追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

幕間的なモノ:教会シスターズお風呂会議


幕間的なモノ:教会シスターズお風呂会議


View.シアン


「あー、皆とワイワイ入りたかったなー」
「我がまま言わない。確かに入れる広さではあるけど、異性と入るのは良くないんだから」
「男の裸を見れる時点で良い事じゃない? レッツ興奮!」
「自分の裸を見られるのをマーちゃんは躊躇って」
「? 今もシアン先輩に見られてるでしょ?」
「そりゃそうだけど。私達は同性でしょ」
「同性でも異性でも、裸を見られるという事に変わりはないでしょ? 今が良いのに、神父君やヴァイス先輩は駄目なの?」
「駄目。妄りに異性の性的興奮を煽るのは良くないよ。聖書の――」
「五章二十八節、“情欲を抱きつつ異性を見てはならない。異性の情欲を煽らせる振る舞いをしてはならない。定められし相手でない限り、それは既に姦淫に属する。ヴァルハラに導かれたくば己を律すべし”でしょ」
「……分かっているのなら止めて」
「そう言われても、異性ってだけでエロい目で見ないって無理だと思うんだ!」
「堂々と言わない!」
「だから私は姦淫シスター!」
「やめい!」
「でもシアン先輩だって神父君をエロい目で一切見てないって言える?」
「言える訳ないでしょ!」
「やっぱり」
「だけど私と神父様は付き合っている――つまり、定められし相手! なら問題無し!」
「付き合う前の定められし相手でない時も見て無かったって言える?」
「言える訳ない。そもそも見ているから付き合いたいって思ったんだから。……はっ!?」
「あはははー」
「くっ、これが論破か……」
「でも、その辺りの節って、後から付け加えられたものなんだよね? 婚姻を可としているクリア教としては他と若干矛盾するし」
「ああ、それは確か当時の枢機卿が奥さんを若い美男子に寝取られたから付け加えたみたい」
「そうなの!?」
「うん。数百年前の話だけど、そういった理由だって先輩から聞いた。その件は教育では教えない話になっているけど、シスター、ブラザーの中では脈々と伝えられた話だよ」
「その枢機卿も口伝で寝取られた話を継がれるとは思わなかっただろうね……」
「だろうね。ともかく、異性を妄りに煽らない。良い?」
「はーい。……同意の上なら」
「言っておくけど、未成年のスイ君と交わった時点で未成年淫行になって捕まるからね?」
「でもヴァイス先輩に告白された訳だし、付き合っているなら定められた相手として――」
「駄目。せめて成人まで待ちなさい」
「ちぇー。あの子、可愛くて良いのになー。吸血鬼の血も混じっているから、すんごい激しいのもイケそうなのに」
「激しいって……」
「あ、シアン先輩も興味ある? 初心で身体は細くても、吸血鬼パワーで交わるとすんごい男の子。恥ずかしそうにしつつ“身体が反応してしまう!”的な感じで色々教えたくなる感じがして、私も興奮を――イタッ」
「先輩の見習いブラザーをそんな目で見ない」
「ぶー」
可愛あざとい反応しない……って、あれ、マーちゃんにスイ君の吸血鬼の事言ったっけ?」
「うん? ああ、ヴァイス先輩の中に完全に単独として力を内包している魔力を感じたからちょっと調べたら、吸血鬼としての性質を見抜いたんだ」
「待って、単独として内包しているとか初めて知ったんだけど」
「そうなの? まぁ、細かい事は気にしない!」
「……ま、いっか。スイ君はスイ君だしね」
「そういう事! ……あ」
「今度はどうしたの」
「交わるすんごいで思い出したんだけど、シアン先輩と神父君とまだ交わってないんだよね?」
「っ!? ……何故その単語で私達を思い出したの」
「いや、神父君って交わる時は凄いタイプの男の子だろうし」
「……男の子、か。確かにマーちゃんから見れば男の“子”だろうけど……というか、マーちゃんも神父様の事そう思うの?」
「うん、一度スイッチ入ると止められないタイプだよ、あの子」
「なんでそう思うの?」
「兄さんがそうだったから」
「お兄さん? それって確か……」
「うん、一度じゃ収まらず、私ははじめてだというのに外で何度も――」
「やめて。本当にやめて」
「? 分かった」
「それで話は戻るけど、私達がその……」
「交わる?」
「……それをしていない事をわざわざ確認して、なにを聞きたかったの?」
「なんで交わらないのかなって。付き合っているのなら教義的にも問題無しに気持ちよく爛れられるでしょ!」
「そういう発言も控えようねマーちゃん。……段階ってもんがあるんだよ」
「兄さんとコー……兄さんのお嫁さんみたいに? 絆を深め合う的な?」
「そういう事。それに、教義的に爛れるのも良くはないよ」
「そっかー……そういうものかー……」
「…………」
「難しいなぁ、恋愛。気持ち良いと、良い事は違うみたいだし。向き合うのも大変だぁ」
「……、マーちゃん。お願いがあるんだけど、良いかな」
「どうぞ?」
「……神父様に手を出すのはやめてね」
「どうしたの急に」
「その、神父様……スノー君は魅力的だし、成人もしているし……」
「うん」
「マーちゃんは私と違って可愛くて綺麗だし、さっき引っ張ったみたいに力もあるし……」
「うん」
「マーちゃんのテクニックで本気で誘惑されたら、スノー君も私だけじゃ無くて、マーちゃんにも……」
「あー……肉と魚をその時々で食べたいと思うように、タイプが違う女性だから違う味として興味を覚えられると困る感じかな?」
「……うん」
「神父君を信じてはいるけど、彼も男の子で交わると激しいだろうから、一度味を覚えると欲を忘れられない可能性があって、私はその欲望を満足させるテクニックがあるだろうから、手を出されると困る的な感じなのかな?」
「……うん」
「…………」
「…………」
「あははは! 大丈夫、大丈夫! 可愛い事を心配するなぁシアン先輩は!」
「え、ちょ、髪をくしゃくしゃにしないで! 濡れている時に髪を弄られるとお風呂上りの髪が変になる――じゃなくって、私は本気で心配しているの!」
「まるで初心な乙女な事を言うね!」
「私は一応まだ初心な乙女!」
「あははは、そっかー。でも安心して。私神父君は良い男の子だと思っているけど、交わろうとは思わないから!」
「それはスノー君が魅力的じゃないって意味!?」
「面倒だねシアン先輩。これが乙女の反応ってやつ?」
「それはどうでも良いから、なんで!?」
「なんでって言われても、私が誰でも股を開く女だと思ってない?」
「選り好みするけど、交わる事で相手が幸福になると言うならやりそうであるとも思ってるよ」
「結構言うね、シアン先輩」
「ごめん、言い過ぎた」
「別に良いけどね。ともかく私だって誰彼構わず交わらないよ。シアン先輩の言うように結構選り好みするから」
「それで、スイ君は良いけど、スノー君は駄目って事?」
「そういう事」
「スイ君とかクロとかは良くて、スノー君は駄目……なんで? 一途だから……って事でも無いんでしょ?」
「それはシアン先輩が一番よく分かっていそうだけど?」
「へ?」
「……あははは、まぁ良いや。ともかく私は今の神父君には手を出さないよ。誓わせて貰う」
「友情に誓ってくれる?」
「……私を友達と思ってくれてるの?」
「うん、そうだけど?」
「……あははは、そうだね。じゃあ友情に誓おうっか。大切な友を裏切らない事を誓うよ」
「うん、ありがとう。……ふぅ、それを聞いて安心したよ」
「あ、ちなみにだけど」
「なに?」
「私、同性だろうとイケるから、シアン先輩も――うん、友情じゃない情に誓っても良い?」
「やめて」
「あははは、冗談だよ冗談」
「……本当に?」
「うん、本当。……ところで、シアン先輩」
「なに?」
「夕食の時と比べると、なにか変わったように見えるけど……なにかあった?」
「そうだね……うん、強いて言うのなら」
「言うのなら?」
「思い悩んでいた事が解決して、ちょっとした決断をした。……それだけかな」
「ふーん? ……頑張ってねー」
「うん、頑張る」





前回入れなかった備考 シキで髪を切る場合の選択肢
①自分で切る(一般的)
②家族など身近な相手に切って貰う(一般的・クロ達)
③専門の理容師に切って貰う(主に貴族)
④ハサミをヌンチャクのように振り回す理容師に、髪を刈られるか命を狩られるかの緊張を味わいながら切って貰う(非一般的・シキでそれなりに人気はある)
⑤火魔法で髪を燃やす《セットする》理容師に、髪ごと身体を燃やされる緊張を味わいながら切って貰う非一般的・シキでそれなりに人気はある

ヴァイオレットはシキに来た当初上記の選択肢を迫られ、異性に髪を触られる事を悩みつつも②を選んだ模様。

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