追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

リクエスト話:前世組による前世料理の再現


 ※この話はなろう様の活動報告にて募集いたしましたリクエスト話(ifなど)になります。細かな設定などに差異があるかもしれませんが、気にせずにお楽しみ頂ければ幸いです。

 ※時期はご想像にお任せいたします。
 ※シキに転生組4人が居て、全員の正体が判明しています。

リクエスト内容「前世組による前世料理の再現」



『クロ殿達が居た日本NIHONの料理を食べてみたいな』

 と、言われたのが昨日の夜。
 アゼリア学園組がシキに来ていたため、全員で我が屋敷で夕食を取っていた所、デザートでチョコレートを食べていると「そういえばクロ殿が居た所ではこれは普通に流通していたのだな?」という話題からそんな頼みを言われたのである。
 チョコレート自体は日本の料理では無いのだが(たぶん)、この世界では最近出回り始めた代物である。なので日本の食に興味を持たれ、ヴァイオレットさん達に「この世界には“まだない”日本料理を食べてみたい」となったのである。

――という訳で前世持ち組で屋敷で料理を作る事になった訳だが。

 頼まれた以上は希望に応えたい。
 そう思った俺達は色んな材料を用意し、今頃シキで各々の仕事をしているヴァイオレットさん達が帰ってくる頃には俺達が居た世界の日本料理を振舞おうとした訳である。
 しかしここで問題がある。
 日本料理を作るための材料が足りない? いや、この世界の料理レベルはそれなりに高いので、材料や代用品なんていくらでも用意できる。
 昔の事だから味を思い出せない? いや、確かに曖昧な部分はあるが、思い出そうと思えば思い出せるレベルだ。
 問題はそこではなく、もっと根本的な問題があるのである。

「ところでキミ達、前世での料理の経験は?」
「お湯とレンチン調理で美味しい物が食べられるって良いよね!」
「あはは、ちょっと炒めたり茹でたりするだけで料理として成り立つ製品が売っているって良いよね!」
「味が分かったのが今世からなので、再現もなにも出来ません!」
「……だよねー」

 俺は今世ではそれなりに料理は出来るが、あくまでもそれなりレベルだ。前世ではそれなりにやっていた事もあるが……冷凍食品やカップ麺、総菜、外食が主である。だってそっちの方が美味しいし簡単なんだもの。
 クリームヒルトも料理は出来るのだが、前世は俺と一緒に住んでいたので大体同じであるし、基本炒飯とかそういう類しか作らない。俺よりは遥かに出来はすると思うのだが……再現出来るほど前世で料理をしていない。
 メアリーさんはかなり料理上手だ。上手だけど、「チョコってこんな味なんですね! 漫画のバレンタインデーでは渡すはずです!」と子供のようにはしゃぐ彼女に再現を求めるのは酷という物である。

 つまりそう、問題は前世での料理を再現するのに相応しい腕前を持っていないのが大半なのである!

 ……という訳で、期待には応えたくとも再現するのには苦労しそうである。
 一応は全員料理は出来るので、前世の料理に近付ける事は出来る事は出来るのだが……うん、作り方の根本を知らない以上は四苦八苦しそうだ。
 とはいえ、今回は頼れる存在が居る。
 前世では介護職で、料理に関しても勉強をしていたというエクル・フォーサイス。彼が居るなら再現への道もそう遠くはないはずだ!

「うーん、確かに料理はそれなりにしていたけど、今世ではあまり料理をして来なかったし……あと、キミ達に覚えておいて欲しい事があるんだ」
「なにかな、エクル兄さん?」
「アジノモ〇っていう調味料は偉大なんだよ。それを振りかければ日本料理の大抵を美味しく作れるのさ」

 あれ、なんか駄目な気がして来たぞ。いくらこの世界の料理が発展していても、企業努力の結晶であるアジ〇モトは無いからな。……どうしよう。目を輝かせて期待していたグレイの希望に応えてやりたかったんだが……情けない父でゴメンな……!

「とはいえ、それなりにレパートリーはあるさ。キミ達は料理は出来るんだから、私がある程度道筋を示せばできるだろうね」

 お、これはいけるかもしれない。
 となると、後はどのような方向性の料理を作るか、だろうか。
 以前食べていた雑煮はあまり評判が良くなかったし、日本料理で受けがよく、なおかつこの世界ではあまり一般的では無い物……うーん……カレーとかはこの世界にもあるし、豚カツ――はシニュッセルがあるし、後は焼き鳥とかだし巻き卵とか……うーん、簡単に作れはするが、なにか別の方向性が良い気がするな

「クリームヒルト、なにか案はあるか?」
「うーん……ラーメンとかどう? 正確には日本料理じゃないけど、私達が親しんでいる奴ってほぼ日本料理だし」
「お、良いなそれ。麺は工夫が必要だが、どうにか出来はしそう――」
「というわけでジ□ウ系いってみよう、ヤサイマシマシニンニクチョモランマ!」
「お前は皆の腹をどうするつもりだ」

 いきなりアレを出されたら多分皆「!? ……え、これ、なに?」となり、味が彼らに合う云々以前に完食も難しいぞ。そして日本料理が誤解される。……いや、アレもある意味日本のソウルフード……いや、落ち着け俺。例えそうだとしても今回のチョイスとしては違う。ヴァイオレットさんは食べる量こそ増えてきたが、アレは間違いなく無理だ。
 ……とりあえずラーメンは案として保留するとして、別の案を聞こう。

「メアリーさん、なにかイメージで構いませんので食べてみたい前世の料理とかあります?」
「色々ありますが……そうですね、トリアエズナマとか」
「それ料理じゃ無いですから」
「冗談です。お寿司、てんぷら、豚汁……あたりですかね? クロさんはなにかあります?」
「俺は肉じゃがとか焼き鳥とか……エクルさんはなにかあります?」
「マッ〇のエグチと松〇の旨辛ネギたま牛〇しとポンデリ〇グ」
「エクルさんの趣味は大体分かりました」

 もしかしなくともエクルって前世では割とズボラ側では無かったのだろうか。いや、うん。俺もその三つのファーストフード店にはとてもお世話になったし、俺もそのメニューは好きだったし、言われたら凄く食べたくなったけどね!

「とりあえず、今言った奴で出来そうなものから作ってみるとしますか」
「あはは、そうだね! じゃあ皆で頑張ろう、オー!」
『オー!』

 と、言う感じに俺達は料理を作る事になった。







「黒兄、味噌、味噌は無いの!?」
「似たような奴なら探せばあるけど、基本ないそんな便利な日本のソウル調味料! ていうかあったら俺は欲しい、白味噌食べたい!」
「シロを食べたいなんて黒兄はエッチだね!」
「は? なにを言って――違いますメアリーさん、そういう意味じゃ無いですから!」
「わ、分かってますから。――む、確か前世の記憶だとここで醤油をインするはず! という訳で、エクルさん、醤油を下さい!」
「ねぇですよ」
「なんですと!?」
「ここにはねぇのですメアリー様。よく考えればア〇ノモト以前に、味噌も醤油も無しに日本料理を作るのは難しいって事だね……」
「あはは、日本料理ってそれなしにどう作るのかってレベルで使うからね。大豆は偉大だねぇ……大豆からどうやって醤油とかになるのか分かんないけど」
「確かにどう作るんだろうな、アレ。……発酵させるんだっけ」
「うーん、その辺りは私も分からないからなぁ。分かっていたら前世でよく見た調味料革命異世界譚的な事を出来たんだろうにな――はっ、黒兄!」
「言っておくがこの世界にマヨネーズは普通にあるからな。マヨネーズ革命はできん」
「よく分かったね黒兄! ……というかマヨネーズはあるのに、なんで味噌も醤油も無いの」
「知らんがな」
「いや、東にある国には味噌にも醤油にも似た調味料はあるよ。私の所でも一応扱ってるし」
「あるんだ!? エクルさん、もしよろしければ輸入とか出来ます?」
「良いけどめっちゃマズいよ。あそこから品種改良とかして私達の口に合うにはもう一世代待たないとだめだよ」
「マジっすか」
「マジっす。と、それよりもはい、メアリー様。こちらの調味料をお使いください」
「どうもですー。――ここで調味調インして、インして、さらにイン! そして塩を振って……よし、味見を――うん、美味しいですけど日本料理かどうかはさっぱり分かりません!」
「なんで味見したんですメアリー様」
「というか黒兄。今思ったんだけどさ」
「なんだ?」
「卵かけご飯とかお手軽日本料理で良いんじゃない? よく前世で食べてたし」
「それはお前が今ご飯と卵を混ぜて結局炒飯を作っている言い訳だろうか」
「違うよ、炒めた卵かけご飯だよ」
「炒飯だろそれ。あと低温殺菌してない卵を生で食べるの危険だからな。……本当に危険だからな」
「やっちゃったんだね、黒兄」
「日本の技術って凄かったんだなと思うよ……まぁ魔法で卵を殺菌しているこの世界も凄いが」
「あはは。……お金さえ払えば調理過程をスキップできるって、良いよね」
「ああ、良いな……」
「おーい、二人共ー。遠い目をするのは良いですが、暇なら出汁をとっておいてくださいねー」
「あ、はーい分かったよメアリーちゃん。という訳で黒兄。出汁を取るために味噌か醤油頂戴」
「だからねぇよ」







「という訳で作ったのがこちらの料理の数々です。みなさん、どうぞお召し上がりください」
「ほう、見た事無い料理の数々だ。数々だが……クロ殿、一つ聞いても良いだろうか?」
「なんでしょう」
「クリームヒルトとメアリーの前に置かれている……モヤシが山のように積まれた麺類のような物は……なんだ?」
「何故か作る事に成功した日本料理です。……よし、俺も食べよーっと」
「え、クロ殿も食べるのか!?」
「かつて日本に居た頃に定期的に食べたくなった物が再現出来たとあっては、食べずにはいられませんよ! あ、皆さんは誰かから一口を貰って下さい。多分それで今は充分なはずです」
「そ、そうか。……日本NIHONの料理は凄いんだな」
「まぁ日本には何故無毒化したかも分からないまま、猛毒の魚の卵巣を美味しいと食べるような国ですから」
「どうなっているんだ日本NIHON
「ちょっと食に関しては異様な執着を見せるだけですよ」
「……そうか」

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