最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1052話 ヒノエの爆弾発言
組長のヒノエと副組長のヒナギクは『妖魔召士』達が集う部屋に案内された。その部屋の中には、現在の『妖魔召士』の長の座に居る『ゲンロク』とNo.2である『ヒュウガ』それにその両名に従う『妖魔召士』の幹部達が『妖魔退魔師』側の最高幹部である『一組』の組長『ヒノエ』を待っていた。
「待たせてしまって申し訳ない。私が『総長の名代』で来た『ヒノエ組』組長の『ヒノエだ』」
「同じく『副総長の名代』で来ました『ヒノエ組』副組長の『ヒナギク』です」
椅子に座って直ぐに挨拶をする二人に『妖魔召士』達は頷いた。この場に居る者達は事情を全員が理解している為、こちらの長がこの場に居るのに『シゲン』や『ミスズ』といった『妖魔退魔師』側の組織のトップが来ていないことに文句を言うものは誰も居なかった。
本来の両組織が行う取り決めの会合では『妖魔退魔師』側も総長や副総長を含めた幹部達も全員集まるのだが、今回はサカダイの土地に『妖魔召士』側の組織の人間が、入り込んだ不始末の一件が原因である為に、会合というよりかは『妖魔召士』側がとる責任方法を『妖魔退魔師』側の者が報告を受けるという形である。
つまり今回の一件は完全に『妖魔召士』側が風下に立つ立場である為『妖魔退魔師』側は、最高幹部である『ヒノエ』を総長『シゲン』の『名代』として、この場で報告を受ける立場として、選ばれてここに来たのであった。
「早速だが、うちらの土地に入り込んでドンパチやらかした件。あんたらはどうするつもりなのか、聞かせてもらおうか?」
対立する組織の総本山で、少しも臆する事なく堂々とした態度で『ヒノエ』組長はそう言い放つのだった。
ヒノエの言葉にまず始めに口を開いたのは『妖魔召士』組織のNo.2である『ヒュウガ』であった。
「この度は申し訳ありませんでした。再三入り込んだ者達にも気を付けるように伝えてはいたのですが、うちの領地内の『加護の森』に唐突に二体の妖魔が現れましてね。森の警備を行っていた退魔組の若い者達が、現れた妖魔を退治しようと対応にあたったようなのですが、その妖魔は敵わないとみるや、そちらの管理する土地側へと逃げて行ったそうで、彼らも逃げた妖魔が町へ向かえば危険だと考えての事で、必死になって後を追っていったそうなんですが……」
「あー、ヒュウガさん。その辺の話はもういいよ。私たちは別に何で入り込んだかの理由を細かく聞く為にきたんじゃねぇんだ」
「え?」
ヒュウガがサカダイの管理する土地に入り込んだ理由を述べている途中で、ヒノエは手で制してヒュウガの言葉を遮るのであった。
「だからアンタらの組織の連中は、理由がどうであれ入っちゃいけねぇ場所に入り込んだんだ。その落とし前をどうつけるのかを私達は聞きたいだけだ」
ぴしゃりと言い放った『ヒノエ』のその高圧的な態度にヒュウガだけではなく、他の者達も眉を寄せて不機嫌さを露にするのだった。
「そ、それは……。ですから今後は若い者達によくいい聞かせておきますので、どうか穏便に済ます事は……」
他の『妖魔召士』がそう口にすると、途端に『ヒノエ』はテーブルを思いきり手で叩いた。ばんっと小気味いい音が響き、喋っていた『妖魔召士』の男はすぐさま黙り込んだ。
「お前、舐めてんのか? うちとアンタの組織の関係は分かってんだろうが。そんな適当が許されるんだったら、毎回毎回利権の取り決めやらなんやら話す必要も意味もねぇだろう、なぁヒナギク?」
「はい。まさしくその通りですね。事情はどうであれ、両組織間の間で決めた事を破ったのは貴方がた『妖魔召士』側なのですから、その責任は取って頂かないと」
不穏な空気の中、急にヒノエに話を振られたヒナギクだったが、冷静にそう告げた後に視線をゲンロクに向けるのだった。
視線を向けられた『妖魔召士』側の長であるゲンロクは小さく溜息を吐いた後、これまで黙っていた口を開いた。
「うちが『コウヒョウ』に出している店の利益と、そちらに出してもらっている『予備群』達の町の護衛料の30%の上乗せで、今回の事は目を瞑ってもらえないだろうか」
「ほう……? 例の森に入っただけだというのにえらく大盤振る舞いじゃないか。何か裏があるんじゃないかと疑ってしまうねぇ」
『コウヒョウ』はノックスの世界では商いの町として有名で、世界中から人が集まる大都市であり、当然『妖魔退魔師』や『妖魔召士』の組織で扱う利権絡みを含めた重要な場所の一つであった。
酒場、食事処、万屋。どれをとっても無視が出来ない商い場で、他の町の権益とは比べ物にならない。
そんなコウヒョウの利益と、コウヒョウの町の護衛を務める『予備群』に支払う護衛料の30%の上乗せだというのだから、それはそれは馬鹿にならない額になる。
少々荒事があったとはいえ、単にサカダイの管理する森に入ったくらいで、ここまでの有益な提案を示されるとは思わなかった。この条件であれば、本来なら話を持ち帰る事もせずにこの場で決めてしまっても構わない程なのだが、今回は少し事情が違う。
今回の会合で『ヒノエ』達に出された命令内容は『妖魔山』の管理権を『妖魔召士』から『妖魔退魔師』へと移す事。
それが前提条件である為に、ここまでの好条件であったとしてもそれで構いませんとは、とてもいえないのであった。
ヒノエはちらりと隣に居る自分の信頼する副組長の顔を見る。どうやら副組長のヒナギクも悩んでいるような表情を浮かべている。彼女も『妖魔召士』の組織がここまでの条件を提示するとは思わなかったのだろう。ゲンロクの出したコウヒョウの上乗せの話は並大抵ではない程の、莫大な儲け話なのである。
「しかし悪いがそれだけじゃ駄目だな。コウヒョウの上乗せにプラスして、直接縄張りに入り込んだ連中と、その連中に指示を出した『退魔組』の頭領『サテツ』の首を差し出せば、今回は目を瞑ってやるよ」
「「なっ……!?」」
とんでもない事を言い出した『ヒノエ』にその場に居る者達は『ゲンロク』や『ヒュウガ』。それに組織の身内である『ヒナギク』でさえ驚きの声をあげながら『ヒノエ』の顔を見るのであった。
……
……
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「待たせてしまって申し訳ない。私が『総長の名代』で来た『ヒノエ組』組長の『ヒノエだ』」
「同じく『副総長の名代』で来ました『ヒノエ組』副組長の『ヒナギク』です」
椅子に座って直ぐに挨拶をする二人に『妖魔召士』達は頷いた。この場に居る者達は事情を全員が理解している為、こちらの長がこの場に居るのに『シゲン』や『ミスズ』といった『妖魔退魔師』側の組織のトップが来ていないことに文句を言うものは誰も居なかった。
本来の両組織が行う取り決めの会合では『妖魔退魔師』側も総長や副総長を含めた幹部達も全員集まるのだが、今回はサカダイの土地に『妖魔召士』側の組織の人間が、入り込んだ不始末の一件が原因である為に、会合というよりかは『妖魔召士』側がとる責任方法を『妖魔退魔師』側の者が報告を受けるという形である。
つまり今回の一件は完全に『妖魔召士』側が風下に立つ立場である為『妖魔退魔師』側は、最高幹部である『ヒノエ』を総長『シゲン』の『名代』として、この場で報告を受ける立場として、選ばれてここに来たのであった。
「早速だが、うちらの土地に入り込んでドンパチやらかした件。あんたらはどうするつもりなのか、聞かせてもらおうか?」
対立する組織の総本山で、少しも臆する事なく堂々とした態度で『ヒノエ』組長はそう言い放つのだった。
ヒノエの言葉にまず始めに口を開いたのは『妖魔召士』組織のNo.2である『ヒュウガ』であった。
「この度は申し訳ありませんでした。再三入り込んだ者達にも気を付けるように伝えてはいたのですが、うちの領地内の『加護の森』に唐突に二体の妖魔が現れましてね。森の警備を行っていた退魔組の若い者達が、現れた妖魔を退治しようと対応にあたったようなのですが、その妖魔は敵わないとみるや、そちらの管理する土地側へと逃げて行ったそうで、彼らも逃げた妖魔が町へ向かえば危険だと考えての事で、必死になって後を追っていったそうなんですが……」
「あー、ヒュウガさん。その辺の話はもういいよ。私たちは別に何で入り込んだかの理由を細かく聞く為にきたんじゃねぇんだ」
「え?」
ヒュウガがサカダイの管理する土地に入り込んだ理由を述べている途中で、ヒノエは手で制してヒュウガの言葉を遮るのであった。
「だからアンタらの組織の連中は、理由がどうであれ入っちゃいけねぇ場所に入り込んだんだ。その落とし前をどうつけるのかを私達は聞きたいだけだ」
ぴしゃりと言い放った『ヒノエ』のその高圧的な態度にヒュウガだけではなく、他の者達も眉を寄せて不機嫌さを露にするのだった。
「そ、それは……。ですから今後は若い者達によくいい聞かせておきますので、どうか穏便に済ます事は……」
他の『妖魔召士』がそう口にすると、途端に『ヒノエ』はテーブルを思いきり手で叩いた。ばんっと小気味いい音が響き、喋っていた『妖魔召士』の男はすぐさま黙り込んだ。
「お前、舐めてんのか? うちとアンタの組織の関係は分かってんだろうが。そんな適当が許されるんだったら、毎回毎回利権の取り決めやらなんやら話す必要も意味もねぇだろう、なぁヒナギク?」
「はい。まさしくその通りですね。事情はどうであれ、両組織間の間で決めた事を破ったのは貴方がた『妖魔召士』側なのですから、その責任は取って頂かないと」
不穏な空気の中、急にヒノエに話を振られたヒナギクだったが、冷静にそう告げた後に視線をゲンロクに向けるのだった。
視線を向けられた『妖魔召士』側の長であるゲンロクは小さく溜息を吐いた後、これまで黙っていた口を開いた。
「うちが『コウヒョウ』に出している店の利益と、そちらに出してもらっている『予備群』達の町の護衛料の30%の上乗せで、今回の事は目を瞑ってもらえないだろうか」
「ほう……? 例の森に入っただけだというのにえらく大盤振る舞いじゃないか。何か裏があるんじゃないかと疑ってしまうねぇ」
『コウヒョウ』はノックスの世界では商いの町として有名で、世界中から人が集まる大都市であり、当然『妖魔退魔師』や『妖魔召士』の組織で扱う利権絡みを含めた重要な場所の一つであった。
酒場、食事処、万屋。どれをとっても無視が出来ない商い場で、他の町の権益とは比べ物にならない。
そんなコウヒョウの利益と、コウヒョウの町の護衛を務める『予備群』に支払う護衛料の30%の上乗せだというのだから、それはそれは馬鹿にならない額になる。
少々荒事があったとはいえ、単にサカダイの管理する森に入ったくらいで、ここまでの有益な提案を示されるとは思わなかった。この条件であれば、本来なら話を持ち帰る事もせずにこの場で決めてしまっても構わない程なのだが、今回は少し事情が違う。
今回の会合で『ヒノエ』達に出された命令内容は『妖魔山』の管理権を『妖魔召士』から『妖魔退魔師』へと移す事。
それが前提条件である為に、ここまでの好条件であったとしてもそれで構いませんとは、とてもいえないのであった。
ヒノエはちらりと隣に居る自分の信頼する副組長の顔を見る。どうやら副組長のヒナギクも悩んでいるような表情を浮かべている。彼女も『妖魔召士』の組織がここまでの条件を提示するとは思わなかったのだろう。ゲンロクの出したコウヒョウの上乗せの話は並大抵ではない程の、莫大な儲け話なのである。
「しかし悪いがそれだけじゃ駄目だな。コウヒョウの上乗せにプラスして、直接縄張りに入り込んだ連中と、その連中に指示を出した『退魔組』の頭領『サテツ』の首を差し出せば、今回は目を瞑ってやるよ」
「「なっ……!?」」
とんでもない事を言い出した『ヒノエ』にその場に居る者達は『ゲンロク』や『ヒュウガ』。それに組織の身内である『ヒナギク』でさえ驚きの声をあげながら『ヒノエ』の顔を見るのであった。
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