追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活
ある意味神々しい(:菫)
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「さぁ、参加者も残り五名! ――そして賢国民かつ観客達、分かっているだろうか」
ルーシュ殿下の猫耳装着をどうにか止め、代わりのアピールをさせる事に成功した視界のスカーレット殿下。
妙に疲れた様子であるが、気を取り直すかのように次の紹介に移行する前に前口上を述べる。
「今はシキや軍・騎士の皆が多く居るけど、学園生から始まったこのコンテスト。そんな諸君は期待していたのではなかろうか。そう――残りのメンバーの登場を!」
まだ登場していない残りの五名。
それはあのメンバーならばこのコンテストには残ると断言出来て、まだ出て来ていないあのメンバー。
学園でも人気があり、クロ殿やグレイには及ばずとも魅力的と言える外見を有している学園生。
貴族の中でも集まる姿は華やかであり、婦女子の間柄では国の宝とすら呼ばれる美しき令息、あるいは殿下、または少年。
「では、行くよ――」
そう、彼らは――
「とある、多くの男子を侍らせながらも特定の相手を作らない金髪女子を愛してやまない愛に狂った男共の登場です!!」
「その言い方止めて下さい!?」
そう、彼らはメアリーを愛してやまずにこのコンテストを開催するキッカケを作った、バ――現生徒会の男達である。
◆
「エントリーナンバー10! 言葉数は少なくとも、その視線だけで異性を痺れさせる! シャトルーズ・カルヴィン!」
『わー!』
『シャトルーズ様―!』
「斯様な場は不慣れであり、私自身修業中の身。相応しくはないとは思うが、私なりに頑張ろうと思う」
「固い! 固いですよシャトルーズ! もっと自分をアピールしないと勝てないよ!」
「ぐ……ですが、スカーレット殿下。アピールしようにも、私の武器である刀が無い以上、アピールもなにも……!」
「刀無いとアピールできない時点でね……じゃあ質問コーナー行こうか。ルーシュ兄様と同じワフクだけど、なにか違いますね。あと眼鏡とは珍しい」
「私の武器はこの服の国が発祥ですからね。着た事があるのですが、ここ最近着て無かったので、アピールには良いかと。あと眼鏡は雰囲気作りです」
「ほう、成程。ルーシュ兄様はドンと言う感じでしたが、こちらは若頭、みたいな感じですね。実力を隠しても隠しきれない感じです」
「その評価は複雑ですね……あ、ふと思い出しましたが、アピール出来ることがありました」
「ほう、それはなんでしょう」
「刀を使わない舞を――」
「……クリームヒルト。私はナマモノは苦手です」
「うん」
「カサスでもカップリングは妄想しましたし書きましたが、実際前にすると駄目だと気付きました」
「うん、言いたい事は分かるよ。転ぶとは違う奴だね」
「それを前提で聞いて欲しいのですが」
「メアリーちゃん。言わなくても分かるよ――左だね」
「ええ、間違いなく。今のシャル君は左です。ストレートでも構いません。その場合は……」
「組長のお嬢様と、そのお世話係を命じられた組長に恩義がある若手」
「そうです!」
「そうだね!」
「アプリコット君。これは君がさっき言っていた日本語というやつで良いのかな?」
「意味が分かりにくいので言いたいことは分かるのだが、それは王国語である。――おお、シャトルーズめ。あのように舞う事が出来るとは……流石ライバルである」
「問題はあの光景を一番見せたいだろう相手に見せられていない所だな」
「なにを言っているんです、ちゃんと見てますよ!」
「うん、私だって見ているよ! 舞う事によってはだける胸元良いよね!」
「黒インナースーツも良いですが、やはりこれも……」
「舞う姿を見てあげなさい」
◆
「エントリーナンバー11! 高身長、柔和な笑み、男性にしては長い綺麗な髪! 実力もありあらゆる面に秀でた苦労人美男子! アッシュ・オースティン!」
「こんにちは皆様。このような場所に立てたのも皆様のお陰です。なにか出来る訳では無いですが……一つ望むように動いてみましょう。どうぞ観客の皆様、仰って見て下さい」
『投げキッスー!』
『グレイ君みたいにターン!』
『ウインクー!』
「おやおや、これは困りました。ですが望まれたからには――ふっ!」
『キャアアアア!!?』
「おお、アッシュがターンしてウインクして投げキッス! 観客の女性陣が凄い事に!」
「ご期待に応えられたようでなによりです」
「さすが学園一計算高い男。とある女性とトップになるために、アピールを観客のいう事を聞くという形にするとは、頑張りますね」
「おや、なんの事でしょうか。私は私なりに頑張っているだけですよ。計算高いなんてなんの話でしょう」
「ですがカーバンクルを使って、絶妙な風加減で綺麗に魔導士服を舞わせてみせたでしょう。精霊の無駄遣いですね!」
「はは、私とこの子は厚い信頼関係が築かれていますから。私を良くなるように“演出”してくれたのでしょうね」
「その微笑みでどれだけの女性を惑わした事やら!」
「笑顔は武器ですよ。麗しき女性達を喜ばせるためなら、私はいつでもこの笑顔を女性に向けましょう」
「ですが、その微笑みで最近増えている気苦労を隠しきれなくなっているようですが」
「…………笑顔は防御ですよ」
「否定はしないようです」
「クリームヒルト、メアリー。アッシュはそんなにも苦労が増えているのか? ああ、いや、侯爵家ならば仕様が無い話だが」
「いえ、最近うちのクラスやその他の面倒事を背負っているようで」
「面倒事?」
「あはは、私と一緒に最初にシキに調査に来た時のメンバーがシキの皆の影響で色々やっているんだよ!」
「私も手伝っては居るのですが、アッシュ君はクラス長として色々と……」
「……なんというか、すまないな」
◆
「エントリーナンバー12! 幼さは残るが時折見せる男らしさに胸キュンする事間違いなし! 銀髪が美しく靡く美少年、シルバ・セイフライド!」
「よ、よろしく、お、お願いします!」
「おや、緊張しているようですねー。リラックスですよリラックス!」
「わ、わか、分かってまする!」
「うーん、見事に飲まれちゃってるね」
「シルバは誰かに……多くの誰かに見られるというのが苦手だろうからな」
「騎士のような服も憧れて着たんだろうけど……ちょっと服に着られている、って感じだね」
「でもそのアンバランスさが良い、っていうのはあるのだけど」
「このままでは勝てるものも勝てぬであろうな」
「皆さん、厳しいですね……」
「じ、実は! アピールしようと思い変わり種を仕込もうかと思いまして!」
「お、動いた」
「自分で変わり種言う辺りが可愛いですね」
「ほう、それはなんでしょう」
「うん、こういうコンテストでは水着を着るものだと聞いたから!」
「はい?」
「でも既定の服を着ないと駄目だから、下に仕込んだんだ! 今脱いで――」
「駄目、駄目です! 脱いじゃ駄目!」
『良いじゃないですかスカーレット殿下―!』
『やらせてあげましょうよー!』
『そうです、規定内ですよー!』
『美少年のストリップ見せろゴルァ!』
「おいこら最後!」
「期待に応えるためにも、やっぱり脱ぎます!」
『ヒュー!!』
「ヒューじゃない!」
「おいメアリー。あるいはクリームヒルト」
「誤解です。私は無実です」
「あはは、なんで私にふるのかな?」
「日本ではこういうコンテストの時に水着を着るのだろう? ……お前達が吹き込んだのでは?」
「え、ミス&ミスターコンテストって世界中で水着も含まれるのではないの?」
「リムちゃんの認識が気になる所だね……」
「でも私は吹き込んでないよ? 吹き込むならシュバルツさん指定の服を着せるよ」
「いや、あれを着る者は……居ないだろう」
◆
「さぁ、シルバ君のアピールも上手く行ったところで次に行きましょう!」
シルバはあの後、冷静さを取り戻しなんとか普通にアピールに成功した。
その前の出来事自体は後からお思い返せば恥ずかしくて身悶えそうではあるが、それも経験という事でいずれ乗り越えて欲しい。とりあえず私はこの件には触れないで挙げようとは思う。
ちなみに後から知ったが、水着云々は普通のアピールでは他の生徒会メンバーに勝てないからと悩んでいる最中、クロ殿やクリームヒルトが話しているのを偶然聞いて、コンテストでは水着を着ると良いと勘違いしてあのようにしたらしい。
「甘い声、私より年下だけど感じる確かなお兄さん感ある包容力!」
ともかく残りは二名。ヴァーミリオン殿下と……エクル。
そして今の紹介からして次に出て来るのはエクルであろう。
……先日の件で、私の決闘も含め色々と裏で行っていた事を知った、クロ殿やクリームヒルト、メアリーと同じ前世の記憶持ち。
色々と思う所はあったが……今更なにか言うつもりは無い。
迷惑をかけたシキの面々に許された以上はそれ以上は言うつもりは無く、約束通り“前世の事は話さなかった”し、“学園生には仮面の件は話さなかった”。
ならば後は最後の私の頼みを聞いてくれればいい。それが叶えば私は充分だ。
シアン達はなにか思う所もあるようだが、私と同じで特に追及はしないようだ。
「まさに外見も中身も合わさった美形! エントリーナンバー13!」
そしてそのエクルが登場する。
服装は誰が選んだかは分からずとも、メアリーを喜ばせるためにメアリーが選んだ服を感じ取って着ていそうである。
ならば白系統かと思いつつ、エクルの登場を待つ。
「エクル・フォーサイ――ス!?」
『!?』
だがエクルが着て来た“服”に皆の者が驚愕する。
反応からして他の参加者も知らなかったようである。
今のエクルは皆が驚く格好をしていた。審査員が選ぶ服の中で、これを選ぶ者は居ないだろうと誰もが思っていた服。それをエクルは着て登場した。
そう、その服とは――
「――皆様、こんにちは。エクル・フォーサイス。指定の服である薄手布一枚での登場です」
「何故それを選んだの!?」
エクル・フォーサイスは、シュバルツ指定の全裸に薄手の布一枚で登場した。
『キャアアアア!?』
『ウォオオオオ!?』
「何故男も喜んでるの!?」
そして観客席から嬉しそうな声が男女問わず沸き上がった。
備考:それぞれが選択した服
ヴァイオレット:和服
シアン:騎士服(白)
アプリコット:魔導士服(黒系統)
クリームヒルト:燕尾服with白手袋
メアリー:白を基調としたスーツのような服
シュバルツ:薄手の布一枚(絵画で天使とかが纏っているようなヤツ)
次話は続きではなく、六百話記念になります。ご了承ください。
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