最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第1012話 予備群の上位剣士シグレ
『予備群』であるシグレは、その持ち前の速度を活かした剣技で相手を防戦一方にさせて『捉術』や『魔瞳』を使わせない程に、徹底的に『妖魔召士』のチアキを追い詰める事に成功していた。
あと一歩というところまで抑え込んだシグレだったが、最後の最後でチアキの捨て身の一手によって状況を覆されてしまい、シグレはチアキの捉術の前に動きを完全に止められてしまうのであった。
そして何としてもシグレが防ぎたかった『妖魔召士』の『式』を遂には出させてしまう事となるのであった。
…………
「まさか『予備群』の小娘相手に、ここまであたしが抑え込まれるとは思わなかったわよ?」
額に汗を浮かべながらチアキは、動けなくなったシグレの前で、笑みを浮かべながらそう告げた。
そしてその直後、ヒラヒラと宙を舞っていた『式札』が、ボンッという音と共に一体の妖魔を出現させるのであった。
…………
少しだけ時は遡りシグレが激情に任せてチアキに斬り込んでいった頃、横たわって痙攣を起こしていたコウゾウにソフィが声を掛けた。
「コウゾウ殿、大丈夫か?」
「ぐ……っ、な、なんとか……。まだ痺れてはいるが」
チアキに思いきり股間を蹴り上げられて先程まで声をあげる事すら出来ずに、倒れていたコウゾウだったが、ようやく返事が出来るところまで、回復したようであった。
ソフィは無理に身体を起こさせるような真似はせず、痛みがある程度引くまでは、声を掛けたりも控えていた。
ソフィもヌーも種族は違うが同じ男であり、コウゾウの痛みは想像出来た為に、先程から苦悶の表情を浮かべていたコウゾウと同じく顔を引きつらせていたのであった。
セルバスも『煌鴟梟』の捕らえられていた男でさえも、顔を歪めてコウゾウに同情をしていた。
この中でテアだけが何故直接攻撃されたわけでも無いのに、そんなに痛そうな顔を共有出来ているのかが理解出来ていない様子で首を傾げながらヌーに視線を送っていたが、ヌーはその視線を無視していた。
「潰れていないようで何よりだ……」
ようやく痛みが引いて動けるようになったのであろう。
コウゾウは地面に横たわっていたが、ゆっくり立ち上がってきた。
「ソフィ殿達も覚えておいてくれ。ある程度覚悟を決めて、痛みを耐えようと考えていてもあの『青い目』と呼ばれる『魔瞳』を使われると、全くの抵抗が出来ないんだ。
来るのが分かっていて、力を入れて痛みを我慢しようとしたところで抵抗が出来ない絶望感は、全く信じられ無い程に利くぞ……」
コウゾウは軽くトントンとその場で跳ねながら、両手で股間を押さえて説明を続けるのだった。
「抵抗が出来なくなるか……。そう言えばエイジ殿も『青い目』は使っていたな」
ちらりとソフィがエイジの方を見てそう言うと、ヌーもつられるようにそちらを一瞥する。
(そういえば、あのエイジとか言う奴も町の酒場で言っていたな『青い目』が使われた時点で、その後は戦う事を考えずに逃げろと。まぁ本当に怖いのは『青い目』を使われた後の『捉術』だったか? 確かに無抵抗にされた後に、相手の必殺と呼べるようなものを使われては俺達大魔王であっても十分に脅威だろうな……)
「しかしお主の部下も大したものだな。あの『妖魔召士』という連中に対して、持ち前の速度で圧倒しておる」
この世界に来て『妖魔召士』という者達と、エイジとの挨拶程度の一戦を除き、直接はまだ戦闘と呼べる程、戦ってはいないソフィだが、ここに来るまでに『妖魔召士』の情報は多く耳に入っている。
ソフィはゲンロクの里で見た結界一つとっても『妖魔召士』という者達が、決して侮れない者達なのだろうとある程度の理解はしている。
そんな者達を相手に刀一つで『五分五分』以上に渡り合っている『シグレ』という女性を褒め称えるようにそう告げるのだった。
「ああ、まぁな。シグレは『予備群』の中でも相当の上位剣士だ。あの『旅籠町』が厄介な者達に目を付けられているという事で、俺が『旅籠町』の護衛任務に就いたが、本来はシグレが隊長として、あの旅籠の任務に就いていても何もおかしくない程の戦力を有していた。しかしそれでも、まさか『妖魔召士』が相手になるとは……」
どうやらコウゾウは『シグレ』を申し分ない強さだと理解している上で、それでも『妖魔召士』が相手であれば、安心はできないとその表情が告げていた。
「ふむ、なるほど」
ソフィが頷くと同時、股間を蹴り上げられて悶えていたコウゾウは、ようやく回復をした様子で彼もまた腰鞘から得物を抜いた。
「このまま最後までシグレ殿が押し切るのは難しいと見るか?」
「ああ……。相手は単なる『退魔士』では無く、正真正銘の『妖魔召士』だ。このまま終わるとは思えぬ、何処かで必ず反撃に打って出て来るだろう」
このまま勝てるのでは無いかと思わせる程、シグレは圧倒する動きを見せているが、どうやらコウゾウは『妖魔召士』を決して甘くは見ていない様子であり、直ぐに加勢出来るように準備をし始めた。
「む!」
そして展開はシグレ有利のまま進んでいたが、明らかにこれまでの卓越した刀裁きを見せていたシグレが、お粗末とも呼べるほどの大振りを見せた。
(先の先を読まれたか? いや、偶然だな。しかしシグレ殿には、余りにも効果的だったようだ)
ソフィは直ぐにシグレの仕掛けた誘いの一手だと気づくが、それと同時に相手の『妖魔召士』もこれまでと違う行動に出た事で、見るからに動揺しているシグレの顔を見たソフィはそう心の中で呟く。
そしてソフィの言葉通り、動揺したシグレは見るからに動きが鈍くなった。
先程までの洗練された動きがなくなり、そこを突かれたチアキに更に『青い目』を使われて動けなくされてしまい窮地に追いやられるのであった。
「危ない! シグレ!」
刀を抜いて戦う準備をとっていた『コウゾウ』は、チアキの目が青くなった瞬間に『シグレ』の元へと駆け出していくのであった。
あと一歩というところまで抑え込んだシグレだったが、最後の最後でチアキの捨て身の一手によって状況を覆されてしまい、シグレはチアキの捉術の前に動きを完全に止められてしまうのであった。
そして何としてもシグレが防ぎたかった『妖魔召士』の『式』を遂には出させてしまう事となるのであった。
…………
「まさか『予備群』の小娘相手に、ここまであたしが抑え込まれるとは思わなかったわよ?」
額に汗を浮かべながらチアキは、動けなくなったシグレの前で、笑みを浮かべながらそう告げた。
そしてその直後、ヒラヒラと宙を舞っていた『式札』が、ボンッという音と共に一体の妖魔を出現させるのであった。
…………
少しだけ時は遡りシグレが激情に任せてチアキに斬り込んでいった頃、横たわって痙攣を起こしていたコウゾウにソフィが声を掛けた。
「コウゾウ殿、大丈夫か?」
「ぐ……っ、な、なんとか……。まだ痺れてはいるが」
チアキに思いきり股間を蹴り上げられて先程まで声をあげる事すら出来ずに、倒れていたコウゾウだったが、ようやく返事が出来るところまで、回復したようであった。
ソフィは無理に身体を起こさせるような真似はせず、痛みがある程度引くまでは、声を掛けたりも控えていた。
ソフィもヌーも種族は違うが同じ男であり、コウゾウの痛みは想像出来た為に、先程から苦悶の表情を浮かべていたコウゾウと同じく顔を引きつらせていたのであった。
セルバスも『煌鴟梟』の捕らえられていた男でさえも、顔を歪めてコウゾウに同情をしていた。
この中でテアだけが何故直接攻撃されたわけでも無いのに、そんなに痛そうな顔を共有出来ているのかが理解出来ていない様子で首を傾げながらヌーに視線を送っていたが、ヌーはその視線を無視していた。
「潰れていないようで何よりだ……」
ようやく痛みが引いて動けるようになったのであろう。
コウゾウは地面に横たわっていたが、ゆっくり立ち上がってきた。
「ソフィ殿達も覚えておいてくれ。ある程度覚悟を決めて、痛みを耐えようと考えていてもあの『青い目』と呼ばれる『魔瞳』を使われると、全くの抵抗が出来ないんだ。
来るのが分かっていて、力を入れて痛みを我慢しようとしたところで抵抗が出来ない絶望感は、全く信じられ無い程に利くぞ……」
コウゾウは軽くトントンとその場で跳ねながら、両手で股間を押さえて説明を続けるのだった。
「抵抗が出来なくなるか……。そう言えばエイジ殿も『青い目』は使っていたな」
ちらりとソフィがエイジの方を見てそう言うと、ヌーもつられるようにそちらを一瞥する。
(そういえば、あのエイジとか言う奴も町の酒場で言っていたな『青い目』が使われた時点で、その後は戦う事を考えずに逃げろと。まぁ本当に怖いのは『青い目』を使われた後の『捉術』だったか? 確かに無抵抗にされた後に、相手の必殺と呼べるようなものを使われては俺達大魔王であっても十分に脅威だろうな……)
「しかしお主の部下も大したものだな。あの『妖魔召士』という連中に対して、持ち前の速度で圧倒しておる」
この世界に来て『妖魔召士』という者達と、エイジとの挨拶程度の一戦を除き、直接はまだ戦闘と呼べる程、戦ってはいないソフィだが、ここに来るまでに『妖魔召士』の情報は多く耳に入っている。
ソフィはゲンロクの里で見た結界一つとっても『妖魔召士』という者達が、決して侮れない者達なのだろうとある程度の理解はしている。
そんな者達を相手に刀一つで『五分五分』以上に渡り合っている『シグレ』という女性を褒め称えるようにそう告げるのだった。
「ああ、まぁな。シグレは『予備群』の中でも相当の上位剣士だ。あの『旅籠町』が厄介な者達に目を付けられているという事で、俺が『旅籠町』の護衛任務に就いたが、本来はシグレが隊長として、あの旅籠の任務に就いていても何もおかしくない程の戦力を有していた。しかしそれでも、まさか『妖魔召士』が相手になるとは……」
どうやらコウゾウは『シグレ』を申し分ない強さだと理解している上で、それでも『妖魔召士』が相手であれば、安心はできないとその表情が告げていた。
「ふむ、なるほど」
ソフィが頷くと同時、股間を蹴り上げられて悶えていたコウゾウは、ようやく回復をした様子で彼もまた腰鞘から得物を抜いた。
「このまま最後までシグレ殿が押し切るのは難しいと見るか?」
「ああ……。相手は単なる『退魔士』では無く、正真正銘の『妖魔召士』だ。このまま終わるとは思えぬ、何処かで必ず反撃に打って出て来るだろう」
このまま勝てるのでは無いかと思わせる程、シグレは圧倒する動きを見せているが、どうやらコウゾウは『妖魔召士』を決して甘くは見ていない様子であり、直ぐに加勢出来るように準備をし始めた。
「む!」
そして展開はシグレ有利のまま進んでいたが、明らかにこれまでの卓越した刀裁きを見せていたシグレが、お粗末とも呼べるほどの大振りを見せた。
(先の先を読まれたか? いや、偶然だな。しかしシグレ殿には、余りにも効果的だったようだ)
ソフィは直ぐにシグレの仕掛けた誘いの一手だと気づくが、それと同時に相手の『妖魔召士』もこれまでと違う行動に出た事で、見るからに動揺しているシグレの顔を見たソフィはそう心の中で呟く。
そしてソフィの言葉通り、動揺したシグレは見るからに動きが鈍くなった。
先程までの洗練された動きがなくなり、そこを突かれたチアキに更に『青い目』を使われて動けなくされてしまい窮地に追いやられるのであった。
「危ない! シグレ!」
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