追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

影の薄い少女の受難_番外 サキュバスという種族講座


 影の薄い少女の受難_番外 サキュバスという種族講座


「ねぇねぇ、ちょっと良いかな?」
「なに? えっと確か……なんか美味しそうな名前の子と、ワタシの子孫と良い感じになっているくせにヤッってないようなヘタレ女」
「あはは、クリームヒルトだよ」
「メアリーです。ぶっ飛ばしますよ?」
「早くしないとワタシが先にあの子の貞操を――あ、ごめんなさいそれやめてください調子乗ってました誠に申し訳ございません」
「はい、よろしいです」
「あはは、メアリーちゃん。やけにアタリ強くない?」
「彼女に対しては遠慮はいらないと、会ってからの経験で学んだので」
「まだ会って一週間も経っていないけどね! ……それはそうとなんで彼女はこんなに怯えてるの?」
「ふふ、何故でしょうね」
「あはは、笑顔が怖いね!」
「なによ。ちょっと子孫であるヴァーミリオンと血族交流しようとしただけじゃない。家族以外がしゃしゃり出ないで欲しいわよね。そう思でしょクリームヒルト」
「どうだろうね。内容にもよると思うけど、子孫との交流なら別に良いんじゃ……」
「クリームヒルト。言っておきますが、バーガンティー君も子孫ですし、貞操が危うくなるという事ですよ」
「ああ、あの爽やか美男子の子ね。あの子も良い感じよね」
「…………。あはは、変な事はしないよね。――ね?」
「あ、はい。絶対にしません」
「あはは、よろしい」
「クリームヒルトの笑顔が無いのが怖いですね……」
「というか、なんの用よ。それに輸送中で拘束中のワタシと話しをしていて良い訳?」
「許可は得ていますよ。それで、要件ですが……サキュバスについて教えて頂きたくて」
「ワタシの種族について?」
「ええ。私達はある程度サキュバスという種族は知っているのですが、どうも知識と違う部分が多いようなんです」
「なんというか、同じ名前の別物、って感じだね」
「ふぅん。よく分からないけど、それで夢魔族の原種リリスであるワタシに話を聞きたい、と」
「そうなります」
「でもそれならあの私の種族の子孫の……あの存在感が薄い子にも教えたと思うけど」
「なんか逆ギレして多くは教えてくれなかったって、別れる前の昨日に言ってたよ?」
「んん? ……あ、そっか。そうだった」
「その件も含めてよろしければお聞きしたいのですが……」
「ああ……はいはい。敗北者であるワタシは答えますよー」
『敗北者……? 取り消せよ、今の言葉……!』
「なに言ってんのアンタ達」



~食事について~

「アナタ達と同じで肉とか野菜を経口摂取も可能よ。それで生きてはいけるわ。ただ充分な魔力を得て力を使ったり、充分に動くためにはやっぱり精が必要よ」
「精と言うとやはり……」
「いわゆる性的エネルギーね。男女関わらず夢を見せて性的エネルギーを得る事も出来るけど、別に夢を見せずにエネルギー摂取も可能ね。生物が興奮すると周囲に漂う魔力を自分の中に取り込む、というイメージかしら」
「あれ? もしかしてその言い方だと、男の人の○○○○を体内に取り込む、とかはしなくても良いの?」
「必ずしも必要、という訳ではないわ。ただワタシ達は能力を使ったり、精を得ようとすると必ず発情するから、結果的に取り込む形になってしまっている、って感じかしら。取り込んでも充分栄養は摂れるしね」
「その発情ってどのくらいかな?」
「もう食事とかどうでも良いから早くこの発情を解消したい! と思う感じね」
「それを我慢出来ている生徒会長さんって凄いんだね」
「そうなのよね。ワタシもあの子に“我慢せずにやっちゃえば国王すらも一発KO出来ちゃうぜ、やっちぇよフー!”とかいって無理矢理発情させたけど、我慢できたから凄い子よね、あの子」
「ねぇメアリーちゃん。彼女今からでも封印した方が良いんじゃない?」
「気持ちは分かりますが、落ち着きましょう」



~目について~

「個体種により様々ね。ワタシなんかはサキュバスの原種だけど、目自体に珍しいほどの力話宿ってないわ。どちらかというと身体全体の魔術回路が特殊、って感じね」
「例えばどんな感じの目がありますか? 例えば相手を視ると死の線が見えるとか、見た対象を硬さ無視で破壊できるとかそういうのもありますか!?」
「なんでこの子テンション上がってるの」
「あはは、黒兄とかも居たらテンション上がってただろうなぁ」
「? まぁ良いわ。基本は目を見た相手に夢を見せる力、あのフォーン……だっけ。あの子が持っているのは基本のこの力ね。発動条件は、
 ①直接間近で目を合わせる事(強制発動)
 ②意識的に周囲に目の力を広げ、相手が空間の範囲内に入る
 ③自分の香りを嗅がせる
 といった所ね」
「香り?」
「発情したワタシ達の香りは相手も発情させるのだけど、ついでに催眠耐性も下げるからワタシ達の香りを嗅がせれば段々と勝手に目の力が発動して、相手を魅力に酔わせる事が出来るのよ!」
「わー、本当に凄い種族だねぇ」
「まぁ③はそもそも“自分が目の力を使う!”ってならないと満たさない条件ね。自分が発情した状態での香りを嗅がせる訳だし」
「なるほどねー。あ、だから生徒会長さんが定期的に欲望が高まったり、目の力を使うと発情するのかな」
「そういう事ね。目の力を使って相手に夢を見せるために、耐性を下げる発情フェロモンを出すために発情する感じよ」
「あはは、傍迷惑話だね」
「……ちなみにですが、サキュバスは必ずその特徴を持つ訳では無いんですよね?」
「そうね。あ、なに。ヴァーミリオンがその力を持たないか不安になったー? 安心なさい、あの子はサキュバスじゃないから、その心配は――」
「いえ、ちょっと私と性質が似た女性を思い出していただけです。……彼女は多分、それを使わずに“ああ”だったんでしょうね」
「?」



~子供について~

「産めるけど、子供がサキュバス、インキュバスになるか、相手の種族の子になるかは分からないわ。そこはエルフとドワーフの子供がどっちになるか、あるいはどっちの特徴も持つかみたいな感じよ」
「そうなんですね」
「あれ、でも確か……サキュバスは子供を産むのになにか特殊な条件があるって聞いたけど」
「誰に聞いたのですか、クリームヒルト?」
「生徒会長さん。その条件を聞いてどうするか悩んでいたようだけど、その条件は教えてくれなかったんだ」
「そうなんですね。ではその条件を教えて貰っても――どうしたんです、その顔」
「……言わなきゃダメ?」
「はい」
「言って」
「ノータイムで攻めて来るわね」
「その条件が目の力を封じる手掛かりになるかもしれませんから」
「……分かったわ。言うわよ。…………。相手を……な、事よ」
「はい?」
「子を産むための相手を――する、事」
「あはは、もっと大きな声で!」
「…………」
「ええと、そんなに言いたくないのなら、無理には……」
「相手を! 本気で! 愛する必要があるのよ!」
『!?』
「愛する相手以外の○○○は私達にとってのただの“栄養補給”になるから、どんだけやっても子供は身籠らないの! なにせエネルギー変換されるのだから!」
「つまり愛する……好きな相手だと変換されない?」
「ええ、その通りよ! あははははは、笑えるわよね。さんざん精と性を弄んで歴史に抹消された一族なのに、子孫が居るって事はそういう事なのよ。“愛するこのヒトの子を産みたい”と乙女のように心をキュンキュンとさせるとエネルギー変換されないの! ワタシも知ったのは子を身籠った後だったのよ! あははははは、あははははは!」
「お、落ち着いてください!」
「ねぇ、メアリーちゃん。ランドルフ家の先祖として彼女がいたのって……」
「ええ、もしかしたら普通に好きになった相手との子を産んだだけかもしれませんね……あれ? でも……」
「どうしたの?」
「……もしかしてフォーン会長が悩んでいたのって、貴族の女性としての跡継ぎの件で……」
「……もしかしなくてもそういう事かもね」



~目の力が効かない相手に対して~

「え、なに。またワタシに恥をかけと言いたいの? 羞恥攻めってやつ?」
「誰も言っていませんよ」
「あはは、なんでそうなるのかな」
「……だって、私が子を産むほど相手を好きになった理由って、当時誰も彼もを魅了した私の魅了の力がアノヒトに効かなかったからだし……」
「? つまり……魅了が効かなかった理由が、目の力の効かなかった理由と同じだと?」
「そうよ。アノヒトには魅了が効かなくって、ワタシの行動にいつもグチグチ言って来て、ワタシもムキになって魅了させようとして……ああ、もう腹が立ってきた。学園にあるとかいうアノヒトの像をぶっ壊して良い?」
「駄目です。それで、その理由ってなんですか?」
「結局聞くのね」
「それが目の力を封じる手掛かりになるかもしれませんから」
「分かったわよ。……力を使う前に、既に相手に惚れている事、よ」
「はい?」
「つまりアノヒトは、ワタシが魅了をかけるまでもなく惚れていたのよ! そんなの無いわよね普通。ワタシがどうこうする前からアノヒトはワタシに惚れてたの。惚れてたくせに、ワタシのやることなす事に文句言って嫌悪を示したのよ。訳分からなくない!?」
「あはは、相手の事を思うが故に怒ってくれたとかそんな感じだね」
「本当に訳が分からないわよ。惚れてるんならもっと態度に示しなさいよね。それにもっとワタシに甘くなれっての」
「でも結局はその“アノヒト”に惚れたんだよね」
「…………うん。そうよ、文句ある?」
「あはは、無いよ!」



~総合してのフォーン達について~

「ねぇメアリーちゃん。ようするに生徒会長さんとブラウン君は」
「はい。時間の問題な感じがしますね」

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