最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第1027話 イダラマの野望

 『妖魔召士ようましょうし』のヒュウガの側近が放っていた梟の『式』の『浮梟うふく』が、ゲンロクの里に居る主の元へと情報を届ける為に飛び立った頃、ソフィの配下である『九大魔王』のエヴィと共にしているイダラマ達が遂に『サカダイ』の町に辿り着くのであった。

「サカダイか。久しいな」

 イダラマ達は入り口でサカダイに入る為の手続きを正規に済ませた後、町並みを見渡しながら感慨深そうにそう告げた。

 サカダイという町は石垣に囲まれたかつての城のような造りをしていて、その外側には水の張られた堀があり、サカダイに入る為には細長い一本の橋を渡らなければならない。

 今は誰も並んで町に入る者達も居なかった為、イダラマ達はあっさりとサカダイの門まで辿り着く事ができ、更にはイダラマの護衛には、この町出身である『予備群よびぐん』である『アコウ』と『ウガマ』が居た為にすんなりとサカダイの町に入る事が出来たのであった。

「『妖魔団の乱』以降、俺達を含めた『妖魔退魔師ようまたいまし』側が『ケイノト』からこの町に居を移すにあたって『妖魔召士ようましょうし』の方々は、よっぽどの用が無い限りはこの町には寄り付かなくなってしまいましたからね……」

「ああ『妖魔召士ようましょうし』側も取り纏める者があれではな。纏まる話も纏まる筈もなし」

 現在の暫定の長である『ゲンロク』ではなく、前時代の妖魔召士ようましょうしの長である『シギン』が今も『妖魔召士ようましょうし』側の組織の長であったならば、ここまで話がこじれる事なく今も互いに共存共栄の関係を続けていられただろう。

 だが、今の守旧派の『妖魔召士ようましょうし』達や『妖魔退魔師ようまたいまし』側の連中が、前時代までの組織の在り方。共存共栄を望んでいたのだとしてもこの場に居る『イダラマ』だけは、それに納得をしてはいなかったであろう。

 『妖魔召士ようましょうし』の組織内も前時代の在り方を理想とする守旧派、そしてその在り方を否定する改革派。あくまで暫定ではあるが、この改革派を望んだ今代の組織の長『ゲンロク』や、そのゲンロクのやり方に昨今、不満を持ち始めた『ヒュウガ』派呼ばれる者達。同じ『妖魔召士ようましょうし』の組織内でも色々な感情が渦巻いている。

 イダラマという『妖魔召士ようましょうし』もまた、保守派と改革派で分類するというのであれば、間違いなく『である。

 しかしこのイダラマは、同じ改革派であっても『ゲンロク』や『ヒュウガ』とは根底から抱いている思想が違っている。

 ゲンロクは『妖魔召士ようましょうし』となる規定の魔力を持たぬ者達に対して、これまで同じ思想を持ちながらにして力が足りなかった者達を『退魔組』の退魔士として組織に迎えたり、自分達の組織の元から去った『妖魔退魔師ようまたいまし』という圧倒的な力を持つ者達の代わりに『式』にした妖魔達の力を無理矢理に増幅させたりする禁術を用いたりしているが、前時代までの『妖魔召士ようましょうし』の思想自体に対しては、そこまで否定的では無い。守旧派と改革派の間で、揺れ動いているようなモノである。

 ヒュウガに関して言えば、先人達が苦労して考え行ってきた事に結果だけを見て、失敗している所に文句をつけているだけであり、革新的な代替案や、自身の明確な考えなど何一つないだろう。

 単に自分が組織の長に立ちたいという野心だけで『妖魔召士ようましょうし』という組織の思想に対してはゲンロクよりも考えを持っていない。

 あれでは『ヒュウガ』が正式に組織の長になったところで、今以上に『妖魔召士ようましょうし』の組織の権威は地に落ちていくだけだろう。

 だが、その陰ではヒュウガと退魔組の頭領サテツの間で色々とキナ臭い動きを見せており、この先ゲンロクが不覚をとるような真似をすれば、今の妖魔召士の組織の体制であれば、十分にヒュウガが正式な長となる可能性もあるだろう。

 だが、イダラマにとってはゲンロクやヒュウガのどちらが組織の長になったとしても、はたまた守旧派の本流であるエイジが、再び『妖魔召士ようましょうし』の組織に戻り『妖魔召士ようましょうし』の組織を束ねる長の座に就いたとしても、イダラマは組織にこのまま戻るつもりは無かった。

 を叶えるには先に挙げた者達では、決して成し遂げられないだろうからだ。

 ではイダラマの本心は、一体何処にあるのかと問われるのならば、それはこの『サカダイ』の町に居を構える組織『妖魔退魔師ようまたいまし』の組織にヒントは隠されているのであった。

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