「TSF病」を発症した男子高校生がウサミミ美少女になる話

夢野つき

8、特殊能力を使ってみよう①

「そして!次はお待ちかねの【高位能力ハイクラス・アビリティ】の能力についてだ!」
「おぉ…」

 何だか自慢げにしていたので拍手をしておいた。
 それにしても【高位能力ハイクラス・アビリティ】か。所有者が世界で4人しか確認されていないんだったよな。そしたら俺が5人目か。何だか特別感があってワクワクするな!

「まあ、特に説明する事は無いけどね。だって【高位能力ハイクラス・アビリティ】なんて滅多に持ってる人が現れないんだよ?ただでさえ所有者が少ないんだから詳しく調べようが無いよね」
「だったらどうするんだよ」
「そんなの決まってるじゃん…実践あるのみ!」

 だと思った。はぁ…今日中に帰れるかな…。

 という事で、俺たちは対特殊能力専用ルームと呼ばれる部屋に移動する事になった。もちろん、移動前に動きやすいジャージが用意されていたので着替える事にした。なんか今日、服を着替えてばっかだな。
 対特殊能力専用ルームは研究所がある建物の外にあった。ちょうど、俺たちが来た道の反対側にあり、建物に隠れて見えなかったようだ。野球場のドームを半分にした程のサイズの四角い建物で、近づくまでにフェンスが二重に張られている。警備は厳重なようだが、中は一体どんな施設になっているのだろうか。

 中はかなり素朴だった。
 四角い建物の中には、それよりも小さくした丸いドーム状の建物があった。あれが対特殊能力専用ルームなのか?

「あそこのドーム状の奴が対特殊能力専用ルームさ。特殊能力の観測をする時にはあそこに入ってもらうよ。あの中で特殊能力を使用して貰ったら、外側にある設備であらゆる情報を測定する。今回使用してもらう特殊能力は『兎人化』と『念動力』、それと【高位能力ハイクラス・アビリティ】の二つ、計4つの能力を測定したい」
「それは良いんだけど、【高位能力ハイクラス・アビリティ】、特に『《擬似神装シークレットレプリカ・雷》』を使用してこの施設が崩れるとか無いですよね?」

 ちょっと前に【高位能力ハイクラス・アビリティ】の危険度を教えられたばかりだ。もしかしたら、この施設を壊してしまう可能性だってあり得る。特殊能力を調べた時、明らかに『《擬似神装シークレットレプリカ・雷》』の説明欄に書いてあった事がやばかったからな。特に、『神器を再現できる』という点が一番意味がわからない。
 神器ってあれだよな…よくギリシャ神話やケルト神話とかに出てくる神の武器の事だよな。そんなものが再現できたら地球が崩壊してしまいそうだが…。

「それについては大丈夫じゃ無いかな?実は、あそこの壁や床は各国の危険レベル5の特殊能力所有者が遊び半分で結託して、作り上げてしまった・・・・条件次第で史上最強硬度を誇る『デーティル鉱石』と言ってね。一般人の殴るや蹴る、刃物で刺すと言った攻撃には脆いのだけどね、TSF病発症者が干渉する攻撃にはダイヤモンド以上の硬度を発揮する代物なんだ。その硬さは、何と硬度10のダイヤモンドの約120倍!!だから安心しても良いと思うよ!」

 なら大丈夫なのか?
 と言うか、TSF病発症者の先輩方…一体なんて物を作り出してるんだ。何をしたらそんな物が出来上がる!?

「ささ!とりあえず入っちゃって!スピーカーとマイクは特殊能力鑑定くんの時と要領は一緒だから、さっさと始めちゃおう!」

 翔子さんの掛け声とともに、周りに居た研究者達も準備をし始めた。
 俺も早く家に帰りたいし、とっとと終わらせますか。

 対特殊能力専用ルームの中は至ってシンプルだった。デーティル鉱石と呼ばれた石材のパネルが床と壁に敷き詰められていた。部屋の真ん中には攻撃をする的なのか、デーティル鉱石製の柱が立っていた。それ以外には何も無い。強いて言えば、部屋が広いと言う事。俺の通っている高校の体育館くらいの広さだ。

『よし!準備は出来たようだね!なら早速、部屋の外周をランニングしてくれ。『兎人化』の能力を確かめてみようか』
「わかった」

 軽く屈伸をし、手首足首をほぐす。
 そして、軽く力を入れて踏み込んだ瞬間、ずっこけた。予想以上に体が前に進んでいったのだ。

『ギャハハッ!!今、何で転んだの?躓く場所なかったよね?ねぇねぇ?』
「う、うざい…」
『姉さん静かにしてくださいッ』
『グハッ!』
『すいません、そのまま続けてください』

 雅さん、グッジョブ!

 今度は気をつけて走り出すと、かなりの速度が出る。それに合わせて少しずつ走る速度を上げていく。速いぞ!世界最速の陸上選手以上の走りをしているんじゃ無いか?何だか楽しくなって来た!

〜20秒後〜

「はぁ、はぁ…お、俺ってこんなに体力なかったっけ?」
『恐らくだが、足以外の筋力が低下したから体力も減ってしまったのだろう。次は職員が持って入る荷物を持ち上げてみてくれ』

 少し待っていると、ゴリゴリマッチョな白衣を着た職員が布袋を持って来た。
 布袋の中には、それぞれ重さの違うダンベルが重なって入っていた。
 なるほど、ダンベルで重さを調節しながらどれだけ重い物を持てるのか検証するのだな?やってやるさ!

 結果、20kgで限界だった。こんなに筋力が低下してしまったのか…。元の姿だった時は、超頑張って40kgの荷物を担いで運ぶ事ができたんだけどな。今じゃ20kgの袋を床から数cm持ち上げるのが限界だった。
 他にも、腹筋や腕立て伏せ等の測定を行ったが、どれも記録が半分ほど落ちてしまっていた。反復横跳びと立ち幅跳びはものすごく伸びたがな。立ち幅跳びなんて約8mも飛ぶ事ができた。

『ふむ、どの競技も元の体よりも大幅に落ちてしまっているね。ただ、足の筋肉を使う競技は5倍ほど伸びている』
「元の体の記録なんてどこから見つけて来たんですか…」
『君の学校に言ったらすぐに渡してくれたさ』
「プライバシーの欠片もねぇ…」
『そんなこと言ってないで、次は『念動力』を使ってみてくれ!同じ特殊能力所有者の話によると、使い方は念じれば良いと言っていたよ。試しに、先程の重りを持ち上げてみよう』

 『念動力』か。一体、この能力でどれくらいの事が出来るのだろうか。
 俺はダンベルの入った袋を睨みつけながら念じる。

(持ち上がれぇ…持ち上がれぇ…)

 すると、布袋が淡い紫色の光を纏い出し、徐々に動き出す。そして、本当に浮いた。

「う、浮いた!」

 あまりの驚きで、思わず念じるのを解除してしまう。袋が中のダンベルとともに鈍い音を立てながら落ちる。

『20kgの重りは浮かべられたね。なら次は5kgずつ増やして、どれだけ重い物を浮かせられるのか調べよう。その後は、同時に何個の物体を浮かべられるのかを調べよう』
「よし、やるぞ〜!」

 何だか楽しくなって来た!このまま進めてしまおう!

 結果から言うと、100kgまでの物体を持ち上げる事ができた。これには翔子さんも驚いていた。同時に浮かべられる物体の個数は最大で10個だった。ただ、物体の重さによって浮かべられる個数も変わった。1~9kgで10個、10~19kgで9個、20~29kgで8個と続き、90~100kgで1個となった。
 俺が思った事は、車を浮かせれるほどの力はないが、荷物を運んだりするのには役立ちそうだと感じた。

『次は【高位能力ハイクラス・アビリティ】だよ。かなり危険な能力になるっと思うから、力加減を間違えないでね』
「そう言われても、まだ使った事が無いんだから加減のしようもないよ」

 とりあえず、まだ・・危険じゃなさそうな『《天上天下唯我独尊》』から使う事になった。
 
「それじゃあ行きます!」
『さあ、見せてくれたまえ!』

 世界で数少ない【高位能力ハイクラス・アビリティ】を見る事が出来ると言う事で、翔子さんはかなり興奮気味なようだ。

 意識を集中させ、心を沈める。
 深い深い思考の海の中、誰にも干渉できないほどまでに深く潜り続ける。

「『《天上天下唯我独尊》』」

 悠兎が口ずさんだ途端、彼を中心に薄青色の領域が展開されていく。数秒も経たぬうちに対特殊能力専用ルーム全体を飲み込み、外まで浸食して止まった。

 何故だろうか、この領域を展開している間だけは全能感を味わう事ができる。このエリアの中では自分が絶対と言った感覚が芽生えてくる。

『これは…対特殊能力専用ルームの外まで干渉してしまっているのか?デーティル鉱石の効果を干渉せずにエリアを展開できるのか。効果は特殊能力鑑定くんで出て来た通り、他者の特殊能力が発動出来なくするのだろうけど、今ここにはTSF病発症者はいないから確かめようが無いね。これ以上調べようが無いし次に行こうか』
「はい」

 徐々にエリアが収縮していき、元に戻っていく。
 体に熱が戻り始め、思考が浮上してくる。
 とりあえず、『《天上天下唯我独尊》』を発動している時に感じた感覚は全て翔子さんに伝えておいた。ただ、現状では何もわからないから次に行こうと言われた。

「次は『《擬似神装シークレットレプリカ・雷》』だったよね」

 神器の再現の他に、雷魔法が使えたはずだよね。なら、最初は危険じゃ無さそうなものの方がいいかな。とりあえず、電気を起こしてみよう。
 両手を体の前にだし、てのひらを向かい合わせる。そして、手と手の間に電気を発生させてみよう。

(電気〜電気出ろ〜!)

 バチッ!バチバチッ!

 す、すげ〜!?電気出た!火花散った!
 本当に出来た!魔法だぁぁあ!

「翔子さん!雷魔法出来ました!」
『そうかい!体に異変とかは無いかい?』
「全く無いよ。手に電気が発生したけど痺れとかも感じないし、電撃耐性的なものでも身に付いたのかな?」
『そうだね、過去に特殊能力で雷魔法が使えた人がいたけど、その人も電撃によるダメージを食らわなかったらしい。ただ、これ以上の電撃は危ないと感じる時はあったらしいから、悠兎くんも気をつけるようにした方がいいよ』
「了解」

 よし、そしたら最後に残ったのは『《擬似神装シークレットレプリカ・雷》』の神器の再現だけだな。一体、どうなってしまうのだろうか。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品