最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1168話 唐突な報告
「しかしコウゾウ程の男があっさりとやられるとはね……。相手は上位の『妖魔召士』達が複数居たっていう事なのかな?」
「私が戦った『妖魔召士』は、ソフィ殿が張ってくれていた『結界』のおかげで魔力が使えないようでしたが『式』を出す事自体は出来たようで、私はその『妖魔召士』が使った『式』の『天狗』にやられてしまいました。そしてきっと隊長はやられた私を人質に取られて……。それでやられたのだと思います」
辛そうにしながらも必死に話をしてくれたシグレを、サシャが慰めるように手を伸ばして彼女の肩を抱いた。
(そういう事だったのか。どうやら彼女は自分が人質にとられた事で、自分の大事な人の足枷になってしまったと自分を責めていたところに、この町に来て同じ『妖魔召士』に同じように人質にとられた……。そりゃあ今度こそ自分で何とかしようと考えるのが普通だよね)
彼女から話を聞けば聞く程にスオウは単なるシグレ隊士の暴走というわけではなく、ちゃんとこういう理由があって悪いのは辛い思いを再び起こさせた『妖魔召士』達だったのだと考えるのだった。
「話はよく分かったよ。キミは少しここで休んでいるんだ。悪いけどサシャ、キミは俺が戻るまで彼女の傍にいてやってくれ」
「はい、分かりましたスオウ組長」
サシャの返事を聞いたスオウは、そのサシャの胸の中に抱かれてぽろぽろと涙を流しているシグレを一瞥した後、自分が彼女の代わりにミスズに報告を行おうと決意して部屋を後にするのだった。
スオウが部屋を出たと同時、廊下を挟んだ別の部屋からあまり好ましくない一人の女性が出てきた事で、スオウは嫌そうに顔を顰めるのだった。
「お……? こりゃ奇遇だねチビ助。そっちも話は終わったのかい?」
長い黒髪が印象的な『妖魔退魔師』の最高幹部にして、一組の組長『ヒノエ』がそう言ってスオウに話し掛けてくるのだった。
「ああ。そっちは捕らえた『妖魔召士』達二名の相手だったか? しっかり逃げないように頼むよヒノエ」
「ん? あ、ああ……。それは問題ねえけどよ」
「悪いな。急いで総長達に報告しないといけないんだ、俺はもう行かせてもらう」
そう言ってスオウはヒノエから離れて行くが、慌ててヒノエはそのスオウの後ろ姿を追いかけ始めるのだった。
「こっちも総長達に報告があって私も戻ろうとしていたんだよ、一緒に戻ろうぜ!」
ニコニコと笑いながら後ろから追いかけてくるヒノエに、スオウは小さく溜息を吐いたが何も言わずに廊下を並び歩く二人だった。
…………
スオウとヒノエがソフィ達の居る会議室の方に戻ると、どこか真剣な面持ちをしている総長と副総長が互いに視線を交わし合っていたが、スオウ達の姿が見えるとミスズ副総長は笑みを浮かべてそれまでの空気を変えるように、スオウ達を迎え入れようとしてくれる。しかしミスズが何かを言う前にスオウから口を開くのだった。
「副総長、総長も聞いて下さい。大事な報告があるんです!」
突然の決死の表情を浮かべたスオウの声に、シグレ隊士の容態を聞こうとしていたミスズはその出鼻を挫かれる形となった。
「は……はぁ。ど、どうぞ。報告を聞きましょう、スオウ組長」
覚悟を決めて何かをやろうとするような、そんな決死の覚悟の表情を見せているスオウの圧に自分の言葉を呑み込んで、スオウの報告を聞こうとその場で足を止めたミスズであった。
「予備群シグレ隊士から聞かされた内容をこの場でそのままお伝え致します」
その部屋に居る者達全員が、スオウ組長の言葉に視線を送り始める。
「例の襲撃事件を行った『妖魔召士』達が収監されている『旅籠町』の予備群の屯所に、その仲間と見られる複数の『妖魔召士』が押し入り襲撃されました。その『旅籠町』の護衛隊である予備群達が抵抗を行ったようですが、旅籠町の『予備群』の護衛隊の隊長である『コウゾウ』隊士が首を切断されて戦死。その他予備群の数人が軽傷、その襲撃を起こした『妖魔召士』達は予備群施設の屯所周囲に結界を施して事件の隠蔽を図った後、収監されていた『妖魔召士』二名を脱獄させて逃亡したとの事です」
淀みなく正確に報告を告げたスオウ組長だが、その顔は誰が見ても辛そうに映るのだった。
「は……?」
スオウ組長から告げられた唐突な報告に驚いて、絶句する『妖魔退魔師』組織の人間達の中で、大事そうにコウゾウからの書簡を握りしめていた副総長ミスズの無意識に漏れ出たであろうか細い声だけが、その部屋に響くのであった。
「私が戦った『妖魔召士』は、ソフィ殿が張ってくれていた『結界』のおかげで魔力が使えないようでしたが『式』を出す事自体は出来たようで、私はその『妖魔召士』が使った『式』の『天狗』にやられてしまいました。そしてきっと隊長はやられた私を人質に取られて……。それでやられたのだと思います」
辛そうにしながらも必死に話をしてくれたシグレを、サシャが慰めるように手を伸ばして彼女の肩を抱いた。
(そういう事だったのか。どうやら彼女は自分が人質にとられた事で、自分の大事な人の足枷になってしまったと自分を責めていたところに、この町に来て同じ『妖魔召士』に同じように人質にとられた……。そりゃあ今度こそ自分で何とかしようと考えるのが普通だよね)
彼女から話を聞けば聞く程にスオウは単なるシグレ隊士の暴走というわけではなく、ちゃんとこういう理由があって悪いのは辛い思いを再び起こさせた『妖魔召士』達だったのだと考えるのだった。
「話はよく分かったよ。キミは少しここで休んでいるんだ。悪いけどサシャ、キミは俺が戻るまで彼女の傍にいてやってくれ」
「はい、分かりましたスオウ組長」
サシャの返事を聞いたスオウは、そのサシャの胸の中に抱かれてぽろぽろと涙を流しているシグレを一瞥した後、自分が彼女の代わりにミスズに報告を行おうと決意して部屋を後にするのだった。
スオウが部屋を出たと同時、廊下を挟んだ別の部屋からあまり好ましくない一人の女性が出てきた事で、スオウは嫌そうに顔を顰めるのだった。
「お……? こりゃ奇遇だねチビ助。そっちも話は終わったのかい?」
長い黒髪が印象的な『妖魔退魔師』の最高幹部にして、一組の組長『ヒノエ』がそう言ってスオウに話し掛けてくるのだった。
「ああ。そっちは捕らえた『妖魔召士』達二名の相手だったか? しっかり逃げないように頼むよヒノエ」
「ん? あ、ああ……。それは問題ねえけどよ」
「悪いな。急いで総長達に報告しないといけないんだ、俺はもう行かせてもらう」
そう言ってスオウはヒノエから離れて行くが、慌ててヒノエはそのスオウの後ろ姿を追いかけ始めるのだった。
「こっちも総長達に報告があって私も戻ろうとしていたんだよ、一緒に戻ろうぜ!」
ニコニコと笑いながら後ろから追いかけてくるヒノエに、スオウは小さく溜息を吐いたが何も言わずに廊下を並び歩く二人だった。
…………
スオウとヒノエがソフィ達の居る会議室の方に戻ると、どこか真剣な面持ちをしている総長と副総長が互いに視線を交わし合っていたが、スオウ達の姿が見えるとミスズ副総長は笑みを浮かべてそれまでの空気を変えるように、スオウ達を迎え入れようとしてくれる。しかしミスズが何かを言う前にスオウから口を開くのだった。
「副総長、総長も聞いて下さい。大事な報告があるんです!」
突然の決死の表情を浮かべたスオウの声に、シグレ隊士の容態を聞こうとしていたミスズはその出鼻を挫かれる形となった。
「は……はぁ。ど、どうぞ。報告を聞きましょう、スオウ組長」
覚悟を決めて何かをやろうとするような、そんな決死の覚悟の表情を見せているスオウの圧に自分の言葉を呑み込んで、スオウの報告を聞こうとその場で足を止めたミスズであった。
「予備群シグレ隊士から聞かされた内容をこの場でそのままお伝え致します」
その部屋に居る者達全員が、スオウ組長の言葉に視線を送り始める。
「例の襲撃事件を行った『妖魔召士』達が収監されている『旅籠町』の予備群の屯所に、その仲間と見られる複数の『妖魔召士』が押し入り襲撃されました。その『旅籠町』の護衛隊である予備群達が抵抗を行ったようですが、旅籠町の『予備群』の護衛隊の隊長である『コウゾウ』隊士が首を切断されて戦死。その他予備群の数人が軽傷、その襲撃を起こした『妖魔召士』達は予備群施設の屯所周囲に結界を施して事件の隠蔽を図った後、収監されていた『妖魔召士』二名を脱獄させて逃亡したとの事です」
淀みなく正確に報告を告げたスオウ組長だが、その顔は誰が見ても辛そうに映るのだった。
「は……?」
スオウ組長から告げられた唐突な報告に驚いて、絶句する『妖魔退魔師』組織の人間達の中で、大事そうにコウゾウからの書簡を握りしめていた副総長ミスズの無意識に漏れ出たであろうか細い声だけが、その部屋に響くのであった。
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