最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1119話 世界の概念と原理の内側
スオウから聞かされた言葉にソフィとセルバスは、言葉にすれば同じような応答表現を浮かべたがその実、それぞれの意味合いは全く異なるのだった。
(この世界は確かに侮れない者達が多く居るのは理解出来たが、それでもいち組織の頂点をたった十年務めたくらいなら『煌聖の教団』を一から構築して『アレルバレル』の世界の魔族や、あらゆる別世界から組織へ加入させて何百年の間、組織してきたミラ様の方が人間としての器は遥かに上だな)
ソフィがシゲンに関心を抱いている横で『煌聖の教団』の最高幹部だった魔族のセルバスは『それだけの期間じゃ何も分からない』といった表現を表していたのだった。
魔族のセルバスにとっては十年という期間は、ついこの間という感覚だが、同じ魔族のソフィにとっては、人間の感覚と同じとまでは言わないが、それでも人間の思う『十年ぞ一昔』という感覚は理解出来ている。
普通の人間の寿命を持つエルシスと付き合いが身近にあったソフィと、同じ人間であっても寿命という概念を覆すような元人間と呼べる大賢者ミラと身近にいたセルバスとでは、その年月の感覚の違いが如実に現れていたのだった。
(何よりミラ様は自然の大精霊達が生み出す『理』を同じように無から創り出し、既存の『魔法』の発動羅列を造り変える事も可能としていたのだ。いくらこの世界の者達の強さが凄かろうともミラ様の成し遂げられてきた数百年間の偉業とは、比較にもなるまい)
『煌聖の教団』に属した者は、魔族であろうが人間であろうが、そこに種族の壁などはなく、全ての存在が大賢者ミラを教祖として崇拝する。手を抜くことなく着実に数百年かけて、少しずつ洗脳を施す事に成功し、また自らも不老不死と思わせる『技法』を体得していたミラという元人間は、そういった信徒から『現人神』と心の底から思われていた。
大賢者ミラという教祖はソフィやシゲンとはまた強さの種類こそは違えども、ある意味で世界そのものを自分の思い通りに作り変えて、自分達だけの楽園や世界を生み出させるという、ある意味でこれもまた、統治者になり得たかもしれない器だったのは確かに疑いようもない事実ではあった。
『第一次魔界全土戦争』を経て、大魔王ソフィという器を知った上で、その『アレルバレル』の世界の顔というべき存在に、真っ向からぶつかる事を選び抜いて、一時的にとはいっても大魔王ソフィをその世界から追放し『アレルバレル』という世界、その『人間界』『魔界』の両方を支配する一歩手前まで近づいた大賢者ミラは、確かにある意味で『支配者』となり得た可能性はあった。
ソフィから見ればそんな物は統治では無いと一蹴するだろうが、角度を変えた側面から窺い見れば、確かに『無相の統治者』といえるであろう。
アレルバレルの世界出身で最強の大魔王の配下となる事を選び、更には自分の信ずる教祖が消滅させられたと知ったセルバスでさえ、まだこうして大賢者ミラを想う部分がある事からも、教祖ミラとしてその絶大なる影響力は、完全には消え去ってはいない。
大魔王ソフィに大賢者ミラの両名の持つ『支配』と『統治』の原理構想の内側。それを享受しながらも独立して生きるセルバスから見れば、まだまだ『妖魔退魔師』の組織に君臨しているシゲンという男の十年では、ソフィとミラの君臨する概念域。そのスタートラインにさえ立ててはいないと考えるのは、仕方のない事であったと言えるだろう。この場合『概念思想』の強さのベクトルが違うと表現するのが正しいかもしれない。
「さぁ着いた。ここが特務の訓練場だよ」
ソフィやセルバス達が思慮の深淵の旅路に向かっていた間に、どうやらナギリという男が居るかもしれないという訓練場に辿り着いていたようであった。
スオウが訓練場の扉に手を掛けると、ゆっくりと中の光景が目に飛び込んでくる。そこにはだだっ広い空間に、一人の人間が刀を構えて立っていた。その者は確かにサカダイの町に入る時に居た人間で姿形に間違いはなかったが、町の中で見た時とは明確に違っている部分があった。
それは部屋の中に居る、一人の『妖魔退魔師』の体を覆っているモノ。この『ノックス』の世界の者達の中で、ソフィが初めて見る『青のオーラ』であった。
(この世界は確かに侮れない者達が多く居るのは理解出来たが、それでもいち組織の頂点をたった十年務めたくらいなら『煌聖の教団』を一から構築して『アレルバレル』の世界の魔族や、あらゆる別世界から組織へ加入させて何百年の間、組織してきたミラ様の方が人間としての器は遥かに上だな)
ソフィがシゲンに関心を抱いている横で『煌聖の教団』の最高幹部だった魔族のセルバスは『それだけの期間じゃ何も分からない』といった表現を表していたのだった。
魔族のセルバスにとっては十年という期間は、ついこの間という感覚だが、同じ魔族のソフィにとっては、人間の感覚と同じとまでは言わないが、それでも人間の思う『十年ぞ一昔』という感覚は理解出来ている。
普通の人間の寿命を持つエルシスと付き合いが身近にあったソフィと、同じ人間であっても寿命という概念を覆すような元人間と呼べる大賢者ミラと身近にいたセルバスとでは、その年月の感覚の違いが如実に現れていたのだった。
(何よりミラ様は自然の大精霊達が生み出す『理』を同じように無から創り出し、既存の『魔法』の発動羅列を造り変える事も可能としていたのだ。いくらこの世界の者達の強さが凄かろうともミラ様の成し遂げられてきた数百年間の偉業とは、比較にもなるまい)
『煌聖の教団』に属した者は、魔族であろうが人間であろうが、そこに種族の壁などはなく、全ての存在が大賢者ミラを教祖として崇拝する。手を抜くことなく着実に数百年かけて、少しずつ洗脳を施す事に成功し、また自らも不老不死と思わせる『技法』を体得していたミラという元人間は、そういった信徒から『現人神』と心の底から思われていた。
大賢者ミラという教祖はソフィやシゲンとはまた強さの種類こそは違えども、ある意味で世界そのものを自分の思い通りに作り変えて、自分達だけの楽園や世界を生み出させるという、ある意味でこれもまた、統治者になり得たかもしれない器だったのは確かに疑いようもない事実ではあった。
『第一次魔界全土戦争』を経て、大魔王ソフィという器を知った上で、その『アレルバレル』の世界の顔というべき存在に、真っ向からぶつかる事を選び抜いて、一時的にとはいっても大魔王ソフィをその世界から追放し『アレルバレル』という世界、その『人間界』『魔界』の両方を支配する一歩手前まで近づいた大賢者ミラは、確かにある意味で『支配者』となり得た可能性はあった。
ソフィから見ればそんな物は統治では無いと一蹴するだろうが、角度を変えた側面から窺い見れば、確かに『無相の統治者』といえるであろう。
アレルバレルの世界出身で最強の大魔王の配下となる事を選び、更には自分の信ずる教祖が消滅させられたと知ったセルバスでさえ、まだこうして大賢者ミラを想う部分がある事からも、教祖ミラとしてその絶大なる影響力は、完全には消え去ってはいない。
大魔王ソフィに大賢者ミラの両名の持つ『支配』と『統治』の原理構想の内側。それを享受しながらも独立して生きるセルバスから見れば、まだまだ『妖魔退魔師』の組織に君臨しているシゲンという男の十年では、ソフィとミラの君臨する概念域。そのスタートラインにさえ立ててはいないと考えるのは、仕方のない事であったと言えるだろう。この場合『概念思想』の強さのベクトルが違うと表現するのが正しいかもしれない。
「さぁ着いた。ここが特務の訓練場だよ」
ソフィやセルバス達が思慮の深淵の旅路に向かっていた間に、どうやらナギリという男が居るかもしれないという訓練場に辿り着いていたようであった。
スオウが訓練場の扉に手を掛けると、ゆっくりと中の光景が目に飛び込んでくる。そこにはだだっ広い空間に、一人の人間が刀を構えて立っていた。その者は確かにサカダイの町に入る時に居た人間で姿形に間違いはなかったが、町の中で見た時とは明確に違っている部分があった。
それは部屋の中に居る、一人の『妖魔退魔師』の体を覆っているモノ。この『ノックス』の世界の者達の中で、ソフィが初めて見る『青のオーラ』であった。
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