最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1154話 コウゾウからの手紙
『妖魔山』への同行を約束されたソフィ達だったが、今すぐにエヴィ達の元へ向かう事は出来ない様子であった。どうやら捕らえた『妖魔召士』達がヒュウガの息のかかった者達だという事を、ミスズ達が勘付いた事で組織としては、イダラマよりヒュウガを追う事を優先したようである。
エヴィがイダラマという『妖魔召士』と居る事や『妖魔山』へ向かっているという所まで情報を得た事で慌てなくても大丈夫だと判断したソフィは、総長シゲンがすまなそうにヒュウガ達を優先したいと確認してきた言葉にも頷くのだった。
そして副総長のミスズが『妖魔退魔師』の部下達に指示を出し終えた後、その部下達が自分達に任された仕事を遂行する為に部屋を出て行ったのを見計らい、ソフィはゆっくりとミスズに近づいて行くのだった。
「忙しい所すまぬのだが、少し時間を貰ってもよいかミスズ殿」
「ソフィ殿? もう部下に伝える事は全て伝えたので構いませんよ」
にこりと笑いかけて来るミスズの様子に、戦いの時とはまるで別人のように感じられたソフィであった。
「これをお主に渡しそびれていたのでな」
そう言って懐から何やら紙を取り出したソフィにミスズは眉を寄せる。
(あんな所に忍ばせていて、よく破れなかったものです)
部下に大事な指示をいくつも出し終えたミスズは、気が幾許か安らいできたところだったようで気持ちに余裕が生まれて、そのようにどうでも良いような事まで考えるのであった。
「それは、書簡ですか?」
「うむ『旅籠町』を発つ時にコウゾウ殿からお主に渡すようにと頼まれていたのだ」
「コウゾウにですか?」
(ああ、彼から直接の報告はまだ受けていなかったわね。そう言えば会合でコウゾウを襲った『妖魔召士』とやらは『妖魔召士』組織を裏切ったヒュウガ殿の部下だったとゲンロク殿は申していたわね)
『旅籠町』に放っている間諜からコウゾウ達が『妖魔召士』に襲われたという情報を得て今回の会合が開かれるキッカケとはなったが、そう言えば直接彼からの報告を受けていなかった事を思い出したミスズはこの書簡がコウゾウからのものだと聞いて、その報告の事だろうと判断するのだった。
そしてソフィに渡されたコウゾウからの書簡を開いて中を見ると『妖魔召士』に襲撃された事や、その際にソフィ達に世話になり命を救われた事。その『妖魔召士』を『旅籠町』の地下の座敷牢に捕らえている事。更にはこの書簡が届けられた後、本部に捕らえた『妖魔召士』達を連行する為に、手筈を整えて欲しい事などが記載されていた。
(概ね放った間諜の報告通りだけれど、どうやら『旅籠町』の『予備群』達は、相当にソフィ殿の世話になっていたようね。長年『旅籠町』の治安を困らせていた人攫い集団『煌鴟梟』の組織壊滅。その『煌鴟梟』のボスと幹部数名の捕縛、これらもソフィ殿の活躍あってこそ……、か)
文面からもコウゾウが、どれだけソフィを好意的に捉えていたかが分かる。
(!!)
そして書簡を読み進めていくと『煌鴟梟』や『妖魔召士』の一件が片付いた事で、コウゾウがとある事を遂に決心した事が書かれていたのであった。
旅籠町の護衛隊は全員が著しく成長を遂げており、また副隊長シグレに至っては現時点でコウゾウ自身が隊長の任を解き、その後任にシグレを選び隊長とする事に問題はないと判断するに至った事が書かれていた。
そして更にその書簡には、予てからミスズ副総長から何度も推薦を受けていた『特務専門部署』の所属を希望すると明確にされていたのであった。
この一文を読んだミスズの手が少しだけ震えた。そして無意識にミスズの頬が緩み、笑みがこぼれていく。
(ようやく……。ようやくその気になってくれたのですね、コウゾウ!)
『特務専門部署』に所属するという事は『妖魔退魔師』組織の副総長『ミスズ』の直属の部下となる事。
ミスズはコウゾウの戦闘技術に潜在する才能。自分に匹敵する卓越した頭脳等々。どうしても手元に置いて自らの手で成長を促したいと常日頃考えていたのである。その為に何度も彼に特務を選ばせるように打診してきたが、その度に遠回しではあるが断られてきたのであった。
『旅籠町』の治安維持の為に、そして人の為になる事に全力を尽くしたい。そして戦闘技術はあってもまだ子供であるシグレに精神面も鍛えあげて指導し、一人前と判断するまでは待って欲しい等。
ミスズであっても納得せざるを得ないような、そのような言葉でこれまでミスズの推薦を断ってきていたコウゾウが遂にミスズの元で働く事を希望してくれたのである。こんなに嬉しい事はないとばかりに、ミスズは笑みを浮かべ始める。
(成程、これがミスズ殿の本当の笑顔なのだな)
そして目の前で手紙を読んでいたミスズの表情を見ていたソフィは、初めてみる『妖魔退魔師』組織の副総長ミスズの笑顔を前にして、そんな事を考えるのであった。
書簡の最後には自分が『特務所属』になった後、シグレの成長ぶりにも期待して欲しいと、いずれはシグレ隊士が自分よりも優れた『妖魔退魔師』になる事が出来ると信じているとコウゾウによる『予備群』のシグレ隊士を褒めたたえる内容でその書簡は締めくくられていた。
――最後まで読み終えたミスズは、筒に手紙を仕舞い直すとその書簡を大事そうに胸に抱く。
「ソフィ殿! 書簡を届けて頂き本当に感謝します」
彼女はとびきりの笑顔をソフィに向けながら、そう告げるのだった。
……
……
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エヴィがイダラマという『妖魔召士』と居る事や『妖魔山』へ向かっているという所まで情報を得た事で慌てなくても大丈夫だと判断したソフィは、総長シゲンがすまなそうにヒュウガ達を優先したいと確認してきた言葉にも頷くのだった。
そして副総長のミスズが『妖魔退魔師』の部下達に指示を出し終えた後、その部下達が自分達に任された仕事を遂行する為に部屋を出て行ったのを見計らい、ソフィはゆっくりとミスズに近づいて行くのだった。
「忙しい所すまぬのだが、少し時間を貰ってもよいかミスズ殿」
「ソフィ殿? もう部下に伝える事は全て伝えたので構いませんよ」
にこりと笑いかけて来るミスズの様子に、戦いの時とはまるで別人のように感じられたソフィであった。
「これをお主に渡しそびれていたのでな」
そう言って懐から何やら紙を取り出したソフィにミスズは眉を寄せる。
(あんな所に忍ばせていて、よく破れなかったものです)
部下に大事な指示をいくつも出し終えたミスズは、気が幾許か安らいできたところだったようで気持ちに余裕が生まれて、そのようにどうでも良いような事まで考えるのであった。
「それは、書簡ですか?」
「うむ『旅籠町』を発つ時にコウゾウ殿からお主に渡すようにと頼まれていたのだ」
「コウゾウにですか?」
(ああ、彼から直接の報告はまだ受けていなかったわね。そう言えば会合でコウゾウを襲った『妖魔召士』とやらは『妖魔召士』組織を裏切ったヒュウガ殿の部下だったとゲンロク殿は申していたわね)
『旅籠町』に放っている間諜からコウゾウ達が『妖魔召士』に襲われたという情報を得て今回の会合が開かれるキッカケとはなったが、そう言えば直接彼からの報告を受けていなかった事を思い出したミスズはこの書簡がコウゾウからのものだと聞いて、その報告の事だろうと判断するのだった。
そしてソフィに渡されたコウゾウからの書簡を開いて中を見ると『妖魔召士』に襲撃された事や、その際にソフィ達に世話になり命を救われた事。その『妖魔召士』を『旅籠町』の地下の座敷牢に捕らえている事。更にはこの書簡が届けられた後、本部に捕らえた『妖魔召士』達を連行する為に、手筈を整えて欲しい事などが記載されていた。
(概ね放った間諜の報告通りだけれど、どうやら『旅籠町』の『予備群』達は、相当にソフィ殿の世話になっていたようね。長年『旅籠町』の治安を困らせていた人攫い集団『煌鴟梟』の組織壊滅。その『煌鴟梟』のボスと幹部数名の捕縛、これらもソフィ殿の活躍あってこそ……、か)
文面からもコウゾウが、どれだけソフィを好意的に捉えていたかが分かる。
(!!)
そして書簡を読み進めていくと『煌鴟梟』や『妖魔召士』の一件が片付いた事で、コウゾウがとある事を遂に決心した事が書かれていたのであった。
旅籠町の護衛隊は全員が著しく成長を遂げており、また副隊長シグレに至っては現時点でコウゾウ自身が隊長の任を解き、その後任にシグレを選び隊長とする事に問題はないと判断するに至った事が書かれていた。
そして更にその書簡には、予てからミスズ副総長から何度も推薦を受けていた『特務専門部署』の所属を希望すると明確にされていたのであった。
この一文を読んだミスズの手が少しだけ震えた。そして無意識にミスズの頬が緩み、笑みがこぼれていく。
(ようやく……。ようやくその気になってくれたのですね、コウゾウ!)
『特務専門部署』に所属するという事は『妖魔退魔師』組織の副総長『ミスズ』の直属の部下となる事。
ミスズはコウゾウの戦闘技術に潜在する才能。自分に匹敵する卓越した頭脳等々。どうしても手元に置いて自らの手で成長を促したいと常日頃考えていたのである。その為に何度も彼に特務を選ばせるように打診してきたが、その度に遠回しではあるが断られてきたのであった。
『旅籠町』の治安維持の為に、そして人の為になる事に全力を尽くしたい。そして戦闘技術はあってもまだ子供であるシグレに精神面も鍛えあげて指導し、一人前と判断するまでは待って欲しい等。
ミスズであっても納得せざるを得ないような、そのような言葉でこれまでミスズの推薦を断ってきていたコウゾウが遂にミスズの元で働く事を希望してくれたのである。こんなに嬉しい事はないとばかりに、ミスズは笑みを浮かべ始める。
(成程、これがミスズ殿の本当の笑顔なのだな)
そして目の前で手紙を読んでいたミスズの表情を見ていたソフィは、初めてみる『妖魔退魔師』組織の副総長ミスズの笑顔を前にして、そんな事を考えるのであった。
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