最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第1115話 特務専門部署のお仕事

「それじゃあ俺はソフィ殿とセルバス殿を連れて『特務とくむ』の方へ顔を出して来るよ。サシャ、彼が目を覚ますまでここを頼んでいいかい?」

「ええ、それはお任せください。彼らが目を覚まされました時に、組長達が戻ってなければどうしましょうか?」

「あー、その時は悪いけど特務の方へ連れて来てよ」

 スオウの言葉を聞いたサシャは恭しく頭を下げるのだった。

「それじゃ行こうかソフィ殿。特務の場所に向かいがてら、この町を案内するよ」

「その特務とやらの場所は、この『妖魔退魔師ようまたいまし』の本部の建物内ではなかったのか」

 ここが『妖魔退魔師ようまたいまし』の本部だと聞かされていたソフィは、この施設内か若しくは連なった建物に隣接しているのだろうとアタリをつけていたが、どうやらスオウの言葉ではこの本部とは違う場所にあるらしい。

「まぁ普通はそう考えるよね、それは歩きながら説明するよ」

 そう言ってスオウは椅子から立ち上がると、ナギリの所へ向かおうとソフィ達に視線を送るのだった。

「うむ、そう言う事なら分かった。お主、すまぬがヌー達の事をよろしく頼む」

「分かりましたソフィ殿、それにセルバス殿も」

 ソフィ達がスオウと親しくなったからだろうか、ここに来た時に比べると『サシャ』副組長のが、のであった。

 ……
 ……
 ……

 『妖魔退魔師ようまたいまし』の本部を出たソフィ達は『一の門』のある入り口から反対方向へと向けて歩き始めたスオウの後ろをついて行く。

「さっきも言ったけど特務……『特務専門部署』は、うちの副総長が管理している部署でね。基本的にはうちの下部組織扱いの『予備群よびぐん』達の管理をこの部署で行っている」

「『予備群よびぐん』というのはコウゾウ達が行っていたような『旅籠町』などの護衛を行っている者達の事だったか」

「そうだね。基本的にはそう言う解釈で間違いないよ。元々は『予備群よびぐん』達も『妖魔退魔師ようまたいまししゅう』と呼ばれていたんだけど、今は明確に『予備群よびぐん』達は『妖魔退魔師ようまたいまし』組織の下部組織として切り離されている。そしてその『予備群よびぐん』達の仕事は基本的に『妖魔退魔師ようまたいまし』本部に指示を出されて、就く場所を決められた後、その就いた先の町の中に妖魔が入ってこないようにしたりとか、人攫いやひったくり、それにまぁ町民同士の喧嘩とかそういう町の治安を守り維持していく事が仕事の役割なんだ。キミ達もコウゾウ達の働きを見てある程度は知っていると思うんだけど、そんな彼ら『予備群』の派遣先を決めたりするのが『特務専門部署』の一番の仕事かな」

 どうやら特務専門部署とは『妖魔退魔師ようまたいまし』組織における中間管理職のような役職なのだろう『妖魔退魔師ようまたいまし』織内は『妖魔召士ようましょうし』組織と比べても色々と複雑に出来ているようである。

「まぁ基本的には特務は派遣先に隊長クラス数人を派遣させる所までが大きな仕事なんだけどね。隊長さえ特務が選出すれば、後はその隊長になる者が他の『予備群よびぐん』の中から欲しいと思える人材を選んで副隊長なり、自分の護衛隊の面子を選んだりするから。でもそれも最終的に許可を出すのも特務なんだけど、派遣先に送る隊長が選んだ『予備群よびぐん』ならだいたいは特務も許可を出すんだろうけど」

 彼が断言をしないところを見ると、それは『最高幹部』の『組長』でさえ伝えられていない事であり『特務』に所属にする者にしか分からない事なのだろう。

「それでも最近は『予備群よびぐん』も人数が多いから『特務』の人間が数人掛かりで強さを把握して、派遣先に最優先で送る人材の力を知識でしっかりと把握しとかないといけないからね。特務も色々大変なんだよねぇ」

 確かに人数が多ければ多い程、それを管理する側の人間は大変だろう。ソフィも魔王軍という謂わば一大組織の頂点に君臨している者として、その大変さは身にしてみてよく分かっている為、スオウの説明を聞いてソフィは『特務』と呼ばれる者達の苦労をある程度予想する事は、難しくはなかったようである。

「成程、それでその『特務』とやらがさっきの建物であるならば、本部内に居ない理由とやらは何だったのだ? 『予備群よびぐん』達に指示を出したりするような事務仕事なのであれば、あれ程大きな建物内なら、十分に本部内で仕事が出来ると思うのだが」

 わざわざ本部から離れた所に新設する理由が分からず、ソフィがそう質問を行うとスオウは、その質問を待っていたとばかりにニヤリと笑うのであった。

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