追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活
純情な心を歪ませる女性達_3(:紺)
View.シアン
「つまり、私達の年齢の女子が可愛いを突き詰めて行って着く先はこの深さと場所のスリットという訳になるわけ」
「な、なるほどです師匠!」
という訳で彼女を弟子にした。
弟子にした、といってもレイ君とコットちゃんのような関係性ではなく、あくまでもシキに居る間私や彼女の仕事の合間に教える事を教え合う、というような関係性である。
「ううむ、しかし師匠。もしかしてですが、師匠のシスター服の素材と構造だからこそこのスリットの深さ具合と、スリットの場所なのではないですか?」
「お、よく分かったね。もちろん他の服だとスリット角度とかは変わるよ」
「場合によっては太腿裏辺りにスリットを入れ、走る際に可愛いをアピールするという感じです?」
「そこまで分かるなんて……よし、私達で可愛いを突き詰めていこう!」
「オー! スリットis可愛い!」
いや、これは師弟というよりは友人関係の方が近いかもしれない。年齢も近いしね。
ただ師弟関係という体で話を楽しんでいる、というような感じである。
「あのー、お二人共。スリットが可愛い談義は良いのですが、お勤めはキチンと熟してくださいね? もうすぐ拠点ですから」
『はーい、先生ー。ごめんなさいー』
おっと、いけない。先程クリア神様やマーちゃんの事で時間を喰ったので今日のお勤めが予定より少し遅れているんだった。今も手伝って貰いつつ話をしながら作業を進めているけど、今日のお勤め内容はふざける訳にもいかないしやる時は真面目にやらないとね。
「……あの、ところでなんで僕が先生なんです?」
「ヴァイス先生は少年の心を奪う方法を学ぶための先生です!」
「それ被害者って言いません?」
「言いませんよヴァイス先生。ところで先生的にはどの場所にあるスリットが可愛いと思います?」
「……真横にあるのでお願いします。まだ安心して見られるので。……ええ、まだ」
スイ君は真横が好きなんだ。私的にはスリットは右前にあるのが一番可愛いと思うのだけど、そこは好みの問題だしね。
でも安心ってなんだろう。可愛いに安心とかあるのだろうか。もしかしたら男の子ゆえの感覚なのかもしれない。
「そういえばさ。なんで私に師事をしたの?」
護符をるための拠点に着いたので、周囲を警戒しつつ護符の張替え作業に入り、私は彼女にそのような事を聞いた。
こういってはなんだが、彼女が求める少年の心を惑わすという点では私はそんなに慣れている方ではない。というか私が知りたい、分からない、というレベルである。なにせヒトの機微に敏感ではあっても、惑わすという点に関しては私は酷く苦手だからである。
その点マーちゃんは私より遥かに上手であると言えよう。なにせ文字通り傾国を起こせるほどであるし、彼女だって可愛いスリットを入れている。彼女が蠱惑的な魅力に溢れているという事は、先程の様子を見ただけでも分かるはずだ。
それとクリア神様に関しては……うん、あの御方は格好こそインパクトはあるので一瞬躊躇いはするだろうが、見ていると不思議と彼女が裸という事をいやらしさを感じない程に神々しく感じる。あれこそ私達が崇め奉る御方だ、と言うほどにはクリア神様の在り方はあまりにも“自然”であるのだ。
その二人を見てもなお、彼女は私に師事をした。あの二人よりも私の方が話しやすかった、と言われればそれまでではあるが、何故彼女は私を選んだのだろう?
「え、決まってますよ。貴女に一番惹かれたからです」
私の疑問に対し、彼女は当たり前の事を言うように答えた。
「確かにもう一人のシスターの方も蠱惑的で同性の私でも惹かれましたし、あの謎の全裸マント浮遊女性も何故か見ていると不思議な感覚に包まれました」
全裸マント浮遊女性……間違ってはいないけど、言葉にすると凄い言葉である。
「ですが私が一番“なりたい”と思ったのは貴女のような感じなんです」
「私のような感じ? ……私ってそんなに少年の心を惑わしている?」
「はい」
え、即答?
即答するほどなの私?
「あ、いえ。惑わす、という言い方が悪いですね。師匠は惹き付ける魅力があるという感じなんですよね」
「そうなの?」
「はい。そうでなければ会ったばかりの私でも分かるほどに、ヴァイス先生がこんなに慕いませんから」
「ふーん?」
魅力的と言われるのは嬉しい事ではあるけれど、私としてはよく分からない魅力だ。
……まぁこういうのは意識して出している事でもないし、深くは考えない方が良い事だ。私は私らしくあれば彼女が求めるものを学べるというのなら、いつも通り振舞うとしよう。
おっと、それよりもここからはちょっと集中しないと駄目な所だ。少しだけ集中してお勤めをこなすとしよう。
「(ところでヴァイス先生)」
「(なんです小声で?)」
「(教会関係者って下着着用禁止だし、師匠は活発に動くタイプだし……やっぱ大事な所も見えるの?)」
「(えっと……意外と見えないものですよ)」
「(そうなの?)」
「(そうです。とはいえ、見そうにはなるので見ないようにしますし……太腿や鼠径部とかは見えるので正直目のやり場には困ります)」
「(さっきあんなに露出強な美女たちに囲まれても照れるもんなんだ。慣れないの?)」
「(あんな綺麗な方々の露出に慣れたら僕は男として大事ななにかを失う気がするんです。嬉しいよりも困惑と罪悪感が勝るんですよ!)」
「(お、おお。大変だね。……でも嬉しくはあるんだ?)」
「(……男なので)」
「(大変だね男の子)」
なにやらむこうで楽しそうな会話をしている気がするなぁ。スイ君の方は集中力が必要な作業では無いので構わないが、ちょっとだけ疎外感を感じでしまう。
「――ふぅ、これで良し、と。スイ君、確認お願い」
「あ、はい。…………はい、大丈夫かと」
「オッケー。じゃあ次行こうか」
護符の張替えダブルチェックも済み、私達は次の所へと向かう。
さて、後は三ヶ所か。この調子で行けば、約束の時間までには間に合うかな――あ、そうだ。一応あの事を聞いておこう。
「ねぇ、ところで貴女の所の旅の一座って芸以外にも夜のサービスがあるって聞くけど、本当?」
「ええ、ありますよ」
「へぇ、じゃあ貴女もするんだ?」
「いえ、私はしません。希望者だけサービスするのですが、私的にはあまり合わないので……ですが、伸び悩んでいるので経験のためにやってみようかなーとは思ってはいます」
「そうなんだ?」
「でも不安なんですよね。知らない男性相手だと。ヴァイス先生みたいな子が相手なら良いんですけど」
やっぱりマッサージでも相手の身体に触れる訳だし、緊張はすると言う事か。
あ、そうだ。それならば――
「じゃあスイ君。彼女の相手をしてみる?」
「え」
「? シスター・シアン。そもそもサービスってなんです? 一対一で、目の前で芸を披露してくれるとかそんな感じですか?」
ふふっ、スイ君がレモちゃんと同じような事を考えているねー、とても可愛い。
でもそうじゃなくって、スイ君みたいな子が相手なら彼女も安心してマッサージできるのではという話であり、それなら私も……
「楽しむ事には変わりないかな。とても気持ち良い事だし、マ――あ、実は私も今日彼女達に技術を教えて貰う予定だから、スイ君が相手だと私もやりやすいからありがたいかなとは思うんだけど」
「!?」
「そうなんですね。僕でよければお相手しますよ!」
おお、それは頼もしい。スイ君相手なら私も実体験で出来るという物だ。
これで神父様を癒せる技術に磨けるぞ!
「あ、あの。シスターとブラザー的に良いんですか師匠!?」
「良いって、なにか――」
なにか悪い事でもあるのかな? と聞こうとすると。
「シアン!」
唐突に、私の名を呼ぶ大きな声が聞こえた。
そしてこの素晴らしい声の持ち主は神父様である。そんな神父様が私を大声で呼ぶなんて、一体何事だろうと思いつつ、声のした方を向くと。
「シアン……シアン……!」
「え、あの、神父様!?」
神父様は声がした所から全力に近い形で私達――もとい、私に近寄って来た。
何事かと思いつつも、神父様は私の肩に手を置き、ある言葉を告げた。
「シアンが夜のす、助平な技術を学ぶなら、俺が被験者になってやる!」
「なんの話です!?」
本当になんだというのだろうか!?
コメント