追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活
未知の女性達(:白銀)
View.シロガネ
――クロ様は交渉の会話の場が苦手のようだ。
今まで経験したモノとは違う食事になると思い、私なりに観察をした結果、そのように感じる事が出来た。
慣れていない、というよりは、何度か経験した上で苦手だと思っている、とでも言うべきなのだろうか。気の張った空間というのを苦手としているようである。あまり表には出さないようにしているようだが、私でも感じ取れた辺り、ソルフェリノ様もそこは感じ取れたと思う。
――しかし、ヴァイオレット様は変わられたな。
来た時の会話でも感じ取れたのだが、ヴァイオレット様は公爵家に居た頃と違う印象を受けた。
以前はソルフェリノ様とまでは行かずとも凛とした雰囲気を漂わせ、立ち居振る舞いも毅然としていたのだが……今日のヴァイオレット様は以前より柔らかく感じた。抽象的な表現ではあるが、そうとしか表現できない印象を感じられたのである。
私はあまりヴァイオレット様と交流はして来なかったのだが、以前の彼女であれば、公爵邸に居た頃のソルフェリノ様と同じで「食事は栄養補給と感想を学ぶ場」などというような、食に興味が無いという感じであったのだが、今日の彼女は……
――食事を楽しまれていたように見えたな。
感想を言うために味わっていたのではなく、「この味付けが好きだ」というような表情で食事を摂っていた。私達の手前あまり表には出さないようにしていたようだが、以前の彼女を知っていれば違うとハッキリ分かるような雰囲気の変化が見られたのである。
ソルフェリノ様も仰っていたが、彼女は“バレンタイン”ではなく、“ヴァイオレット・ハートフィールド”として成長され、変わったという事なのだろう。……私が評価を下すのも失礼な話ではあるが、今の彼女の方が私は好きである。なんというか、交流が少なかったとはいえ幼少期から見てきた血の繋がる相手として、好ましく思えるのである。
「ヴァイオレット様は大丈夫なのだろうか……」
「ええ、土に埋まって野菜の気持ちを知るや、亜空間に出入りする者が居るなど……」
「表情は豊かになられたが、あれはなにかを諦めた故の表情なのでは……」
「ブルストロード兄妹も何処か諦めの表情が……」
……ただ、他の以前のヴァイオレット様を知っている従者達からは、クロ様達を含め食事中の会話の内容から正気を疑われていたが。
私も若干思いはしたので、否定出来ないのが辛い所である。
「皆様方。ここはクロ子爵の屋敷です。あまりそういった会話は控えるように」
『あ……し、失礼致しました、シロガネ様!』
「よろしい。では私は水を確認して来ますので、ソルフェリノ様の身の回りをお願いします」
私は他の従者に注意をしつつ、この後の仕事をお願いすると、彼らは返事をして深々と礼をした。
――さて、調べるか。
私が今ほど言った「水を確認する」というのは、私が単独で情報収集をしてくるという合図だ。他の者に私の事を聞かれてもどうにか誤魔化し、必要ならば魔法探知がされにくい方法で私に連絡を入れるようにというものである。
私は気配遮断が得意である。
ソルフェリノ様の手足となって働くと決めてから、あらゆる方法で望む物を手に入れるためにと身に着けた“技術”である。この技術は相手が余程の達人でない限りは易々と気付かれるものでは無いという自負がある。
――得意ではあるけど、あの御方には負けるが。
しかし得意ではあるが、上には上が居る。かつて遭遇した、私よりも年下のとある女性には負ける。なにせ目の前に居たにも関わらず、気が付けば姿を消していたあの女性。彼女が暗殺者であれば私達は殺されていたであろうあの女性。いずれは彼女の域ま達しないといけない。そしてソルフェリノ様の力となるのだ!
――しかし、広いな、この屋敷。なにかあるのだろうか……
そして私が彼女を師事して得た気配遮断を使用し今回調べる事。それはクロ様などの“人物”と“痕跡”だ。
従者達に正気を疑われているクロ様達であるが、一体どういう人物なのか。
そしてここ数ヵ月起きている異変に関してなにか情報の痕跡はないのか。
あまり奥深くまで調べる事は出来ないが、出来る限り調べるとしよう。
――見張られてるな。
あくまでも私達に対応するためとして、私達を見張っている向こうの従者が居る。
故に下手に動く事も出来ないが……
――数は多くないから、誤魔化しは簡単だな。
広い屋敷ではあるが、従者の数はそれほど多くない……というか、圧倒的に少ない。
優秀なブルストロード兄妹がいるとはいえ、後は謎の美しき黒髪の女性と、眼鏡をかけた地味だが立ち居振る舞いがただの従者でない事を示している同じく黒髪の女性程度しかいない。
他にも気配は感じるので誰か居はするようだが、この屋敷の広さと、子爵という立場からは考えられない程に従者が少ない。故に彼女らを出し抜く事自体は容易だ。
――……他も誤魔化しつつ調べるとするか。
従者とは別になにか別の監視方法もとられている事も考慮し、様々な対策をしつつ私は屋敷を見て回る事にした。
細心の注意を払いつつ、気付かれた場合は自分が死ぬという覚悟をもって私は調査を開始した。
――とはいえ、調べられるのなんて精々ヴァイオレット様達の事くらいだが。
屋敷の事はもう少し後で調べた方が良いが都合が良いが、今は今しか出来ない事を確認しておくとしよう。
つまりは食事を終えてヴァイオレット様達はどのような反応を示しているのか。それは今調べなければ後々知る事は出来ない事である。
――申し訳ございません。ヴァイオレット様、クロ様。謝罪をして許される事ではありませんが、聞かせて頂きます……
そう思った私は、周囲の警戒と気配遮断をしつつ、クロ様達の寝室の前へと来ていた。
もし秘め事をしていたのなら素早く去ろうとしつつ、周囲に気付かれにくい場所にて中の会話を聞こうとした。
――よし、聞こえる。
若干聞き取り辛い所もあるが、中の会話は聞こえる。どうやらどちらも部屋の中に居て、夫婦で会話をしているようだ。
さて、この夫婦はどういった会話をしているのだろうか。
「喧嘩の方は対策を立てつつムラサキさん? を待つとして、シロガネさんの相手探しからですかね」
「そうだな」
……どうやら今後の私達に対する対応を考えているようだ。
しかしこれは都合がいい。シキで起きている事の痕跡の情報は得られなさそうだが、個の会話で明日以降の私の対応の対策が出来るかもしれない。
「カナリアはどうだろう。彼女なら――」
「カナリアと付き合うのなら、まず俺より強くないと認めません」
よく分からないが、カナリアという女性には気をつけよう。
あのカーマイン殿下と対峙して一方的に身体能力と強化魔法で蹂躙した相手を相手するとか、流石に私も遠慮したい。
「では、他には……シュバルツ」
「外見は問題無しですが、誰にも触れられない事を美徳とする方ですからね……」
シュバルツ……ああ、あの美しい従者がそう名乗っていたな。
露出が少なくて清楚という言葉が似合う女性。見た目通りで彼女は誰も寄せ付けない高貴さと清楚さを持ち合わせているようだ。
そして触れられない事を美徳……確かに彼女は触れられるとか露出とか苦手そうだものな、彼女。清楚で大人しい彼女にはあまり触れないように気を付けるとしよう。
「エメラルド」
「スカーレット殿下にシロガネさんがやられそうですね」
……スカーレット殿下ってあのスカーレット殿下?
ここで名が上がるという事はエメラルドというのは女性なのだろうが……え、私そのヒトに手を出すと王族に処理されるの? シキになんでそんなヒトがいるんだろう。
「トウメイ」
「…………全裸に目を瞑れば、十分紹介出来ますね!」
「落ち着いてくれ、クロ殿。私が言っておいてなんだが、それが一番の問題だ」
「ですね」
全裸に目を瞑ればってなんだ。私は誰を紹介されると言うんだ。
いや、もしや肌に見せられない傷があるとかかもしれないな。もしそうならば彼女の傷を見ても紳士らしく振舞えるようにするとしよう。
……まさか脱ぎ癖があるとかじゃないよな。はは、まさかな。
「……サーモンピンクさんとかどうでしょう」
「カーキーと同タイプの女性、か。……トラウマになりそうだ」
「ですね」
カーキー……確かロバーツ家で多くの女性達に愛を囁くという男性だったか。
……愛が多いのは自由であるし、私もソルフェリノ様を愛している。……そういう女性が相手の方が良いかもしれないな。だがトラウマってなんだろうか。
「……モモさん」
「あの御方はまず自分より強さを求めるぞ。婚活で勧められた女性にワイバーンレベルのタックルをして来る戦いを挑まれるというのは……」
「違うトラウマになりそうですね。
強い女性は好きではあるが、私の身が持ちそうにないと言うか、なんでそんな冒険者や軍で活躍できそうな女性が辺境に住んでいるのだろう。というかワイバーンレベルのタックルって、私は死なないだろうか。……いや、ソルフェリノ様の愛の前であれば受けきってみせる!
「シクラメンピンクさん」
「メルヘンに引きずり込まれるぞ」
「ですね」
……メルヘンに引きずり込まれるってなんだ。
「ハンティングピンクさん」
「深淵に引きずり込まれるぞ」
「ですね」
……深淵に引きずり込まれるってなんだ!
なんだ。私は誰を紹介されようとしているんだ!
私は紹介された女性のナニに注意をすれば良いんだ!
「……こうして考えると、紹介も難しいな」
「ですね」
むしろ紹介する女性でそういった女性がまず上がるのは、どうなんだろうか。
いや、二十三歳の不良物件の私であるから、やや不思議な女性を紹介しようとしているのだろうか。
……まさか今あげた女性がシキにとっては普通、って事は無いよな? ……よね?
備考 シロガネが尊敬する気配遮断の女性
View.シロガネ
――クロ様は交渉の会話の場が苦手のようだ。
今まで経験したモノとは違う食事になると思い、私なりに観察をした結果、そのように感じる事が出来た。
慣れていない、というよりは、何度か経験した上で苦手だと思っている、とでも言うべきなのだろうか。気の張った空間というのを苦手としているようである。あまり表には出さないようにしているようだが、私でも感じ取れた辺り、ソルフェリノ様もそこは感じ取れたと思う。
――しかし、ヴァイオレット様は変わられたな。
来た時の会話でも感じ取れたのだが、ヴァイオレット様は公爵家に居た頃と違う印象を受けた。
以前はソルフェリノ様とまでは行かずとも凛とした雰囲気を漂わせ、立ち居振る舞いも毅然としていたのだが……今日のヴァイオレット様は以前より柔らかく感じた。抽象的な表現ではあるが、そうとしか表現できない印象を感じられたのである。
私はあまりヴァイオレット様と交流はして来なかったのだが、以前の彼女であれば、公爵邸に居た頃のソルフェリノ様と同じで「食事は栄養補給と感想を学ぶ場」などというような、食に興味が無いという感じであったのだが、今日の彼女は……
――食事を楽しまれていたように見えたな。
感想を言うために味わっていたのではなく、「この味付けが好きだ」というような表情で食事を摂っていた。私達の手前あまり表には出さないようにしていたようだが、以前の彼女を知っていれば違うとハッキリ分かるような雰囲気の変化が見られたのである。
ソルフェリノ様も仰っていたが、彼女は“バレンタイン”ではなく、“ヴァイオレット・ハートフィールド”として成長され、変わったという事なのだろう。……私が評価を下すのも失礼な話ではあるが、今の彼女の方が私は好きである。なんというか、交流が少なかったとはいえ幼少期から見てきた血の繋がる相手として、好ましく思えるのである。
「ヴァイオレット様は大丈夫なのだろうか……」
「ええ、土に埋まって野菜の気持ちを知るや、亜空間に出入りする者が居るなど……」
「表情は豊かになられたが、あれはなにかを諦めた故の表情なのでは……」
「ブルストロード兄妹も何処か諦めの表情が……」
……ただ、他の以前のヴァイオレット様を知っている従者達からは、クロ様達を含め食事中の会話の内容から正気を疑われていたが。
私も若干思いはしたので、否定出来ないのが辛い所である。
「皆様方。ここはクロ子爵の屋敷です。あまりそういった会話は控えるように」
『あ……し、失礼致しました、シロガネ様!』
「よろしい。では私は水を確認して来ますので、ソルフェリノ様の身の回りをお願いします」
私は他の従者に注意をしつつ、この後の仕事をお願いすると、彼らは返事をして深々と礼をした。
――さて、調べるか。
私が今ほど言った「水を確認する」というのは、私が単独で情報収集をしてくるという合図だ。他の者に私の事を聞かれてもどうにか誤魔化し、必要ならば魔法探知がされにくい方法で私に連絡を入れるようにというものである。
私は気配遮断が得意である。
ソルフェリノ様の手足となって働くと決めてから、あらゆる方法で望む物を手に入れるためにと身に着けた“技術”である。この技術は相手が余程の達人でない限りは易々と気付かれるものでは無いという自負がある。
――得意ではあるけど、あの御方には負けるが。
しかし得意ではあるが、上には上が居る。かつて遭遇した、私よりも年下のとある女性には負ける。なにせ目の前に居たにも関わらず、気が付けば姿を消していたあの女性。彼女が暗殺者であれば私達は殺されていたであろうあの女性。いずれは彼女の域ま達しないといけない。そしてソルフェリノ様の力となるのだ!
――しかし、広いな、この屋敷。なにかあるのだろうか……
そして私が彼女を師事して得た気配遮断を使用し今回調べる事。それはクロ様などの“人物”と“痕跡”だ。
従者達に正気を疑われているクロ様達であるが、一体どういう人物なのか。
そしてここ数ヵ月起きている異変に関してなにか情報の痕跡はないのか。
あまり奥深くまで調べる事は出来ないが、出来る限り調べるとしよう。
――見張られてるな。
あくまでも私達に対応するためとして、私達を見張っている向こうの従者が居る。
故に下手に動く事も出来ないが……
――数は多くないから、誤魔化しは簡単だな。
広い屋敷ではあるが、従者の数はそれほど多くない……というか、圧倒的に少ない。
優秀なブルストロード兄妹がいるとはいえ、後は謎の美しき黒髪の女性と、眼鏡をかけた地味だが立ち居振る舞いがただの従者でない事を示している同じく黒髪の女性程度しかいない。
他にも気配は感じるので誰か居はするようだが、この屋敷の広さと、子爵という立場からは考えられない程に従者が少ない。故に彼女らを出し抜く事自体は容易だ。
――……他も誤魔化しつつ調べるとするか。
従者とは別になにか別の監視方法もとられている事も考慮し、様々な対策をしつつ私は屋敷を見て回る事にした。
細心の注意を払いつつ、気付かれた場合は自分が死ぬという覚悟をもって私は調査を開始した。
――とはいえ、調べられるのなんて精々ヴァイオレット様達の事くらいだが。
屋敷の事はもう少し後で調べた方が良いが都合が良いが、今は今しか出来ない事を確認しておくとしよう。
つまりは食事を終えてヴァイオレット様達はどのような反応を示しているのか。それは今調べなければ後々知る事は出来ない事である。
――申し訳ございません。ヴァイオレット様、クロ様。謝罪をして許される事ではありませんが、聞かせて頂きます……
そう思った私は、周囲の警戒と気配遮断をしつつ、クロ様達の寝室の前へと来ていた。
もし秘め事をしていたのなら素早く去ろうとしつつ、周囲に気付かれにくい場所にて中の会話を聞こうとした。
――よし、聞こえる。
若干聞き取り辛い所もあるが、中の会話は聞こえる。どうやらどちらも部屋の中に居て、夫婦で会話をしているようだ。
さて、この夫婦はどういった会話をしているのだろうか。
「喧嘩の方は対策を立てつつムラサキさん? を待つとして、シロガネさんの相手探しからですかね」
「そうだな」
……どうやら今後の私達に対する対応を考えているようだ。
しかしこれは都合がいい。シキで起きている事の痕跡の情報は得られなさそうだが、個の会話で明日以降の私の対応の対策が出来るかもしれない。
「カナリアはどうだろう。彼女なら――」
「カナリアと付き合うのなら、まず俺より強くないと認めません」
よく分からないが、カナリアという女性には気をつけよう。
あのカーマイン殿下と対峙して一方的に身体能力と強化魔法で蹂躙した相手を相手するとか、流石に私も遠慮したい。
「では、他には……シュバルツ」
「外見は問題無しですが、誰にも触れられない事を美徳とする方ですからね……」
シュバルツ……ああ、あの美しい従者がそう名乗っていたな。
露出が少なくて清楚という言葉が似合う女性。見た目通りで彼女は誰も寄せ付けない高貴さと清楚さを持ち合わせているようだ。
そして触れられない事を美徳……確かに彼女は触れられるとか露出とか苦手そうだものな、彼女。清楚で大人しい彼女にはあまり触れないように気を付けるとしよう。
「エメラルド」
「スカーレット殿下にシロガネさんがやられそうですね」
……スカーレット殿下ってあのスカーレット殿下?
ここで名が上がるという事はエメラルドというのは女性なのだろうが……え、私そのヒトに手を出すと王族に処理されるの? シキになんでそんなヒトがいるんだろう。
「トウメイ」
「…………全裸に目を瞑れば、十分紹介出来ますね!」
「落ち着いてくれ、クロ殿。私が言っておいてなんだが、それが一番の問題だ」
「ですね」
全裸に目を瞑ればってなんだ。私は誰を紹介されると言うんだ。
いや、もしや肌に見せられない傷があるとかかもしれないな。もしそうならば彼女の傷を見ても紳士らしく振舞えるようにするとしよう。
……まさか脱ぎ癖があるとかじゃないよな。はは、まさかな。
「……サーモンピンクさんとかどうでしょう」
「カーキーと同タイプの女性、か。……トラウマになりそうだ」
「ですね」
カーキー……確かロバーツ家で多くの女性達に愛を囁くという男性だったか。
……愛が多いのは自由であるし、私もソルフェリノ様を愛している。……そういう女性が相手の方が良いかもしれないな。だがトラウマってなんだろうか。
「……モモさん」
「あの御方はまず自分より強さを求めるぞ。婚活で勧められた女性にワイバーンレベルのタックルをして来る戦いを挑まれるというのは……」
「違うトラウマになりそうですね。
強い女性は好きではあるが、私の身が持ちそうにないと言うか、なんでそんな冒険者や軍で活躍できそうな女性が辺境に住んでいるのだろう。というかワイバーンレベルのタックルって、私は死なないだろうか。……いや、ソルフェリノ様の愛の前であれば受けきってみせる!
「シクラメンピンクさん」
「メルヘンに引きずり込まれるぞ」
「ですね」
……メルヘンに引きずり込まれるってなんだ。
「ハンティングピンクさん」
「深淵に引きずり込まれるぞ」
「ですね」
……深淵に引きずり込まれるってなんだ!
なんだ。私は誰を紹介されようとしているんだ!
私は紹介された女性のナニに注意をすれば良いんだ!
「……こうして考えると、紹介も難しいな」
「ですね」
むしろ紹介する女性でそういった女性がまず上がるのは、どうなんだろうか。
いや、二十三歳の不良物件の私であるから、やや不思議な女性を紹介しようとしているのだろうか。
……まさか今あげた女性がシキにとっては普通、って事は無いよな? ……よね?
当人にとっては普通に挨拶をして去っただけなのだが、何故かシロガネに師事をされる。
師事された際本人は「なんの事です!?」と慌てて去るが、その際にも「おお、気配遮断をされて消えられた!」と何故か尊敬の念を抱かれた模様。
特になにか教えた訳では無いのだが、何故か師事されているような、現在とある学園で生徒会の恋愛雰囲気に胃を痛めている生徒会長である。
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