追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

幕間的なモノ:生徒会女子ズの恋路(:淡黄)


View.クリームヒルト


「――でね。シャル君が甘いモノ好きを隠しているのは、憧れのお父さんが甘いモノ苦手だから、マネするようになって――」
「おーい、君達ー。相談があるんだけど良いかな?」
「あ、生徒会長。お疲れ様です」

 私達がカサスのちょっとした隠し設定などをスカイちゃんに話していると、会長さんが生徒会室に入って来て私達に声をかけて来る。
 ……おかしいな。内容が内容だから周囲を警戒していたのに、全く気付かなかった。メアリーちゃんも話を止めなかった辺り、部屋への接近に気付かなかったんだろうけど……流石は会長さんだ。気配遮断は尋常じゃない。

「相談ってなんですか?」
「うん。新入生歓迎の実演、戦闘なんだけど、君達に出て貰えないかなーって思ってね」
「ああ、去年は生徒会メンバーがエクル兄さん以外がボロ負けした奴の事だね」
「うん。それを言われると情けなくなるねー」

 新入生歓迎の実演、戦闘というのは、新入生と在校生が戦う場である。
 まずは在校生が身体や魔法を使ってパフォーマンスをした後、新入生代表(成績上位者)と在校生代表(大抵生徒会メンバー)が模擬戦闘を行う。
 基本は学園で実力を身に着けた在校生が勝つ事が多いのだけど……私達の世代は新入生代表がほぼ勝ってしまった。
 ヴァーミリオン殿下、アッシュ君、シャル君、ヴァイオレットちゃん、メアリーちゃん。ヴァイオレットちゃんがエクル兄さんに負けた以外は新入生側が大勝したのである。お陰で彼らの生徒会メンバー入りも早くなり、エクル兄さんと会長さん以外の生徒会メンバーは早めにやめた。

「記念すべき初カラースチルなんだよね……懐かしい」
「そうですよね、懐かしいです」
『カラースチル?』

 そしてカサスだとイベントスチルが用意された初めての場面だ。戦闘経緯は省かれて結果だけで、「何処向いているんだろうこのキャラ達」と思わせる謎の並び立ちのスチルが出る。
 ちなみにカラーというのは、その前にちょっと過去回想的なモノで白黒のピンボケしたスチルがあるという事である。

「カサスだと歓迎会に私が出るんだよね……なんか錬金魔法を使える希少性をかって代表決定! みたいな感じに。結局はメアリーちゃんが出たけど」

 そのお陰で私は「カサスの主人公ヒロインメアリーちゃんあの子だ!」と勘違いした訳だけど。

「ああ、確か二人いるから成績上位者を優先したらしいよ」
「くっ、転生高性能チート主人公め……! 今に“なにかやっちゃいましたか?”って言うんでしょ!」
「言いません。クリームヒルトは現状私を追い抜く勢いじゃ無いですか。条件だけで言えばカサスの主人公ヒロインの貴女の方がその称号が合っていると思いますよ」
「あはは、成績、身体能力、基本魔法、応用魔法、錬金魔法、美貌、コミュニケーション能力、モテぶり。あと身長。どれをとっても私より上の人に言われても嫌味にしか聞こえないよ! そして身長頂戴。足して二で割ってお互い百六十くらいになろ?」
「身長欲しいんですか?」
「うん、あと十は欲しい。贅沢を言うと十五欲しい」

 動きやすかったり、小柄は小柄故の動きがあって前世では出来ない事も出来ているので、その点はありがたいんだけど……ヴァイオレットちゃんくらいの身長になれば感じになると思うんだよね。

「十五伸びるとクリームヒルトは百六十五……彼は確か百七十後半……ああ、成程。彼に背を伸ばせば届く――」
「会長さん、歓迎会の話を聞かせて!」
「え、ええ」

 メアリーちゃんがなにやら私の要望の答えに辿り着きそうであったので全力で話題を逸らした。
 ……いや、メアリーちゃんの勘違いなんだろうけど、会長さんの話を聞かないとね!

「まずは在校生代表はヴァーミリオン君とエクル君は内定。一応メアリー君も内定かな。ヴァーミリオン君と並ぶ学年主席だしね」
「はい、頑張りますね!」
「良い返事だ」
「だとしたら何故私達に? クリームヒルトは分かりますが、私は……癪ですが、シャルの方が戦闘では上ですよ?」
「シャル君は“私は未熟者故に”って辞退したの。それで、後二名はスカイ君かクリームヒルト君、そしてアッシュ君、シルバ君の内の誰か二名を選びたいんだけど……」
「生徒会長は出ないのですか?」

 会長さんの実力はとても高い。運動も魔法も常に上位だし、一対一でも会長さんを見失う事がある気配遮断能力だ。並の相手ではなにが起きたか分からずに倒せるだろう。

「歓迎会で影の薄さで気付いたら勝ってた。……悲しくならない?」
『…………』

 それを言われるとなにも言えないけどね。春休みにやった模擬戦で何度か私達は見失ったからね!

「あと、君達のような美男美女の中に混じる自信が無い」

 そっちが本音か。会長さん綺麗だと思うけどな……それに、

「でも会長さん、最近変わったよね。好きな人でも出来た?」

 それに、最近の会長さんはなんか変わった気がする。
 今までは地味だけど素材は良くて、磨かなくても綺麗である、というような美人さんだったけど、最近の会長さんはなんか……色っぽさが追加された気がするんだよね。
 まぁ私の気のせいかも――

「…………デキテマセンヨ」
「え、なにその反応」

 会長さんがなんかロボちゃんぽい反応になった。まさかこの反応は……!

「え、誰!? 生徒会メンバーの誰かを好きになってメアリーちゃんに恨みを抱いて刺しに行く感じ!?」
「私を刺そうとしないでください!? でも誰ですかフォーン会長! 最近やけに前髪いじいじしたり手を見て溜息をしていたのは恋をしたからなんですか!?」
「ち、違――!」

 あの貴族女子の責務だからといっていた会長さんが好きな人が出来るなんて!
 私はあの時の会長さんの発言に対し心に靄を感じていたので、もし会長さんが好きな人が出来たと言うならば全力で応援するよ!

「……二人共、生徒会長が困っています。そこまでにしておきましょう」
「あれ、スカイちゃん。会長さんの好きな人に興味はないの?」
「興味はありますが……私達は知らない方が良い気がする――いえ、会長さんが誰を好きになろうと自由ですから」

 あれ、なんだろう。スカイちゃんの表情から黒兄みを感じる。具体的に言うと……黒兄がブライさんに向ける「少年を愛でるだけで手を出さないんなら良いんだけどな……」といった表情だ。……気のせいだよね?

「スカイ君の反応は気になるが……い、いずれ話せる時が来たら話すよ」
「あ、つまり好きな人が居るのは認めたね」
「…………」

 あ、会長さんが顔を赤くした。なんだろう、とても可愛い。

「ともかく今は歓迎会の話! さぁ、どうするの!?」

 あ、そうだった。
 けどどうしようかな……私が在校生代表だと在校生が文句言いそうなんだけどね……

「ちなみに新入生代表はバーガンティー殿下を始めとしたこの五名。ようは入学試験成績上位者ね」
「へぇ……あれ、アプリコットやグレイ君は居ないんですね」
「アプリコット君は運動面で外れたんじゃないかな。グレイ君は……まだ若いし学力の方かな? でも二人共ルナ組に入っている辺り流石だね」
「そうなんですね……うん、クリームヒルトとアッシュが適任じゃ無いですかね」
「へ?」

 私が断ろうと思っていると、スカイちゃんが私を推薦してきた。

「え、なんで私? 私を推薦する事で自分が戦わないようにするという逃げなの!?」
「違いますよ。そもそも私、ティー殿下やフューシャ殿下が居るのに、護衛の立場の私は出れ無いですよ。当たっても当たらなくても変に勘繰られます」
「そうかもしれないけど……」
「それに、良いアピールチャンスですよ? ……ティー殿下に強くて格好良い所を見せる、ね」

 ……………………………………。

「…………出る。けど、ティー君とフューシャちゃん相手は出来ればやめてね」

 私が間を置いてからそう返事をすると、他の皆は微笑ましい者を見る目で私を見て来た。

――……あはは、この事を覚えておくんだね。

 私は周囲から顔を逸らしながら、内心でそう思っていた。
 ……でも、ティー君は格好良いと思ってくれるかな。とりあえず戦闘中に笑う癖は治そうかな……でもティー君はなんでも喜びそうだな……よし、全力で私らしく戦うとしよう。それが一番喜んでくれるはずだ!

「……あはは、別にティー君のために頑張るんじゃないんだけどね」
「クリームヒルト、ツンデレになったんですか?」
「やかましいよ。私の事とやかく言う前に自分の事をどうにかしたら、ハーレム鈍感系主人公ことメアリーちゃん」
「主人公でもハーレムでも無いですし、鈍感でも無いです!」
『えぇー……」
「フォーン会長やスカイまで!?」





備考1:今話と特に関係無い現在のとあるキャラの身長
バーガンティー 身長:170後半
クリームヒルト 身長:150未満

備考2:今話と特に関係無いヴァイオレットの言葉意訳
「私(166cm)とクロ殿(178cm)の身長差だと背を伸ばせばキスが出来る。この身長差が良いんだ!」

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