最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第1429話 啖呵を切るイツキ

煌鴟梟こうしきょう』と『退魔組』が説明を受けて同時刻に廊下に出てきたところで、他の部屋からも廊下に出てくる者たちが居た。

 それはこの『サカダイ』の町で露店を開きながら『妖魔退魔師』組織の動向を窺っていた妖魔召士達で妖魔退魔師衆によって捕縛された『テツヤ』達であった。

(※露店の店主役だった者=リュウジ。露店の店主と談笑をしていた二人の妖魔召士=『テツヤ』と『タケル』)。 

 彼らは『スオウ』が組長を務める『二組』の隊士達に連行されていくところであったが、ちょうどその頃に『ユウゲ』や『ミヤジ』達と鉢合わせした形であり、決してこの『煌鴟梟こうしきょう』と『退魔組』の説明に合わせて連行させられてきたわけではなかったのであった。

 テツヤ達は『ユウゲ』達とは違い、外に出る事や『自由』にさせてもらえるわけではなく、このまま『ヒュウガ』達の居る『牢』へと連れられていくところであった。

 彼らは『イツキ』の『交渉』の外側に居る者達であり、そもそもが『ヒュウガ』の命令でここ『サカダイ』に潜伏していた紛う事なく『ヒュウガ一派』の者達だったからである。

 一時期は『ヒュウガ』の居場所を突き止める為に『利用』する形で『牢』ではなく、部屋で監視をつけられた状態で留置させられていたのだが、その『ヒュウガ』達が捕縛された為に『利用』する必要がなくなってしまったのである。

 そのため『妖魔退魔師』のシゲン総長を襲撃して、シグレを盾にそのまま町の外へ逃げようとした襲撃犯という形で新たに再捕縛となり『牢』入りとなったのである。

 『テツヤ』とそのもう一人の妖魔召士の男『タケル』は『牢』へと連行されていく廊下の途中で『退魔組』の『ヒイラギ』と『クキ』にすれ違い様にボソリと小さく声を出した。

 独り言といえるほどの小声であったために、直に『テツヤ』の言葉が聴こえた『ヒイラギ』と『クキ』以外はとくに気にも留めなかった。

 そしてそのままテツヤは視線を前に向けたままその場を離れていくのであった。

 …………

 テツヤたちがヒュウガの居る『牢』へと連行されていく頃、シゲンに疑問を抱かれたイツキは意を決して本音を口にしているところであった。

「そういう事だったか。それでお主はここの『牢』に残り、仲間達を外に出そうとしたのだな。しかしそれを私に話をして、お主は今後どうするつもりだ?」

「ああ……。もうアンタに全部ゲロっちまった以上は何も隠すつもりはない。俺は自分の『自由』も大事だが、一番は信頼している自分の仲間が大事なんだ。結局一人で『自由』になったってつまんねぇからな。だからって別に何人も仲間が欲しいわけじゃないが、それでも自分の手の届く連中くらいは助けてやりてぇと思ってる。だからそんな俺の大事な仲間を利用した挙句にゴミみたいに扱ってくれた『ヒュウガ』だけは俺は許すつもりはねぇな」

 次の瞬間には『イツキ』は再び『瑠璃』と『金色』の併用オーラを纏い始めるのだった。

「少し前にお主はそれを使って私にやられたばかりだろう? 今度もまた同じ結果になると分かっていて、私に攻撃を行おうというのか?」

「勝つか負けるかじゃねぇんだよな。それにあんたらは『ヒュウガ』を死なせるつもりはないんだろう? どうせ『ゲンロク』達『妖魔召士』組織と何らかの『交渉』に用いようと考えているだろうからな。だが、悪いがヒュウガだけは絶対に許すつもりはねぇ。俺を止めるなら殺すしかないぜ? 手を落とされようが足を落とされようが、心臓が動く限り俺はヒュウガをぶっ殺しにいくからよ!」

 イツキが一介の『妖魔召士』程度であったならば、ただの妄言だと笑って終わりだろうが、彼は膨大な『魔力』を有している『金色の体現者』なのである。

 そんなイツキが死ぬ覚悟を決めて『金色』を纏っている以上、何が起きてもおかしくはない。

「……」

 ヒュウガの覚悟を受け取ったシゲンは、ゆっくりと椅子から立ち上がるのだった。

 ――そして。

「うっ!?」

 『シゲン』は椅子から立ち上げると同時に愛刀を鞘から抜くと、イツキと同様に『金色』を纏い始めるのだった。そしてその『金色』とは違う鮮やかな『青色』が混ざり合い始める。

 ――『青』練度5.0 『金色』からなる ――『二色の併用』。

 ――この瞬間、ランク『8』を上回る者同士の『力』がこの場に体現するのであった。

 ……
 ……
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