追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

幕間的なモノ:カイハクレポート


幕間的なモノ:カイハクレポート


 我が王国にて急激に重要度が上がっている者が四名居る。

 アゼリア学園一年(当時)のメアリー・スー。
 アゼリア学園二年(当時)のエクル・フォーサイス伯爵家長子。
 アゼリア学園一年(当時)のクリームヒルト(家名、フォーサイス伯爵家に変更)。
 そして最後にクロ・ハートフィールド子爵。

 以上四名である。
 メアリー及びエクルは学園生でありながら、内外問わず注目を集めている学園生であり、クリームヒルトもメアリー同様、希少な錬金魔法を扱う学園生として注目を集めている。クロ子爵も第二王子の件(別紙参照)で、名は知られずとも界隈では有名である。
 だが、それらの“表立った理由”とは別な箇所で、二月フェブルウスから彼らに対する動きの変化が見受けられているのである。

 王国直属魔道研究兼実働部門【トランスペアレント】総括、大魔導士アークウィザードのヴェール・カルヴィン子爵。そのヴェール氏が四名との接触を積極的に行い、殿下達と共に動いている事が報告として挙げられたのである。
 これを私達騎士団は重要と見做し、騎士団副団長ギンシュの命の下、調査を行う事にした。
 今回筆者の担当はクロ・ハートフィールド子爵であるが、元は接触の予定が無かった調査対象でもある。
 だが、他三名の調査結果の影響を受け、今回私はクロ子爵の担当となった。その他三名の調査を以下に簡易的に纏める。


 メアリー・スー。
 十六歳。女性。
 平民であるスー家長女。
 アゼリア学園屈指の天才と称され、多くの変革をもたらした女学生。多くの者が彼女を慕い、彼女の獲得が今後の王国の成長に関わるともされている。
 生まれ故郷では、彼女の事を知らぬ者は居ない程度には多くの者達に慕われる存在であった。
 同時に、家族など近しいモノからは“居ない者”として扱われている様子。
 複数回の接触の末、情報を聞き出した所「あの子は間違って生まれた」という言葉のみを発し、それ以上の情報取得は難しい精神状態へと陥った。

 メアリー・スーへの調査結果。
 調査失敗。
 接触を図った所、はぐらかされた上に調査の者がメアリー信者となる(別紙【メアリー・スー洗脳能力者疑惑】及び【聖女メアリー様の尊さ】を参照)。



 クリームヒルト・フォーサイス。
 十六歳。女性。
 平民であるネフライト家廃嫡後、伯爵家フォーサイス家の子として引き取られる。
 メアリーが居なければアゼリア学園であらゆる分野の記録を塗り替えたであろう才女。目立ってはいないが、一部記録はメアリーを上回る。
 生まれ故郷では彼女の名前すらも禁句となる扱われ方であり、その性格と能力はまさに意志を持つ嵐と称されていた。
 なお、彼女がフォーサイス家に引き取られた経緯は不明。

 クリームヒルト・フォーサイスへの調査結果。
 調査失敗。
 観察をしていた所、調査担当者が「笑う女の子怖い……」とひたすら繰り返す謎の精神状態へと追い込まれる(別紙【血の粛清女子】を参照)。



 エクル・フォーサイス。
 十七歳。男性。
 既にフォーサイス伯爵家で実権を全て握っていると言える新進気鋭の貴族。
 また、アゼリア学園きっての魔法の腕前でもあり、その才覚は専門職に既に引けを取らない。
 多くの新規流通と事業を立ち上げた才覚を持ち、同時に他の貴族を取りなす交渉術を持つ。彼といかに接触し、繋がりを持つかが今後の貴族としての立ち位置に関係してくると言われている。
 ただ、怪しげな繋がりが有り。クーデターを起こす可能性があげられている。

 エクル・フォーサイスへの調査。
 調査継続中。
 エクル自身の接触が難しく、巧みな話術と行動により調査が難航するモノと思われる。なお、調査員が何故か「眼鏡ってなんだ……」という謎の精神状態になった事も追記する(別紙【眼鏡の尊さ】参照)。


 以上の結果に陥ったため、今回の件では重要度が低かったクロ子爵へ接触が必要となった。
 また、同時に第二王子の件やレッド国王陛下の御子息、御息女達の件(別紙【殿下達洗脳計画?】を参照)も上がったため、クロ子爵の重要度が一気に上がったため、迅速な接触が求められた。
 以下に調査中間報告を纏める。



 クロ・ハートフィールド。
 二十歳。男性。
 多くの問題を抱える者達の流刑地、シキの現領主。
 彼の実家であるハートフィールド家、および兄弟に調査を行った所「奇行が目立つ」との事である。実際直接見た所目立っていた。
 学園生時代の成績は勉学平均、魔法平均以下、運動面優秀。特に目立ちもしない貴族であった。

 ただ、領主としての働きはかなり優秀な部類に入る。
 問題を抱える者達をまとめ上げ、千名に満たない領地でありながら子爵家としての貢献度を要求されても問題無い程度に資金繰りを行っている。
 また、領民からも慕われている様子(※ただし扱いは悪い)。
 個として優秀なのではなく、あくまでも優秀な者達を十全に活かせる場を作る事が得意なのだと思われる。

 その他には――






 ――以上が、現在の調査のまとめである。
 ヴェール氏が接触を図った理由は不明のままであるため、今後定期的な接触が必要と思われる。


 追記。
 クロ子爵と接触する場合は、充分な注意を行う事。
 扱いは悪くとも彼らに危害を加えれば、クロ子爵を慕う者達による報復の可能性もある。というのもあるが――







「………………。いえ、可能性もある、で留めておきますか。下手な報告はシアンさんにも弾かれそうですし、それに……私の勘違いでしょう。彼は私なんかのためにも立場を気にして優しくしてくれる……いえ、甘い性格です。甘い性格だから……クリームヒルトに似た、危うさを感じたなんておかしいのですから」

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