最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1020話 天才妖魔召士、エイジの実力
『魔瞳』の力を強め始めたエイジの目を見たキネツグは、ぞくりと身体を震わせたが、直ぐに思い描いていた作戦を実行する。
「ふ、ふふっ……!」
キネツグは震える足を誤魔化すように、右手に持つ二枚の『式札』をエイジに確認させるようにチラつかせると、意識をそちらに割かせようと更にハッタリの言葉を出す。
「残念だったなエイジ殿!! こちらの手筈は完全に整った『妖魔団の乱』で契約を施したランク『5』と『6』の『妖魔』達を更に使役する!!」
「何?」
キネツグ達に攻撃を仕掛けようとしていたエイジだったが、そのキネツグの言葉を訝し気に睨みつけながら足を止めた。
「ククッ! まずはランク『5』の鬼人『卓鬼』だ!」
キネツグの言葉はハッタリで鬼人の妖魔なのは間違いはないが、その実態はランク『4.5』であり、そしてこちらの『卓鬼』が、キネツグの持つ『式』で最も強い妖魔であった。
既に先に使役してキネツグを守るように指示を出している『虚空丸』は、キネツグの禁術によってランク『4.5』相当にまで、戦力値を引き上げられている為、エイジはまだ完全に信じているワケではないようだが、ブラフとしては十分に機能しているようで、足を止めさせる事には成功したとばかりに、キネツグは作戦が成功したと内心ではほくそ笑むのであった。
しかしそう思った直後、足を止めていたエイジは警戒心を強めるどころか、逆に警戒心を解いたかのように真っすぐにキネツグに向かってくる。
キネツグは切り札である『卓鬼』の式札をまだ出してすらいない。唐突に向かってくるエイジにキネツグは慌てて『式札』を投げて、結界の内側に居る『虚空丸』に術を強めてエイジを近づけさせないように指示を出す。
「くっ! 早く卓鬼にも『縛呪の行』を……!」
ボンッという音と共に、彼の持ち得る『式』で最強の妖魔ランク『4.5』である鬼人の『卓鬼』が姿を見せる。
しかし無表情のままどんどんとキネツグに迫ってきていたエイジが、キネツグの『魔瞳』によって、発動された『結界』に手を出し始める。
この結界は『特別退魔士』にして『魔瞳』の開眼を果たしている『ユウゲ』が『煌鴟梟』の入り口に張った結界と比べても更に強力なものであり『妖魔召士』として選ばれる程の魔力を有するキネツグが張った『結界』であり、その『結界』の防衛力は相当なモノあるといえた。
たとえエイジであってもこの『結界』の解除をするよりも先に『卓鬼』に『行』を施す方が早いとキネツグは信じて疑わなかった。
更には保険として、先に『縛呪の行』を施してある『虚空丸』に自身の守りを固めるように指示を出している為、焦る素振りを見せずに『行』を発動させる手印を結んで行った。
(よ、よし! あと少しで本当に、ランク『5.5』相当に達する『式』の完成だ!)
先程の彼のブラフでもう少し余裕を持って『卓鬼』に『縛呪の行』を施すつもりだったが、警戒心を強めると思っていたエイジがそのまま向かってくるのを見て、アテが外れてしまい、急がされてしまったが何とか『縛呪の行』を二体の『式』に施す事が出来そうになり『キネツグ』はほっとしていた。
何せ守りの要である結界に戦力値が3000億近くの『虚空丸』。そしてこちらも『縛呪の行』を施して、戦力値5000億を上回る事になるであろう鬼人『卓鬼』がいる状況である。
魔力が残り少ないキネツグであってもこの完璧な状況であれば、チアキが他の奴らを片付けるまでの間くらいならば、十分に持たせる事は容易いだろう。
そこまで考えていたキネツグは、ニヤリと笑いながら最後の『日輪印』を結ぼうとしたまさにその時であった――。
あっさりとエイジの手により、キネツグの結界が全て解除される。
そしてエイジは手印すら結ばずに、口で何かを呟く。
次の瞬間、目の前に居た守りを指示した『虚空丸』が即座に姿が見えなくなり、その場には式札がヒラリと舞ったかと思えば、ビリビリと音を立てて、その式札は破れて消え去った。
『虚空丸』が消滅させられたのだと、気づいたキネツグだったが、それならば『縛呪の行』を施した『卓鬼』で撃退すればいいと、最後の手印を結ぼうと必死に手を動かそうとするのだが、キネツグはその両手が全く動かない。
「小生の前で『妖魔団』の話をしやがって! それも言うに事を欠いてランク『6』だと? 小生を舐めるのもたいがいにしろよ、貴様!!」
そして『縛呪の行』を施そうとしていた対象である、ランク『4.5』の鬼人『卓鬼』が、キネツグを守ろうとエイジの前に立ちはだかった瞬間、エイジの手が卓鬼の顔に翳されて再びエイジは何かを呟いた。
――僧全捉術、『動殺是決』。
「!?」
人型の鬼人『卓鬼』は目を丸くしながら、その場で動かなくなった。そしてその『卓鬼』にはもう眼中がなくなったのか、手で払いのけながらエイジはキネツグの前まで迫って来る。
「ひっ、ひぃっ!!」
『最上位妖魔召士』であるエイジの本気の『魔瞳』によって、手足を動かせないキネツグは、悲鳴をあげながら目の前に居るエイジに睨まれて震えあがる。
「『妖魔団の乱』で攻め込んできたランク『6』の妖魔は『鬼人女王』である『紅羽』殿。ただ一人だ。サイヨウ様が断腸の思いで『式』になされたランク『6』の妖魔を、お主如きが『式』にして見せただと!?」
「はわっ……、はわわわっ!!」
何を怒っているのか理由が分からないキネツグは、ここまで激昂しているエイジを過去にこれまで一度も見た事がなかった為に、驚きと恐怖でパニックになりながら、動かない手足も相まって脂汗を大量に流しながら、カチカチと歯を鳴らしながら怯える。
「つまらぬ妄言を吐いて小生をここまで怒らせた罪は重い。お主から『妖魔召士』の力を私の一存で強制的に剥奪させてもらう」
「へっ、へぁ……!?」
怒りに打ち震えるエイジにそう告げられて、何をされるか分からないキネツグは、素っ頓狂な声をあげる。
――僧全捉術、『修劫』。
そして遂にエイジは数ある『捉術』の中で相当に難易度が高く『妖魔召士』の中でも使える者は限られると言われる『捉術』にして、最も残酷と言われる『捉術』の一つ『修劫』を元々は『妖魔召士』の仲間であったキネツグに発動させるのであった――。
次の瞬間『キネツグ』は自身の身体から魔力がエイジによって、吸い上げられていく感覚を覚え始めると、最後には『魔力枯渇』によって目の焦点が合わなくなって、そのまま意識が混濁し始めていく。
「辛く険しい道のりになるだろうが、お主はまだまだ十分に若い。やり直しは十分に利くだろう。今度は間違った道を進まぬように精進するがよい」
青い目をしていたエイジがそう告げると同時『魔瞳』をやめて元の目に戻すと、手足が自由に動くようになったキネツグは意識を失いながら、前のめりに地面に倒れるのであった。
「そして鬼人の妖魔よ。お前はもう自由だ、好きに生きるがよい」
そして最後にエイジは『動殺是決』で一時的に脳を支配していた鬼人の妖魔『卓鬼』の式札を破り捨てると、そのまま『捉術』である『移止境界』を用いてこの場から何処か別の場所へと飛ばすのであった。
……
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「ふ、ふふっ……!」
キネツグは震える足を誤魔化すように、右手に持つ二枚の『式札』をエイジに確認させるようにチラつかせると、意識をそちらに割かせようと更にハッタリの言葉を出す。
「残念だったなエイジ殿!! こちらの手筈は完全に整った『妖魔団の乱』で契約を施したランク『5』と『6』の『妖魔』達を更に使役する!!」
「何?」
キネツグ達に攻撃を仕掛けようとしていたエイジだったが、そのキネツグの言葉を訝し気に睨みつけながら足を止めた。
「ククッ! まずはランク『5』の鬼人『卓鬼』だ!」
キネツグの言葉はハッタリで鬼人の妖魔なのは間違いはないが、その実態はランク『4.5』であり、そしてこちらの『卓鬼』が、キネツグの持つ『式』で最も強い妖魔であった。
既に先に使役してキネツグを守るように指示を出している『虚空丸』は、キネツグの禁術によってランク『4.5』相当にまで、戦力値を引き上げられている為、エイジはまだ完全に信じているワケではないようだが、ブラフとしては十分に機能しているようで、足を止めさせる事には成功したとばかりに、キネツグは作戦が成功したと内心ではほくそ笑むのであった。
しかしそう思った直後、足を止めていたエイジは警戒心を強めるどころか、逆に警戒心を解いたかのように真っすぐにキネツグに向かってくる。
キネツグは切り札である『卓鬼』の式札をまだ出してすらいない。唐突に向かってくるエイジにキネツグは慌てて『式札』を投げて、結界の内側に居る『虚空丸』に術を強めてエイジを近づけさせないように指示を出す。
「くっ! 早く卓鬼にも『縛呪の行』を……!」
ボンッという音と共に、彼の持ち得る『式』で最強の妖魔ランク『4.5』である鬼人の『卓鬼』が姿を見せる。
しかし無表情のままどんどんとキネツグに迫ってきていたエイジが、キネツグの『魔瞳』によって、発動された『結界』に手を出し始める。
この結界は『特別退魔士』にして『魔瞳』の開眼を果たしている『ユウゲ』が『煌鴟梟』の入り口に張った結界と比べても更に強力なものであり『妖魔召士』として選ばれる程の魔力を有するキネツグが張った『結界』であり、その『結界』の防衛力は相当なモノあるといえた。
たとえエイジであってもこの『結界』の解除をするよりも先に『卓鬼』に『行』を施す方が早いとキネツグは信じて疑わなかった。
更には保険として、先に『縛呪の行』を施してある『虚空丸』に自身の守りを固めるように指示を出している為、焦る素振りを見せずに『行』を発動させる手印を結んで行った。
(よ、よし! あと少しで本当に、ランク『5.5』相当に達する『式』の完成だ!)
先程の彼のブラフでもう少し余裕を持って『卓鬼』に『縛呪の行』を施すつもりだったが、警戒心を強めると思っていたエイジがそのまま向かってくるのを見て、アテが外れてしまい、急がされてしまったが何とか『縛呪の行』を二体の『式』に施す事が出来そうになり『キネツグ』はほっとしていた。
何せ守りの要である結界に戦力値が3000億近くの『虚空丸』。そしてこちらも『縛呪の行』を施して、戦力値5000億を上回る事になるであろう鬼人『卓鬼』がいる状況である。
魔力が残り少ないキネツグであってもこの完璧な状況であれば、チアキが他の奴らを片付けるまでの間くらいならば、十分に持たせる事は容易いだろう。
そこまで考えていたキネツグは、ニヤリと笑いながら最後の『日輪印』を結ぼうとしたまさにその時であった――。
あっさりとエイジの手により、キネツグの結界が全て解除される。
そしてエイジは手印すら結ばずに、口で何かを呟く。
次の瞬間、目の前に居た守りを指示した『虚空丸』が即座に姿が見えなくなり、その場には式札がヒラリと舞ったかと思えば、ビリビリと音を立てて、その式札は破れて消え去った。
『虚空丸』が消滅させられたのだと、気づいたキネツグだったが、それならば『縛呪の行』を施した『卓鬼』で撃退すればいいと、最後の手印を結ぼうと必死に手を動かそうとするのだが、キネツグはその両手が全く動かない。
「小生の前で『妖魔団』の話をしやがって! それも言うに事を欠いてランク『6』だと? 小生を舐めるのもたいがいにしろよ、貴様!!」
そして『縛呪の行』を施そうとしていた対象である、ランク『4.5』の鬼人『卓鬼』が、キネツグを守ろうとエイジの前に立ちはだかった瞬間、エイジの手が卓鬼の顔に翳されて再びエイジは何かを呟いた。
――僧全捉術、『動殺是決』。
「!?」
人型の鬼人『卓鬼』は目を丸くしながら、その場で動かなくなった。そしてその『卓鬼』にはもう眼中がなくなったのか、手で払いのけながらエイジはキネツグの前まで迫って来る。
「ひっ、ひぃっ!!」
『最上位妖魔召士』であるエイジの本気の『魔瞳』によって、手足を動かせないキネツグは、悲鳴をあげながら目の前に居るエイジに睨まれて震えあがる。
「『妖魔団の乱』で攻め込んできたランク『6』の妖魔は『鬼人女王』である『紅羽』殿。ただ一人だ。サイヨウ様が断腸の思いで『式』になされたランク『6』の妖魔を、お主如きが『式』にして見せただと!?」
「はわっ……、はわわわっ!!」
何を怒っているのか理由が分からないキネツグは、ここまで激昂しているエイジを過去にこれまで一度も見た事がなかった為に、驚きと恐怖でパニックになりながら、動かない手足も相まって脂汗を大量に流しながら、カチカチと歯を鳴らしながら怯える。
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「へっ、へぁ……!?」
怒りに打ち震えるエイジにそう告げられて、何をされるか分からないキネツグは、素っ頓狂な声をあげる。
――僧全捉術、『修劫』。
そして遂にエイジは数ある『捉術』の中で相当に難易度が高く『妖魔召士』の中でも使える者は限られると言われる『捉術』にして、最も残酷と言われる『捉術』の一つ『修劫』を元々は『妖魔召士』の仲間であったキネツグに発動させるのであった――。
次の瞬間『キネツグ』は自身の身体から魔力がエイジによって、吸い上げられていく感覚を覚え始めると、最後には『魔力枯渇』によって目の焦点が合わなくなって、そのまま意識が混濁し始めていく。
「辛く険しい道のりになるだろうが、お主はまだまだ十分に若い。やり直しは十分に利くだろう。今度は間違った道を進まぬように精進するがよい」
青い目をしていたエイジがそう告げると同時『魔瞳』をやめて元の目に戻すと、手足が自由に動くようになったキネツグは意識を失いながら、前のめりに地面に倒れるのであった。
「そして鬼人の妖魔よ。お前はもう自由だ、好きに生きるがよい」
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