最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第947話 天然な隊員シグレ
このヌーとやらは自分の彼女なのか妹なのかは知らないが、その抱き着いて喜んでいる女性が攫われそうになった事で、目の前の人攫いたちに報復行動に出たのだろう。
この町では喧嘩は法度だとルールを作ったのは彼だが、今のこの行いは恫喝や脅し等が可愛く見える程の殺人である。自分の大事な者が攫われそうになったのだから、報復に出るという気持ちは分からないでもないが、あまりにもやり過ぎてしまっている。
本来であればこの『ヌー』という若者も取り押さえるのが、自分達旅籠の治安を守る護衛隊としての仕事だろう。
しかし今はその行為ですら目を瞑ってでも目の前の怯えている男から事情を聞きだして、更に背後に居るであろう人攫いの一味たち全員の居場所を聞き出して芋づる式に全員捕縛し、この旅籠町や地域一帯の治安を優先するべきかもしれないと考えるのであった。
(取り押さえるにしても後にすればいい。先に旅籠の治安を守る事を優先するべきだな)
コウゾウはそう結論を下して、こちらに近づいてくるソフィに顔を向ける。
「色々と言いたい事はあるだろうが、ひとまずはこれであやつらは素直に喋るだろう。お主の懸念も分かるが、まずは事情を聞いてみようでは無いか?」
コウゾウの考えていた事を的確にあてながらソフィという青年は、涙を流して震えあがっている男を一瞥すると、ソフィを見ていた男は何度も首を縦に振っていた。
どうやらソフィ達が入ってくる前にコウゾウを誤魔化そうとしていた男は、今度こそちゃんと全てを話すから、殺さないでくれと言った表情をコウゾウに向けているのであった。
「分かった。ひとまず場所を変えよう。今はもう地下に捕えている者もこいつ以外居ない。先程の部屋に戻ろう……」
コウゾウがそう言うと数人の護衛隊の部下達が泣き崩れている人攫いの男を立たせて、先に部屋を出ていき、その他の部下がヌーが殺めた死体を運び出していく。
そしてコウゾウに一瞥された部下は、ソフィ達を地上の最初の部屋へと案内し始めて部屋を出ていった。
最後尾でその部屋に一人残されたコウゾウは、焦げ臭くなった部屋を見回しながら『この部屋はもう今後は使えないだろうな』と、溜息を吐いてそのまま後ろでに扉を閉めるのであった。
…………
ソフィ達が屯所の中の最初の部屋に戻ってくると、部屋の中には一人の女性が、所在無げにぽつんと正座していた。
この女性はコウゾウが地下へ行く前に、ソフィ達にお茶を淹れてくれると言ってくれた護衛隊の女性隊員の方であった。
「あ、戻ってきた……」
女性隊員はお茶を淹れに行った後にこの部屋に戻ってきたが、そこには誰も居なくなっていた為、ソフィ達は厠へ向かったのだと思い、直ぐに戻って来るだろうと思って待っていたようである。
「お茶を淹れ直してきますね」
コウゾウが捕らえた男をこの部屋に運んできたのを見て、空気を読んで出て行こうと考えたらしい。その女性は再び御盆を抱えて部屋を出ていった。
「あれだけ屯所の中で騒がしくしていたというのに、ずっとこの部屋に居たのか……」
その女性隊員が居なくなってからソフィが呟くと、コウゾウはソフィの疑問に口を開いた。
「シグレは少し天然な所があるんだ……。と、そんな事はどうでもいい」
コウゾウは気を取り直して部下を一瞥すると、捕えていた男を部屋の中心に座らせる。逃げるような真似はしないとは分かっているが、男の手を今度は縛っている。
事情はこれから聴くつもりだが十中八九、この男が人攫いの一味だと分かっている以上、手だけでも縛っておこうと考えたようである。
「さて、それではもう一度、話を最初から聞かせてもらおう」
コウゾウがそう言うと、男は頷きやがて口を開き始めるのだった。
……
……
……
この町では喧嘩は法度だとルールを作ったのは彼だが、今のこの行いは恫喝や脅し等が可愛く見える程の殺人である。自分の大事な者が攫われそうになったのだから、報復に出るという気持ちは分からないでもないが、あまりにもやり過ぎてしまっている。
本来であればこの『ヌー』という若者も取り押さえるのが、自分達旅籠の治安を守る護衛隊としての仕事だろう。
しかし今はその行為ですら目を瞑ってでも目の前の怯えている男から事情を聞きだして、更に背後に居るであろう人攫いの一味たち全員の居場所を聞き出して芋づる式に全員捕縛し、この旅籠町や地域一帯の治安を優先するべきかもしれないと考えるのであった。
(取り押さえるにしても後にすればいい。先に旅籠の治安を守る事を優先するべきだな)
コウゾウはそう結論を下して、こちらに近づいてくるソフィに顔を向ける。
「色々と言いたい事はあるだろうが、ひとまずはこれであやつらは素直に喋るだろう。お主の懸念も分かるが、まずは事情を聞いてみようでは無いか?」
コウゾウの考えていた事を的確にあてながらソフィという青年は、涙を流して震えあがっている男を一瞥すると、ソフィを見ていた男は何度も首を縦に振っていた。
どうやらソフィ達が入ってくる前にコウゾウを誤魔化そうとしていた男は、今度こそちゃんと全てを話すから、殺さないでくれと言った表情をコウゾウに向けているのであった。
「分かった。ひとまず場所を変えよう。今はもう地下に捕えている者もこいつ以外居ない。先程の部屋に戻ろう……」
コウゾウがそう言うと数人の護衛隊の部下達が泣き崩れている人攫いの男を立たせて、先に部屋を出ていき、その他の部下がヌーが殺めた死体を運び出していく。
そしてコウゾウに一瞥された部下は、ソフィ達を地上の最初の部屋へと案内し始めて部屋を出ていった。
最後尾でその部屋に一人残されたコウゾウは、焦げ臭くなった部屋を見回しながら『この部屋はもう今後は使えないだろうな』と、溜息を吐いてそのまま後ろでに扉を閉めるのであった。
…………
ソフィ達が屯所の中の最初の部屋に戻ってくると、部屋の中には一人の女性が、所在無げにぽつんと正座していた。
この女性はコウゾウが地下へ行く前に、ソフィ達にお茶を淹れてくれると言ってくれた護衛隊の女性隊員の方であった。
「あ、戻ってきた……」
女性隊員はお茶を淹れに行った後にこの部屋に戻ってきたが、そこには誰も居なくなっていた為、ソフィ達は厠へ向かったのだと思い、直ぐに戻って来るだろうと思って待っていたようである。
「お茶を淹れ直してきますね」
コウゾウが捕らえた男をこの部屋に運んできたのを見て、空気を読んで出て行こうと考えたらしい。その女性は再び御盆を抱えて部屋を出ていった。
「あれだけ屯所の中で騒がしくしていたというのに、ずっとこの部屋に居たのか……」
その女性隊員が居なくなってからソフィが呟くと、コウゾウはソフィの疑問に口を開いた。
「シグレは少し天然な所があるんだ……。と、そんな事はどうでもいい」
コウゾウは気を取り直して部下を一瞥すると、捕えていた男を部屋の中心に座らせる。逃げるような真似はしないとは分かっているが、男の手を今度は縛っている。
事情はこれから聴くつもりだが十中八九、この男が人攫いの一味だと分かっている以上、手だけでも縛っておこうと考えたようである。
「さて、それではもう一度、話を最初から聞かせてもらおう」
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