最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1112話 副総長ミスズが見せる、本物の笑顔
「『妖魔山』の『禁止区域』内の一件は、日取りが決定次第またこちらに遣いを送る。連絡が行った後に直ぐに行動が出来るように準備だけは整えておいて欲しい」
シゲンがそう言うとゲンロクとエイジも同時に頷きを見せる。二人の同意を確認した後にシゲンは、隣に居るミスズに視線を送るとミスズも分かっていたようで、直ぐにシゲンに視線を合わせた後に前を向き直る。
「それでは今回の会合内容を検めさせて頂きます。前回と今回の『妖魔召士』側の起こした問題の責任ですが『妖魔山』の『禁止区域』内の調査にゲンロク殿とエイジ殿の両名が、我々『妖魔退魔師』と同行を共にする事として山に入って頂きます。そして山に入った後の我々の調査如何の内容を『ゲンロク殿』と『エイジ殿』の判断に下して頂いた上で今後『妖魔山』の管理を『妖魔召士』側から『妖魔退魔師』側に移させて頂く事となります。更には今回の事件の発端となった『ヒュウガ』殿とその一味についてですが、実際に被害が出ている以上はお咎めなしというわけにも参りません。しかし今回『妖魔山』の管理について『妖魔召士』側には検討と譲歩を行って頂き、こちらとしてもその誠意を十二分に感じられましたので、前回の会合までで出た話は一度保留とさせて頂く事とします。あくまで保留という形になりますので、誤解だけはなさらずに承知願います」
最後の一文を読み上げる時、副総長ミスズは眼鏡をくいっとあげながら射貫くような視線で、ゲンロクとエイジの両名を睨みあげるのだった。
ゲンロクはそのミスズの視線を外すように少しだけ目線を下げたが、エイジは真っ向からその視線を受け止め続けていた。
「以上の内容が『妖魔退魔師』側から『妖魔召士』側の組織に対して申し上げる今回の制裁の内容の全貌となります」
少しの間を取った後にミスズが会合を締めるように挨拶を告げると、思いつめた表情を浮かべながら、ゲンロクが口を開くのだった。
「今後はこのような事のないように、次の長となる者をしっかりと見定めて行きたいと思う。今回の一件は誠に申し訳なかった」
制裁内容を検めた『妖魔退魔師』の副総長ミスズの言葉に返事をするように『妖魔召士』の長であるゲンロクが深々ともう一度謝罪を行うと、それに倣うように、他の『妖魔召士』達も頭を下げていった。
エイジは自分が居た時代の『妖魔召士』の組織と比較をするように、今の謝罪を行う『妖魔召士』達の姿をその両目でしっかりと目に焼き付ける。
自分が所属していた時代、その『妖魔召士』組織とは様相は大きく異なるが、このゲンロクとそのゲンロクに付き従ってこの場に残った者達は、しっかりと筋だけは守り通して見るように見えた。
『イダラマ』や『ヒュウガ』。その『ヒュウガ』に付き従っていた『ヒュウガ』派と呼ばれる者達が、この場から去ったことによって、これまでの組織の権威を笠に着て誇示をする者達は目立っては見られなくなったようだ。まだまだあらゆる面で感じられる力不足感は否めないが、エイジが抜ける前の『妖魔召士』組織。その純粋な品格は保っているようにエイジには見受けられるのだった。
(今回『妖魔召士』が『妖魔山』の管理を失った事による影響は計り知れないが、間違いを起こすと分かっている者に組織の代表の座は譲れぬ。今回の事件はむしろ組織に根付いていた、膿を出す為の荒療治と捉えれば、そこまでの損失ではなかったかもしれないな)
禁術を平気で扱う者達を組織から削ぎ落せた事は『妖魔召士』組織の今後の事を考えて長い目で見ればむしろプラスに働く事にもなるだろうと、エイジは『妖魔召士』組織から身を引いた状態で、その組織の全貌を視界に捉えて物事を考えるのだった。
「それでは、我々はこれで失礼する――」
この場に居る『妖魔召士』達の謝罪を受け入れたシゲンが、そう口にした後に組んでいた腕を解いて立ち上がると、他の『妖魔退魔師』達一同も倣うように立ち上がるのだった。
「ああ、調査の件はよろしく頼む。シゲン殿」
そう言ってゲンロクも立ち上がり、シゲンに声を掛ける。シゲンは何も言わずに頷くとそのまま部屋を出て行くのであった。
他の『妖魔退魔師』の隊士が出ていく中で、ぴたりとミスズだけがエイジの前で止まった。
「エイジ殿。きっと貴方とは今後も長い付き合いになりそうですので、貴方の顔と名前をしっかりと記憶しておきますね」
「勝手にするがよい」
「ふふっ……。それじゃあね?」
つっけんどんな返しをするエイジにミスズは、年相応の笑みを浮かべた後、総長シゲンの背中を追いかけるように部屋を出て行った。
その笑みは『妖魔退魔師』の副総長『ミスズ』がこの場で見せる、初めての本物の笑顔であった――。
……
……
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シゲンがそう言うとゲンロクとエイジも同時に頷きを見せる。二人の同意を確認した後にシゲンは、隣に居るミスズに視線を送るとミスズも分かっていたようで、直ぐにシゲンに視線を合わせた後に前を向き直る。
「それでは今回の会合内容を検めさせて頂きます。前回と今回の『妖魔召士』側の起こした問題の責任ですが『妖魔山』の『禁止区域』内の調査にゲンロク殿とエイジ殿の両名が、我々『妖魔退魔師』と同行を共にする事として山に入って頂きます。そして山に入った後の我々の調査如何の内容を『ゲンロク殿』と『エイジ殿』の判断に下して頂いた上で今後『妖魔山』の管理を『妖魔召士』側から『妖魔退魔師』側に移させて頂く事となります。更には今回の事件の発端となった『ヒュウガ』殿とその一味についてですが、実際に被害が出ている以上はお咎めなしというわけにも参りません。しかし今回『妖魔山』の管理について『妖魔召士』側には検討と譲歩を行って頂き、こちらとしてもその誠意を十二分に感じられましたので、前回の会合までで出た話は一度保留とさせて頂く事とします。あくまで保留という形になりますので、誤解だけはなさらずに承知願います」
最後の一文を読み上げる時、副総長ミスズは眼鏡をくいっとあげながら射貫くような視線で、ゲンロクとエイジの両名を睨みあげるのだった。
ゲンロクはそのミスズの視線を外すように少しだけ目線を下げたが、エイジは真っ向からその視線を受け止め続けていた。
「以上の内容が『妖魔退魔師』側から『妖魔召士』側の組織に対して申し上げる今回の制裁の内容の全貌となります」
少しの間を取った後にミスズが会合を締めるように挨拶を告げると、思いつめた表情を浮かべながら、ゲンロクが口を開くのだった。
「今後はこのような事のないように、次の長となる者をしっかりと見定めて行きたいと思う。今回の一件は誠に申し訳なかった」
制裁内容を検めた『妖魔退魔師』の副総長ミスズの言葉に返事をするように『妖魔召士』の長であるゲンロクが深々ともう一度謝罪を行うと、それに倣うように、他の『妖魔召士』達も頭を下げていった。
エイジは自分が居た時代の『妖魔召士』の組織と比較をするように、今の謝罪を行う『妖魔召士』達の姿をその両目でしっかりと目に焼き付ける。
自分が所属していた時代、その『妖魔召士』組織とは様相は大きく異なるが、このゲンロクとそのゲンロクに付き従ってこの場に残った者達は、しっかりと筋だけは守り通して見るように見えた。
『イダラマ』や『ヒュウガ』。その『ヒュウガ』に付き従っていた『ヒュウガ』派と呼ばれる者達が、この場から去ったことによって、これまでの組織の権威を笠に着て誇示をする者達は目立っては見られなくなったようだ。まだまだあらゆる面で感じられる力不足感は否めないが、エイジが抜ける前の『妖魔召士』組織。その純粋な品格は保っているようにエイジには見受けられるのだった。
(今回『妖魔召士』が『妖魔山』の管理を失った事による影響は計り知れないが、間違いを起こすと分かっている者に組織の代表の座は譲れぬ。今回の事件はむしろ組織に根付いていた、膿を出す為の荒療治と捉えれば、そこまでの損失ではなかったかもしれないな)
禁術を平気で扱う者達を組織から削ぎ落せた事は『妖魔召士』組織の今後の事を考えて長い目で見ればむしろプラスに働く事にもなるだろうと、エイジは『妖魔召士』組織から身を引いた状態で、その組織の全貌を視界に捉えて物事を考えるのだった。
「それでは、我々はこれで失礼する――」
この場に居る『妖魔召士』達の謝罪を受け入れたシゲンが、そう口にした後に組んでいた腕を解いて立ち上がると、他の『妖魔退魔師』達一同も倣うように立ち上がるのだった。
「ああ、調査の件はよろしく頼む。シゲン殿」
そう言ってゲンロクも立ち上がり、シゲンに声を掛ける。シゲンは何も言わずに頷くとそのまま部屋を出て行くのであった。
他の『妖魔退魔師』の隊士が出ていく中で、ぴたりとミスズだけがエイジの前で止まった。
「エイジ殿。きっと貴方とは今後も長い付き合いになりそうですので、貴方の顔と名前をしっかりと記憶しておきますね」
「勝手にするがよい」
「ふふっ……。それじゃあね?」
つっけんどんな返しをするエイジにミスズは、年相応の笑みを浮かべた後、総長シゲンの背中を追いかけるように部屋を出て行った。
その笑みは『妖魔退魔師』の副総長『ミスズ』がこの場で見せる、初めての本物の笑顔であった――。
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