最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第1145話 ミスズをよく知る同業者達

 『妖魔退魔師ようまたいまし』の総長であるシゲンを襲って逃げた『妖魔召士ようましょうし』三名の内、二名を捕縛する事が出来た総長達は、まだ逃亡を続けているリーダー格の男をヒノエに任せる事にして、部下達を連れて本部へ戻るようにミスズに指示を出した。

 まだ捕えられていないその一名こそがこの間諜たちの代表格なのだろうが『一組』組長である『ヒノエ』であれば問題なく捕えて戻って来るだろうと『妖魔退魔師ようまたいまし』総長シゲンはそう判断した様子であった。

 ソフィ達はそんなシゲンやミスズ達について行き、ヌー達の居る『妖魔退魔師ようまたいまし』本部の建物に戻って来るのであった。そして最初にソフィ達が通された部屋に再び戻って来ると、そこにはスオウの直属の部下であるサシャと、ヌー達が待っていた。

「てめぇら、ようやく戻ってきやがったか」

 ソフィとセルバスの姿が見えると、ヌーは溜息を吐いてそう言った。

「クックック、どうやら調子を取り戻したようで何よりだ。テアの慰めが効いたらしいではないか、なあ、セルバス?」

「へっへ……、そうですね、旦那!」

 スオウに特務の場所を案内される前、こっそりとヌーの様子を見に行ったソフィ達だったが、そこでしっかりと反省を行うヌーと、気落ちしていたそのヌーを必死に励ましていたテアの姿を見ていた二人は、こうして元気になった様子のヌーを揶揄うのであった。

「てめぇら、見ていやがったのかよ?」

「クックック、さて何の事かな。まぁ、それより元気になったようで何よりだ」

「ちっ……!」

「――?」(ソフィさん、何て言っているの?)

「大した事じゃねぇよ」

 どうやら全て見られていたのだと悟ったヌーだったが、別にそれならそれで構わねぇといった様子で、ソフィが何て言っているのかと聞いてきたテアに、気にするなとだけ口にするのだった。

 黙ってソフィやヌー達の会話を聞いていたシゲンやミスズ達だったが、ようやく会話が一段落したところで、副総長のミスズが口を開いた。

「お連れの方も目を覚まされたようで何よりです。それではソフィさん達の事を詳しくお聞かせ願いたいとは思いますが、まずは本題に入る前にこちらを済ませても構わないでしょうか」

「我達の事ならば気にせぬとも良いぞ。お主らの気になる事を終えてからで一向に構わぬ」

「ありがとうございます、それでは総長」

「ああ……、お前に任せる」

「はい」

 ミスズはシゲンの言葉を受けた後『妖魔退魔師衆ようまたいまししゅう』の部下に視線を送ると、目隠しに猿轡さるぐつわをされた上で手足を縛った『妖魔召士ようましょうし』二名が、この場に連れて来られた後に、地面に転がされるのだった。

「ソフィ、何だこいつら」

「我もまだ良くは分からぬが、どうやらシゲン殿を監視していた者達のようだ。ここに戻って来る時に、こやつらがシゲン殿から逃げようとしたところを取り押さえられて、連れてこられたというところだな」

「ここの連中に恨みがある奴らって事か」

「さて、それはどうだろうな」

 テアの横に居た筈のヌーだが、いつの間にかソフィの元に立っていて、寝ころばされた男たちについて小声でソフィと話し始めるのだった。

 この場に連れてこられた『妖魔召士ようましょうし』達の目隠しと猿轡がとられると、男たちは唐突な光に眩しそうに目を顰めたが、その直後ミスズを見て明白に怯え始める。

 そんな『妖魔召士ようましょうし』の男たちに向けて、ミスズは張り付けられた笑顔で声を掛けた。

「さて、貴方がたには聞かせて欲しい事が多数あるのですが、素直にお答えして頂けるならば、解放をしようと思っています。我々の疑問を解消していただける努力を行って頂けますでしょうか?」

 倒れている男たちに自分の言葉がよく言葉が聞こえるようにミスズは、膝に手をつきながら中腰の態勢のまま男たちに声を掛けるのだった。

「あ、あ……、あひゅっ!!」

 ミスズが眼鏡をくいっとあげながら目を細めて『妖魔召士ようましょうし』の男を見ると、猿轡さるぐつわを外して自由に喋る事が出来るようになった『妖魔召士ようましょうし』の男は、部屋中に響き渡る程に歯をカチカチと鳴らして、恐怖心に喰われている姿をソフィやヌー達の前で晒し始めるのであった。 

 ミスズに問いかけられた男は、まともに返事が出来ない程に小刻みに身体を震わせている。それを見たミスズは小さく溜息を吐くのだった。

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