最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第929話 旅籠の護衛隊
「事情を話せと言われてもな。我達はこの旅籠の客で部屋についたところだったのだ。そこへさっきの奴らが部屋に乗り込んできて、隣に居るテアを連れ去ろうと手を出してきたから抵抗をしただけにすぎぬよ」
人間の言葉が分からず会話が出来ないテアの代わりにソフィが事情を説明すると、隊長と呼ばれていた男は、同じ警備の者達と顔を見合わせるのだった。
「つまり喧嘩を引き起こしていたワケでは無く、人攫いからこの少女を守ろうとして……、そうなったわけか」
現場の検証を行いながら、隊長と呼ばれていた男は、豪快に突き破られた宿の窓に近づいてそう呟いた。
自分の身体を触ろうとしてきた人間達を咄嗟に、思いきり掴んで投げ飛ばしたテアは、窓を真剣に見ている男たちを見た後、心配そうにソフィを見ていた。どうやら自分の所為で、ソフィが怒られていると思っているのだろう。テアは申し訳なさそうな顔を浮かべていた。
「やけに到着が早かったようだが、お主達はこの旅籠や町の自警団といったところか?」
注意深く窓を見ていた隊長は、ソフィの言葉にようやく振り返った。
「ああ。紹介が遅れたな。俺はこの旅籠全体の警備をしている。警備隊の隊長『コウゾウ』と申す者だ。現在はこの旅籠の治安維持に努めている」
コウゾウは自己紹介を終えると視線を部下達に向けながら、右手の掌を下に向けながら水平に振る。すると他の護衛達はコウゾウに頷きを見せた後、一斉に外へと出て行った。
コウゾウはどうやら本当に喧嘩では無いと判断したのだろう。自分だけが話を聞くとそう部下達に指示を出したようだった。コウゾウ以外の護衛の者達が部屋を出て行ったのを確認した後、コウゾウは口を開いた。
「どうやらお主の言っている事は嘘ではなさそうだな。部屋の前の人数分の靴跡は、お主らを襲って現れた者達のものだろう。それに部屋に散らばる砂、そして窓の割れ方具合を踏まえると、位置関係からそこの女性を襲った後に窓際でそのままもみ合いとなり、抵抗されて窓を突き破って外へと落下したものだと思われる」
コウゾウと名乗った男は、現場証拠から淡々と分かった事を口にしていく。どうやらなかなかの洞察力を持っているようだとソフィに思わせる。
「どうかな?」
「うむ。大体はあっておる。素晴らしい洞察力だな『コウゾウ』とやら」
ソフィに褒められた事でコウゾウは当然と言った表情を浮かべている。どうやら洞察に関しては、コウゾウは自信を持っているようで、他者からも褒められ慣れている様子だった。
実際は揉み合いになって落下したのではなく、テアに首根っこを掴まれて、そのままポイポイと次々放り投げられたのだが、それはわざわざ言う必要は無いと、ソフィは口にしなかった。
「しかし報告を受けた内容とは大幅に違っていたようだ」
「お主達がこの部屋に乗り込んできたとき、我達が先程の襲撃者たちと喧嘩をしていたと言っていたな? その報告は誰からだったのだ?」
「それは我が隊以外には公言は出来ないな。民間からの報告には、守秘義務というものが存在するからな」
どうやらこの旅籠の護衛には、面倒な取り決めが課せられているようで、ソフィ達には教えられないとコウゾウは告げるのだった。
「そうか。しかし我たちは本当に被害を受けただけだ。この宿の部屋に泊まると決まったのもつい先程の事だしな」
「……」
ソフィの言葉に黙って耳を傾けるコウゾウは、ちらりと開け放たれた部屋の入り口側へと視線を向けるのだった。
「少し屯所に戻って調べないといけない事が出来た。すまないが襲撃をされたお前達をこのままにしておくことは出来ない。ここの宿代は俺達が払うから、続きは俺達の屯所で聞かせてくれないか?」
「いや、それは構わないのだが、我達には連れがおってな。今酒場へ呑みに行っているのだ。連れに事情を話さずにこの宿を離れるわけにはいかぬ」
「分かった。今からその酒場へ向かうから一緒についてきてもらうぞ」
やんわりとソフィは断る口上を述べたのだが、伝わっているのかどうかまでは分からないが、このコウゾウという男は、任務を遵守するタイプなのか、それとも単に自分の都合を貫き通す性格なのか、どちらかは分からないが頑固な男のようである。
ソフィは観念して、コウゾウの言葉に頷くのだった。
……
……
……
人間の言葉が分からず会話が出来ないテアの代わりにソフィが事情を説明すると、隊長と呼ばれていた男は、同じ警備の者達と顔を見合わせるのだった。
「つまり喧嘩を引き起こしていたワケでは無く、人攫いからこの少女を守ろうとして……、そうなったわけか」
現場の検証を行いながら、隊長と呼ばれていた男は、豪快に突き破られた宿の窓に近づいてそう呟いた。
自分の身体を触ろうとしてきた人間達を咄嗟に、思いきり掴んで投げ飛ばしたテアは、窓を真剣に見ている男たちを見た後、心配そうにソフィを見ていた。どうやら自分の所為で、ソフィが怒られていると思っているのだろう。テアは申し訳なさそうな顔を浮かべていた。
「やけに到着が早かったようだが、お主達はこの旅籠や町の自警団といったところか?」
注意深く窓を見ていた隊長は、ソフィの言葉にようやく振り返った。
「ああ。紹介が遅れたな。俺はこの旅籠全体の警備をしている。警備隊の隊長『コウゾウ』と申す者だ。現在はこの旅籠の治安維持に努めている」
コウゾウは自己紹介を終えると視線を部下達に向けながら、右手の掌を下に向けながら水平に振る。すると他の護衛達はコウゾウに頷きを見せた後、一斉に外へと出て行った。
コウゾウはどうやら本当に喧嘩では無いと判断したのだろう。自分だけが話を聞くとそう部下達に指示を出したようだった。コウゾウ以外の護衛の者達が部屋を出て行ったのを確認した後、コウゾウは口を開いた。
「どうやらお主の言っている事は嘘ではなさそうだな。部屋の前の人数分の靴跡は、お主らを襲って現れた者達のものだろう。それに部屋に散らばる砂、そして窓の割れ方具合を踏まえると、位置関係からそこの女性を襲った後に窓際でそのままもみ合いとなり、抵抗されて窓を突き破って外へと落下したものだと思われる」
コウゾウと名乗った男は、現場証拠から淡々と分かった事を口にしていく。どうやらなかなかの洞察力を持っているようだとソフィに思わせる。
「どうかな?」
「うむ。大体はあっておる。素晴らしい洞察力だな『コウゾウ』とやら」
ソフィに褒められた事でコウゾウは当然と言った表情を浮かべている。どうやら洞察に関しては、コウゾウは自信を持っているようで、他者からも褒められ慣れている様子だった。
実際は揉み合いになって落下したのではなく、テアに首根っこを掴まれて、そのままポイポイと次々放り投げられたのだが、それはわざわざ言う必要は無いと、ソフィは口にしなかった。
「しかし報告を受けた内容とは大幅に違っていたようだ」
「お主達がこの部屋に乗り込んできたとき、我達が先程の襲撃者たちと喧嘩をしていたと言っていたな? その報告は誰からだったのだ?」
「それは我が隊以外には公言は出来ないな。民間からの報告には、守秘義務というものが存在するからな」
どうやらこの旅籠の護衛には、面倒な取り決めが課せられているようで、ソフィ達には教えられないとコウゾウは告げるのだった。
「そうか。しかし我たちは本当に被害を受けただけだ。この宿の部屋に泊まると決まったのもつい先程の事だしな」
「……」
ソフィの言葉に黙って耳を傾けるコウゾウは、ちらりと開け放たれた部屋の入り口側へと視線を向けるのだった。
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