最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第992話 区切り
「イツキ様、確認なんですがね?」
「ん?」
互いに思案をしていた為に蝋燭の灯りだけが煌々と照らす暗い部屋の中で、ユウゲが口を開いた事で自分の世界に浸かっていたイツキは、意識を戻した後に視線をユウゲに移す。
「ヒュウガ殿の取り巻きは間違いなく『妖魔召士』の方々なんですよね?」
ユウゲの質問の意図を理解出来ないイツキは、眉を寄せながらも質問に応えるべく口を開いた。
「ああ、それは間違いないな。旧来の『妖魔召士』の体制に否定的な革新派がこぞって退魔組という新たな組織を作り上げてみせたゲンロクに希望を見出して集った連中だ。その中にもサテツ様のように、ヒュウガ派に与する者も居るが、あの里に居る者達は全員が『妖魔召士』で間違いはない」
ではまず間違いなく『加護の森』に現れた者達は『妖魔召士』に狙われるという事である。
旅籠町に居るであろう護衛達は『妖魔退魔師』の『予備群』であり、我々『特別退魔士』と拮抗する程の力量を持っているだろう。
しかし『妖魔召士』が『旅籠町』に向かったのであれば、連中や『予備群』がもし組んで戦ったとしても『妖魔召士』が相手では、万に一つも勝ち目はないであろう。
そうであるならばイツキの言う通りにここは静観が正しいだろう。見張りを出すにしても、人型をとれる程の『式』を派遣すれば逆に見つかった場合に色々と面倒な事になる。
もし見張りを立てるにしてもランク『外』やランク『1』の『式』といった何処にでもいて、いつでも切り捨てる事の出来る野良の妖魔を出すべきだろう。
こんな時に空を自在に飛べて戦力も申し分ない『劉鷺』を使役出来る『イバキ』が居れば頼りになっただろうにと心の中で呟くユウゲであった。
「まぁ数日は様子を見てからこちら側で見張り役を用意しておくとしようか。それにしても色々と助かったぞユウゲよ」
「いえ、お役に立てたようで何よりです。しかしもう当分俺には余暇を楽しむ気にはなれそうにありませんな」
彼の中で『煌鴟梟』の一件は納得がいったのだろう。これでようやくイツキの任務は終了を迎えたらしい。
「ゲンロクからは『退魔組』に動くなと指示されているしな。当分はお前達も暇になるだろうな」
しかし今回の一件でユウゲ自身も『煌鴟梟』の事や『加護の森』に現れた者達の事。そしてヒュウガ殿からの追手の事など色々と気に掛かる事が増えたことは間違いがない。
彼自身が今述べた様に他の『特別退魔士』の仲間達のように別の町に行って、美味しい物を食べたりといった余暇を楽しむつもりは、毛頭なくなるのであった。
今後イツキから再び手を貸してくれと頼まれたならば、むしろユウゲから協力を申し出る事だろう。
「では、俺はそろそろ戻ります」
「ああ。いや、少し待て」
話を終えて立ち上がろうとしたユウゲにイツキは懐から巾着袋を取り出した。
「今回はよくやってくれたな『ユウゲ』。これで美味い酒でも呑んで英気を養え」
そう言ってユウゲに金子の入った巾着袋を手渡した。
「助かります……、むっ!?」
受け取った金子が入った巾着袋は想像以上にずっしりと重く、この場で検めたい衝動に駆られるユウゲだった。
「ククッ! 『特別退魔士』様を数日雇ったんだ、それくらい渡さねばな?」
そう言ったイツキは金子の重さに驚いているユウゲに、にやにやと厭らしい笑みを浮かべながら冗談めいた口振りでそう告げた。
「ふふっ……、またいつでも呼んでくださいよ」
「ああ。お前は頼りになる。よろしく頼むぞユウゲ?」
今度こそ話は終わりのようで『ユウゲ』は、長屋の玄関でイツキに一礼して、そのまま長屋を出た後、宵闇の中に消えていった。
…………
「意識を失わせて他者を操るか。耐魔力に拘わらず、他者を操れる事が出来るというのなら、是非配下に欲しい逸材だが、本当にタイミングが悪いな……」
ユウゲの報告が眉唾でなければ今すぐにでもその『煌鴟梟』の新人の元に向かい、退魔組でも『煌鴟梟』でもなく、彼直属の配下にしたいと考えるイツキだったが、ヒュウガが本気で件の連中を葬ろうとしている以上は決して動く事は得策ではない。
『妖魔召士』にさっさと連中を葬ってもらい、その後にセルバスとかいう新人に会いに行くのが一番だと、イツキはようやくそこで結論を出すのであった。
『煌鴟梟』のボスであった頃の怖い物無しの彼であったならば、追手の事など無視をしてでも近い内に向かうところだったろうが『妖魔召士』の組織の恐ろしさをその身に体験している今の彼はそんな無謀な選択肢は絶対に選ばない。
「偵察を直にしたいところだが、全てを終えてから『ヒュウガ』殿からの一報を待った方が良いだろうな」
誰も居なくなった部屋で一人、そう言葉を漏らすイツキであった。
……
……
……
「ん?」
互いに思案をしていた為に蝋燭の灯りだけが煌々と照らす暗い部屋の中で、ユウゲが口を開いた事で自分の世界に浸かっていたイツキは、意識を戻した後に視線をユウゲに移す。
「ヒュウガ殿の取り巻きは間違いなく『妖魔召士』の方々なんですよね?」
ユウゲの質問の意図を理解出来ないイツキは、眉を寄せながらも質問に応えるべく口を開いた。
「ああ、それは間違いないな。旧来の『妖魔召士』の体制に否定的な革新派がこぞって退魔組という新たな組織を作り上げてみせたゲンロクに希望を見出して集った連中だ。その中にもサテツ様のように、ヒュウガ派に与する者も居るが、あの里に居る者達は全員が『妖魔召士』で間違いはない」
ではまず間違いなく『加護の森』に現れた者達は『妖魔召士』に狙われるという事である。
旅籠町に居るであろう護衛達は『妖魔退魔師』の『予備群』であり、我々『特別退魔士』と拮抗する程の力量を持っているだろう。
しかし『妖魔召士』が『旅籠町』に向かったのであれば、連中や『予備群』がもし組んで戦ったとしても『妖魔召士』が相手では、万に一つも勝ち目はないであろう。
そうであるならばイツキの言う通りにここは静観が正しいだろう。見張りを出すにしても、人型をとれる程の『式』を派遣すれば逆に見つかった場合に色々と面倒な事になる。
もし見張りを立てるにしてもランク『外』やランク『1』の『式』といった何処にでもいて、いつでも切り捨てる事の出来る野良の妖魔を出すべきだろう。
こんな時に空を自在に飛べて戦力も申し分ない『劉鷺』を使役出来る『イバキ』が居れば頼りになっただろうにと心の中で呟くユウゲであった。
「まぁ数日は様子を見てからこちら側で見張り役を用意しておくとしようか。それにしても色々と助かったぞユウゲよ」
「いえ、お役に立てたようで何よりです。しかしもう当分俺には余暇を楽しむ気にはなれそうにありませんな」
彼の中で『煌鴟梟』の一件は納得がいったのだろう。これでようやくイツキの任務は終了を迎えたらしい。
「ゲンロクからは『退魔組』に動くなと指示されているしな。当分はお前達も暇になるだろうな」
しかし今回の一件でユウゲ自身も『煌鴟梟』の事や『加護の森』に現れた者達の事。そしてヒュウガ殿からの追手の事など色々と気に掛かる事が増えたことは間違いがない。
彼自身が今述べた様に他の『特別退魔士』の仲間達のように別の町に行って、美味しい物を食べたりといった余暇を楽しむつもりは、毛頭なくなるのであった。
今後イツキから再び手を貸してくれと頼まれたならば、むしろユウゲから協力を申し出る事だろう。
「では、俺はそろそろ戻ります」
「ああ。いや、少し待て」
話を終えて立ち上がろうとしたユウゲにイツキは懐から巾着袋を取り出した。
「今回はよくやってくれたな『ユウゲ』。これで美味い酒でも呑んで英気を養え」
そう言ってユウゲに金子の入った巾着袋を手渡した。
「助かります……、むっ!?」
受け取った金子が入った巾着袋は想像以上にずっしりと重く、この場で検めたい衝動に駆られるユウゲだった。
「ククッ! 『特別退魔士』様を数日雇ったんだ、それくらい渡さねばな?」
そう言ったイツキは金子の重さに驚いているユウゲに、にやにやと厭らしい笑みを浮かべながら冗談めいた口振りでそう告げた。
「ふふっ……、またいつでも呼んでくださいよ」
「ああ。お前は頼りになる。よろしく頼むぞユウゲ?」
今度こそ話は終わりのようで『ユウゲ』は、長屋の玄関でイツキに一礼して、そのまま長屋を出た後、宵闇の中に消えていった。
…………
「意識を失わせて他者を操るか。耐魔力に拘わらず、他者を操れる事が出来るというのなら、是非配下に欲しい逸材だが、本当にタイミングが悪いな……」
ユウゲの報告が眉唾でなければ今すぐにでもその『煌鴟梟』の新人の元に向かい、退魔組でも『煌鴟梟』でもなく、彼直属の配下にしたいと考えるイツキだったが、ヒュウガが本気で件の連中を葬ろうとしている以上は決して動く事は得策ではない。
『妖魔召士』にさっさと連中を葬ってもらい、その後にセルバスとかいう新人に会いに行くのが一番だと、イツキはようやくそこで結論を出すのであった。
『煌鴟梟』のボスであった頃の怖い物無しの彼であったならば、追手の事など無視をしてでも近い内に向かうところだったろうが『妖魔召士』の組織の恐ろしさをその身に体験している今の彼はそんな無謀な選択肢は絶対に選ばない。
「偵察を直にしたいところだが、全てを終えてから『ヒュウガ』殿からの一報を待った方が良いだろうな」
誰も居なくなった部屋で一人、そう言葉を漏らすイツキであった。
……
……
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