追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活
第二王女は理解する事を諦めた(:灰)
View.グレイ
「マキシマムクラスターキャノン、ファイア!!」
そして飛翔小竜種は、ロボ様により薙ぎ払われた。
流石はロボ様、私には倒せないB級モンスターを一撃で倒すとは!
「え? ……え?」
そして目の前で起きた事が理解できないかのように目をパチクリとさせていた。ロボ様の実力を始めて目の当たりにした方がよくなる反応である。しばらく見ていなかったので、少し懐かしい表情だ。
「大丈夫か、レット。……うむ、怪我は無いな。よし。木々は多少薙ぎ払われたが、仕様があるまい」
「急ニ現レマシタネ。餌ヲ求メル――ト言ウヨリハマルデ……」
「なにかに引き寄せられるかのようであったな」
「私めから襲い掛かったようにしか見えなかったのですが、そうなのですか?」
「ああ。ワイバーンは餌を求める急降下時には、凶悪な爪を獲物に向けるのだが今は移動の際かのように頭を下に――」
「待って。今のなに。今のロボから出た一撃を普通に終わった話かのように進めないで」
私は居た場所からどうにか出て、エメラルド様とロボ様もスカーレット様へと駆け寄る。そして怪我が無いことを確認すると、何故ワイバーンという存在が現れたのかを話し合おうとし、スカーレット様に止められた。
額に手を当て、今起きた事を必死に理解しようとしているように思える。
「大抵の輩はコイツの今のヤツを見たら精神が不安定になるから、落ち着いてから話すようにしている。……今のお前は、理解出来るほど落ち着いているか?」
「……うん、大丈夫。出来る限り理解するから、説明をお願い」
エメラルド様が確認し、ロボ様が今のワイバーンを消滅させた攻撃について説明をした。
しかしながらロボ様自身も何故あのような攻撃が出来て、どういった仕組みなのかは理解できていない。撃ったら数日は撃てず、上空に撃たないと地形を変化させるのでクロ様に地上に撃つことを禁止されているなどの曖昧な説明となっていたが。
「……分かった。よく分からないけれど、分かったよ」
流石は王族の方だ。こんなにも短期間で理解できるとは、素晴らしい才覚の持ち主なのだろう。私はその事をとても尊敬する。なんだか深く考えてはいけないとばかりの表情で、とりあえず納得しているように見えるのは気のせいだろう。
そしてスカーレット様は顔をあげ、ロボ様の攻撃で僅かに残ったワイバーンの残滓? に近寄り、軽く分析をしようとされて……見た所で訳が分からないと諦めていた。
「ワイバーン……一匹でも出れば軍が出動するか高ランクの冒険者のパーティーが組まれるレベルの危険モンスターが何故シキに……? いや、それを一撃で屠ったロボはなんだって話だけど……」
「イエイ」
「……まぁそこは良いや。なんでシキにワイバーンが来たんだろ?」
ワイバーンはB級モンスターだ。B級とはスカーレット様が言われたような対応をされるモンスターである。ワイバーンの場合は爪の殺傷能力の高さの他に、飛行スピードと上空からの炎攻撃によりランクが高い。
だが、ワイバーンは山間を縄張りとしているモンスターであり、基本的に縄張りから出ない。なのでシキに来るというのはおかしいという事をスカーレット様は疑問視していた。
「それに、私に向かってきたみたいだったよね?」
「エエ。ワタシモ、危険信号ガアッタノデ、チャージダケハシテイタノデスガ、レットクンニ向カッテ行ッタノハ驚キマシタ」
「私に向かってか……はっ! まさかロイヤルな血を求めて!?」
「そうなのですか!? 王族の血にはやはり隠された力が!?」
王族にはやはり隠された力があるのだ! アプリコット様が以前仰っていた「王族には禁忌とされている力が……」と言っていたのは間違いでは無いという事なのか!
王族の血を捧げる事で、王城の地下深くにある封印されたモンスターが眠る扉を開くことが出来ると言う、王族の血……!
「あ、ゴメン冗談だよグレイ君。というかやはりってなに」
「レット。そういった冗談はコイツに通じないから止めておけ」
「みたいだねー」
なんだ、違うのか。……いえ、禁忌とされているのだから誤魔化しているのかもしれない。禁忌は吹聴するものでないという事だ。よし、私も冗談という体を装っておこう。
「ともかく、一度シキに戻ってクロ君に報告した方が良いね。目的のものは見つかったし、今日は警戒して帰ろう。あ、一応目印だけ残しておこう」
スカーレット様の言葉に、私は頷き帰る準備をする。とはいえ、山茶水仙花など手に入れたものを持った鞄に入れるなどだが。
エメラルド様は籠の中に入っている、一番大きな植物(当然毒有り)を雪を掻き分けて目印として植えようとしていた。
「そういえば……」
「ん、どうしたのグレイ君」
私も植えるのを手伝おうとしたが、エメラルド様とロボ様だけで特に手伝う事が無かったので待っていると、ふと思い出した事があった。
私の言葉に、スカーレット様は疑問顔で質問してくる。
「クロ様が以前、大型竜種の復活を心配していたような事が有りまして」
「ドラゴン? 伝説に近い存在の、A級モンスターの事?」
「ええ」
確かあれは私が学園に行きたいと伝えた時の事だったか。
ドラゴンの復活が近々あるような事を呟いていた。後でその事を聞いてみると、
『あー、なんでもない。適当な予想だよ。……けど、グレイもなにか気になる事があったら教えてくれ。最近モンスターの生息域が変わっているらしいから、なにかの兆候かもしれないからな』
と、少し不安そうな複雑そうな表情をしていたのを覚えている。
クロ様は偶に妙な言葉を使う時があるが、その時と似た雰囲気と言うべきか……ともかく、クロ様とも父上とも違う言葉で話しているようであった。
「……ふーん、ドラゴン、ね」
私がその事を説明すると、スカーレット様は顎に手を当てながら不思議な表情をしていた。……どうしたのだろうか?
「おーい、とりあえず目印はしたから帰るぞー」
エメラルド様が目印を植え終え、私達の所に寄って来る。
するとスカーレット様は先程までの表情を止め、微笑みながら感謝の言葉を述べていた。
「ああ、毒木よ……必ず迎えに行くからな……」
「というか、それ目印にして大丈夫? 土が汚染されたりしない?」
「生物が摂取しない限り毒にはならないから大丈夫だ。それより、ロボ。お前は少し注意しろよ。さっきの一撃後で、機能が落ちているのだからな」
「オ気遣イアリガトウゴザイマス。デスガ、マダイケルノデ、大丈夫デスヨ」
エメラルド様が植物との別れを惜しみながら、ロボ様に注意を払うようにするのと、私達にロボ様の状態を確認させるように言葉を掛ける。
さて、色々と気になる事は有るが、報告の為に戻らないと。
「……? ナニカ、妙ナ音ガシマセンカ?」
「え? …………特に聞こえないかな」
「ソウデスカ? ……気ノセイカモシレマセン。警戒シ過ギタヨウデス」
「でも気になったのなら警戒するに越した事はないね。皆、一応頭の隅に入れておこう」
「はい」
「了解デス」
「分かった」
「じゃ、帰ろうか」
ロボ様が何処か遠くを見るように帰る方向とは違う方向を見て、妙な音を感じ取っていた。スカーレット様は警戒し、異常がないことを確認するとロボ様が見た方向にさり気無く移動し、その方向からなにが来ても良いように警戒心を抱きながら帰ろうと私達に言う。……流石は冒険者。慣れていると言うべきか。
「じゃ、足元に注意して――」
そして警戒して皆が居る所へ戻ろうとした所で。
「――え?」
上空から唐突に現れた先程のとは違うワイバーンが、私達に気付かれる事無く唐突に現れ。
「――ガ、ッ!?」
その凶悪な爪を深々とロボ様の身体へと突き立てていた。
「ロボ様!?」
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