最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第1098話 新たな術式の疑い

 『魔瞳まどう』の影響が無くなり、無事に動く事が可能となったコウゾウだが、直ぐにシグレを助けようと駆け出す事はしなかった。

 そうしたいところは山々ではあったが、目の前に居る『妖魔召士ようましょうし』達に加えて、シグレを担ぎ上げている大柄の天狗の妖魔は明らかにコウゾウが、手を出せる相手ではないと判断したようである。

 戦力値や魔力値を正確に測る事が出来ないコウゾウであっても、この妖魔がランク『3』や『4』ではない事だけは瞬時に理解出来た。

 そもそも退魔士ではなくその上の『妖魔召士ようましょうし』が『式』に選んだ妖魔である。
 ここぞという時に使役する場において、を選ぶ筈も無かった。コウゾウがここで何も考えずに、シグレを救出しようと動けばそれこそ、取り返しのつかない事になりかねない。

 屯所の中であれば彼ら『妖魔召士ようましょうし』は魔力を上手く使えない。この場で焦ってシグレを助けるよりも、彼らを地下牢へ案内した後、機を伺ってシグレを救出して動ける者達を率いて逃げる他ないだろう。

 こうなってしまった以上、捕らえた『妖魔召士ようましょうし』達を渡してでも『シグレ』や他の部下達を救う事が優先される。

 コウゾウは自分が出来る範囲で出来る行動をとる事を意識しながら、厭味な笑みを浮かべる妖魔召士達を、キネツグ達の元へと案内するのだった。

 …………

「お、お前達……」

 コウゾウが屯所の中へと足を踏み入れると、多くの部下達が意識を失わされて倒れ伏していた。どうやらある程度の手加減はされたようで、コウゾウが駆け寄って脈を確認すると確認した者は全員生きている様子であった。

「コウゾウ殿、心配せずとも我らは誰も殺めてはおらんよ。そもそもこの屯所内では『捉術』は使えぬ。この者達も『魔瞳』を用いて彼らを抵抗出来なくした後に、意識を遮断させていったに過ぎぬ」

 天狗の妖魔を使役した『妖魔召士ようましょうし』の『ジンゼン』は、他の『妖魔召士ようましょうし』を一瞥した後に、倒れている者達の安否を確認しているコウゾウに安心しろと告げるのだった。

「……」

 ジンゼンの説明にも沸々と怒りがわきあがるが、必死に堪えるコウゾウだった。ジンゼンとコウゾウのやり取りを横目に、ヒュウガは屯所内に入った時から話に聞いていた『結界』の有無を確かめるために『魔瞳まどう』を用いて、自身の魔力の確認を始めていた。

(成程……。確かにこれは『妖魔召士ようましょうし』の扱う結界ではなさそうですね『魔瞳まどう』も問題なく使えるようですが……)

 次に『捉術』に『魔力』を回そうと、更に目を青く輝かせるがどうやら本当に『魔瞳まどう』を除いた自身の魔力を伴う『捉術そくじゅつ』は使えないようで反応がなかった。

(対象が自分であろうと、自分以外の者に使おうとしてみても『魔力』そのものが反応を示しませんねぇ、しかし『捉術』の発動自体はしている感覚はあります。それに魔力を伴って発動はしているようですが、その体感から効力が発揮しているようには見えない。これは『魔力』だけが減っているような感覚でしょうか……)

 これでは確かに彼の側近の『妖魔召士ようましょうし』達が、魔力を使えなかったと思う筈である。

(本当に不可解ですねぇ……。これはゲンロクが編み出したような新たな術式が使われて、発動されている結界なのかもしれませんねぇ)

 実際は『レパート』の世界の大魔王『フルーフ』が編み出した『魔法』を『アレルバレル』の世界の『ことわり』を用いて使われた大魔王ソフィの『魔法』なのだが『ノックス』の世界には『ことわり』自体が存在していない為、ヒュウガが真相である魔法の発想に行き着く事はなく、自分の知らない新たな術式によって、編み出されたと勘違いをするのであった。

(※この時ヒュウガが色々と魔力を使って試した内容が『捉術そくじゅつ』ではなく『ことわり』を用いた魔法であった場合、その魔法も無効化された後『魔法』を使う為の魔力はソフィの元へと吸収されて更にはソフィがヒュウガ達から発せられた魔力を感知する事になり、この場に現れた事が伝わっていた。しかし今回の場合は『ことわり』を使われていない為『捉術そくじゅつ』の無効化のみとなり、及び『死の結界』の使用者であるも結界を通して行われていない)

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