最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1189話 指揮官としての向きと不向き
エイジの案内でゲンロクの屋敷に足を踏み入れたソフィ達だが、中に居た『妖魔召士』達はエイジを見ると慌てて道の端によって一礼をしながら去って行く。この組織からはもう離れて生活をしていると『ケイノト』の町で聞かされていた為に、ソフィはどうも今のエイジの立ち位置が分からなくなってきていた。
そして遂に前回来た時に訪れたゲンロクの部屋の前まで辿り着くと、エイジはソフィ達に目配せをして少し待っていて欲しいと視線で告げた。
ソフィ達が頷いたのを確認したエイジはそのまま軽くゲンロクの部屋の扉を叩いた後、返事も待たずに中へと入っていった。
「あの野郎はこの里の連中から煙たがられているのかと思っていたんだが、どうもそういうわけでもなさそうに思えてきたな」
「うーむ。エイジ殿は組織から離れてだいぶ経つと言っておったから、我ももう少しここの連中から余所余所しい態度を取られているのかと思っていたが。この屋敷で出会った者達の様子を見ると、煙たがられるというよりは、どちらかというと恐れられているようにも見えたな」
エイジが部屋の中に入って少し経った後、彼にしては少し小さな声でそう口にした為、ソフィも先程までエイジの事をこの組織内での立ち位置が気になっていたので、直ぐにヌーに返事を行うのであった。
そしてソフィは口にした後に、だんだんとヌーが考えている事が自分に似てきたのか、それとも自分がヌーに感化されてきたのかどっちだろうかと、どうでもいいような事を本筋から脱線して考えてしまうソフィであった。
「どちらかと言えばヌー殿の言葉より、ソフィ殿の言葉の方が正しいでしょうね。エイジ殿は前時代の功労者の一人です。時代が変わっても妖魔召士達の大半は、ゲンロク殿を含めて当時の彼の事を知っている事でしょうから、いくら組織から離れていた期間が長かろうとも彼を蔑ろに出来る者など今のこの組織の者達に出来ないでしょう」
どうやら『妖魔召士』として活動を行っていた時のエイジは、この組織では相当な地位に居た様子だった。組織は違うとはいっても『妖魔召士』と肩を並べて、同じ町で共に妖魔を討伐していた『妖魔退魔師』の副総長であるミスズがこれ程に認めているのだから、確かに今の『妖魔召士』達からすればどう接していいか分からず、この屋敷で頭を下げていた者達や、里の入り口でエイジを睨んで去って行った男のように二極化しているような状態なのも十分に理解が及んだソフィであった。
(まだ詳しい事が分からない以上は何とも言えぬが、ゲンロク殿もエイジ殿を妖魔召士に戻すつもりなのであれば、もう少し長としてエイジ殿の為に組織の者達に口添えをしても良いと思うのだがな)
余所の組織の事にあまり口を突っ込むつもりはないソフィだが、ゲンロク殿も長として『妖魔召士』を束ねている身なのであれば、ゲンロク殿がエイジ殿をどう思っていようとも組織を強固にするという観点を省みて、そういう姿勢を見せるべきでは無いかと、魔王軍の頂点に立つソフィは組織を同じように取り纏める者としてそう考え耽るのであった。
このソフィの考えは的を得ていた。そしてそれこそが今の『妖魔召士』全体に足りていない部分であり、エイジやミスズがゲンロクに対して抱いている感情の一つでもあった。
ゲンロク自身も言わなくてはならない場面というモノを理解は出来るのだが、その理解が出来た事を上手く部下達に伝える事が出来ず、言わなくても察せるだろう? とばかりに考えが途中から過ってしまって言葉足らずになったりする。
本来指揮官という立場にある人間は、どんな些細な事でも言わなくてはならないと気付いた事は、如何に細かい事でも説明責任を果たす事が必要なのである。時にはそれが裏目に出て部下から嫌われる事があったりする事もあるのだが、ゲンロクはそもそも自分が理解した時点で満足してしまい、説明すら最低限にして中途半端に伝えて終わってしまうのであった。
それは組織という枠組みで考えれば、余計な言葉を出して嫌われる事を嫌がって口にしない事よりも尚の事性質が悪い事である。
これまではヒュウガというゲンロクの右腕の立場に居る者が謂わば、通訳の役割を担っていた為に上に立つ者と享受する者の橋渡しの役割を担えていたのだが、長くその立場に居た事で『ヒュウガ』自身に欲目を抱かせていつの間にか現状の『妖魔召士』組織を作り出してしまったのであった。
ゲンロクは『妖魔召士』としては大変優秀で戦闘面に於いては、長と呼ぶに相応しいだけの『魔力』を持っている。しかし『政事』には全く向いてはいない。指揮官ではなく指揮をされる側で輝く側の人間なのであった。
そしてソフィがそんな事を考えている所に、エイジがゲンロクの居る部屋から出てきて顔を見せる。
「お待たせした。さぁ、どうぞ中へ」
ソフィやミスズ達はその言葉に頷いて、妖魔召士の長であった男と久々の再会を果たすのであった。
そして遂に前回来た時に訪れたゲンロクの部屋の前まで辿り着くと、エイジはソフィ達に目配せをして少し待っていて欲しいと視線で告げた。
ソフィ達が頷いたのを確認したエイジはそのまま軽くゲンロクの部屋の扉を叩いた後、返事も待たずに中へと入っていった。
「あの野郎はこの里の連中から煙たがられているのかと思っていたんだが、どうもそういうわけでもなさそうに思えてきたな」
「うーむ。エイジ殿は組織から離れてだいぶ経つと言っておったから、我ももう少しここの連中から余所余所しい態度を取られているのかと思っていたが。この屋敷で出会った者達の様子を見ると、煙たがられるというよりは、どちらかというと恐れられているようにも見えたな」
エイジが部屋の中に入って少し経った後、彼にしては少し小さな声でそう口にした為、ソフィも先程までエイジの事をこの組織内での立ち位置が気になっていたので、直ぐにヌーに返事を行うのであった。
そしてソフィは口にした後に、だんだんとヌーが考えている事が自分に似てきたのか、それとも自分がヌーに感化されてきたのかどっちだろうかと、どうでもいいような事を本筋から脱線して考えてしまうソフィであった。
「どちらかと言えばヌー殿の言葉より、ソフィ殿の言葉の方が正しいでしょうね。エイジ殿は前時代の功労者の一人です。時代が変わっても妖魔召士達の大半は、ゲンロク殿を含めて当時の彼の事を知っている事でしょうから、いくら組織から離れていた期間が長かろうとも彼を蔑ろに出来る者など今のこの組織の者達に出来ないでしょう」
どうやら『妖魔召士』として活動を行っていた時のエイジは、この組織では相当な地位に居た様子だった。組織は違うとはいっても『妖魔召士』と肩を並べて、同じ町で共に妖魔を討伐していた『妖魔退魔師』の副総長であるミスズがこれ程に認めているのだから、確かに今の『妖魔召士』達からすればどう接していいか分からず、この屋敷で頭を下げていた者達や、里の入り口でエイジを睨んで去って行った男のように二極化しているような状態なのも十分に理解が及んだソフィであった。
(まだ詳しい事が分からない以上は何とも言えぬが、ゲンロク殿もエイジ殿を妖魔召士に戻すつもりなのであれば、もう少し長としてエイジ殿の為に組織の者達に口添えをしても良いと思うのだがな)
余所の組織の事にあまり口を突っ込むつもりはないソフィだが、ゲンロク殿も長として『妖魔召士』を束ねている身なのであれば、ゲンロク殿がエイジ殿をどう思っていようとも組織を強固にするという観点を省みて、そういう姿勢を見せるべきでは無いかと、魔王軍の頂点に立つソフィは組織を同じように取り纏める者としてそう考え耽るのであった。
このソフィの考えは的を得ていた。そしてそれこそが今の『妖魔召士』全体に足りていない部分であり、エイジやミスズがゲンロクに対して抱いている感情の一つでもあった。
ゲンロク自身も言わなくてはならない場面というモノを理解は出来るのだが、その理解が出来た事を上手く部下達に伝える事が出来ず、言わなくても察せるだろう? とばかりに考えが途中から過ってしまって言葉足らずになったりする。
本来指揮官という立場にある人間は、どんな些細な事でも言わなくてはならないと気付いた事は、如何に細かい事でも説明責任を果たす事が必要なのである。時にはそれが裏目に出て部下から嫌われる事があったりする事もあるのだが、ゲンロクはそもそも自分が理解した時点で満足してしまい、説明すら最低限にして中途半端に伝えて終わってしまうのであった。
それは組織という枠組みで考えれば、余計な言葉を出して嫌われる事を嫌がって口にしない事よりも尚の事性質が悪い事である。
これまではヒュウガというゲンロクの右腕の立場に居る者が謂わば、通訳の役割を担っていた為に上に立つ者と享受する者の橋渡しの役割を担えていたのだが、長くその立場に居た事で『ヒュウガ』自身に欲目を抱かせていつの間にか現状の『妖魔召士』組織を作り出してしまったのであった。
ゲンロクは『妖魔召士』としては大変優秀で戦闘面に於いては、長と呼ぶに相応しいだけの『魔力』を持っている。しかし『政事』には全く向いてはいない。指揮官ではなく指揮をされる側で輝く側の人間なのであった。
そしてソフィがそんな事を考えている所に、エイジがゲンロクの居る部屋から出てきて顔を見せる。
「お待たせした。さぁ、どうぞ中へ」
ソフィやミスズ達はその言葉に頷いて、妖魔召士の長であった男と久々の再会を果たすのであった。
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