追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

デート、淡黄と赤紫+Fの場合_1(:淡黄)


View.クリームヒルト


 デート。
 ようするに親密な、あるいは親密になろうとしている者達が場所を決めて仲を深める行為である。
 生憎と私にデートの経験は前世も含めてない。ゲームの世界だと猛者と言えるレベルでの経験はあるのだけど、流石に二次元とリアルの違い位は弁えている。
 リアルだと前世で仲の良い男子と出かけたりはした事は有るが、他の男子、女子がいたりしたのでアレはデートでは無いだろう。遊びに行った、という程度だ。
 そういう意味では今日もデートとして誘われたとはいえ、男子一名、女子二名なのでデート言われると微妙かもしれない。

『そ、それではよろしくお願いしますね、クリームヒルトさん!』
『あはは……うん、よろしくね』

 だけど相手の男の子は勇気を出して私なんかを誘ってくれた。私なんかに一目惚れをして、初恋をして、面倒な性格と知っても好きでいてくれると言ってくれた、私より遥かに偉い立場の男の子。
 私が適当に生きている間も、あらゆる責任や重圧を受けて育って来たであろう、男の子。好きかどうかは分からないし、一目惚れ告白を受けた初めは断る気しかなかったが、昨日の件に関しての事も有り、私は彼に応えるべきだと思い、デートを受けた。
 とはいえ、彼の……一応護衛という事になっているエフちゃんも一緒だけど。
 ただ都合で二人きりになれないだけであるし、一緒に居る女の子は最近仲の良くなった子だ。今私達は三名で仲良くなるために、そして互いを知るためにデートをしている。

「デートと言えばデート用の服に着替えたり、手を繋いで歩いたり……」
「……互いを……知るために……相手の特徴を……知ったり……」
「美味しいモノを食べあったり、協力してなにかをするとかでしょうか?」
「そんな所かな?」

 だからこうしてデートと言えばで思いつく事をしている。
 生憎と私達は誰もデートの経験が無いので、こうしてそれっぽい事を言って実行するしかないのだ。黒兄とかが居ればアドバイス貰えただろうけど、黒兄達は今頃空を飛んでいるのでそれも無理な話だ。
 まぁ、居ないものは仕様が無いので、思いつく限りのデートっぽい事をする事になった。

「あはは、皆で手を繋いで歩こうー! デートは手を繋いで歩くものだからね!」
「そういう……ものなの……?」
「うん、私が見た中でも手繋ぎイベントはよくあったからね!」
「イベントですか? それはともかく、デートですから……」
「うん。不公平が無いように平等に手を繋ごう!」
「ですね!」
「……歩き辛いね……」
「輪になっているからね!」

 手を繋いで歩く。
 だけど並ぶと誰かが両手に花な状況になるので、全員が平等に繋げるようになるために輪になって手を繋ぐことにした。くるくる回って楽しい!

「デートと言えばおめかし! という訳で普段着慣れない勝負服を着るんだよ! という訳で私がエフちゃんの服を!」
「私が……ティー、様の服を……ぶかぶか……」
「そして私がクリームヒルトさんの服を! スカートは恥ずかしいので上着だけです!」
「あはは、似合ってるよ!」
「クリームヒルトさんも似合っていますよ!」
「ふふ、フードを被る事による謎の女感が出ている……! エフちゃんも王子様っぽいね、格好良い!」
「そう……? えへへ……」

 おめかしをする。
 だけどすぐに服は用意できないので、互いの服を交換して着る事になった。これなら普段着慣れないからね! ちなみに歩き辛いのですぐに戻した。

「互いの特徴を知る……裸の付き合――はやめとくとして、知るとしたら……」
「知るとしたら?」
「殴り合いだね!」
「あ、知っています。拳と拳の殴り合い! ルーシュ兄様とヴァーミリオン兄様もやられていました!」
「え……やるの……? うん、やろう……くんずほぐれつ……!」
「あはは、二人とも乗り気だね!」

 互いを特徴を知る。
 そのために思いをぶつけるために装備を捨てて殴り合おうとしたり。
 なお通りかかったスカイちゃんに止められた。なにをやってるのかと説教を喰らってしまった。

「よし、一狩り行こう」
「はい?」

 その一言で、私達は森へと入っていった。

「お腹に当たれば十点! 頭をに当たれば五十点! いじめは良くないけど弱肉強食、大人しく肉になれ!」
「クリームヒルトさん、落ち着いてください! っと、エフ、そちらに行きましたよ!」
「うん……拘束する……! 今だよ……クリームちゃん……!」
「ふふ、私達のデートの礎となるために──左、右、右、左、左、右!」
「なっ、クリームヒルトさんの拳の動きが見えない……!?」
「打つべし! 打つべし! そしてラストの――治った腕で繰り広げられる黄金の左!!」

 美味しいモノを食べあったり、協力してなにかをする。
 ティー殿下が私の好きなモノを知りたいというので、そのために狩りをする事になった。私の好きなモノは肉だからね! という訳で皆で狩りである。

「ふいー、皆でやると狩りも早いねー」
「私……皆で……狩りをやるの……初めて……デート……凄い……!」
「皆さん、焼けましたよー。はい、取り分けるのでクリームヒルトさんが錬金しつくったお皿に取り分けますよ」
「ふふふ、ティー殿下。こういうのは取り分けずにかぶりつくのが良いんだよ!」
「な、なるほど、スカーレット姉様もそのような事を言っていました!」
「でもある程度は……分けよう……?」
「うん、そうだね。――あ、そうだデートの食事の必須イベント! はい、あーんをしないと!」
「それは……伝説の……デート行為……!」
「という訳で、ティー殿下、はい、あーん」
「は、恥ずかしいですよ……!」

 デートと言えば互いに食べさせ合う「はい、あーん」が定番だ。……多分。
 という訳でとった獣の美味しい部位をティー殿下に食べさせよう。
 肉塊で私の顔くらいの大きさはあるけど、かぶりつけば問題無いはず!

「ふぅ……美味しかった……お腹……いっぱい……」
「ええ、とても美味しかったです。クリームヒルトさんの下処理のお陰ですね」
「あはは、お肉は焼いて塩をかければ美味しいからね! 自然と覚えちゃったよ!」
「やはりこの辺りは経験の差ですかね」
「だね……」
「あ、この後はどうしますか?」

 慣れない食事にティー殿下とエフちゃんが慌てるという可愛らしい事があったりした皆でお肉を食べあう食事も終わり、次の予定をどうするかを皆で考える。

「デートだから、欲しいモノでも見て回ろっか?」
「そうですね、なにか欲しいものはありますか?」
「錬金魔法の素材のグリフォンの爪」
「じゃあ……私は……グリフォンの羽……幸運を……呼ぶらしいから……」
「あ、確か近くに目撃情報があったはずですね。場合によっては討伐して欲しいとか」
「そうだったね。じゃあこの後のデートは……」
「グリフォンの……討伐……!」
「だね! じゃあ行こう、次の討伐デートへ!」

 うんうん、デートで仲良く食事をとって、これからどうするか相談するなんて、まさしくデートの醍醐味だろう。
 食事も皆で狩ったが故に達成感も共有出来て、独りで食べるよりも、何倍も美味しく感じた。話し合ってデートの予定を立てるのも楽しい
 今まで私はデートを知らなかったのだが、デートって結構楽しいんだね、知らなかったよ!

「いや、こんなのデートじゃないです!」

 そしてティー殿下は大きく叫んだ。
 ……うん、流石に私も違うと思い始めてたよ。
 楽しいは楽しいけど、甘くもなんともないよね。

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