追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

【13章:この世で一番貴方を愛している】 始まりは露呈報告(:偽)


View.メアリー


「うわぁ……」
「うわぁ……」

 日も沈んだ夕食後。とある部屋にてこの部屋を見た皆さんはどんびいていました。
 この部屋に居るのはヴァーミリオン君、クロさん、ヴァイオレット、シアンに神父様。
 そして私達が居るのは教会のお風呂場が入り口の地下室です。
 初めはここに居るメンバーは全員が地下室の存在を知っていたと思ったのですが、なんでも別の地下室もあったらしいのです。
 そして先程私とヴァーミリオン君が知らない地下室を先に見て、その他の皆さんが知らない地下室をこうして見ている訳なのですが……

「教会にずっと住んでいたけど……こんな部屋があったなんて……」
「ああ、まったく気付かなかったな……」

 シアンと神父様は自身の居住場所、さらにはお風呂場というほぼ毎日利用する場所に入口があるにも関わらず、気付いていなかった事とこの部屋の目的を考えると複雑そうな心情でした。

「拷問部屋か……過去の遺物だろうが、ここでされた事を想像すると腹立たしい」
「拷問部屋というよりは別の目的な気がしますが……」
「そうなのか? そういえば先程の部屋の鍵はここに有っても違和感ないような鍵だと言っていたが……それと関係しているのだろうか、クロ殿?」
「え。……もしかしてなんの道具か知らなかったり……?」
「チラッとしか見ていなかったからな。棒状なのは見えたのだが……なにに使うのだ?」
「……拷問の一種でしょう」
「?」

 そしてこちらはこの部屋の意図を勘違いしているヴァイオレットと、説明に困っているクロさん。
 ヴァイオレットの言う通りの目的としても使われたでしょうが、部屋の雰囲気からしてどちらかというと別の目的が……ですからね。
 ですがあれはある意味無知シチュと言えるのでしょうか。やはり初々しさには無知が必要という事なのかもしれません。つまり私に初々しさは無理という話で……それは置いておきましょう。

「こほん、ともかく、この部屋をヴァーミリオン君と見つけたんです。この部屋に関しての説明をしようとは思っていたのですが……」
「どうも俺とメアリーさんの地下の認識に違いがあったのと、あの鍵が有ってもおかしくない所、というのを考えるとまずは最初に入って説明しておこうかと」
「グレイなど未成年には見せられないのは確かだが、他の者達にもここに来て気持ちが削ぐ可能性がある。だからまずは俺達が先に来て、出来る限り気持ちを削がない様に説明する者が多く欲しかったんだ」

 今重要なのは、この場所がカサスにおける重要な場所であるという事です。
 私が見つけた本と、クロさんが見つけた本。それらがこの場所に関与していて、あまりお見せ出来ない場所という事が大切なんです。……ヴァーミリオン君の言う通り、グレイ君はお見せ出来ないですね。アプリコットも止めた方が良いかもしれません。

「こんな事ならクリに話せばよかったかな……」
「クリさんに?」
「ええ、アイツなら力がありますから、この……拘束具とか隠したり、移動するのに助かりそうですから……」

 クロさんは座る所が三角形な木馬やX文字の拘束する器具を見ながら最大限の配慮をして言います。
 というかクリさん……クロさんのあの可愛らしい妹さんですよね。なんとなく前世の私と同じ空気を感じるあの先輩が、クロさんにとっての一番の力持ちになるとは思えませんが……。

「そういえば、クリさんは先程ブラウンを片腕で運んでいたが……」
「出来るでしょうね。……さっきコンテストの待機中に、こっそり腕相撲したんですが負けましたし……」
「凄いな、クリさん……。ところで、クリさんの体重なんだが……(ゴニョニョ……)」
「(ええ、合ってるかと。……アイツも成長しているんです。筋肉の発達を筋肉で抑えるレベルなので。超人体質というやつです)」
「(そうなのか……ん、超人体質……?)」

 ……クロさんに腕相撲で勝つって、相当じゃ無いでしょうか。素で私(大体服武器含め六十キロ越え)を上空に運ぶ力ですし。腕相撲は腕力だけじゃありませんが。
 あと今なんか体重が凄い数値が聞こえましたが、気のせいでしょうか――と、また思考が逸れる所でした。クリさんの筋肉に関しては後で聞いてみましょう。

「それと、不躾にプライベートな場所であるお風呂場に入った事は謝罪いたします」
「構わないさ。理由があっての事なら咎めはしない」
「ありがとうございます。ですが……」
「だけど、この地下がある事が分かっての発見に関しては説明してもらうよ」

 私が謝罪をし、神父様が大丈夫だと仰ってくださいます。しかしなにかに気が付いているシアンは、私が言い辛く、なおかつシアンが気にしているだろう事を問い詰めてきます。
 そうですよね。こんなプライベートな場所にわざわざ来て、扉を発見するなんて、なにか分かっていないとしない事ですからね

「シアン。あまりそういう事を責めてはならない」
「え? もしかして神父様、ここに彼女らが来た理由が分かるんですか? ……え、神父様が?」
「なんだか言葉に含みを感じるが、分かるさ」
「神父様が……?」
「神父様が……!?」
「お前ら、俺をなんだと……」

 私が説明をしようとしていると、何故か代わりにスノーホワイト神父様が分かっているような物言いをします。そしてシキの皆様が驚愕します。……え、あの神父様が分かるというのですか?
 一体何故……はっ! 神父様はカサスにおいて重要な役割を持っています。まさかカサスについて、なにか気付いた事でも……!?

「……神父様。言っておきたい事がありますが」
「どうした、クロ?」
「ヴァーミリオン殿下とメアリーさんは、この部屋を目的通りの意味で使おうとしたとかそんなんじゃありませんからね」
「違うのか!」
『違います!』

 気付いたわけじゃありませんでした。というかなにを勘違いしているんですか神父様は。
 この部屋の目的通りに私とヴァーミリオン君が……………………やめましょう。衛生的にも使わない方が良いです。

「す、すまない。言い訳にはなるが、さっきからそういった方面の話題を聞いていたせいだからかもしれん」
「そういった方面?」
「ふっ、女の子は皆、イケメンに強くされる事を望むんだよ黒兄。私とパールちゃんでそれを神父様に教えていたんだよ」
「お前はナチュラルに入って来るな。いつ来た」
「気配を消してさっきからずっと居たよ」
「気配を消すなよ」

 突然現れたクリームヒルト。手をクロさんの肩に置き、やれやれとでも言いたげな表情です。……全く気付きませんでした。

「黒兄も私の少女漫画でよく見たでしょう。俺様なヒーローに対して無理矢理されるヒロインを。女の子はイケメンに無理矢理されるのを好むんだよ……!」
「人それぞれだろ、それは。それにお前が好きな漫画って、ヒロインが不良で転校を際に隠しているとか、少女漫画界の少年漫画とか呼ばれるそういう類だろう」
「まぁね! ……それにしても、わぁ……年齢層が高めの部屋だね!」

 クリームヒルトはそう言うと、改めて周囲を見ます。どうやら隠れて居たせいで周囲をあまり見ていなかったようです。そもそもなぜ隠れていたのか、というのはありますが。

「あはは、見てシアンちゃん! このエックスな拘束具回転するよ! ちょっとやってみるから回して!」
「危険だから止めた方が良いよ」
「そうだね。あ、痛くない鞭に熱く無い蝋燭だ。こういうのあるんだね」
「え、そんなのあるの? というかリムちゃんはなんで見ただけで分かるの」
「前世だと色々知識を得るのは簡単だからね。こういうアダルティな情報を得るのも簡単なんだよ。実物見たのは初めてだけど……【火下級魔法ファイア】」
「点けない点けない」

 熱くない蝋燭に火を点けようとしたクリームヒルトの蝋燭を、シアンは消して奪い去ります。なにが仕込まれているか分かりませんからね。この世界では薬というか、そっち系の魔法も無い事は無いですし、火を点けたら文字通りなにか魔法が充満するかもしれませんし。クリームヒルトもそれに気付いてはいるので、すぐに消せるようにはしているでしょうが。

「じゃあはい、神父様。痛くない鞭だよ。人用と馬用と牛用と縛る用だよ」
「これを俺に渡してどうする気だクリームヒルト」
「え。……シアンちゃんに使う? 喜ぶだろうし」
「使わない」
「あと喜ばないから」
「そっか、シアンちゃんが使う側か……」
『違う』

 ……というより、クリームヒルトがいつも以上にグイグイ行っているのは気のせいでしょうか。
 普段と変わらない気もしますが、なんと言いますか、先程の料理の準備の時もそうですが、なにかから目を逸らしているような気がします。

「クリームヒルト、そこまでにしておけ。メアリーさんが大事な話をしようとしているんだ」
「あはは、りょうかーい」

 クロさんはクリームヒルト頭に手刀を軽くいれ、鞭を取り上げます。
 ともかく、この部屋を見つけた理由ですね。本当は後で皆さんが来た時に話そうとは思っていましたが、簡単に説明……いえ、先に説明をしておいた方が良いでしょう。簡単ではなく、言葉を濁さずに。

「それでええと……メアちゃんがヴァーミリオン君と一緒にこの部屋で熱い鞭で抱擁を……じゃなくって、部屋を見つけた理由はなに?」

 シアンは混乱してますね。

「見つけた理由は簡単です。私はこのシキの何処かに地下空間があり、過去の重要な情報が記された本が事を以前から知っていたからです。正確には、私がこの世界で生を受ける前からです」
「……つまり、さっきのクロが見つけたり、メアちゃんが見つけた本の存在をメアちゃんは知っていたという事になるのかな」
「はい」
「あはは、ちなみにだけど私もその本の存在は知っていたよー。黒兄は……」
「朧気だが知っていた。多分エクルもな。だが、この場所にある事は知らなかったんじゃないか? だからメアリーさんも今まで放置だったわけだし」
「だねー。というか、地名を分かる手掛かりとか殆ど覚えていない訳だしね」

 ……私の場合は、以前からこの地にある事を知っていたとしても、「ゲーム的には後から手に入る重要アイテムです! だからしかるべき時まで放置しましょう!」と、なっていた気がしますがね。

「それはつまり……クロ殿達が居た前世が、“別世界”という訳では無く、“この世界の過去”だったという事か?」
「話を聞く限りでは、文明そのものが違っていそうだったから別世界の類と俺も思ったが……確かに輪廻転生基準で行けばその可能性が高いな」
「そもそも私達のクリア教的には輪廻転生も少し危ういですが……ローちゃんの外装がクロの居た世界でもあったように、もしかしたらクロ達の居た世界は遥か昔で、古代技術アーティファクト扱いになるほど昔で……」
「その昔にあった記憶を頼りに、この場所に……いや、そこまで古くは無いな、この場所は」
「文明が古代になる程に昔だったら、本とか読めるほど残らないだろうしね」

 皆さんが各々私達の言葉から予測を立てます。
 確かに私の世界には魔法が無かったように、成り立ちそのものが違いますから、別世界から来たと説明をしていたので、その解釈は間違いないですし、そう誤魔化していた訳ですからね。

「あるいは今世か前世が遥かにかけ離れた世界、という可能性もあるにはあるのでしょうが。私がこの地下や本の存在を知っていた理由は別にあります」
「この部屋を、か」
「この地下の部屋の目的は知りませんでしたが、この本がシキにあると知った理由ですが……」
「……え、俺?」

 ヴァーミリオン君が何故か複雑そうな表情をしましたので、訂正をしつつ、私は神父様の方を向きます。

「神父様……いえ、スノーホワイトさん。貴方がこの地で神父をしている事が理由なんですよ」
「え、俺が居るのが理由? この地下の存在は本当に知らなかったんだが……」
「いえ、貴方が神父を務めているという事と、ヴァイオレットがこの地でシスターとして送られる可能性があったのが、この本の所在を明らかにしたんです」
「……私も?」

 私は一つの本、先程存在だけを皆さんに報せた本を取り出します。

「この本はスノーホワイト神父という名の神父と、シスター・ヴァイオレット・バレンタインが罪によって送られた、封印されしモンスターの被害跡地の地下にあった代物なんです」
「……私がシスターを務めていて」
「俺が居た、被害跡地?」
「はい」

 私はパラパラと本をめくり、あるページで止めると皆さんにそのページを見せます。
 皆さんが注目するページに書かれていたのは、とあるモンスターが絵で書かれているページです。
 その絵のモンスターは抽象的ではありますが、確かに“大型竜種ドラゴン”と分かる絵です。

「――私達は、この国の将来を知っています」

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