最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第1111話 両組織の一応の落着

「そちらの組織の副総長であるミスズ殿はこう言っているが、お主ら『妖魔退魔師ようまたいまし』が行う『妖魔山』の調査とやらに小生も連れて行ってもらおうと思うが、構わないかシゲン殿?」

 元々この場に現れた時のエイジは、イダラマと結託している可能性が高かった為に『妖魔山』の管理権を『妖魔退魔師ようまたいまし』側へ移す事すら反対していた。

 だが、エイジは『禁止区域』内に入りさえしなければ『妖魔山』自体の管理はそこまで重要では無いと感じていた為に『禁止区域』内の調査に入る時に彼自身が行動を共にする事で、一応の今回の『妖魔召士ようましょうし』側の処遇に対して『妖魔退魔師ようまたいまし』側の意見に反論を表に出さずに妥協を許したようであった。

「いいだろう。危険の多いと見る『妖魔山』にお主のような頼りになりそうな『妖魔召士ようましょうし』について来てもらえるなら、むしろこちらとしても有難いところだ』

 本音なのか建前で言っているだけなのか。腕を組んだ総長シゲンは『妖魔山』の調査に対して現在は『妖魔召士ようましょうし』組織から外れている『はぐれ』である『妖魔召士ようましょうし』の『エイジ』の同行を許可するのであった。

「ではひとまず『妖魔山』の管理についてはこちらの指定する日に、山の『禁止区域内』の調査を行う事とし、そのり『ゲンロク』殿と『エイジ』殿の両名に同行してもらいます。その後については管理を『妖魔退魔師ようまたいまし』側に任せて頂くという事で宜しいですね?」

「『禁止区域』内で本当にお主らの言っている事が正しいかどうか、それをしっかりと見届けさせてもらってからの話だ」

 ミスズは最後まで抜け目のないエイジに内心で舌打ちをするが、表立っては表情を取り繕い、勿論分かっていますとばかりに同意するようにエイジに笑顔を向けた。

「ゲンロク殿。予想外な出来事に色々と話が逸れる事となったが、今回の会合の結論。貴方もそれで構わないな?」

 会合の終わりに『妖魔退魔師ようまたいまし』の長としてシゲンは『妖魔召士ようましょうし』の長であるゲンロクに対して言葉を投げかけると、渋々といった様子ではあったがゲンロクも承諾するように頷くのであった。

 ミスズは本来は『戦争』に関する事を理由に『妖魔山』の管理だけではなく『コウヒョウ』の権益とそれに続く新たな利権の獲得に動こうと考えていたが、この場にが現れてしまった所為で要らぬ強欲は身を滅ぼすと戒めて、確実に『妖魔山』の話を実現させる方向に力を注ぎ込む事に決めたのだった。

(もう『妖魔召士ようましょうし』の組織の人間ではないというのに、この場に居る『妖魔召士ようましょうし』達の誰よりも影響力を持っている。彼が再び表舞台に出て来る事になれば、

 再び内心で舌打ちをしながらもミスズは、エイジという一人の『妖魔召士ようましょうし』を危険な存在と認知するのであった。

 こうして『妖魔召士ようましょうし』と『妖魔退魔師ようまたいまし』の両組織の間で生じた問題は『妖魔召士ようましょうし』から『妖魔退魔師ようまたいまし』へと『妖魔山』の管理を移す事で一先ひとまずの決着となり、長く続いた両組織の会合も一応の落着と相成った。

 過去に袂を分かつ事となった両組織だが『妖魔山』の『禁止区域』内の調査というこの世界にとって生きる者達の命が掛かった非常に慎重な問題を通じて、再び両組織の長が行動を共にする事となり、そこには奇しくもゲンロクの代わりに長になろうと野心を企てて、色々と他者を巻き込んで画策していた『ヒュウガ』の姿がなく、その『ヒュウガ』と反目の間柄となって組織を出て行った筈のエイジが、

 『妖魔召士ようましょうし』組織の最高幹部と呼べる者達が、著しく組織の入退を繰り返す中、そのエイジと反目の間柄である『ヒュウガ』は、新たな組織を作るにあたり必要な人材を確保するべく、捕らえられた二人の『妖魔召士ようましょうし』を救出する為に『旅籠町』にある屯所を襲っていた。

 ――そんな出来事が裏で起きているなどよしもない里に居る両組織は、今回の会合が佳境に入った事で、場の空気がピリピリと緊張感を増していくのであった。

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