最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第883話 イダラマの式神、鬼頼洞と本鵺
一本角が額に生えた男型の鬼が人型の姿で現れると、その鬼は直ぐに辺りをじっくりと観察する。やがて逃げ惑う退魔士たちをその目に入れるが、そちらを完全に無視して、こちらを睨むように見る『イバキ』と『スー』。それに驚きながらもその場から離れずに居る『ミカゲ』の姿を視界に入れる。
三人を見て頷いた後、その男型の鬼はゆっくりと振り返り、自分を呼び出したイダラマの元に歩み寄って来る。そしてもう一体の異様な身体つきの妖魔もまた、一本角が生えた鬼と共にイダラマの元に向かっていく。
二体の妖魔がイダラマの前までくると、イダラマはその二体に向けて口を開いた。
「『鬼頼洞』。お前に仕事をくれてやる。あそこにいる剣士とそれに私と同じような恰好をしているあやつを無力化させよ」
鬼頼洞と呼ばれた一本角の人型の妖魔に、イバキやスーを指さして指示を出すイダラマ。
「承知した。周囲に居る他の奴らはどうする?」
「後の奴らは無視して構わん。その二人だけを優先しろ」
イダラマがそう言うとコクリと頷く。
新たに出現した妖魔にイバキは一瞬、そちらの方に視線を向けたが、直ぐに再び襲い掛かってきた『ウガマ』に意識を向ける。
スーは周囲に居た数人のイダラマの一派たちから、同志を救うために剣で薙ぎ払っていく。あわやというタイミングで、スーに命を助けられた退魔士達は、感謝の言葉も言わずにそのまま逃げ出していく。
どうやら礼すらもいう余裕が無いらしく、助けられたその退魔士はフラフラと木の枝などにぶつかり、顔やら手足に擦り傷を作りながら進んでいく。
スーはそちらを見て溜息を吐くが、直ぐに視線を先程の長いピアスの男に向ける。
どうやら『アコウ』がまた、スーに襲い掛かろうとしているようであった。そして三体の『式』を使役しながら自分の身を守らせているミカゲは、イダラマが呼び出した『式神』の内、あらゆる生物が組み合わさったような妖魔に、視線を釘付けにされるのだった。
「あっ……! あれは『本鵺』……!」
……
……
……
鬼頼洞に命令を出したイダラマだったが、今度はミカゲがずっと視線を注ぎ続けているもう一体の妖魔に命令を出す。
「『本鵺』。お前はこの森一帯に呪詛の雨を注げ。私がコントロールするから気にせずに鳴き続けるがよい」
イダラマがそう言うと不思議な体をしている『本鵺』は小さく声をあげた。どうやらイダラマの言葉に同意を示したようであった。
「よし、やれ」
イダラマが短くそう言った後、彼は『青い目』になりながら詠唱を始める。すると命令通りに二体の妖魔は行動を開始する。
本鵺は黒い煙を周囲に噴出させると、自身をその煙に覆い隠すように見えなくなった。そしてその後すぐ、悍ましい鳴き声を出し始める。
「律」
その本鵺の声に合わせるように先程から詠唱を行っていたイダラマは、発動のキーを口にする。するとイダラマの両の目の『青色』が一層強く光る。
ひょう、ひょうという奇妙な鳴き声が、森一帯を範囲として響き渡っていく。
「ぐ、ぐわああっっ!」
奇妙な生き物の声を聞いた退魔士達は、白目を剥いて倒れたり、涎を垂らしながら暴れたりと、狂ったような行動をとり始める。
「な、何だ……!?」
「ま、まずい!! スー!」
「あ、あわわわ!! や、やはりあれは……!」
ウガマと戦おうとしていたスーは、突然の鳴き声に両手で耳を押さえ始める。そしてそんなスーの元に、イバキが駆け寄っていくと、再びイバキもまた『青い目』のまま詠唱を開始する。
どうやら自分の周囲一帯に結界を施して『本鵺』の影響を少しでも和らげようとしているようである。ミカゲは他の退魔士よりは、長く自分の意識を保ち続けていた為、なんとかしてイバキのように自分を守ろうと結界などを試みたが、その『結界』と自身の耐魔力では、本鵺の攻撃から身を守る事は叶わず、やがて他の者達と同じように、白目を剥いたままその場で意識を失うのだった。
「我々には影響がないのか」
「ああ。イダラマ様が我々には効力を及ぼさぬよう、術式を使ってくださっているようだからな」
ウガマとアコウはそう言葉を交わしながら、仲間内にだけ被害を及ぼさぬように『結界』を使っている主である『イダラマ』に視線を向けるのだった。
……
……
……
三人を見て頷いた後、その男型の鬼はゆっくりと振り返り、自分を呼び出したイダラマの元に歩み寄って来る。そしてもう一体の異様な身体つきの妖魔もまた、一本角が生えた鬼と共にイダラマの元に向かっていく。
二体の妖魔がイダラマの前までくると、イダラマはその二体に向けて口を開いた。
「『鬼頼洞』。お前に仕事をくれてやる。あそこにいる剣士とそれに私と同じような恰好をしているあやつを無力化させよ」
鬼頼洞と呼ばれた一本角の人型の妖魔に、イバキやスーを指さして指示を出すイダラマ。
「承知した。周囲に居る他の奴らはどうする?」
「後の奴らは無視して構わん。その二人だけを優先しろ」
イダラマがそう言うとコクリと頷く。
新たに出現した妖魔にイバキは一瞬、そちらの方に視線を向けたが、直ぐに再び襲い掛かってきた『ウガマ』に意識を向ける。
スーは周囲に居た数人のイダラマの一派たちから、同志を救うために剣で薙ぎ払っていく。あわやというタイミングで、スーに命を助けられた退魔士達は、感謝の言葉も言わずにそのまま逃げ出していく。
どうやら礼すらもいう余裕が無いらしく、助けられたその退魔士はフラフラと木の枝などにぶつかり、顔やら手足に擦り傷を作りながら進んでいく。
スーはそちらを見て溜息を吐くが、直ぐに視線を先程の長いピアスの男に向ける。
どうやら『アコウ』がまた、スーに襲い掛かろうとしているようであった。そして三体の『式』を使役しながら自分の身を守らせているミカゲは、イダラマが呼び出した『式神』の内、あらゆる生物が組み合わさったような妖魔に、視線を釘付けにされるのだった。
「あっ……! あれは『本鵺』……!」
……
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鬼頼洞に命令を出したイダラマだったが、今度はミカゲがずっと視線を注ぎ続けているもう一体の妖魔に命令を出す。
「『本鵺』。お前はこの森一帯に呪詛の雨を注げ。私がコントロールするから気にせずに鳴き続けるがよい」
イダラマがそう言うと不思議な体をしている『本鵺』は小さく声をあげた。どうやらイダラマの言葉に同意を示したようであった。
「よし、やれ」
イダラマが短くそう言った後、彼は『青い目』になりながら詠唱を始める。すると命令通りに二体の妖魔は行動を開始する。
本鵺は黒い煙を周囲に噴出させると、自身をその煙に覆い隠すように見えなくなった。そしてその後すぐ、悍ましい鳴き声を出し始める。
「律」
その本鵺の声に合わせるように先程から詠唱を行っていたイダラマは、発動のキーを口にする。するとイダラマの両の目の『青色』が一層強く光る。
ひょう、ひょうという奇妙な鳴き声が、森一帯を範囲として響き渡っていく。
「ぐ、ぐわああっっ!」
奇妙な生き物の声を聞いた退魔士達は、白目を剥いて倒れたり、涎を垂らしながら暴れたりと、狂ったような行動をとり始める。
「な、何だ……!?」
「ま、まずい!! スー!」
「あ、あわわわ!! や、やはりあれは……!」
ウガマと戦おうとしていたスーは、突然の鳴き声に両手で耳を押さえ始める。そしてそんなスーの元に、イバキが駆け寄っていくと、再びイバキもまた『青い目』のまま詠唱を開始する。
どうやら自分の周囲一帯に結界を施して『本鵺』の影響を少しでも和らげようとしているようである。ミカゲは他の退魔士よりは、長く自分の意識を保ち続けていた為、なんとかしてイバキのように自分を守ろうと結界などを試みたが、その『結界』と自身の耐魔力では、本鵺の攻撃から身を守る事は叶わず、やがて他の者達と同じように、白目を剥いたままその場で意識を失うのだった。
「我々には影響がないのか」
「ああ。イダラマ様が我々には効力を及ぼさぬよう、術式を使ってくださっているようだからな」
ウガマとアコウはそう言葉を交わしながら、仲間内にだけ被害を及ぼさぬように『結界』を使っている主である『イダラマ』に視線を向けるのだった。
……
……
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