最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1067話 サカダイの門
別れたばかりのエイジに『妖魔退魔師』の『スオウ』が向かっている事など、知る筈が無いソフィ達は、長い橋を渡り終えてサカダイに近づいて行く。
「狭く長い橋に段差と奥行きが異なる石で出来た階段……。更にはこの周囲の池といい、どうやらこのサカダイという町は、他国などの侵略から町を守る要塞のような造りだと思わぬか?」
ソフィはサカダイ周辺を歩いてみて、ラルグ魔国の王である『レルバノン』が造った要塞を思い出すのだった。
「まぁ人間同士の戦争なら効果的かもしれねぇな」
「でもよ旦那。もし俺がこの町を攻め滅ぼそうと考えるなら、こんな回りくどい道を通ろうとは思わずに、配下の魔王達を一斉に空から襲撃させた後『極大魔法』を雨のように降らせて、一気に片をつけると思います。攻撃魔法を無力化や軽減をする結界が無い時点で、いくら通りにくい道を造ろうが全くの無駄じゃないですかね?」
ソフィとヌーは顔を見合わせて、苦笑いを浮かべた。
折角ヌーが言葉を選んで人間同士ならばと口にしたというのに、セルバスは空を飛んで侵略する事が可能な『魔族』にとっての正論をこの『人間の町』にあてはめて告げてしまうのだった。
「うむ、お主は賢いなぁ。とりあえずお主は町についたら、服を乾かせてもらえる所を探した方がよいな」
ヌーに何度も池に落とされた事でセルバスはずぶ濡れであり、先程から地面にポタポタと水を滴らせながらソフィ達についてきていた。
「全くてめぇは、頭の中まで筋肉で出来てるんじゃねぇだろうな。もうちょっと色々と戦闘以外の事も勉強した方が良いんじゃねぇか?」
遠回しにセルバスの事を馬鹿にするように告げるヌーに、セルバスは再び苛立ちを見せ始めるのだった。
ブツブツとセルバスが愚痴を零していると、ようやく見えてきた町の門だったが、そこに突如として門が開いて行く。どうやら中から開けられたらしいが、中からソフィ達の姿が見えたからだろうか。
「サカダイへようこそ、御客人達」
ふんわりとパーマがかった赤い髪をした二十歳前後に見える女性が、真っすぐにソフィ達を視線を合わせたまま、歓迎の挨拶を口にするのだった。
……
……
……
ケイノトの町に戻ろうとしていたエイジの前に、小柄な少年が立ちはだかる。
「何だお主は?」
エイジは目の前の少年を見ながら口を開いた。
小柄な体に似合わぬ長い太刀を持つ少年に、何処かで見た事があったような気がするが、まずは口を使ってその正体を相手から直接聞き出そうとするのであった。
「直接こうして会話をするのは初めてかな。あんた『サイヨウ』殿の弟子だったエイジ殿だろ?」
「お主はまさか『妖魔退魔師』の『スオウ』殿か?」
現在の『妖魔召士』組織から離れて久しいエイジだが、そんな自分の事や、師匠のサイヨウの名を知る小柄な少年を見て、ようやくその頭の片隅にあった知識が、明確にエイジに思い起こさせる。
――小柄な姿をしているが、才ある『妖魔退魔師』の『スオウ』。
十年程前の『妖魔召士』の会合の中で、何度も話題に挙がった新人の天才剣士。
かつて師の『サイヨウ』がこの『スオウ』の戦い方を戦場で見た事があると、自分に告げた事があったのを思い出したのであった。
その師曰く目の前の小柄な少年の事をまだまだ『妖魔退魔師』の幹部達に比べると粗削りだが、まともに経験を積んでいけば、数年もすれば師を越える事もあるだろうと言っていた。
「あんたみたいな名のある『妖魔召士』様に、俺の名前を知っていてもらえて光栄だよ。エイジ殿」
どうやら本当に『妖魔退魔師』の『スオウ』であっていたようだ。師がスオウ殿の事を小柄に似合わない大刀を持っていると言っていたが、十年たった今も小柄なままだとは思わなかった。
(しかし確かに師匠の言う通り、彼に似合わない得物のようだな)
エイジはスオウの刀を見て、あれでまともに振れるのだろうかと考えるのであった。
「それでエイジ殿。あんたら『妖魔召士』は一体何を企んでいるんだい?」
「は……?」
師のサイヨウの言葉を思い出しながら、スオウの刀の事を考えていたエイジは、突然のそのスオウの言葉に意識を戻されるのであった。
「とぼけなくていいって。イダラマ殿を隠す手引きを行う為に、わざわざあんた程の妖魔召士が、ここに来ていたんだろう?」
(やはりイダラマがソフィ殿の仲間を連れてここに来ていたのか。しかし奴は何が目的で『妖魔退魔師』の元に向かっていたのか)
何やら勘違いをしているスオウを前に、エイジは直ぐに弁解をせずに冷静に考え始めるのだった。
「突然やってきて『妖魔山』の管理をうちに任せたいと言ってきたが、本当の目的は別にあったという事かな?」
しかしここまで冷静だったエイジが、そこで目の色を変えて驚くのであった。
「待て……! 『妖魔山』の管理をそちらに? 奴が、イダラマがそんな事を言っていたというのか!!」
「エイジ殿。もう本当にとぼけなくていいんだって。俺に下手な誤魔化しは通用しないから。あの副総長がイダラマ殿を見張っていろと言っていたくらいだ。どうせ他にも何か考えていたんだろう? まさかアンタ程の奴がこの場に姿を見せるとは思ってもみなかったけどね」
そう言ってスオウはエイジの真意を暴こうと、眼光を鋭くさせるのだった。
……
……
……
「狭く長い橋に段差と奥行きが異なる石で出来た階段……。更にはこの周囲の池といい、どうやらこのサカダイという町は、他国などの侵略から町を守る要塞のような造りだと思わぬか?」
ソフィはサカダイ周辺を歩いてみて、ラルグ魔国の王である『レルバノン』が造った要塞を思い出すのだった。
「まぁ人間同士の戦争なら効果的かもしれねぇな」
「でもよ旦那。もし俺がこの町を攻め滅ぼそうと考えるなら、こんな回りくどい道を通ろうとは思わずに、配下の魔王達を一斉に空から襲撃させた後『極大魔法』を雨のように降らせて、一気に片をつけると思います。攻撃魔法を無力化や軽減をする結界が無い時点で、いくら通りにくい道を造ろうが全くの無駄じゃないですかね?」
ソフィとヌーは顔を見合わせて、苦笑いを浮かべた。
折角ヌーが言葉を選んで人間同士ならばと口にしたというのに、セルバスは空を飛んで侵略する事が可能な『魔族』にとっての正論をこの『人間の町』にあてはめて告げてしまうのだった。
「うむ、お主は賢いなぁ。とりあえずお主は町についたら、服を乾かせてもらえる所を探した方がよいな」
ヌーに何度も池に落とされた事でセルバスはずぶ濡れであり、先程から地面にポタポタと水を滴らせながらソフィ達についてきていた。
「全くてめぇは、頭の中まで筋肉で出来てるんじゃねぇだろうな。もうちょっと色々と戦闘以外の事も勉強した方が良いんじゃねぇか?」
遠回しにセルバスの事を馬鹿にするように告げるヌーに、セルバスは再び苛立ちを見せ始めるのだった。
ブツブツとセルバスが愚痴を零していると、ようやく見えてきた町の門だったが、そこに突如として門が開いて行く。どうやら中から開けられたらしいが、中からソフィ達の姿が見えたからだろうか。
「サカダイへようこそ、御客人達」
ふんわりとパーマがかった赤い髪をした二十歳前後に見える女性が、真っすぐにソフィ達を視線を合わせたまま、歓迎の挨拶を口にするのだった。
……
……
……
ケイノトの町に戻ろうとしていたエイジの前に、小柄な少年が立ちはだかる。
「何だお主は?」
エイジは目の前の少年を見ながら口を開いた。
小柄な体に似合わぬ長い太刀を持つ少年に、何処かで見た事があったような気がするが、まずは口を使ってその正体を相手から直接聞き出そうとするのであった。
「直接こうして会話をするのは初めてかな。あんた『サイヨウ』殿の弟子だったエイジ殿だろ?」
「お主はまさか『妖魔退魔師』の『スオウ』殿か?」
現在の『妖魔召士』組織から離れて久しいエイジだが、そんな自分の事や、師匠のサイヨウの名を知る小柄な少年を見て、ようやくその頭の片隅にあった知識が、明確にエイジに思い起こさせる。
――小柄な姿をしているが、才ある『妖魔退魔師』の『スオウ』。
十年程前の『妖魔召士』の会合の中で、何度も話題に挙がった新人の天才剣士。
かつて師の『サイヨウ』がこの『スオウ』の戦い方を戦場で見た事があると、自分に告げた事があったのを思い出したのであった。
その師曰く目の前の小柄な少年の事をまだまだ『妖魔退魔師』の幹部達に比べると粗削りだが、まともに経験を積んでいけば、数年もすれば師を越える事もあるだろうと言っていた。
「あんたみたいな名のある『妖魔召士』様に、俺の名前を知っていてもらえて光栄だよ。エイジ殿」
どうやら本当に『妖魔退魔師』の『スオウ』であっていたようだ。師がスオウ殿の事を小柄に似合わない大刀を持っていると言っていたが、十年たった今も小柄なままだとは思わなかった。
(しかし確かに師匠の言う通り、彼に似合わない得物のようだな)
エイジはスオウの刀を見て、あれでまともに振れるのだろうかと考えるのであった。
「それでエイジ殿。あんたら『妖魔召士』は一体何を企んでいるんだい?」
「は……?」
師のサイヨウの言葉を思い出しながら、スオウの刀の事を考えていたエイジは、突然のそのスオウの言葉に意識を戻されるのであった。
「とぼけなくていいって。イダラマ殿を隠す手引きを行う為に、わざわざあんた程の妖魔召士が、ここに来ていたんだろう?」
(やはりイダラマがソフィ殿の仲間を連れてここに来ていたのか。しかし奴は何が目的で『妖魔退魔師』の元に向かっていたのか)
何やら勘違いをしているスオウを前に、エイジは直ぐに弁解をせずに冷静に考え始めるのだった。
「突然やってきて『妖魔山』の管理をうちに任せたいと言ってきたが、本当の目的は別にあったという事かな?」
しかしここまで冷静だったエイジが、そこで目の色を変えて驚くのであった。
「待て……! 『妖魔山』の管理をそちらに? 奴が、イダラマがそんな事を言っていたというのか!!」
「エイジ殿。もう本当にとぼけなくていいんだって。俺に下手な誤魔化しは通用しないから。あの副総長がイダラマ殿を見張っていろと言っていたくらいだ。どうせ他にも何か考えていたんだろう? まさかアンタ程の奴がこの場に姿を見せるとは思ってもみなかったけどね」
そう言ってスオウはエイジの真意を暴こうと、眼光を鋭くさせるのだった。
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