最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1039話 セルバスの恋心と
ソフィ達の酒を追加しようと部屋を抜けて来たセルバスだったが、廊下で会ったシグレに訊ねたところ、どうやら屯所にはもう酒が残っておらず、旅籠町の裏通りにある酒場から直接追加分を貰いに行かなくてはならなくなった。
元々この世界の酒は度数が高く、酒宴に用意していた分量でさえ余るくらいになるだろうと、コウゾウ達は予測していたくらいであった。しかしどうやらそのコウゾウ達の予想を遥かに越えて、ソフィやヌーは酒豪であったらしい。
シグレが一人で追加分を取りに行くと言ってくれたのだが、それを聞いたセルバスは、自分達が呑む分だからと手伝うと告げた。そして二人は夜の『旅籠町』を並んで裏通りまで歩いているところである。
『煌鴟梟』のアジトに居た頃はこの隣に並んでいるシグレに『世界間跳躍』の邪魔をされた挙句、逃げようとしたことが何故かバレていて、不気味な笑みを脅し代わりに使われていた事で苦手意識が生まれていた。
しかしそのシグレがコウゾウを守る為に身を挺して守ろうとして自分の鼻を折られた挙句、ボロボロにされて意識を失わされたというのに、目を覚ました時にコウゾウが無事だった事を喜び笑顔を見せていた。その時のシグレを見たセルバスは、シグレに対する考え方が明確に変わった。
そもそもセルバスは『煌聖の教団』の中でもエリートの魔族であり、同じ魔族であっても、取るに足らない魔族を蔑むような目で見る程で、それはこの世界に来た時も変わらず『煌鴟梟』の仲間となる団員達に対してもたかが、人間風情という考え方を持っていた。
そんなセルバスだがコウゾウの為に、脇目も振らずに自分の命を省みずに飛び出して守ったシグレを認めるに至り、対等として人間の女であるシグレを見るようになったのである。
そして見る目が変わったそこからは、好ましく思うようになるまでそこまで時間は掛からなかった。
自分が呑むわけでもない酒の為に、わざわざ自分の用事を後回しにして、この暗い道を一人で取りに行こうとしたり、玄関先でセルバスに見せた笑顔は『煌聖の教団』が滅ぼされて、彼が崇めていた総帥が消滅させられて何処にも戻る場所が無くなってしまった彼の心を包み込むように癒してくれたのである。
――要するに認めていた女に弱りきっている時に優しくされた事でセルバスは、シグレに惚れてしまったという事である。
「アンタの隊長はもうすぐここでの任務を終えて、ソフィの旦那と同じ町に向かうと聞いたが、アンタはこの町に残るのかい?」
月明りに照らされながら旅籠の裏通りを歩く二人だったが、もうすぐ並びの酒場が見えると言った場所で、セルバスはシグレに話しかけるのであった。
「そうですね。私は元々この町の護衛として派遣されていたので、きっとコウゾウ隊長が居なくなった後もこの町に残る事になると思います」
セルバスが一番聞きたかったのはシグレの事であるが、どうやらこの旅籠町の護衛としてこれまで通りに残るようだ。しかしコウゾウ隊長とやらが居なくなるという言葉を告げたシグレは、寂しそうな表情を浮かべていた。
またシグレの元に会いに行けると喜びかけたが、セルバスはその表情を見て手放しで喜べなくなった。
「アンタ、コウゾウって男の事が好きなのか?」
「!?」
予想すらしていなかった言葉を聞かれた事で、シグレは驚きで足を止めたままセルバスの目を見る。
「そ、そんなんじゃないですよ。コウゾウ隊長は私が『予備群』に選ばれた時に色々と世話を焼いて下さった、憧れの先輩……な、だけです」
しかしそう説明するシグレの頬が赤らめられており、必死に誤魔化そうとしている事が、分かりやすいように見て取れた。
「そうか、俺はな。あのチアキって女にコウゾウって奴が動けなくされた後、必死に庇おうとアンタが、チアキに向かっていった時の事や、そのチアキの使役した魔物のような奴にやられた後もコウゾウが無事だと分かって、嬉しそうにしていたアンタを見てな、その……、なんつーか」
何を言われるのか分からないシグレは、きょとんとした顔を浮かべながら、セルバスの方をじっと見ている。
「こ、こんな風に俺もアンタに想われたら、嬉しいなと、その、思ったんだ!」
『煌聖の教団』の大幹部で『大魔王最上位』の領域に居たセルバスは、一人の人間の女性の前で、緊張しながらも想いを言葉に紡いでいくのだった。
「そ、それでだな……、アンタがもし良ければなんだが……」
しかしこれまでじっと『セルバス』の火照った顔を見つめていたシグレだが、物陰から何かが飛び出してきた瞬間。一瞬でシグレの目線はこの場の闖入者に向かう。
「セルバスさん、危ない!」
必死にシグレに何かを伝えようとしているセルバスの背後から刃物を持った男が、物陰から飛び出してくるのであった。
セルバスの前に居たシグレは、その男の存在にいち早く気づき、気づいて貰おうと大声をあげたのだが、全く動く気配のないセルバスに、シグレは先に酒宴用にと預かっていた『岡持ち』をその場に置きながらセルバスを守る為に駆け出そうとするのだった。
……
……
……
元々この世界の酒は度数が高く、酒宴に用意していた分量でさえ余るくらいになるだろうと、コウゾウ達は予測していたくらいであった。しかしどうやらそのコウゾウ達の予想を遥かに越えて、ソフィやヌーは酒豪であったらしい。
シグレが一人で追加分を取りに行くと言ってくれたのだが、それを聞いたセルバスは、自分達が呑む分だからと手伝うと告げた。そして二人は夜の『旅籠町』を並んで裏通りまで歩いているところである。
『煌鴟梟』のアジトに居た頃はこの隣に並んでいるシグレに『世界間跳躍』の邪魔をされた挙句、逃げようとしたことが何故かバレていて、不気味な笑みを脅し代わりに使われていた事で苦手意識が生まれていた。
しかしそのシグレがコウゾウを守る為に身を挺して守ろうとして自分の鼻を折られた挙句、ボロボロにされて意識を失わされたというのに、目を覚ました時にコウゾウが無事だった事を喜び笑顔を見せていた。その時のシグレを見たセルバスは、シグレに対する考え方が明確に変わった。
そもそもセルバスは『煌聖の教団』の中でもエリートの魔族であり、同じ魔族であっても、取るに足らない魔族を蔑むような目で見る程で、それはこの世界に来た時も変わらず『煌鴟梟』の仲間となる団員達に対してもたかが、人間風情という考え方を持っていた。
そんなセルバスだがコウゾウの為に、脇目も振らずに自分の命を省みずに飛び出して守ったシグレを認めるに至り、対等として人間の女であるシグレを見るようになったのである。
そして見る目が変わったそこからは、好ましく思うようになるまでそこまで時間は掛からなかった。
自分が呑むわけでもない酒の為に、わざわざ自分の用事を後回しにして、この暗い道を一人で取りに行こうとしたり、玄関先でセルバスに見せた笑顔は『煌聖の教団』が滅ぼされて、彼が崇めていた総帥が消滅させられて何処にも戻る場所が無くなってしまった彼の心を包み込むように癒してくれたのである。
――要するに認めていた女に弱りきっている時に優しくされた事でセルバスは、シグレに惚れてしまったという事である。
「アンタの隊長はもうすぐここでの任務を終えて、ソフィの旦那と同じ町に向かうと聞いたが、アンタはこの町に残るのかい?」
月明りに照らされながら旅籠の裏通りを歩く二人だったが、もうすぐ並びの酒場が見えると言った場所で、セルバスはシグレに話しかけるのであった。
「そうですね。私は元々この町の護衛として派遣されていたので、きっとコウゾウ隊長が居なくなった後もこの町に残る事になると思います」
セルバスが一番聞きたかったのはシグレの事であるが、どうやらこの旅籠町の護衛としてこれまで通りに残るようだ。しかしコウゾウ隊長とやらが居なくなるという言葉を告げたシグレは、寂しそうな表情を浮かべていた。
またシグレの元に会いに行けると喜びかけたが、セルバスはその表情を見て手放しで喜べなくなった。
「アンタ、コウゾウって男の事が好きなのか?」
「!?」
予想すらしていなかった言葉を聞かれた事で、シグレは驚きで足を止めたままセルバスの目を見る。
「そ、そんなんじゃないですよ。コウゾウ隊長は私が『予備群』に選ばれた時に色々と世話を焼いて下さった、憧れの先輩……な、だけです」
しかしそう説明するシグレの頬が赤らめられており、必死に誤魔化そうとしている事が、分かりやすいように見て取れた。
「そうか、俺はな。あのチアキって女にコウゾウって奴が動けなくされた後、必死に庇おうとアンタが、チアキに向かっていった時の事や、そのチアキの使役した魔物のような奴にやられた後もコウゾウが無事だと分かって、嬉しそうにしていたアンタを見てな、その……、なんつーか」
何を言われるのか分からないシグレは、きょとんとした顔を浮かべながら、セルバスの方をじっと見ている。
「こ、こんな風に俺もアンタに想われたら、嬉しいなと、その、思ったんだ!」
『煌聖の教団』の大幹部で『大魔王最上位』の領域に居たセルバスは、一人の人間の女性の前で、緊張しながらも想いを言葉に紡いでいくのだった。
「そ、それでだな……、アンタがもし良ければなんだが……」
しかしこれまでじっと『セルバス』の火照った顔を見つめていたシグレだが、物陰から何かが飛び出してきた瞬間。一瞬でシグレの目線はこの場の闖入者に向かう。
「セルバスさん、危ない!」
必死にシグレに何かを伝えようとしているセルバスの背後から刃物を持った男が、物陰から飛び出してくるのであった。
セルバスの前に居たシグレは、その男の存在にいち早く気づき、気づいて貰おうと大声をあげたのだが、全く動く気配のないセルバスに、シグレは先に酒宴用にと預かっていた『岡持ち』をその場に置きながらセルバスを守る為に駆け出そうとするのだった。
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