最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1171話 磨けば光る原石
「頭を切り替えないといけない事くらい、私にも分かっているのに……」
ミスズは『頭を冷やしてきます』といい残した後『妖魔退魔師』組織の本部の最上階へと上がってきていた。
『妖魔退魔師』の本部施設の最上階には屋外に出る事の出来るスペースが設けられており、いわば『屋上テラス』のようになっていて、そこから『一の門』を見渡す事が可能であり、有事の際はここから『一の門』の見張りと伝達が行えるようになっている。
そして屋外へと出るための扉を開けて、ミスズは『サカダイ』を一望出来る屋上へと足を踏み入れるのだった。
「今日は少し寒いわね」
ミスズが『一の門』の方を一瞥しながらそう独り言ちるのだった。やがて外の景色を見ていた彼女は、懐からソフィに届けてもらった『コウゾウ』の書簡を取り出すと中身を広げ始めた。
最初にこれを見た時ミスズはようやく『コウゾウ』が特務に入る事を決意してくれたかと大層喜びを露わにしたが、今その書簡を眺めていてもちっともミスズは嬉しくはなかった。
「ようやく貴方がその気になってくれたというのに、世の中上手く行かないものよね」
ミスズはこれまで何度もコウゾウに『特務』に入る様に誘い、直属の部下になって欲しいと伝えて来た。あれだけの逸材をそのままにしておく事は、ミスズにとっては許せない事でもあったからである。普通の『予備群』達であれば、ミスズから『直属の部下に』と声を掛けて貰えたならば、直ぐに頷く程の話なのである。
これまでミスズに『特務』に推薦されて入って来た『カヤ』や『ナギリ』も元々は『予備群』の一般隊士であったがミスズの目に留まり、こうして彼女の部下となった現在は『予備群』より強い『妖魔退魔師衆』を更に超える程にまで既に頭角を現して来ている。
『ナギリ』も『カヤ』も妖魔ランクでは元々の数値でいえば『4』から始まり現在は『6』を越えるに至るまで成長を遂げていた。最高幹部達が組長を務める一組や二組の組員の者達と、十分に肩を並べられるところまで来ているのである。しかしまだまだミスズから見れば、特務の者達を強くできると判断していて『ナギリ』達もようやく、ミスズの戦闘技法を教えられる領域のスタートラインに立たせる事が出来たというところであった。
確かに『特務』へ推薦してきた彼らの成長も目覚ましいものがあるが、やはりそれでも『コウゾウ』の潜在的な能力と常に周囲に目を向けて冷静な見方が出来る『コウゾウ』の存在は別格であった。
彼自身の自分に対する自己分析の評価は低く、常に謙遜をするような言葉を口にしたりしていたが、そんなモノで騙されるミスズではなかった。むしろ彼が自分の有能さを他人から隠そうとしているのだろうとさえ、当初はミスズが考えるほどであった。
しかしどうやら本当に『コウゾウ』は自分を大した事のない人間だと思っていたようで、このミスズが本気でコウゾウの本心を探って出した答えは、『本当に裏表がない』という結論だった。そこからミスズは彼の事が余計に気に掛かり、色々と接する事で見えてきたのは、どうやらコウゾウの父親が相当に優秀な人間だったようで、その父親と自分を比較して自身を過小評価していたようである。
――ミスズがその時にコウゾウに抱いたのは、『勿体ない』という気持ちだった。彼の父親がどれだけ優秀だったかは知らないが、それは現時点のコウゾウと比較しての事なのである。ミスズから見れば『コウゾウ』は磨けば磨く程、光り輝く宝玉の原石であり、戦闘面だけではなくあらゆる分野において彼は重宝される逸材であった。
特にミスズが何度も彼を口に出して褒めた部分は『洞察力』であった。コウゾウは戦闘に於いても申し分ない才能を秘めていたが、それ以上に副総長である彼女が自分より優れていると何度も口に出してコウゾウに説いたのが、この『洞察力』であった。
過去に何度か彼には直接任務を任せた事があるが、どれもこれも信じられない程に短い期間で完遂させてみせてミスズを驚嘆させたくらいである。
他にも優秀な人材は数多く居るこの『妖魔退魔師』の組織だが、その組織の者達と比較してみても彼は別格。それこそ副総長ミスズである彼女が後継者として育てたいと本気で考える程であった。
もちろん戦闘面も当然に秀でていて、今後彼女がみっちり鍛える事で彼女が編み出した刀技の数々『幻朧』『光撃烈火』『百火』『月虹刹那』等。まだナギリやカヤでさえ到達していないミスズの『刀技』の数々の極致にも届き得る存在として『コウゾウ』の事を見ていた程である。
しかしいくら傍に置いて成長を促したいとミスズが考えても、本人が嫌がっていたり真剣にならなくてはそこにいくらミスズが求めても意味が無くなってしまう。
『妖魔退魔師』の副総長として命令を出せば、確かに組織の人間である『コウゾウ』は、直ぐに目上の立場であるミスズに従って『特務』へと派遣されるだろう。
それでも強くなる事は可能ではあるだろうし、ミスズが納得しなくても『妖魔退魔師組織』としての観点から見れば、十分に利益に繋がると断言は出来るが、ミスズにしてみればそんな妥協であれだけの原石を平凡な組織の使える人材程度で済ませる事など出来る筈がなかった。
本人が自分の意思を持ってミスズの元で自分を成長させたいと願わなければ、本当の意味での昇華を果たす事は出来ないとミスズは考えているのである。
そしてこの自身の元で成長させたいと願う心から生まれる、原動力となる行動力は正にソフィに近しい者の捉え方であり、考え方もソフィと酷似しているのだった。
ミスズは『頭を冷やしてきます』といい残した後『妖魔退魔師』組織の本部の最上階へと上がってきていた。
『妖魔退魔師』の本部施設の最上階には屋外に出る事の出来るスペースが設けられており、いわば『屋上テラス』のようになっていて、そこから『一の門』を見渡す事が可能であり、有事の際はここから『一の門』の見張りと伝達が行えるようになっている。
そして屋外へと出るための扉を開けて、ミスズは『サカダイ』を一望出来る屋上へと足を踏み入れるのだった。
「今日は少し寒いわね」
ミスズが『一の門』の方を一瞥しながらそう独り言ちるのだった。やがて外の景色を見ていた彼女は、懐からソフィに届けてもらった『コウゾウ』の書簡を取り出すと中身を広げ始めた。
最初にこれを見た時ミスズはようやく『コウゾウ』が特務に入る事を決意してくれたかと大層喜びを露わにしたが、今その書簡を眺めていてもちっともミスズは嬉しくはなかった。
「ようやく貴方がその気になってくれたというのに、世の中上手く行かないものよね」
ミスズはこれまで何度もコウゾウに『特務』に入る様に誘い、直属の部下になって欲しいと伝えて来た。あれだけの逸材をそのままにしておく事は、ミスズにとっては許せない事でもあったからである。普通の『予備群』達であれば、ミスズから『直属の部下に』と声を掛けて貰えたならば、直ぐに頷く程の話なのである。
これまでミスズに『特務』に推薦されて入って来た『カヤ』や『ナギリ』も元々は『予備群』の一般隊士であったがミスズの目に留まり、こうして彼女の部下となった現在は『予備群』より強い『妖魔退魔師衆』を更に超える程にまで既に頭角を現して来ている。
『ナギリ』も『カヤ』も妖魔ランクでは元々の数値でいえば『4』から始まり現在は『6』を越えるに至るまで成長を遂げていた。最高幹部達が組長を務める一組や二組の組員の者達と、十分に肩を並べられるところまで来ているのである。しかしまだまだミスズから見れば、特務の者達を強くできると判断していて『ナギリ』達もようやく、ミスズの戦闘技法を教えられる領域のスタートラインに立たせる事が出来たというところであった。
確かに『特務』へ推薦してきた彼らの成長も目覚ましいものがあるが、やはりそれでも『コウゾウ』の潜在的な能力と常に周囲に目を向けて冷静な見方が出来る『コウゾウ』の存在は別格であった。
彼自身の自分に対する自己分析の評価は低く、常に謙遜をするような言葉を口にしたりしていたが、そんなモノで騙されるミスズではなかった。むしろ彼が自分の有能さを他人から隠そうとしているのだろうとさえ、当初はミスズが考えるほどであった。
しかしどうやら本当に『コウゾウ』は自分を大した事のない人間だと思っていたようで、このミスズが本気でコウゾウの本心を探って出した答えは、『本当に裏表がない』という結論だった。そこからミスズは彼の事が余計に気に掛かり、色々と接する事で見えてきたのは、どうやらコウゾウの父親が相当に優秀な人間だったようで、その父親と自分を比較して自身を過小評価していたようである。
――ミスズがその時にコウゾウに抱いたのは、『勿体ない』という気持ちだった。彼の父親がどれだけ優秀だったかは知らないが、それは現時点のコウゾウと比較しての事なのである。ミスズから見れば『コウゾウ』は磨けば磨く程、光り輝く宝玉の原石であり、戦闘面だけではなくあらゆる分野において彼は重宝される逸材であった。
特にミスズが何度も彼を口に出して褒めた部分は『洞察力』であった。コウゾウは戦闘に於いても申し分ない才能を秘めていたが、それ以上に副総長である彼女が自分より優れていると何度も口に出してコウゾウに説いたのが、この『洞察力』であった。
過去に何度か彼には直接任務を任せた事があるが、どれもこれも信じられない程に短い期間で完遂させてみせてミスズを驚嘆させたくらいである。
他にも優秀な人材は数多く居るこの『妖魔退魔師』の組織だが、その組織の者達と比較してみても彼は別格。それこそ副総長ミスズである彼女が後継者として育てたいと本気で考える程であった。
もちろん戦闘面も当然に秀でていて、今後彼女がみっちり鍛える事で彼女が編み出した刀技の数々『幻朧』『光撃烈火』『百火』『月虹刹那』等。まだナギリやカヤでさえ到達していないミスズの『刀技』の数々の極致にも届き得る存在として『コウゾウ』の事を見ていた程である。
しかしいくら傍に置いて成長を促したいとミスズが考えても、本人が嫌がっていたり真剣にならなくてはそこにいくらミスズが求めても意味が無くなってしまう。
『妖魔退魔師』の副総長として命令を出せば、確かに組織の人間である『コウゾウ』は、直ぐに目上の立場であるミスズに従って『特務』へと派遣されるだろう。
それでも強くなる事は可能ではあるだろうし、ミスズが納得しなくても『妖魔退魔師組織』としての観点から見れば、十分に利益に繋がると断言は出来るが、ミスズにしてみればそんな妥協であれだけの原石を平凡な組織の使える人材程度で済ませる事など出来る筈がなかった。
本人が自分の意思を持ってミスズの元で自分を成長させたいと願わなければ、本当の意味での昇華を果たす事は出来ないとミスズは考えているのである。
そしてこの自身の元で成長させたいと願う心から生まれる、原動力となる行動力は正にソフィに近しい者の捉え方であり、考え方もソフィと酷似しているのだった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
58
-
-
516
-
-
755
-
-
63
-
-
147
-
-
2
-
-
52
-
-
0
-
-
59
コメント