最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1103話 予備群達の気持ちと、シグレの決意
『予備群』の『コウゾウ』の亡骸は、よく彼が一人で鍛錬を行っていた盆地の端側で埋葬を行い弔う事にした。いつかは本部と相談を行い、しっかりとした場所へと移す事にするが、ひとまずは彼を弔いたいと考えた屯所の『予備群』達がこの場所を選び埋葬を行うのだった。
この場に集まった旅籠町の『予備群』達は、必死に手を合わせて拝んでいるシグレを見る。
泣き腫らしたであろう事が直ぐに分かる程、目が浮腫み晴れ上がり、髪の毛を掻きむしった後が、そのまま残っているのが印象的で、いつもの整った顔立ちをして、綺麗にしているシグレからは想像がつかない程に、今のシグレの容姿は変貌を遂げていた。
そして何よりも泣き腫らしたその目の色が違うかった。どす黒く歪んだその目は、見る者を強張らせる程に威圧的で、ほんわかしたいつもの可愛らしさなどは皆無であり、何かを話し掛けようにも覚悟がいる程であった。
――やがて拝んでいたシグレが、その場に集まった者達に口を開いた。
「いいですか皆さん。よく聞いて下さい。これから私は今回の『妖魔召士』達の一方的な襲撃が行われた事を『妖魔退魔師』の本部に向かい伝えてきます。既に今回の事は両組織が放っているであろう間諜によって伝えられているかもしれませんが、直接この旅籠町の護衛を預かる身として、私自身が直接伝えに行く事にします」
「「……」」
その場に居る者達は言葉を挟まずに、黙って副隊長シグレの言葉に耳を傾ける。
「今回の事で辛く苦しい気持ちを抱いた者も居るでしょうが、貴方達は私が帰って来るまでこれまで通りこの旅籠町の護衛を続けて町の安全を最優先で考えなさい」
シグレの目は『予備群』の配下達を見ているようで焦点はあっていない。どこか虚空を見つめるような瞳で淡々と用意していた言葉を読み上げているようであった。
「分かりました」
一人の若い男がシグレの言葉に返事をする。その男の名前は『キイチ』といった。シグレと同じ時期にこの旅籠町の護衛に指名されてきたこの旅籠の護衛隊の中では、最古参の一人であった。
「しかし……。これだけは言わせてください副隊長」
一呼吸を置いてゆっくりと冷静な口調でキイチは話し始める。
「我々とてコウゾウ隊長に可愛がられて育ってきた隊士です。気持ちはシグレ副隊長と同じです、このまま悔しい気持ちを晴らさず、黙っているわけにも行かないという事は覚えていて欲しいのです」
その言葉にぼんやりと虚空を見つめていたシグレの目の焦点が、ゆっくりとキイチの方へと合っていく。
「ありがとう、キイチさん。その言葉をしっかりと受け取っておきます。私が居ない間は貴方に、この旅籠町の治安維持の責任者を務めて頂きたいのですが、この任を受けて頂けますか?」
「これからはシグレ様。貴方がこの護衛隊の隊長なのです。貴方がそうして欲しいと思うのであれば、是非我々に命令を」
自分よりも遥かに年齢が高く『予備群』としての歴も長いキイチだが、彼女を自分の上司と認めた上で、副隊長シグレにそう告げるのであった。
「分かりました、それではキイチ。これより貴方に旅籠町の護衛隊の副隊長を命ずる。私がこの町に戻って来るまで皆で、協力して町の治安を守り抜きなさい」
いつもの目に戻ったシグレは、キリっとした表情を浮かべて凛とした声をあげて、最後には『予備群』一人一人の顔を見ながらそう告げた。
今日この日を以て『旅籠町』の『護衛隊長』となったシグレの言葉に、キイチを含めた護衛隊の『予備群』達は、一斉にシグレに敬礼をするのだった。
……
……
……
その頃、ゲンロク達の里から少しだけ北にある別の『旅籠町』に逗留していたシゲン達は、数日が経って再びゲンロクの言葉を聞く為に、ゲンロクの里へとその足を踏み入れるのであった。
この場に集まった旅籠町の『予備群』達は、必死に手を合わせて拝んでいるシグレを見る。
泣き腫らしたであろう事が直ぐに分かる程、目が浮腫み晴れ上がり、髪の毛を掻きむしった後が、そのまま残っているのが印象的で、いつもの整った顔立ちをして、綺麗にしているシグレからは想像がつかない程に、今のシグレの容姿は変貌を遂げていた。
そして何よりも泣き腫らしたその目の色が違うかった。どす黒く歪んだその目は、見る者を強張らせる程に威圧的で、ほんわかしたいつもの可愛らしさなどは皆無であり、何かを話し掛けようにも覚悟がいる程であった。
――やがて拝んでいたシグレが、その場に集まった者達に口を開いた。
「いいですか皆さん。よく聞いて下さい。これから私は今回の『妖魔召士』達の一方的な襲撃が行われた事を『妖魔退魔師』の本部に向かい伝えてきます。既に今回の事は両組織が放っているであろう間諜によって伝えられているかもしれませんが、直接この旅籠町の護衛を預かる身として、私自身が直接伝えに行く事にします」
「「……」」
その場に居る者達は言葉を挟まずに、黙って副隊長シグレの言葉に耳を傾ける。
「今回の事で辛く苦しい気持ちを抱いた者も居るでしょうが、貴方達は私が帰って来るまでこれまで通りこの旅籠町の護衛を続けて町の安全を最優先で考えなさい」
シグレの目は『予備群』の配下達を見ているようで焦点はあっていない。どこか虚空を見つめるような瞳で淡々と用意していた言葉を読み上げているようであった。
「分かりました」
一人の若い男がシグレの言葉に返事をする。その男の名前は『キイチ』といった。シグレと同じ時期にこの旅籠町の護衛に指名されてきたこの旅籠の護衛隊の中では、最古参の一人であった。
「しかし……。これだけは言わせてください副隊長」
一呼吸を置いてゆっくりと冷静な口調でキイチは話し始める。
「我々とてコウゾウ隊長に可愛がられて育ってきた隊士です。気持ちはシグレ副隊長と同じです、このまま悔しい気持ちを晴らさず、黙っているわけにも行かないという事は覚えていて欲しいのです」
その言葉にぼんやりと虚空を見つめていたシグレの目の焦点が、ゆっくりとキイチの方へと合っていく。
「ありがとう、キイチさん。その言葉をしっかりと受け取っておきます。私が居ない間は貴方に、この旅籠町の治安維持の責任者を務めて頂きたいのですが、この任を受けて頂けますか?」
「これからはシグレ様。貴方がこの護衛隊の隊長なのです。貴方がそうして欲しいと思うのであれば、是非我々に命令を」
自分よりも遥かに年齢が高く『予備群』としての歴も長いキイチだが、彼女を自分の上司と認めた上で、副隊長シグレにそう告げるのであった。
「分かりました、それではキイチ。これより貴方に旅籠町の護衛隊の副隊長を命ずる。私がこの町に戻って来るまで皆で、協力して町の治安を守り抜きなさい」
いつもの目に戻ったシグレは、キリっとした表情を浮かべて凛とした声をあげて、最後には『予備群』一人一人の顔を見ながらそう告げた。
今日この日を以て『旅籠町』の『護衛隊長』となったシグレの言葉に、キイチを含めた護衛隊の『予備群』達は、一斉にシグレに敬礼をするのだった。
……
……
……
その頃、ゲンロク達の里から少しだけ北にある別の『旅籠町』に逗留していたシゲン達は、数日が経って再びゲンロクの言葉を聞く為に、ゲンロクの里へとその足を踏み入れるのであった。
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