「TSF病」を発症した男子高校生がウサミミ美少女になる話

夢野つき

16、オタ活アニメ店巡り②

 俺たちは今アニメストリートを歩いていた。

「ほへ〜、前に来た時よりもだいぶ変わっているな」
「そりゃあ、3人揃ってきたのは1年半ぶりですからね。僕と大輔さんは何度かその後に来た事がありますが、悠兎さんは無いでしょ?」
「まぁそうだな」

 1年半も経てば流行るアニメも変わってくる。以前に来た時はその頃に話題になったアニメの等身大フィギュアなんかが飾られていたが、今見れば別のアニメのキャラに入れ替わっていた。

 それにしても、この雰囲気は久しぶりだな。普通のショッピングモールなんかでは味わえ無い高揚感。360度にある全ての店がアニメ・ゲーム関連だ。オタクの俺たちからしたら非常に魅力的で、一日あっても全ての店を見て回れそうに無い。

「まずはどの店に入りましょうか?」
「そうだな…」
「おっ!あそこに行ってみようぜ!」

 大輔が指さした方向にあったのはフィギュアの専門店だった。
 
「フィギュアかぁ…、俺買った事ないんだよな」
「まぁ見るだけでも楽しいから行こうぜ!」

 道端で突っ立っているのは邪魔になるので、とりあえず入ってみる事にした。
 店内はかなり広めだった。フロア全体に棚が敷き詰められており、その全てにフィギュアが飾ってある。一目見ただけでかなりの量がある事がわかる。
 人は比較的空いている様なので色々見て回れそうだ。

 大輔たちとは一度店内で別れ、それぞれで見て回る事にした。

 俺が見に来た場所はファンタジーアニメのフィギュアが敷き詰められたコーナーだ。
 正直な話、フィギュアの並べてある棚の背が高すぎる為、全てを見ることは出来そうにない。

「うわぁ〜、結構種類があるもんだな。一人のキャラでも何種類も違うものがあるし、俺が生まれる前に流行ったアニメの物まである」

 奥が深い物なんだな。今まで興味を持った事は無かったが、見てみるだけで面白いものなんだな。何か買ってみようかな?
 しばらく見て回ってから俺が手に取った商品はねんどろいどと呼ばれるフィギュアだ。
 ねんどろいどとは、アニメやゲーム等のキャラクターを可愛くデフォルメした手のひらサイズのフィギュアシリーズの事らしい。ネットで調べてみた。表情や手足のパーツを交換してポーズを変更したりして楽しむことも出来るそうだ。
 今持っているキャラは、俺がアニメにハマるきっかけになった作品の負けヒロインだ。確か異世界転生物の作品だったはずだ。主人公がヒロインの子を好きな事を知ってなおずっと好きであり続け、いつも一途で心優しい癒しキャラな所を見て、俺は初めてアニメにハマってしまったのだ。正直、この子が報われ無さ過ぎて作者を恨んだが、もう昔の話だ。
 とりあえず、このキャラのねんどろいどを5種類ほど買ってみよう。

 俺が上の棚から『念動力』で引き寄せ、買い物カゴに入れていると大輔がやって来た。

「お?悠兎も買うのか?」
「あぁ、好きなキャラが居たから初めてだけど買ってみるよ」
「そのキャラってだいぶ前の作品の負けヒロインだよな?お前そのキャラ好きだよな。今の携帯の待ち受けにもしてたし」

 確かに携帯の待ち受けはこのキャラだ。

 レジに行き、お会計をすると3万円ほどした。結構高いんだな。
 流石に持ち歩くのは出来なくは無いが大変なので、家に配達して貰えるか聞いてみた所大丈夫と返事をもらえた。お金をカードで支払い、配達先を伝えたら終了だ。
 大輔はもう買っていた様なので、後は直樹を待つだけだ。

 外で待っていると連絡を入れ、大輔と待っていると数分後に袋を持って出てきた。

「お待たせしました!」
「おかえり。直樹は何か買ったのか?」
「はい!僕はガ○ダムのプラモデルを3個と他のロボットアニメの主人公フィギュアを買っておきました!いきなり荷物が多くなりそうなので配達にしておきました」
「なら次の所を見に行くか…」
「いや、もうお昼になりそうなのでコラボカフェに行きましょう」

 え、もうそんな時間なのか?
 携帯をポケットから取り出し確認してみると、確かに12時になりつつあった。自分では気がつかなかったが、かなり長い時間フィギュアを厳選していた様だ。

 今日の目的になっているコラボカフェは駅の近くにあるそうで、俺たちは元来た道を戻りながら他の店を少し覗いて行った。

「着きましたよ。ここが僕が行きたかった『神装ギア-エグゾード-』のコラボカフェです!」
「「へ〜…(全く分からない作品だ…)」」
「ささっ!とりあえず入りましょう!」

 直樹は興奮冷めあらぬ様子で意気揚々と入店して行った。その後を俺たちは何とも言えない顔をしながら着いていく。
 初めてコラボカフェに来てみたが中はかなりきれいな物で、あらゆる所に神装ギアなんちゃらと言うアニメのグッズやイラストを見る事ができる。壁紙に登場キャラの等身大イラストが描かれていて、イケメンなパイロット服を着たお兄さんからちょっとエロい服を着たお姉さんまで描いてある。
 店内を見渡しているとすぐに窓際の席に案内された。

「なぁ直樹、その…神装ギアなんちゃらって言うアニメってどんなアニメなんだ?俺も悠兎も知らなくてな」
「神装ギア-エグゾード-ですよ。そうですね〜、ジャンルで言うとSFファンタジーですね。魔法とロボットが混合している世界線で悪の帝国と戦い、仲間との愛と友情を描いた作品です。まぁ知らなくても仕方ないですよ。だって15年前のアニメですから」
「ん?何で15年前のアニメのコラボカフェなんてあるんだ?普通は新しいアニメやゲームとコラボするだろ?」
「あぁその理由はですね、何と続編が出る事になってこの作品の熱が再発火したからですよ!」
「へ、へ〜」

 物凄い恍惚とした表情を浮かべている直樹に思わず引いてしまった。イケメン顔が残念な事になってるぞ。
 大輔はと言うと、自分からアニメについて聞いたくせに料理のメニューを一人で見てやがる。おい、直樹の相手を俺だけに任せるな!

 数分直樹の話を死んだ目で聞いていると料理が運ばれてきた。どうやら大輔がメニューのタッチパネルで頼んでいた様で、沢山の料理がテーブルに並べられていく。
 おぉ!オムライスなんかもあるぞ!俺の大好物だ。何のキャラか分からない絵が描いてあるが早速食べてしまおう。
 料理が運ばれて来ると直樹も落ち着いてきた。それじゃあ早速、いただきます。

〜30分後〜

 テーブル上の料理はお皿を残して綺麗に食べ尽くされていた。
 直樹はオムライスとパンケーキだけを食べたが、俺と大輔は5皿ほど食べた。こう見ると、俺も大食いになって来たなと思う。

「いやぁ〜、コラボカフェって初めて来たけど面白いな」
「おう!俺も楽しかったぞ!今度、暇な時にでもこの神装ギアなんちゃらって言うアニメ見てみるわ!」
「それはよかったです!ぜひ見てください!そして一緒に語り合いましょう!」

 直樹の反応に俺と大輔は苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 店を出た後、俺たちは再びアニメストリートの探索に出た。
 特に入店する店は少なかったが本屋にゲームセンターへと行った。

 本屋は新しく出た新刊のラノベや漫画を買う為だ。家に帰ってからネットで注文するのでも良いのだが、せっかく外出しているのだから直接買っていく事にした。もちろん、家への配達は頼んでおいた。
 普段はネットで読みたい本の続編だけ・・・・を注文しているのだが、新作の本を買う時は自分の手に取って買う方が圧倒的に良い。少し立ち読みをしてから買う方が内容がわかりやすいからな。ネットの評価で選んでも良いのだが、それだけでは自分に合っている作品なのかは分からないからあまりしない。

 ゲームセンターについてだが…大輔がお金を溶かした事くらいしか話す内容がない。「次は取れる!」と言う言葉を繰り返しながらお金を投入していた。景品は取れていたが、取れるまで使った金額は四千円にまで行っていた。
 因みにだが、俺は兎のぬいぐるみと片方の脇でかつげるほどのニンジンぬいぐるみを取った。何故か兎のぬいぐるみを見た時に欲しいと感じてしまった。ニンジンぬいぐるみは…まぁ同じ様な理由だ。

「もう夕方になってしまっているな」

 アニメストリートを覆いかぶさる様にある透明なガラスの屋根は夕日に照らされて赤くなっていた。

「そろそろ帰りますか?」
「そうだな、結構お金使っちまったから夕飯を食って帰るか!」

 俺たちは駅の中にあるファミレスで夕食を食べてから帰る事にした。
 因みにだが、夕食はオムライスだった。昼食と同じだったが、好物だからいくら食べても飽きないね!
 夕食を食べ終わった後は電車に乗り、朝に集合した駅に1時間掛けて帰る。

 電車の中で今日の事について話していたら直ぐに着いてしまった。
 外には夕日の影は無く、完全に夜になっていた。時刻も7時半になっていた。

「それじゃあ、そろそろ解散しましょうか」
「そうだな、俺もこのぬいぐるみを家に置いてお風呂に入りたい」
「おう!結構お金を使っちまったし、またバイトを頑張らねぇとな!悠兎は朝と同じ様にタクシーに乗っていくのか?」
「うん。この荷物もあるし、何よりもう歩きたくないからな。疲れたよ」
「ちぇ〜、俺も乗りてぇけどお金ねぇからな。荷物はゲーセンの袋に入ってる奴だけだから走って帰るわ」
「なら俺の方が先に家に着くと思うし荷物だけは持って行ってやるよ。お届け物専用ポストに突っ込んでおくぞ?」
「マジか!?サンキューな!」

 俺は大輔からゲームセンターの袋を受け取る。四千円使ったと言うにはあまりにも軽いし、袋も小さい。

「また次もこの3人で何処かに出かけましょう」
「そうだね」
「おう!」

 そうして俺たちは解散した。
 直樹は自転車に乗って、大輔はランニングして帰り、俺はタクシーにのる。

 今日で人前に出る事は結構慣れたかな?ウサミミをジロジロと見られている感覚は感じ取れるが、今朝ほどは気にならなくなった。もしかしたら、あいつらがいつも通りに接してくれたのが良かったのだろう。いやぁ〜良い友達を持ってよかったな、俺。

 マンション前に着くと料金を払ってからタクシーを降り、大輔の軽い袋をお届け物専用ポストに入れておく。
 指紋認証でマンション内に入ると、疲れが一気に来た様な感覚を味わった。ここまで帰って来るとどうしても気が緩んでしまう。早くお風呂に入りてぇ〜。
 エレベーターで13階まで着くと自分の部屋はもう直ぐそこだ。

「ただいま〜」

 ドアを開けていつも通り挨拶をするが俺は一人暮らしだし、ペットを買っている訳でも無い。返事が帰って来る事はなーーー。

「もう!悠兎ちゃんったらいつまでお外をブラブラしていたのですか!もうこんな時間なのに…」

 リビングから一人の女性がプリプリと起こりながら出て来た。
 最初は意気揚々と文句を言いながら出て来たのだが、俺を見た瞬間に声が小さくなって行き、しまいには途切れてしまった。
 久しぶりに見たこの女性はと言うと…。

「お、お母さん…?」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品