追放された悪役令嬢と転生男爵のスローで不思議な結婚生活

ヒーター

要観察対象への調査報告書


View.?


「おや、ヴェール君。こうして直接会うのは久しいね。相変わらず人体実験をしているのかな」
「学園長、それは適当に広めた噂で私はしていませんよ」
「フフッ、分かっているよ。それで今日は国のモンスター調査報告書の提出かな。直接とは珍しいが」
「そちらもありますが、別に要観察者の調査報告書も提出しようかと。所用で寄る用事があったので、直接来ました」
「ほう? では見させて頂こうかな。ヴェール君の調査報告は私の知りたい事が纏めてあるから好きだよ、楽しみだ。では――ほう、彼からか」
「…………」


【 要観察対象への調査報告書
 今回以下の要観察対象に対しての内容が更新されたため、ヴェール・カルヴィンによって内容をここに記す。


 クロ・ハートフィールド(20) 人族 男性
 12月25日生まれ
 身長178cm
 素晴らしい肉体を持つ、アゼリア学園途中卒業後、シキの地を治める男爵領主(5年目) 】


「…………ん?」
「どうかされましたか、学園長?」
「い、いや、なんでもない。続きを読もう」


【 なお、シキという地は代々引き継ぐものではなく、とある要件を満たした貴族が治める地であり、元はハートフィールド家の領地ではない。現在はクロ・ハートフィールド男爵の領地となっている。
 学園生時代の学力は平均程度。
 純粋な運動能力に関しては歴代でも上位に入るが、魔法関連は可程度のため騎士団など軍部では有力候補上げられなかった。しかし一年時の学外実地研修にて優秀な功績を収めたため、騎士団としての勧誘を進める予定だったと騎士団長クレールからの回答を得られた。
 戦闘能力が高い、というよりは巧いという印象が先に受け、魔法や危機に対する反応が優れ相手の隙をつく事に長けた戦闘強者。シキでの魔力暴走事故(資料A参照)において聞き取り調査行った所、シキの領民が「領主が広範囲魔法以外に当たるとは珍しい」と口を揃えて言われる程度には普段から魔法危機察知に優れているようである。
 その後一身上の都合によりアゼリア学園を途中卒業。なお、現在確認中ではあるがこの卒業に関してカーマイン第二王子及びローズ第一王女、スカーレット第二王女が関与した形跡があり。
 領主としては慕われており、領民からの評価は良く、問題に対しては現場に自ら赴いて解決する傾向があり。
 奴隷の身分であった義理の息子を持つ。
 男爵自身が女性との必要以上の接点を持たない傾向にあったが、現在はバレンタイン公爵家長女、ヴァイオレットと夫婦となっている。なお、こちらも現在確認中ではあるがこの婚姻に関してはカーマイン第二王子及びローズ第一王女が関与した形跡があり。
 奇妙な事を言う傾向にあり。
 精神状態に問題はなく、妄想癖があると思われているが、予知と既知感を持っている可能性もあり。
 そしてなによりも突出すべきは肉体である。
 密度が高いにも関わらずただ硬いだけではなく柔軟性にも優れた筋肉は前述した戦闘能力に十全に活かされており男爵自身が動かし方を理解している動きを―――― 】


「……ヴェール君。この後の文章、クロ君の肉体についてしか書かれていないのは気のせいかな」
「その通りですが?」
「その通りですがじゃないよ。彼運動能力が素晴らしいとは学園生時代にも聞いていたけど、そんなに重要かい?」
「一番重要じゃないでしょうか?」
「そんな純粋な目で……よ、よし。後で目を通すとして次に行こう」


【メアリー・スー(15) 人族 女性
 3月14日生まれ
 身長169cm
 素晴らしい肉体を持つ、アゼリア学園生徒(1年生)。平民 】


「…………」
「学園長、何故頭に手を置くのですか?」
「……いや、なんでもないよ。うん、重要な情報だからね」
「?」


【 学力、魔法技術、身体能力全てがアゼリア学園歴代最高水準クラス。
 希少魔法である錬金魔法にも精通し、地水火風光闇の基本属性だけではなく希少魔法も取り扱う優秀な学園生。
 今までには無い視点で新たな道を開拓をし、既に研究機関及び軍部からも飛び級を含めた勧誘をされている。
 しかしメアリー・スーは自身が「学園での経験は何事にも代えられない」と述べ、現在は全ての勧誘を断っている。
 多くの貴族と親しいが、特別な関係になっている男性はいない模様。この件に関しては博愛主義ではなく、親しくなる事自体を目的としている可能性が有り 】


「親しくなる事自体を目的?」
「はい。彼女自身が別の目的を持って、行動している傾向にあります」
「……ふむ」


【 第三者の言葉を借りる傾向にあり。(例:お節介に悪意を持たない者は居ない)
 メアリー・スー曰くとある本に書かれた倫理的言葉であるそうだが、何処で読んだかは不明。幼少期に読んだので本の題名も不明との事。
 精神状態に問題はないため、自身の言葉を第三者の言として述べる傾向にあるとも思われるが、予知と既知感を持っている可能性も有り。前記のクロ・ハートフィールドより顕著であるため、監視の必要があるが、メアリー・スー自身の危機察知能力も高いため魔法従事者は高位の者でなければ監視すること自体が危険と思われる。
 肉体が素晴らしく、女性特有のしなやかさの他に均整のとれた―― 】


「よし、次に行こうか」
「何故です!?」
「何故ですじゃないよ。明らかに肉体言及の部分が多すぎるから、読んでいては時間がかかる。……後で読むから」
「ならば良いのですが……」


【 クリームヒルト(16) (旧家名:ネフライト) 人族 女性
 1月1日生まれ
 身長148cm
 素晴らしい肉体を持つ、アゼリア学園生徒(1年生)。平民 】


「…………」
「何故目を細めるのでしょうか?」
「……なんでもないよ」


【 透明に近い瞳を持つ錬金魔法の使い手。
 錬金魔法の師匠は前記のメアリー・スーと同一。
 貴族平民関係なく親しいものが多い笑顔ではない笑顔をよく浮かべる。
 対人戦闘に関しては並程度の実力(ただし錬金魔法謹製爆弾使用時は除く)。
 対モンスター戦闘に関して、驚異的な戦闘能力を誇る。
 これは血に対する忌避感、傷を付ける事に対する精神的負担が無い先天的殺害無痛性のためだと思われる。現在調査中ではあるが、ネフライト家廃嫡にも関与している可能性あり。
 戦闘技術に関しては前記のクロ・ハートフィールドのような危機に対する戦闘能力が長けているように思われる。
 前記の2名のような予知・既知感は見受けられない。
 また、クリームヒルトは―――― 】


「……成程ね、これは興味深い」
「…………」





備考:この世界にはクリスマス、およびホワイトデーなどはありません。

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