最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第874話 よく分からない少年
数人の狐面をつけた男たちに視線を向けられる中、赤い狩衣を着た男『イダラマ』は血だまりの中で倒れている男に手を伸ばす。そしてイダラマは検分をするように顔を確認するのだった。
「間違いない『退魔組』にいた奴だな」
イダラマは確認を終えた後、持っていたリクをその場に投げ捨てる。
「まずいですね、遂にゲンロク達に居場所を……!」
そう口にするのはイダラマの護衛である大男の『ウガマ』だった。
「……まだ何とも言えんが、ひとまず分かる事はこんな奴が、あれだけの人数を従えていた奴の筈が無い」
「どうしますか? 『加護の森』の方に『式』を送り込めば、奴らに結界を通じて居場所を完全にばらしてしまいますが」
彼らは魔族や別世界の人間である『エルシス』達のように『魔力探知』や『漏出』は使えないようで、こうして自分の張っている結界に入り込んだ連中や、他者の結界を利用して結界内に居る者達の人数をはかる事しか出来なかった。
そして元々『退魔組』の連中と縁のあるイダラマであれば、当然『加護の森』に張ってある結界を探る事も可能なのである。
「そうだな……。率いている人間をひとまず探っておきたい。ゲンロクがこの場に直接来ることはまずないだろうから『特別退魔士』の連中数人掛かりか、もしくは『サテツ』だろうからな」
イダラマの言葉に護衛達は神妙に頷く。
「それだったら、そいつを操って向こうの様子を探らせるか、もしくはこの場所へ誘導させるかい?」
青髪の少年『エヴィ』は地面に転がるリクを見ながらそう言った。
「お主はそんな事も出来るのか?」
「僕達魔族には『魔瞳』という力があるからね。この目を使えば自分より弱い相手なら自由に操る事が出来る」
最上位の大魔王である魔族『エヴィ』は当然魔族の扱う『魔瞳』である『金色の目』を使う事が可能である。イダラマ達は魔族という種別を見たことが無い為『特別退魔士』が妖魔に対して行う『縛呪の行』のように、他者を操ったり洗脳出来ると告げるエヴィを見て感心した様子で頷くのであった。
「お主をあの時助けてよかったと今では心の底からそう思うぞ」
ふと、本心からエヴィに対する感情を吐露したイダラマだったが、そこでエヴィは不満そうに眉を寄せた。
「僕は別にあの『ゲンロク』という男に屈したつもりは無い。もしあのままあの男と殺し合いになっていたとしても俺一人で生き延びて見せたさ!」
エヴィは金色を纏いながらそう告げた。
その様子のエヴィを見たイダラマは若いなと内心で想う。しかしその事を口にせず、イダラマは素直に謝罪をするのだった。
「すまない、そうだったな。あのまま戦っていたとしてもお主ならばどうとでも出来ただろう。私がお主を手引きしたのは、我らの野望に協力してもらいたかったからだ」
イダラマがそう言い直した事で、エヴィは纏っていたオーラを消した。
「はぁっ、またやっちゃった。いいよ、分かっているよ……。アンタの今の顔を見ればわかる。僕の事、ガキだなって思っている顔してる」
(先程までとは纏う空気も顔つきも変わっている。この少年は本当に謎の多き少年だ。よく分からなくなってきたな)
イダラマは先程の激昂していた少年を見た時は、まだまだ子供だとエヴィの言う通り思っていたが、直ぐに反省して見せた今のエヴィの顔を見て、またよく分からない少年だと感じるのだった。
「ユファ姉や、ディアトロスのじっちゃんにも、直しなさいって言われるんだけど、つい激情に身を任せてしまう時がある」
イダラマ達の知らない名前を出し、自分の事を冷静に分析し始めるエヴィだった。どうやら今度はイダラマ達に向けての科白では無く独り言を呟いていたようである。
彼は一見子供のように振る舞うが、その実。唐突に大人のような考え方を見せたりもする。まるで冷静さと、熱烈さを同時に内包しながらも第三者から自分を分析する様子も見せる。
成長期の子供が大人になろうとしている途中。確かにそう言われればそうなのだろうと思えるが、イダラマや周囲に居る聡い者達は、このエヴィという少年はどこか、そういう成長期の子供とは違うというそういった不自然な印象を同時に思い描くのであった。しかしその不自然の正体が分からず、誰も違和を口にする事も無かった。
ただ間違いなく言えることは、この少年は単なる口だけの少年では無く、本当に戦闘になれば生存率が高い動きをするだろうとそう思わせる力を持っている事である。
イダラマがあの『ゲンロク』と敵対してでもそして自分の持つ貴重な『転置宝玉』を手放してでも、このエヴィを自分の陣営に迎え入れたいと思わせた程には、彼を認めているのであった。
「間違いない『退魔組』にいた奴だな」
イダラマは確認を終えた後、持っていたリクをその場に投げ捨てる。
「まずいですね、遂にゲンロク達に居場所を……!」
そう口にするのはイダラマの護衛である大男の『ウガマ』だった。
「……まだ何とも言えんが、ひとまず分かる事はこんな奴が、あれだけの人数を従えていた奴の筈が無い」
「どうしますか? 『加護の森』の方に『式』を送り込めば、奴らに結界を通じて居場所を完全にばらしてしまいますが」
彼らは魔族や別世界の人間である『エルシス』達のように『魔力探知』や『漏出』は使えないようで、こうして自分の張っている結界に入り込んだ連中や、他者の結界を利用して結界内に居る者達の人数をはかる事しか出来なかった。
そして元々『退魔組』の連中と縁のあるイダラマであれば、当然『加護の森』に張ってある結界を探る事も可能なのである。
「そうだな……。率いている人間をひとまず探っておきたい。ゲンロクがこの場に直接来ることはまずないだろうから『特別退魔士』の連中数人掛かりか、もしくは『サテツ』だろうからな」
イダラマの言葉に護衛達は神妙に頷く。
「それだったら、そいつを操って向こうの様子を探らせるか、もしくはこの場所へ誘導させるかい?」
青髪の少年『エヴィ』は地面に転がるリクを見ながらそう言った。
「お主はそんな事も出来るのか?」
「僕達魔族には『魔瞳』という力があるからね。この目を使えば自分より弱い相手なら自由に操る事が出来る」
最上位の大魔王である魔族『エヴィ』は当然魔族の扱う『魔瞳』である『金色の目』を使う事が可能である。イダラマ達は魔族という種別を見たことが無い為『特別退魔士』が妖魔に対して行う『縛呪の行』のように、他者を操ったり洗脳出来ると告げるエヴィを見て感心した様子で頷くのであった。
「お主をあの時助けてよかったと今では心の底からそう思うぞ」
ふと、本心からエヴィに対する感情を吐露したイダラマだったが、そこでエヴィは不満そうに眉を寄せた。
「僕は別にあの『ゲンロク』という男に屈したつもりは無い。もしあのままあの男と殺し合いになっていたとしても俺一人で生き延びて見せたさ!」
エヴィは金色を纏いながらそう告げた。
その様子のエヴィを見たイダラマは若いなと内心で想う。しかしその事を口にせず、イダラマは素直に謝罪をするのだった。
「すまない、そうだったな。あのまま戦っていたとしてもお主ならばどうとでも出来ただろう。私がお主を手引きしたのは、我らの野望に協力してもらいたかったからだ」
イダラマがそう言い直した事で、エヴィは纏っていたオーラを消した。
「はぁっ、またやっちゃった。いいよ、分かっているよ……。アンタの今の顔を見ればわかる。僕の事、ガキだなって思っている顔してる」
(先程までとは纏う空気も顔つきも変わっている。この少年は本当に謎の多き少年だ。よく分からなくなってきたな)
イダラマは先程の激昂していた少年を見た時は、まだまだ子供だとエヴィの言う通り思っていたが、直ぐに反省して見せた今のエヴィの顔を見て、またよく分からない少年だと感じるのだった。
「ユファ姉や、ディアトロスのじっちゃんにも、直しなさいって言われるんだけど、つい激情に身を任せてしまう時がある」
イダラマ達の知らない名前を出し、自分の事を冷静に分析し始めるエヴィだった。どうやら今度はイダラマ達に向けての科白では無く独り言を呟いていたようである。
彼は一見子供のように振る舞うが、その実。唐突に大人のような考え方を見せたりもする。まるで冷静さと、熱烈さを同時に内包しながらも第三者から自分を分析する様子も見せる。
成長期の子供が大人になろうとしている途中。確かにそう言われればそうなのだろうと思えるが、イダラマや周囲に居る聡い者達は、このエヴィという少年はどこか、そういう成長期の子供とは違うというそういった不自然な印象を同時に思い描くのであった。しかしその不自然の正体が分からず、誰も違和を口にする事も無かった。
ただ間違いなく言えることは、この少年は単なる口だけの少年では無く、本当に戦闘になれば生存率が高い動きをするだろうとそう思わせる力を持っている事である。
イダラマがあの『ゲンロク』と敵対してでもそして自分の持つ貴重な『転置宝玉』を手放してでも、このエヴィを自分の陣営に迎え入れたいと思わせた程には、彼を認めているのであった。
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