最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1118話 世界、国、組織の統治と支配
特務の仕事部屋を出たソフィ達はスオウに連れられて特務や『妖魔退魔師』が、普段訓練を行っているというこの建物内にある訓練場に案内してもらう事となった。
「それにしてもスオウ殿。お主ら『妖魔退魔師』の組織に居る者達は、本当に信じられない程に強い人間が揃っているのだな。ヌーをあっさりと倒して見せたお主や、そのお主の直属の部下であるサシャ殿。今のカヤ殿といい、旅籠町に居たコウゾウ殿やシグレ殿も大したものだった。我が直接会った者達だけでもこれだけの猛者揃いだという事は、他にも我の知らぬ強者は多く居るという事なのだろう。そんな者達が同じ組織に集まっておるのに、誰も自分が一番になろうとか組織の頂点に自分がなり替わってやろうなどというそういう考えを持った人間は、お主らの中には居ないのか?」
組織に数が集まる様になれば、それぞれの数の分だけ思想は生まれる。それは種族に拘わらず、人間や魔族に魔人族、その他の種族であっても、言葉や思惑が相手に伝達出来る術を得れば、そこには少なからず諍いや争いは生じる事が多くなる。
強い力を持っている者が多く居れば、尚の事そう言う輩は多くなるだろう。それはこの世界の話だけではなく『アレルバレル』という彼の出身の世界であっても、大魔王ソフィという魔界の王が君臨している今であっても未だに数千年前の悔恨は、それぞれの大陸の実力者の中にも鳴りを潜めて存在している筈である。
そしてこの世界でもソフィ達は、そういう人間達の組織の人間を見て来た。それは『妖魔召士』という組織であったが、やはりその組織も例に漏れず、当代の組織の頂点に居る者となり替わろうとする存在が居て、更に言えばその当代のゲンロクという男もまたエイジ殿曰く『守旧派』の本流筋を抑え込んで『改革派』であったゲンロク殿が長となったという。
ある程度の期間は長となった者に従いはするが、結局また何処かで考え違いや、気に入らない事が一つでも出て来れば、現状に満足出来なくなって更に幸福度を高めようと考え始めるものである。同じ世界で同じように長い期間、この『ノックス』の世界に残り続けて来た組織。その『妖魔退魔師』という目の前に居る彼らが所属する組織には、そういう邪な考えを持つ者は居ないのだろうかとソフィはスオウに訊ねるのであった。
「……そういう質問をすると言う事は、本当にキミはこの世界出身じゃないんだね」
ナギリという者が居るかもしれない訓練場に向かう途中の廊下で案内をしてくれていたスオウは、ソフィの質問に唖然とするような表情の後、呆れるような表情へと変わっていき言葉にする頃には、ようやく何かを納得するような顔をしていた。
「どういう事か分からぬが我は、そんなにもお主に不思議そうな表情をされる程の事を口にしたのだろうか」
「いや、本当に別の世界から来たんだなぁって思っただけだよ。前時代までの『妖魔退魔師』の組織の事は俺もよく知らないけどさ、シゲン総長が『妖魔退魔師』の頂点に立ってからは、そんなつまらない事をしようと行動する者が現れるどころか、シゲン総長に刃向かおうなんて考えすら起こそうとする連中すら俺が最高幹部になってから凡そ十年は、一度も見た事も聞いた事もないね」
「ほう」
「へぇ……」
(どうやら『妖魔退魔師』達を束ねるシゲンという男は相当に出来る男のようだ『妖魔召士』側のエイジ殿やあのサイヨウ殿ですら『妖魔退魔師』組織に所属する者達は別格だと告げていた。
その『妖魔退魔師』側の組織に所属するコウゾウ殿や、ヌーをあっさりと倒して見せたスオウ殿が、この『妖魔退魔師』組織のトップに居る『シゲン』という男は別格だと述べている。
一つの組織にこれだけの力量者が揃っていれば少数派ではあっても、よからぬ事を考えようと思う者は居る者だが、人間達の寿命では決して短くはない十年間、その立場を揺るがせずに君臨し続けて部下達からの評価もこれ程までに厚い。なるほど。これは是非とも会ってみたくなった)
既にソフィは『リラリオ』という世界にあるヴェルマー大陸で同じ魔族でありながら、ソフィは自分よりも遥か年下にして、国を想い国からも想われる王『シチョウ』という男に深い感銘を受けた事がある。
ソフィ自体もまたアレルバレルという世界、そのものを統治し続けて数千年が経つが、そんなソフィであっても、一つの国を完璧に復興させたシチョウには、統治を行う面で敵わないなと思わせるに至った前例がある。
世界、国、組織、それぞれ幅や深さという意味合いでは規模が異なるが、世界(国、組織)に安寧を保ち、統治を行い、他者(国、世界)を想い想わせる力は、相応しい主権者が居るからこそ、秩序が保たれて成り立つ事が出来るのである。
紛い物が一時的にトップに立つ事はあっても結局は衰退の一途を辿る。どんなに気を付けようとも主権者の力が及ばなければ、あらゆる因子によって少しずつ悪い方へと変化が生じていき、そしてそれは少なくない被害を伴う。
ソフィより先に『アレルバレル』の世界の頂点に立った大魔王『ダルダオス』ですら、その圧倒的なカリスマ性と力を有していたにも拘わらず、最後には同じ魔族同士で争わせるに至り、名だけを残して消え去った。今を生きる『アレルバレル』の世界の者達には、その名残すら残されてはいない。
国、組織、世界を想う気持ちに偽りはなくとも統治を長い年月、完全に行う事は不可能な事であると、長い寿命を持つソフィを以てすら、いや長い寿命を持つ魔族だからこそ、常に彼の頭の片隅にちらついている。
『ダルダオス』を例に挙げたが、国、組織、世界の発展の為に動いている時は上手く行ったとしても、一度手にした領土、支配権を保持し続ける為に大魔王『ダルダオス』は失敗を犯した。
――手にした世界の統治を行う事は、手にする支配を行う事よりも遥かに難しい。
下から上に上がっていく時よりも上で常に下を導く為に君臨し続ける事は、のし上がる事よりもはるかに難しいのである。
だからこそソフィはスオウの言葉を聞いた上で、これ程までの猛者揃いの『妖魔退魔師』の組織を十年間束ねて尚、未だに逆らうなんて考えられないと、スオウから評価を得ているシゲンという男に興味を持って会ってみたいと思うに至ったのであった。
「それにしてもスオウ殿。お主ら『妖魔退魔師』の組織に居る者達は、本当に信じられない程に強い人間が揃っているのだな。ヌーをあっさりと倒して見せたお主や、そのお主の直属の部下であるサシャ殿。今のカヤ殿といい、旅籠町に居たコウゾウ殿やシグレ殿も大したものだった。我が直接会った者達だけでもこれだけの猛者揃いだという事は、他にも我の知らぬ強者は多く居るという事なのだろう。そんな者達が同じ組織に集まっておるのに、誰も自分が一番になろうとか組織の頂点に自分がなり替わってやろうなどというそういう考えを持った人間は、お主らの中には居ないのか?」
組織に数が集まる様になれば、それぞれの数の分だけ思想は生まれる。それは種族に拘わらず、人間や魔族に魔人族、その他の種族であっても、言葉や思惑が相手に伝達出来る術を得れば、そこには少なからず諍いや争いは生じる事が多くなる。
強い力を持っている者が多く居れば、尚の事そう言う輩は多くなるだろう。それはこの世界の話だけではなく『アレルバレル』という彼の出身の世界であっても、大魔王ソフィという魔界の王が君臨している今であっても未だに数千年前の悔恨は、それぞれの大陸の実力者の中にも鳴りを潜めて存在している筈である。
そしてこの世界でもソフィ達は、そういう人間達の組織の人間を見て来た。それは『妖魔召士』という組織であったが、やはりその組織も例に漏れず、当代の組織の頂点に居る者となり替わろうとする存在が居て、更に言えばその当代のゲンロクという男もまたエイジ殿曰く『守旧派』の本流筋を抑え込んで『改革派』であったゲンロク殿が長となったという。
ある程度の期間は長となった者に従いはするが、結局また何処かで考え違いや、気に入らない事が一つでも出て来れば、現状に満足出来なくなって更に幸福度を高めようと考え始めるものである。同じ世界で同じように長い期間、この『ノックス』の世界に残り続けて来た組織。その『妖魔退魔師』という目の前に居る彼らが所属する組織には、そういう邪な考えを持つ者は居ないのだろうかとソフィはスオウに訊ねるのであった。
「……そういう質問をすると言う事は、本当にキミはこの世界出身じゃないんだね」
ナギリという者が居るかもしれない訓練場に向かう途中の廊下で案内をしてくれていたスオウは、ソフィの質問に唖然とするような表情の後、呆れるような表情へと変わっていき言葉にする頃には、ようやく何かを納得するような顔をしていた。
「どういう事か分からぬが我は、そんなにもお主に不思議そうな表情をされる程の事を口にしたのだろうか」
「いや、本当に別の世界から来たんだなぁって思っただけだよ。前時代までの『妖魔退魔師』の組織の事は俺もよく知らないけどさ、シゲン総長が『妖魔退魔師』の頂点に立ってからは、そんなつまらない事をしようと行動する者が現れるどころか、シゲン総長に刃向かおうなんて考えすら起こそうとする連中すら俺が最高幹部になってから凡そ十年は、一度も見た事も聞いた事もないね」
「ほう」
「へぇ……」
(どうやら『妖魔退魔師』達を束ねるシゲンという男は相当に出来る男のようだ『妖魔召士』側のエイジ殿やあのサイヨウ殿ですら『妖魔退魔師』組織に所属する者達は別格だと告げていた。
その『妖魔退魔師』側の組織に所属するコウゾウ殿や、ヌーをあっさりと倒して見せたスオウ殿が、この『妖魔退魔師』組織のトップに居る『シゲン』という男は別格だと述べている。
一つの組織にこれだけの力量者が揃っていれば少数派ではあっても、よからぬ事を考えようと思う者は居る者だが、人間達の寿命では決して短くはない十年間、その立場を揺るがせずに君臨し続けて部下達からの評価もこれ程までに厚い。なるほど。これは是非とも会ってみたくなった)
既にソフィは『リラリオ』という世界にあるヴェルマー大陸で同じ魔族でありながら、ソフィは自分よりも遥か年下にして、国を想い国からも想われる王『シチョウ』という男に深い感銘を受けた事がある。
ソフィ自体もまたアレルバレルという世界、そのものを統治し続けて数千年が経つが、そんなソフィであっても、一つの国を完璧に復興させたシチョウには、統治を行う面で敵わないなと思わせるに至った前例がある。
世界、国、組織、それぞれ幅や深さという意味合いでは規模が異なるが、世界(国、組織)に安寧を保ち、統治を行い、他者(国、世界)を想い想わせる力は、相応しい主権者が居るからこそ、秩序が保たれて成り立つ事が出来るのである。
紛い物が一時的にトップに立つ事はあっても結局は衰退の一途を辿る。どんなに気を付けようとも主権者の力が及ばなければ、あらゆる因子によって少しずつ悪い方へと変化が生じていき、そしてそれは少なくない被害を伴う。
ソフィより先に『アレルバレル』の世界の頂点に立った大魔王『ダルダオス』ですら、その圧倒的なカリスマ性と力を有していたにも拘わらず、最後には同じ魔族同士で争わせるに至り、名だけを残して消え去った。今を生きる『アレルバレル』の世界の者達には、その名残すら残されてはいない。
国、組織、世界を想う気持ちに偽りはなくとも統治を長い年月、完全に行う事は不可能な事であると、長い寿命を持つソフィを以てすら、いや長い寿命を持つ魔族だからこそ、常に彼の頭の片隅にちらついている。
『ダルダオス』を例に挙げたが、国、組織、世界の発展の為に動いている時は上手く行ったとしても、一度手にした領土、支配権を保持し続ける為に大魔王『ダルダオス』は失敗を犯した。
――手にした世界の統治を行う事は、手にする支配を行う事よりも遥かに難しい。
下から上に上がっていく時よりも上で常に下を導く為に君臨し続ける事は、のし上がる事よりもはるかに難しいのである。
だからこそソフィはスオウの言葉を聞いた上で、これ程までの猛者揃いの『妖魔退魔師』の組織を十年間束ねて尚、未だに逆らうなんて考えられないと、スオウから評価を得ているシゲンという男に興味を持って会ってみたいと思うに至ったのであった。
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