追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

恋力_4(:純白)


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 カーキーさんが僕に提案した解決策。それは、

「色んなヒトに聞いて自分なりの答えを見つければ良いんだぜハッハー!」

 という、当たり前と言えば当たり前の内容であった。
 聞く内容が内容であるので恥ずかしいという点が難しいかもしれないが、それをすれば瞬時に劇的に変わるという内容のモノでも無い、簡単な行動であった。

「そりゃそんな物があれば俺も提案するが、今の俺やヴァイスが出来る事はそんな事くらいだぜ。そして出来る事をまずやる事が解決へ一歩なんだぜハッハー!」
「なんと言いますか……堅実なんですね」
「そりゃそうだぜ。俺が普段自信をもって愛を紡げるのも日々の努力の賜物。日常を愛に注ぎ磨き作り上げていくその日々が俺という愛を作り上げているんだぜ!」

 ……カーキーさんは普段の様子が普段の様子なので軽薄に感じてしまうが、普段見ている姿は日々の努力に裏打ちされたからこその姿という事か。カーキーさんと共に夜を過ごした女性(偶に男性)の方々が幸せそうにしているのも、こういった内面の清々しさが伝播した結果かもしれない。
 それに今も、

「一人じゃ不安だろうから、俺もヴァイスに協力するんだぜ!」

 といって一緒に聞きに行こうと僕と一緒に居るのだ。
 裏を返せばそれほどまでに今の僕が不安定であるという事だし、この後に旅の一座の方々と約束を取り付けているのは事実だろうから申し訳ない気持ちも多いのだが……

「安心してくれヴァイス。これは俺も多くの愛の源泉を知るための行動。つまり俺のための行動! それをヴァイスの悩みをだしにしてやっているんだから、申し訳ないなんて見当外れの考えは捨てるんだぜハッハー!」

 ……うん、カーキーさんがモテるのが、今なんとなくだけど理解出来た気がする。シキの皆さんも何処かでこの性格を分かっているので、カーキーさんを「悪い奴ではない」と言いつつ、何処かで信用をしているのだろう。……まぁ、扱いは雑だけどね。

「ちなみに場合によっては、俺とヴァイスのダブルで女性の二人をナンパし、そのまま夜の愛を知るという解決策もあるんだが、どうなんだぜ?」
「旅の一座の方々との約束はどうするんです」
「? もちろん彼女らも含めてだぜ!」
「出来れば最初は一対一が良いですので……」

 ……これは僕を和ませるためのジョークなのか、本気なのかは……うん、よく分からないね。
 という感じに、カーキーさんの約束を反故にしない時間の範囲で色んなヒトの話を聞きに行く事となった訳である。







「という訳で神父様のファーストキスをお教え願えれば嬉しいです」
「……急に居なくなったと思ったらそんな事を……」
「難しいのならば答えなくて大丈夫ですので……」
「いや、答える。可愛いブラザーのためだ。答えるが……とりあえず答える前にいくつか言っておこう、ヴァイス」
「なんでしょう?」
「まず一つ。ヒトの注目を浴びる中ですると、後で気まずい」
「は、はぁ。そうですか……?」
「そしてもう一つ。相手が自分を好きじゃ無いとか思っておきながら告白するのはやめておけ」
「は、はい?」
「最後に……ファーストキスの後に泣かれそうな顔になると、とっても困るぞ……」
「あ、あの、神父様。神父様のファーストキスになにがあったんです!?」



「ククク……ウツブシとの恋やキスについてかい? 言っても良いかな、ウツブシ?」
「ニャー」
「許可を得たから語るが……まず、人間不信になっていた私は、煉獄という空間の狭間に身を漂わせ俗世から離れていた。そこに死にかけのウツブシが迷い込み、治してあげたのが出会いだったわけなんだが」
「いきなり凄い出会いですね」
「その後怪我とは別の七つの死因が切り刻まれていたウツブシに、六つの福音を授ける事で一族の呪縛から解き放とうとしたのだが、残り一つがどうしても解けなかった。このままでは死んでしまうという焦りは、なによりも“彼女を失いたくない”という感情である事に気付いた」
「おお、それでどうなったんだぜ!?」
「彼女か居なくなったら。この世に私が居る意味が無い。そう思った私は最期の思い出として彼女に口付けをし――そして、最後の呪縛が解き放たれたんだ」
「おお、つまり愛が死から救ったんだってことだなハッハー!」
「ククク、その通りさ!」
「…………」
「ニャー」
「あ、うん。気を使ってくれてありがとう、ウツブシさん。いきなり想像よりも凄いのが来たから驚いているだけだよ」
「ニャー?」
「そうだね。……とても良い話なんだけど、僕にはマネ出来ないかな」
「ニャー……(意訳:そりゃそうだ)」



「恋? そんなものは私達には無い! あるのは殺意という愛!」
「そしてそれを受け止めてみせるという愛!」
『これこそが、私達の愛!』
「……あの、カーキーさん。ベージュさん夫妻に聞くのは間違っているような……」
「そんな事無いんだぜ?」
「でも……」
「まぁ見てるんだぜ。ところでベージュ。ファーストキスはどんな感じだったんだぜ?」
「キス? それはもちろん――」
「言っておくけど、唇と唇のキスだぜ? 他の所のキスは無しだぜ」
『…………』
「? あの、ベージュさん。そしてベージュさん。どうかなされましたか?」
「いや、その……確かに愛を紡いでるし、殺し愛以外の愛も確かめ合っているが……」
「そういった事をヒトに話すのは……その、恥ずかしくて……」
「えっ」
「だがアレは良いモノだった。彼女とのファーストキスは偶然触れ合ったからなんだが、その後の妻の反応は――」
「わー、わー! 話さなくて良いですよ貴方! それを言うと、そのあともう一回したいとせがんだ事も事細かく話しますよ!」
「もう話してるじゃないか! ……でも、話したらもう一度したくなったな」
「やだ、変態! そんな変態貴方が愛おしいので、殺します!」
「ああ、殺し合おう妻よ! そして最後には……キ、キスをしよう!」
「エッチ、そんな貴方も大好き!」
「俺も大好きだ妻よ!」
「…………あの、カーキーさん」
「なんだぜヴァイス?」
「愛って奥深いですね」
「もちろんだぜハッハー!」

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