追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

夜の相談? 女性陣_3(:菫)


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「ね、ねぇ君達。なにかおかしくないかな。確かに聞く内容が同じなら一緒に受けた方が良いかもだけど、私が受けているのを見て協力するとか、手伝うとかおかしくない?」
「おかしくはないぞ、フォーン嬢。かつて共和国の歴代王妃であるアントワネット妃のはじめては一般公開されていたと聞く。世の中見られる事で得る興奮、もとい経験もあるという事だ。そういう経験も良いぞ?」
「いや、それ興奮を得るために公開していた訳じゃ無いからね!? だ、大体クチナシ様は見られて良いのかな!?」
「同性なら見られても構わんし、私より強い男なら……まぁ、良いと思うぞ」
「良いのかい!?」

 フォーンはクチナシ義姉様に対して、敬称は付いているがいつもの何処かお姉さんじみた口調で何故か慌てていた。敬語が取れるほど慌てているが、なにに対して慌てているのかは分からない。が、一緒に見られて手伝う、という点に対して疑問を持っているというのは分かるので……やはり見られるのは嫌という事だろう。そういうヒトがいるのも不思議ではないので、手伝う件に関してはやめておいた方が良いだろう。

「しかし、ならば私が試験台になろうか。自由に使っても構わんぞ」
「クチナシ義姉様に対してそのような事は……」
「なに、気にするな。この身は既に堕ちた身で価値があるか分からんが、義妹や民達の役に立てるのなら使ってくれて良いさ。なんなら男のサービス提供者と実演サービスでしているのを見せても良い」

 確かに男性の身体をマッサージしているのを見る方が参考にはなるだろう。しかし別にそれならばクチナシ義姉様がわざわざ実演せずとも、旅の一座の女性の一員が男性の一員にサービスしているのを見せれば良い訳で……うむ、なにかおかしいような?

「クーちゃん、別にそういうのは良いよ。私達は楽しんで学びたいし、そういうのをされると後ろめたさから学びにくいから」
「む、そういうものか。……難しいな。私は今まで大雑把に生きてきたから、勝手があまり分からないのでな、すまない」

 クチナシ義姉様は大雑把な面もあるが、大雑把というよりは豪快に物事を進めると言う方が正しい。人員と時間が足りなければ権力とお金を惜しまず使い余所から引っ張って来て人海戦術で事業を進めたり、細かな損得の交渉をするくらいなら初めから結論を出してそこから互いの及第点を見つけて即交渉終了&即行動、といった行動力のある御方だ。
 しかし愚かという訳では無いので充分な利益は出るし、困っている領民のために自分が損をしても素早く進めていくという事もするので領民達から愛されている御方だ。
 ……そんな行動力に溢れた素晴らしい御方なので、やはりあのような事をしたのは信じられないが。そして今のクチナシ義姉様は贖罪のために自分をひたすら卑下してなんでもやろうとしている。今言った良い所がそのまま悪い方向に贖罪として使おうとしているのだ。そこが心配ではあるが……

「別に良いって。私も単に“罪を背負ったからって相手を無理矢理行動させない高潔な自分!”みたいな感じに言っているだけだから」
「ふ、つまりは私のためではなく自分のため、か」
「そゆこと」
「では私が可能な限りの技術を教える……というのはどうだろうか。私とて何度も経験はあるからな。口頭や模擬で説明する、という感じだ」
「うんうん、そんな感じなら大歓迎!」
「そうか、こんな感じか。……なるほどな」

 ……いや、大丈夫だと信じるとしよう。今夜は共に食事を摂る予定であるし、その時に話をするのと今のシキ観光で変な方向に行かない様にだけ注意をしよう。
 しかしクチナシ義姉様はマッサージの経験があるのだな。結構意外……あ、そうだ。ならばこれはどうだろうか。

「クチナシ義姉様、では今夜私達と共に来て、共に技術を学んで後私と屋敷でクロ殿と共に技術を教えて頂けませんか?」
「え、ヴァイオレット君!?」
「ほう、つまりそれはヴァイオレットの夫に対して私が実演する……という事だろうか?」
「それでも構いません」
「しかし良いのか? 私がヴァイオレットの夫に対して実演をするというのは」
「クチナシ義姉様がお嫌でなければ」

 先程強い男性ならば良いと言っていたので、クロ殿ならばクチナシ義姉様より強い(断定)ので問題無いだろう。クチナシ義姉様が嫌ならば強制はしないが。
 ……ところでフォーンは何故あんなに驚いているのだろうか。

「ふむ……では、私もお前達と共に学び、その際に私の技術もプラスで教える。その後屋敷に戻った私とヴァイオレットは学んだ技術を義弟達に披露する。希望があるならシアン嬢達も来る、というのはどうだろうか」
「私はオッケー。とはいえ、多分学んだら神父様にすぐ試したくなるかもだけどね」
「私は……そうですね、色々な反応を学ぶために領主邸へとお邪魔するかもしれません。その際にはよろしくお願いします」
「え、ええと……私は屋敷に行くのは遠慮しようかな……?」

 よし、おおよその方針は決まったな。
 しかしクチナシ義姉様から技術を学びたかったのも本音ではあるが、本当は単にクチナシ義姉様とキチンと話す機会を設けたかったのが今回の提案の理由だ。なのでシアン達に屋敷に来られるというのは目的から離れてしまうのだが、そこは置いておこう。いざとなれば全員を巻き込んで色々と話すとしよう。

「まぁ私の技術など本職の者と比べれば大した事では無いだろう。なにせ私は夫に対してしか経験が無いからな」
「へぇ、そうなんだ。でも私達もしたいのは夫に対してだし、クーちゃんだからこそ出来る技術もあるってもんだよ」
「それに旅の一座が本当にサービスをしているか分かりませんし、その際には貴女の経験による技術が重要になりますから。楽しみにしています」
「ふ、ありがとう。シアン嬢もレモン嬢も優しいな。あ、それとヴァイオレット」
「はい、なんでしょう?」
「私は手加減が不得手であるし、今言ったようにライラックにしか経験がないものでな。それに私は彼に対してよくとも、私自身がクロ氏のお眼鏡に適うか分からないからな。そこは許可を取っておいてくれ」
「はい、分かりました。とはいえ、クロ殿はお優しいですから大丈夫ですよ」
「ふ、一番経験を得ている義妹が言うなら確かであろうな。では、また後で会うとしようお前達。楽しみにしているぞ」

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