感じだ。
ドゥランは……やっぱ分ってないよコイツ。何で付いて来ちゃったのキミ。
………………
…………
……
ビシッ! と指されたままの指先。……だんだんプルプルしてきました。
あれっ? もしかして遣っちゃった?
……
……
……
「おい、なにも起らないぞ」
ドゥランが、声を上げた。
「確かに、何も起きないのですぅ」
「…………」
ペルカが、何か俺を残念そうに見ている。ああっ、心が痛い。
サテラさんは、無表情のままだ。お願い、せめて罵ってください。無表情のままの方がダメージ大きいよ。
サテラさんが突然スタスタと俺の方に歩いてきた。しかも、剣の柄に手を掛けている。
エッ? 俺そこまでのこと遣っちゃいましたか!?
サテラさんの、顔に殺気が漲った。
エッ? 俺サックリ殺られちゃうんですか!?
「ヤマト――気をつけなさい! 何か来ます!!」
サテラさんが、剣を抜き放ち身構える。
銀光を放つ刃が陽の光を受けて輝いた。ちょっと頭の隅に替え刃疑惑がよぎったが今はそんな刻ではない。
ゴゴゴゴゴッ!! と地響きが鳴り。地面が揺れる。
崖の上から、石がガラガラと落ちてきてちょっと危険な感じだ。
「ペルカ! 下がって」
サテラさんとドゥランは問題なさそうなので、俺は、崖から離れながらペルカに声を掛けた。
揺れが収まって、一瞬の静寂が戻る。
ビシッ! と言う大きな音が崖から響いた。
その場所を見ると、壁面に大きなヒビが入っていた。
その一瞬あと。バゴッ!! と言う音と供に壁面のヒビが弾け飛んだ。
……そして、ソイツが顔を出した。
丸い頭に尖った鼻。頭がズングリとした胴体にそのまま繋がっていて、手が大きく鋭い爪が生えている。鼻の付け根にある瞳は円らだ。
大きさは、俺の両手の掌ぐらい?
……いや~っ、状況から強い相手だとは思ってなかったよ。……たしかに、俺達の世界でも土の竜って書くけどさ。
――モグラかい!!
「ばっ、バカな! 本当に偽物だったのか!? それも、こんな……」
ドゥランが、目の前に現われた予想外のモノに絶句している。その気持ちよく分かるよ。うん。
「ガゥ、グルルルルルッ!」
ペルカが、俺の隣でうなり声を上げている。あれ? この反応、もしかしてヤツを食べ物認定してないキミ?
「ペルカ、ステイ!」
思わず、ペルカをイヌ扱いしてしまったが。
――クゥーンって本当にステイしちゃったよこの子!!
「……サテラ、もしかしてあれがアースドラゴンの幼生体?」
「ええ、そうです」
サテラさんの答えはすげもない。
幼生体は、顔を出した穴から飛び出すとクルリと宙返りをして地面に降り立った。なにッ! コイツ、二本足で立ってるよ!!
幼生体は胸元からかサングラスのような物を取り出すと、スチャッと目に装着した。
「フッ、この俺の企みをそこまで暴くとはたいした奴だ」
何コイツ、スッゲー渋い声で話しだしちゃったよ。紅の豚の人みたいな声だ。
「――でっ? どう落とし前付けてくれるんだ小僧……」
声だけ聞いてると物凄い緊張感なんだけど、目の前がこれだとな。
正直、俺はもう少しそれっぽいヤツを想像してたんだけどね。まさか、これとは……。
「落とし前も何も無いだろ。それに、その言葉はこっちが言うことじゃないのか。取りあえず、倒させてもらうぞ!」
俺は、長老からもらった剣を構えた。
「サテラたちは見ててくれこれくらいだったら何とかなりそうだ」
俺は、【サーチ】で幼生体の能力値を確認して言った。ペルカに少しでも良いところを見せておきたいからね。
ヤツのレベルは高いが、能力値が軒並み一桁だ。これなら負けるわけがない。
「フッ、威勢の良いことを言ってるじゃねぇか。……来なっ、小僧!」
コイツ、言動だけは格好いいな。
170センチの剣を構えた人間、と30センチほどで二本足で立ち上がってファイティングポーズらしき構えをしている幼生体。
見た目だけだと動物虐待?
でも、コイツは直接ではないとはいえ三〇人近い狼人族の人たちを殺してるんだ。
「行くぞ!」
俺は、真っ直ぐにヤツに走り込み、剣を袈裟懸けに一閃した。
キンッ、という軽い音を立てて、ヤツの爪で剣が受け流された。
「なにッ! あの能力値でなんでこの攻撃が避けられるんだ!」
「能力値の差が戦力の決定的な差では無いことを教えてやるよ。小僧!」
「どこの赤い人だ!!」
赤か? 色繋がりなのか!?
ヤツは俺の攻撃を身のこなしと爪でことごとくいなしていく。
何だろう、能力値が分ってるだけにスッゲー悔しい。
だが、段々とヤツの動きに慣れてきた。ヤツも疲れてきたのか避ける動作が大きくなっている。
『ヤマト、言っておきたいことがあるんですが、聞きたいですか?』
突然、サテラさんが俺の頭の中に声を掛けてきた。
『なに? サテラ』
俺も、戦闘に余裕が出てきたのでサテラさんの話を聞いてみた。
『先ほどの話で、気になったのですが。幼生体は直接巫女を殺さなかったとはいえ、何らかの目的があって、巫女を生け贄に望んだはずです。見たところこの幼生体、成体への進化一歩手前のような妖気を感じるのですが』
『え゛ッ?』
俺は嫌な予感がして、幼生体を一気に片付けようと、剣をヤツの身体の中心に突き込んだ。
ドゥランに抱えられていた俺は、ドサッと地面に落とされました。
ここは、俺たちが下界に下りて、ペルカが生け贄として拘束されていあたりだ。
ドゥランのヤロウ……。
むかっ腹が立つが、運んでくれたことは確かだから大目に見てやろう。
俺は神としての慈悲を持ってスルーすることにした。
べつに……ビビってる訳じゃないからね!
「ヤマト……」
立ち上がった俺の肩に、サテラが手を置いて視線を合わせた。
「……私も楽しみにしています。この事態をどう解決するのか」
「ワタシも、ヤマトさんが一族を救ってくれるのを信じているのですぅ!」
ペルカは、上目遣いで俺を見上げ眼をキラキラさせ、両手をギュッと胸のあたりで握りこむような感じで全身で期待を表している。
……なに、これ? 物凄く期待値上がってません? 予想が外れてたらどうすんの。「外れちゃったテヘッ!」ってことになったら殺されそうな感じだけど。
俺は、妙に上がってしまっている期待を背に、ペルカが拘束されていた場所へ進み出た。
ふーっと一息呼吸をすると語りだした。
「おいっ! お前の企みはもう判ってんだ。姿を現したらどうだ? この山の神様を騙ったそうだけど、設定が甘いんだよ!! まず、神罰ってことで食べ物なんかを毒にしたってことだけど、植生に異変が起き始めてから大きな害が出るまでに五年も掛かってる。これは、どう考えても蓄積型の極端に弱い毒だ(実際的なことを考えれば、人間に必要な塩だって取り過ぎれば毒になるんだしな)。次に神託だ! 狼人族の人たちは知らなかったみたいだが、神託は巫女や神官の資質を持っていなければ、種族の創造神か守護を約束した神以外から受けることはできない。その資質が無い長老が神託を受けたこと自体がおかしいんだ!!」
俺は、ビシッ、と……取りあえず、崖の壁面を指さしてみた(そういえばあの辺りをサテラさんがぼーっと見てたよな)。神託の下りは、はい、サテラさんの受け売りです。ああっサテラさんの視線が痛い。
ペルカは、「ヤマトさん凄いのですぅ」って感じで、ドゥランは……分ってないね彼は。
「しかも、こんな所まで呼び出しておいて、お告げとやらは声だけ。極めつけは、生け贄にされた娘達は巫女の資質を持つ者たちときた。本来自分と人々を結ぶ役目を果たす巫女を生け贄に求める時点で、偽物決定だろ!! しかも、捧げられた生け贄に、何者かに襲われた形跡すらなく白骨化していた。つまり、お前は、拘束されているモノにさえ手が出せないほど弱い魔物か何かだ! コレまでの特徴を考えれば答えは一つだ! 犯人はアースドラゴンの幼生体。俺には全部分ってるんだよ!!」
俺は名探偵気分で、もう一度、崖の壁面をビシッと指さした。
さぁーっ、もう後には引けないぞ。
俺は、指を差したまま、サテラさんやペルカの様子を窺った。
サテラさんは、ノーリアクションです。お願いです、何か反応してください。
ペルカは、「そうだったのですね!」って感じだ。
ドゥランは……やっぱ分ってないよコイツ。何で付いて来ちゃったのキミ。
………………
…………
……
ビシッ! と指されたままの指先。……だんだんプルプルしてきました。
あれっ? もしかして遣っちゃった?
……
……
……
「おい、なにも起らないぞ」
ドゥランが、声を上げた。
「確かに、何も起きないのですぅ」
「…………」
ペルカが、何か俺を残念そうに見ている。ああっ、心が痛い。
サテラさんは、無表情のままだ。お願い、せめて罵ってください。無表情のままの方がダメージ大きいよ。
サテラさんが突然スタスタと俺の方に歩いてきた。しかも、剣の柄に手を掛けている。
エッ? 俺そこまでのこと遣っちゃいましたか!?
サテラさんの、顔に殺気が漲った。
エッ? 俺サックリ殺られちゃうんですか!?
「ヤマト――気をつけなさい! 何か来ます!!」
サテラさんが、剣を抜き放ち身構える。
銀光を放つ刃が陽の光を受けて輝いた。ちょっと頭の隅に替え刃疑惑がよぎったが今はそんな刻ではない。
ゴゴゴゴゴッ!! と地響きが鳴り。地面が揺れる。
崖の上から、石がガラガラと落ちてきてちょっと危険な感じだ。
「ペルカ! 下がって」
サテラさんとドゥランは問題なさそうなので、俺は、崖から離れながらペルカに声を掛けた。
揺れが収まって、一瞬の静寂が戻る。
ビシッ! と言う大きな音が崖から響いた。
その場所を見ると、壁面に大きなヒビが入っていた。
その一瞬あと。バゴッ!! と言う音と供に壁面のヒビが弾け飛んだ。
……そして、ソイツが顔を出した。
丸い頭に尖った鼻。頭がズングリとした胴体にそのまま繋がっていて、手が大きく鋭い爪が生えている。鼻の付け根にある瞳は円らだ。
大きさは、俺の両手の掌ぐらい?
……いや~っ、状況から強い相手だとは思ってなかったよ。……たしかに、俺達の世界でも土の竜って書くけどさ。
――モグラかい!!
「ばっ、バカな! 本当に偽物だったのか!? それも、こんな……」
ドゥランが、目の前に現われた予想外のモノに絶句している。その気持ちよく分かるよ。うん。
「ガゥ、グルルルルルッ!」
ペルカが、俺の隣でうなり声を上げている。あれ? この反応、もしかしてヤツを食べ物認定してないキミ?
「ペルカ、ステイ!」
思わず、ペルカをイヌ扱いしてしまったが。
――クゥーンって本当にステイしちゃったよこの子!!
「……サテラ、もしかしてあれがアースドラゴンの幼生体?」
「ええ、そうです」
サテラさんの答えはすげもない。
幼生体は、顔を出した穴から飛び出すとクルリと宙返りをして地面に降り立った。なにッ! コイツ、二本足で立ってるよ!!
幼生体は胸元からかサングラスのような物を取り出すと、スチャッと目に装着した。
「フッ、この俺の企みをそこまで暴くとはたいした奴だ」
何コイツ、スッゲー渋い声で話しだしちゃったよ。紅の豚の人みたいな声だ。
「――でっ? どう落とし前付けてくれるんだ小僧……」
声だけ聞いてると物凄い緊張感なんだけど、目の前がこれだとな。
正直、俺はもう少しそれっぽいヤツを想像してたんだけどね。まさか、これとは……。
「落とし前も何も無いだろ。それに、その言葉はこっちが言うことじゃないのか。取りあえず、倒させてもらうぞ!」
俺は、長老からもらった剣を構えた。
「サテラたちは見ててくれこれくらいだったら何とかなりそうだ」
俺は、【サーチ】で幼生体の能力値を確認して言った。ペルカに少しでも良いところを見せておきたいからね。
ヤツのレベルは高いが、能力値が軒並み一桁だ。これなら負けるわけがない。
「フッ、威勢の良いことを言ってるじゃねぇか。……来なっ、小僧!」
コイツ、言動だけは格好いいな。
170センチの剣を構えた人間、と30センチほどで二本足で立ち上がってファイティングポーズらしき構えをしている幼生体。
見た目だけだと動物虐待?
でも、コイツは直接ではないとはいえ三〇人近い狼人族の人たちを殺してるんだ。
「行くぞ!」
俺は、真っ直ぐにヤツに走り込み、剣を袈裟懸けに一閃した。
キンッ、という軽い音を立てて、ヤツの爪で剣が受け流された。
「なにッ! あの能力値でなんでこの攻撃が避けられるんだ!」
「能力値の差が戦力の決定的な差では無いことを教えてやるよ。小僧!」
「どこの赤い人だ!!」
赤か? 色繋がりなのか!?
ヤツは俺の攻撃を身のこなしと爪でことごとくいなしていく。
何だろう、能力値が分ってるだけにスッゲー悔しい。
だが、段々とヤツの動きに慣れてきた。ヤツも疲れてきたのか避ける動作が大きくなっている。
『ヤマト、言っておきたいことがあるんですが、聞きたいですか?』
突然、サテラさんが俺の頭の中に声を掛けてきた。
『なに? サテラ』
俺も、戦闘に余裕が出てきたのでサテラさんの話を聞いてみた。
『先ほどの話で、気になったのですが。幼生体は直接巫女を殺さなかったとはいえ、何らかの目的があって、巫女を生け贄に望んだはずです。見たところこの幼生体、成体への進化一歩手前のような妖気を感じるのですが』
『え゛ッ?』
俺は嫌な予感がして、幼生体を一気に片付けようと、剣をヤツの身体の中心に突き込んだ。
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