最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1147話 シグレとの再会
(さて、こいつらの処遇はどうしましょうか。ヒュウガ殿の一派である事は間違いはないでしょうし、泳がせてヒュウガの居場所を突き止めてしまいましょうか)
ミスズが捕らえた男たちの顔を見ながら考えを巡らせていると、コンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえてくるのだった。
「どうぞ」
顎に手をあてていた手を下ろすと同時、扉の方に視線を送りながらそう告げた。この顎に手を当てる行為は、ミスズが考える時によくやる仕草であった。
カチャリという音と共に部屋の扉が開かれると、長身で綺麗な黒髪を持つヒノエが部屋の中へと入って来るのだった。
「失礼します。ほらお前も入れ」
ヒノエが部屋に入ると同時、中に居たシゲンとミスズに丁寧に挨拶をした後、開かれた扉の先にある廊下の方を見ながら、ヒノエは誰かに話し掛けるのだった。
ヒノエに部屋へと入る様に促されたその人物は、ゆっくりとその姿を中に居る者達の前に姿を見せる。その人物とはサカダイの町の入り口付近で、三人組の『妖魔召士』達の代表格であったリュウジの首を刺殺した女性である。
――そしてその女性とは『妖魔退魔師』組織所属にして『旅籠町』の護衛隊に派遣された『予備群』の『シグレ』であった。
「貴方は、確か……」
「あ、アンタは……!」
「む!」
「てめぇは確か」
ヒノエと共に入って来たその女性を見て、反応を示した者は数名だけだった。その反応を示したのは『妖魔退魔師』の組織ではミスズくらいのものであり、後は『妖魔退魔師』とは関係がない『ソフィ』や『ヌー』。そして『セルバス』であった。しかしこの場に居る者達の誰とも視線を合わせずにシグレは俯いていた。
「こいつはどうやらうちの『予備群』のようなんですが、町の入り口付近で私達が追っていた『妖魔召士』に人質にされたんです」
「それは本当の事ですか? しかし追われていたとはいえ『妖魔召士』が一般人を人質を取ったのですか……」
ミスズはちらりと転がっている『妖魔召士』達を一瞥しながらそう告げる。
「ひっ!」
睨まれた『妖魔召士』は怯み声をあげながら、ミスズから慌てて視線を逸らす。
『妖魔召士』の里でゲンロク達と会合を行った時もミスズは感じた事であったが、当代の『妖魔召士』組織は暫定の長であったゲンロク達の派閥含めて、全体的に前時代と比べる事すら出来ない程に、質が下がっていると改めて感じる事となった。
(やはりシギン殿やサイヨウ殿達のような『妖魔召士』の保守本流を引き継ぐ最たる存在のようなエイジ殿が組織に戻らぬ限りは『妖魔召士』は落ちぶれる一方ね)
「それでその子を人質に取った『妖魔召士』は何処なの? 無事に人質を解放して貴方がここに戻ってきているという事は『妖魔召士』も捕縛してきているという事でしょう?」
そう言ってミスズはシゲン総長に手を出した『妖魔召士』。この場の床に転がっている『妖魔召士』達の主犯格だった男は、何処に居るのだとヒノエに訊ねるのだった。
「いえ、申し訳ありません副総長。追っていた『妖魔召士』なのですが、こいつが既に殺めちまいました」
先程床に転がっている『妖魔召士』から事情のあらましは聞いたミスズだったが、主犯格である別の『妖魔召士』からも話を聞こうと考えていたミスズは、突然のヒノエの言葉に僅かな時間ではあったが、思考を止められてしまうのだった。
「何ですって? もう一度言ってもらえますか、ヒノエ組長」
ヒノエはガシガシと頭を掻きながら、言い難そうにもう一度口を開こうとしたがそこでだんまりを貫いていたシグレが代わりに口を開いて声を出す。
「ミスズ副総長。私を人質に取った『妖魔召士』は私が殺しました」
ヒノエを見ていたミスズは、突如として口を開いたシグレに視線を移す。
「何故、殺したのですか?」
セルバスが心底驚いた顔を浮かべる中、冷静にミスズはシグレに問いを投げる。
「……は? 何故? 敵である『妖魔召士』に命を狙われたのですから、自分の身の安全を確保する為に抵抗をしたまでですが?」
虚ろな目を浮かべていたシグレだが、副総長ミスズの言葉を聞いた彼女はしっかりとミスズの方を見て言葉を返す。シグレのその言葉にどこか刺々しさを感じたミスズは、自分の知っている過去のシグレ隊士と今の目の前に居るシグレが一致せず、少しだけ面食らうのだった。
「自分の身の安全ですか。確かに貴方を人質にしようとした『妖魔召士』は、自身の逃亡の為に貴方を利用したのでしょうが、人質は生かすから価値がある。それにヒノエ組長や他の『妖魔退魔師衆』も居たのであれば貴方が手を出さずとも、彼女たちが貴方を無事に救出する事も出来たでしょう。それは『予備群』として生きている貴方も重々承知している事だと思いますが?」
「馬鹿を言うなよ。絶対はない。それに『妖魔召士』は隙を見せれば何をするか分からない……」
シグレの虚ろな目が唐突にどす黒く歪んだ目に変貌を遂げる。そしてシグレが言葉を吐き捨てると同時に、ヒノエが前を向いている隙を狙って、ヒノエの横に居たシグレは転がっている『妖魔召士』達に向かっていく。
「ひっ……!」
突然自分に向かって走ってきたシグレを見て、手足を縛られている『妖魔召士』の男は悲鳴をあげる。腰に差している刀ではなく、背中に忍ばせている護身用の小太刀を取り出して、倒れている『妖魔召士』の首を目掛けてシグレは小太刀を突き入れようとする。
――しかしあわやというところでシグレの背後から『ヒノエ』が、そのシグレの手を掴み止めたかと思うと、更には副総長『ミスズ』も倒れている『妖魔召士』とシグレの間に割って入る様に身体を潜り込ませながら、ヒノエがシグレの手を掴むのを確認した後に、自分は視線をシグレに向けたまま左手で『妖魔召士』の目を覆い隠す。
シグレから『妖魔召士』の命を守りながら更には『妖魔召士』の次なる一手を未然に防いだ形である。 『妖魔召士』は手足を縛られていても目を隠されていなければ『魔瞳』という打てる一手がある為、それを踏まえたミスズの一連の行動であった。
「離せ……! 『妖魔召士』は皆殺しにしなくちゃいけないんだ! 私にそいつらを殺させろぉっ! 殺す……、殺す! 殺す!!」
「くっ……! またかよてめぇ! いい加減にしろや、この馬鹿……!」
ヒノエはシグレの小太刀を握る手を捻り上げて落とすと、そのまま足で思い切り小太刀を遠くへ蹴り飛ばすとサカダイの門の前の時のように、シグレをその場で組み伏せるのだった。
……
……
……
ミスズが捕らえた男たちの顔を見ながら考えを巡らせていると、コンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえてくるのだった。
「どうぞ」
顎に手をあてていた手を下ろすと同時、扉の方に視線を送りながらそう告げた。この顎に手を当てる行為は、ミスズが考える時によくやる仕草であった。
カチャリという音と共に部屋の扉が開かれると、長身で綺麗な黒髪を持つヒノエが部屋の中へと入って来るのだった。
「失礼します。ほらお前も入れ」
ヒノエが部屋に入ると同時、中に居たシゲンとミスズに丁寧に挨拶をした後、開かれた扉の先にある廊下の方を見ながら、ヒノエは誰かに話し掛けるのだった。
ヒノエに部屋へと入る様に促されたその人物は、ゆっくりとその姿を中に居る者達の前に姿を見せる。その人物とはサカダイの町の入り口付近で、三人組の『妖魔召士』達の代表格であったリュウジの首を刺殺した女性である。
――そしてその女性とは『妖魔退魔師』組織所属にして『旅籠町』の護衛隊に派遣された『予備群』の『シグレ』であった。
「貴方は、確か……」
「あ、アンタは……!」
「む!」
「てめぇは確か」
ヒノエと共に入って来たその女性を見て、反応を示した者は数名だけだった。その反応を示したのは『妖魔退魔師』の組織ではミスズくらいのものであり、後は『妖魔退魔師』とは関係がない『ソフィ』や『ヌー』。そして『セルバス』であった。しかしこの場に居る者達の誰とも視線を合わせずにシグレは俯いていた。
「こいつはどうやらうちの『予備群』のようなんですが、町の入り口付近で私達が追っていた『妖魔召士』に人質にされたんです」
「それは本当の事ですか? しかし追われていたとはいえ『妖魔召士』が一般人を人質を取ったのですか……」
ミスズはちらりと転がっている『妖魔召士』達を一瞥しながらそう告げる。
「ひっ!」
睨まれた『妖魔召士』は怯み声をあげながら、ミスズから慌てて視線を逸らす。
『妖魔召士』の里でゲンロク達と会合を行った時もミスズは感じた事であったが、当代の『妖魔召士』組織は暫定の長であったゲンロク達の派閥含めて、全体的に前時代と比べる事すら出来ない程に、質が下がっていると改めて感じる事となった。
(やはりシギン殿やサイヨウ殿達のような『妖魔召士』の保守本流を引き継ぐ最たる存在のようなエイジ殿が組織に戻らぬ限りは『妖魔召士』は落ちぶれる一方ね)
「それでその子を人質に取った『妖魔召士』は何処なの? 無事に人質を解放して貴方がここに戻ってきているという事は『妖魔召士』も捕縛してきているという事でしょう?」
そう言ってミスズはシゲン総長に手を出した『妖魔召士』。この場の床に転がっている『妖魔召士』達の主犯格だった男は、何処に居るのだとヒノエに訊ねるのだった。
「いえ、申し訳ありません副総長。追っていた『妖魔召士』なのですが、こいつが既に殺めちまいました」
先程床に転がっている『妖魔召士』から事情のあらましは聞いたミスズだったが、主犯格である別の『妖魔召士』からも話を聞こうと考えていたミスズは、突然のヒノエの言葉に僅かな時間ではあったが、思考を止められてしまうのだった。
「何ですって? もう一度言ってもらえますか、ヒノエ組長」
ヒノエはガシガシと頭を掻きながら、言い難そうにもう一度口を開こうとしたがそこでだんまりを貫いていたシグレが代わりに口を開いて声を出す。
「ミスズ副総長。私を人質に取った『妖魔召士』は私が殺しました」
ヒノエを見ていたミスズは、突如として口を開いたシグレに視線を移す。
「何故、殺したのですか?」
セルバスが心底驚いた顔を浮かべる中、冷静にミスズはシグレに問いを投げる。
「……は? 何故? 敵である『妖魔召士』に命を狙われたのですから、自分の身の安全を確保する為に抵抗をしたまでですが?」
虚ろな目を浮かべていたシグレだが、副総長ミスズの言葉を聞いた彼女はしっかりとミスズの方を見て言葉を返す。シグレのその言葉にどこか刺々しさを感じたミスズは、自分の知っている過去のシグレ隊士と今の目の前に居るシグレが一致せず、少しだけ面食らうのだった。
「自分の身の安全ですか。確かに貴方を人質にしようとした『妖魔召士』は、自身の逃亡の為に貴方を利用したのでしょうが、人質は生かすから価値がある。それにヒノエ組長や他の『妖魔退魔師衆』も居たのであれば貴方が手を出さずとも、彼女たちが貴方を無事に救出する事も出来たでしょう。それは『予備群』として生きている貴方も重々承知している事だと思いますが?」
「馬鹿を言うなよ。絶対はない。それに『妖魔召士』は隙を見せれば何をするか分からない……」
シグレの虚ろな目が唐突にどす黒く歪んだ目に変貌を遂げる。そしてシグレが言葉を吐き捨てると同時に、ヒノエが前を向いている隙を狙って、ヒノエの横に居たシグレは転がっている『妖魔召士』達に向かっていく。
「ひっ……!」
突然自分に向かって走ってきたシグレを見て、手足を縛られている『妖魔召士』の男は悲鳴をあげる。腰に差している刀ではなく、背中に忍ばせている護身用の小太刀を取り出して、倒れている『妖魔召士』の首を目掛けてシグレは小太刀を突き入れようとする。
――しかしあわやというところでシグレの背後から『ヒノエ』が、そのシグレの手を掴み止めたかと思うと、更には副総長『ミスズ』も倒れている『妖魔召士』とシグレの間に割って入る様に身体を潜り込ませながら、ヒノエがシグレの手を掴むのを確認した後に、自分は視線をシグレに向けたまま左手で『妖魔召士』の目を覆い隠す。
シグレから『妖魔召士』の命を守りながら更には『妖魔召士』の次なる一手を未然に防いだ形である。 『妖魔召士』は手足を縛られていても目を隠されていなければ『魔瞳』という打てる一手がある為、それを踏まえたミスズの一連の行動であった。
「離せ……! 『妖魔召士』は皆殺しにしなくちゃいけないんだ! 私にそいつらを殺させろぉっ! 殺す……、殺す! 殺す!!」
「くっ……! またかよてめぇ! いい加減にしろや、この馬鹿……!」
ヒノエはシグレの小太刀を握る手を捻り上げて落とすと、そのまま足で思い切り小太刀を遠くへ蹴り飛ばすとサカダイの門の前の時のように、シグレをその場で組み伏せるのだった。
……
……
……
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