転生隠者はまったり怠惰に暮らしたい(仮)
17.精霊使いと隠者の違い
集まった精霊王達が混乱しているのはわかったので、とりあえず立ち上がって少しだけ彼等と距離を取り、口を開いた。
「初めまして、精霊王の方々」
彼等の挨拶がよく分からなかったので、かつてミリィさんに教えてもらった男装時の挨拶をした。
「私の名前はリッカ。森の幻映に映っていたメッセージを見たので、精霊達とここまで来ました」
6人の精霊王は、それぞれに戸惑った表情をしているように見えた。
「本当か…」
「…?」
闇の精霊王が立ち上がって、私を凝視した。
「先程の治癒魔法、そして今もみんなに結界魔法をかけているのは、本当にお前…いや、貴女1人か?」
意図するところがよく分からなかったが、素直に返事をすることにした。
「そうです」
「この精霊達をすべて従えて…使役しているのか?」
使役と言われるとなんとなく雰囲気が違う気がするが、言葉としては間違ってないなと口を開きかけると、カルラがむんっとした顔でわたしのまえにずいと進み出た。
「私達は、主様…リッカ様に進化させていただき、精霊になりました。私達はリッカ様の眷属です!」
カルラの羽根から、赤く白く輝く光が立ち上る。どうやら怒っているらしい。
「使われているわけではありません。私達は主様が好きだから一緒にいるのです。あ、洗脳はされてませんよ。お調べになりたければどうぞ、です!」
まあまあ、と私はカルラを宥めた。闇の精霊王は私を精霊使いだと思ったのかもしれないし。
「悪い意味で言ったわけではないのだ。ただ、よくこんなに大勢手懐け…いや側においたものだな。進化するだけでも、今のエルフでも魔力量がギリギリだろうに…人間の身で…人間だな?」
「うん、人間だよね?…さっきキスした時の魔力が人間のだったもん。気持ち良い魔力だったよ」
風の精霊王がニコニコと爆弾発言をしてくれたので、私のこめかみがひくついたが、精霊王達は多少呆れたような顔をしているだけで…少しの間沈黙が場を支配した。
「あー、リッカ?だよな?」
赤銅色の肌と明るい金髪をした精霊王が風と闇の2人を押しのけて前に出て来た。
「こちらも混乱してるんだ。この状況が正直信じられなくてな。俺自身も今もビックリしてる。
俺は今の炎の精霊王だ。まずは、たどり着いてくれて…」
炎の精霊王は私の前に来て胸に手を当てて軽く頭を下げる。そしてニカリと笑った。
「回復してくれてありがとうな。あと…アイツにされた事は、風に吹かれたと思って忘れてやってくれないだろうか?」
「そんな事では済まされません!」
不意にグラマラスでたおやかな女性が私のそばに走って来て私の手を取り、隣の炎の精霊王をキッと睨む。
「私、浄化魔法も使えますの。すぐに全身を浄化させていただきます。炎の、乙女の純潔をなんと心得ますか!」
「こっちに文句言うなよ!風のに言えばいいだろ」
「浄化って…僕を汚いものみたいに…」
「風の!後からお話があります!」
(精霊王達は、お互いを『風の』とか『炎の』って呼び合ってるみたいね。こうしていると魔力の質以外には私たちとの違いは感じないけど…その魔力の質こそが本質的な違いかな)
思考をめぐらしつつも、まあまあ…とその場を収めながら、なんとなく、とりあえずは精霊王達と会話ができそうなことにホッとした。
コメント