追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活
子供達の恋愛観_1
シアンがよく分からない事を言いつつ俺に戦いを挑んで来たので、俺はそれに拳と足で対応した。
最近は騎士団で愛を示せだの、マゼンタさんの夢の世界での戦いだので、戦いをするのに切羽詰まったモノが多かったので、深く考えずに戦える良い機会であったし、シアンの動きがいつもよりキレが良く、結構良い戦いになったので結構スッキリもした。。
……なんだか「お前とは違うんだ!」的な感情が混じっていた気がするが、ともかくいい汗をかけたものである。
「なんだかよく分からないが、良い試合だったぞ、クロ殿。はい、タオルと飲み物」
「なんだかよく分かりませんでしたが、良い試合を出来ましたよ。ありがとうございます」
一緒に仕事をしていて、試合見ていたをヴァイオレットさんから俺は飲み物とタオルをありがたく受け取り、汗を拭く。相変わらず気の利いた対応してくれて本当にありがたく愛おしい。ここが外で、汗を掻いていなければ抱きしめたい所である。
……というか、よく分からないけど詳細をシアンに聞かず、ただあった事を受け入れて対応するヴァイオレットさんは、シキに馴染んでいるな、と、改めて思う。
ちなみにそのよく分からない事をしたシアンは、
『服が濡れたまま放置は嫌だから、お風呂入って来る!』
と言って既に帰宅済みだ。
……本当になんなのだろう、アイツ。濡れると言うほど汗を掻いていなかったと思うんだが。
「クロ殿も今日はもう帰るか? 夕食前にさっぱりするのも良いぞ」
「そうですね……」
シアンは深く考えても仕様が無いので、切り替えてヴァイオレットさんに提案された事に対して、どうしようかと迷う。
今日の領主としての仕事は終わっていると言えば終わっている。かといって仕事が無い訳では無い。なにせ領主として常日頃からやるべき事なんて多くある。
シキの領民がなにかやっていないかとか、なにかやらしていないかとか、迷惑をかけていないかとか。
後は危険は無いかの見回りや、不満な所がないかを探すのも領主の仕事だ。実際に見ないと分からない事も多いし、話さないと分からない事も――ん、アレは……
「珍しい組み合わせの子供達が居ますね」
「む? ……ああ、本当だな」
視線の先に見つけたのは、シキの将来有望な若き財産である子供達。
ロボに、エメラルドに、ブラウンにヴァイス君である。ロボは顔の部分の装甲を展開させて、綺麗な金髪と碧と翠の目が見えている。
グレイやアプリコットが学園に行ってから、あの組み合わせで見るのは初めてである。あるいは子供達は子供達同士で普段から楽しく遊んでいるのかもしれないが。
「なにを話しているかは気になりますが……邪魔はしない方が良いですかね?」
「そうだな。子供は子供同士の世界、というモノがあるからな。大人が深く詮索するのは良くない」
「ヴァイオレットさんとロボ達とは三歳くらいしか変わりませんけどね」
「それは……そうだが」
自分で言っておいてなんだが、ロボが十三歳、という事に凄く違和感がある。年齢不詳感が凄いからな、ロボ。
「だが、私達の三歳差は大きいと思うぞ。学園で言えば新入生と卒業生だからな」
「それもそうですね。…………」
「どうした、クロ殿?」
「いえ、こうして見るとヴァイオレットさんと彼らは三歳差とは思えないな、と思いまして」
「ほほう、私が老けて見えると」
「え。……あ、そういう意味では無いですよ!? 大人っぽくて、素敵だという意味です!」
「ふふ、冗談だ。そのように慌てるクロ殿は、子供のようだぞ?」
俺の誤解を解くための発言の慌てぶりに、微笑ましいモノを見るような目で見るヴァイオレットさん。……くそぅ、相変わらず乗せられて揶揄われているなぁ、俺。
「……揶揄う貴女も子供のようですね」
「拗ねないでくれ、可愛い旦那様?」
「拗ねてませんよ」
「そうか。大人なクロ殿がそう言うのなら、そうなのだろうな」
ヴァイオレットさんは俺の反応に対し、更に大人びた表情で俺の発言を認めて来た。……これでは本当に俺が子供のようだな。反論をしたいが、今反論しても全部返されて負ける気がする。
勝つ方法があるとしたら……キスとかだろうか。多分こっちからすれば勝てると思う。
「あ、クロお兄ちゃんにヴァイオレットお姉ちゃん、ちょっと来てー」
俺がキスをするか、後ろから抱き着くかを選択していると、それよりも早くブラウンに声をかけられた。とても高い身長で、大きく手で招いているためとてもよく目立つ。
「……呼ばれているな」
「ですね。行きましょうか」
呼ばれている以上は行ったほうが良いだろうと思い、俺達は一緒にブラウン達の元へと向かった。近付くとロボ達も挨拶をし、俺も倣って挨拶をする。
どうやら机代わりに置いてある小さな箱を囲ってここでなにかを話し合っていたらしい。飲み物が入っているコップが人数分置いてあるあたり、話そうという目的を持って集まって話しているようである。
「どうしたんだ。俺達になにか聞きたい事があったり?」
「あるいはなにか気になった事でもあるのだろうか」
「うん、聞きたい事、かな? 僕が知りたい事があったから聞いてたんだけど、答えが出なくてね」
普段は気付いたら寝ているようなブラウンが、寝ずに話し合うほど知りたい事で、答えが出ない事。
……なんだろう、睡眠の是非とかだろうか。
「ねぇクロお兄ちゃん。愛ってなに?」
「え。ええと……ためらわない事、かな……? あるいは悔やまない事が大切で、涙にアバヨして勇気によろしくするという……」
「なるほどー?」
「どうしたクロ殿」
いかん、予想外の質問に自分でもよく分からない事を言ってしまった。
だって七歳の子供にそんな事を聞かれるとは思いもしなかった――いや、子供だからこそ純粋に聞いたのだろうか。そして子供が故に真剣に話し合えているのかもしれない。
「うーん、クロさんのいう事は分かりますが、やはり冷静でいられない事を愛というから、第三者からは見ていると胸焼けするモノだと思うんですよね。僕も最近胸焼けするんですよ、まいっちゃいます」
「ワタシは……愛はよく分かりマセンが、やはり定義するものではなく感じるモノだと思うんデス。そういう意味ではシキには愛が溢れていマスし――つまり現実の理を無視するのが愛なんじゃないデショウか」
「領主のいう事はよく分からんが、私はやはり性欲を満たす行為を出来るかどうかだと思うんだ。性愛とて愛。男女の愛の場合は、繋がりを求めて形として結果を作り出す事こそが愛を感じる一歩だと思うんだ。私の場合は毒に対して繋がりを求めている感じだな」
いや、コイツらそこらの大人より大人だな。
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