最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第858話 今後の活動指針
裏路地の住人達から逃げるように表通りに出てきたイバキ達は、そのまま屯所に戻らずに木陰のベンチに腰を下ろすのだった。
「いや参ったね。まさか我々があんなに嫌われているとは思わなかったよ……」
裏路地の居住区に居た住人達の様子を思い返しながら、イバキはスーに愚痴を吐くのだった。
「それは仕方ないだろう。あそこら一帯の連中は、昔ながらの『妖魔召士』と縁のある者達の居住区だ。表立ってこの町を取り締まるようになった『退魔組』は、彼らにとってはあまりいい印象は抱いてないだろう」
スーは懐から花びらが描かれた派手な櫛を取り出すと、その櫛で自慢の髪の毛を整え始める。どうやら先程のエイジとの立ち回りで、髪の毛のセットが崩れたのだろう。丁寧に整えながらそう呟くのだった。
「最近入った『退魔組」の若い子たちは、何を勘違いしているのか知らないけど、先人たちの功績を笠に着て、このケイノトで威張り散らかしている者も多いからね。自分達が妖魔からこの町を守っていると、調子に乗っているんだろうね」
「全く馬鹿な者共のせいで『エイジ』殿の協力を得られなかったしな」
ようやく納得がいったのだろう。自分の髪の毛を手鏡で見ながら満足そうに櫛を直すスーだったが、そこで真剣な表情に戻しながら口を開いた。
「しかしそれにしても、気になる事があったな」
「それはエイジ殿が匿っている者達の事かい?」
「やはり気づいていたか。どうやらエイジ殿は、裏路地で騒ぎがあったと通報があった奴等を家に匿っているのは間違いないだろうな」
中を探られぬように結界を張っていた事も当然二人は気づいている。そしてそんな事をわざわざしたり、客人を招いていると言っていたのも偶然だとは思えなかった。
「エイジ殿の子供が余計な事をしなければ、客人とやらの正体もつかめたのにな」
「ああ。ゲイン君か……。彼はまだ十に満たない少年だが『妖魔召士』の資質は兼ね揃えているね。俺の『結界』を解除できるのも理解出来る話だったが……、エイジ殿の家に居た客人は、人払いの結界の中でこちらに気配を隠しながら話の内容を探っているようだった。ただの町人というワケではないだろうね」
イバキもスーも『エイジ』が匿っている客人に、どこかキナ臭さを感じているようであった。
「まぁでも今は『頭領』殿の怒りを鎮める方が先だろうな……」
スーがそう言うと、イバキは嫌な事を思い出させられて顔を顰め始めるのだった。
「森に現れた例の『二人組』とやらも面倒な事をしてくれたもんだ。サテツ様の機嫌は悪いのはいつものことだが、輪に掛けて今回は最悪だった」
食事を済ませた後に二人は屯所に戻った後の事を思い出し、同時に溜息を吐くのだった。
「ひとまず屯所に戻るとしよう。そろそろ加護の森への討伐組の編成も終わっている頃だ」
「もう終わっていて、俺達が戻って来るのを待っているかもしれないな」
イバキがそう言うと、再びスーは溜息を吐いて気が重いとばかりに項垂れるのだった。
……
……
……
その頃ソフィ達は、再びエイジの長屋の中に戻ってきていた。そこには先程まで居なかった人物が一人増えており、その人物とは向かいの長屋に住んでいるという人間であった。
ソフィはゲインが再び淹れ直してくれたお茶を啜りながら、新たにこの場に増えた『人物』に視線を向ける。見た目は若く見えるが、少年や青年というような年齢でも無く、中年とまではいかない壮年といった様子の若者で、髪を後ろで束ねて自信に満ち満ちているといった若者の男だった。
ソフィの視線に気づいたその若者は、ゲインのお茶を飲み干した後に口を開いた。
「自己紹介がまだだったな、俺の名は『シュウ」。アンタらの事は軽くだが、エイちゃんから話を聞いている。サイヨウ様の友人と聞いたが、どこで知り合ったのかな?」
その聞き方はまるで『サイヨウ」がこの世界には既に居らず、別世界へ行っているという事を知っているようなそんな口振りであった。
元々別の世界からこの世界へ来たことをエイジに伝えようとしていたソフィは、包み隠さずに別世界からきた事をこのシュウと名乗る男にも、話そうと決意するのだった。
……
……
……
「いや参ったね。まさか我々があんなに嫌われているとは思わなかったよ……」
裏路地の居住区に居た住人達の様子を思い返しながら、イバキはスーに愚痴を吐くのだった。
「それは仕方ないだろう。あそこら一帯の連中は、昔ながらの『妖魔召士』と縁のある者達の居住区だ。表立ってこの町を取り締まるようになった『退魔組』は、彼らにとってはあまりいい印象は抱いてないだろう」
スーは懐から花びらが描かれた派手な櫛を取り出すと、その櫛で自慢の髪の毛を整え始める。どうやら先程のエイジとの立ち回りで、髪の毛のセットが崩れたのだろう。丁寧に整えながらそう呟くのだった。
「最近入った『退魔組」の若い子たちは、何を勘違いしているのか知らないけど、先人たちの功績を笠に着て、このケイノトで威張り散らかしている者も多いからね。自分達が妖魔からこの町を守っていると、調子に乗っているんだろうね」
「全く馬鹿な者共のせいで『エイジ』殿の協力を得られなかったしな」
ようやく納得がいったのだろう。自分の髪の毛を手鏡で見ながら満足そうに櫛を直すスーだったが、そこで真剣な表情に戻しながら口を開いた。
「しかしそれにしても、気になる事があったな」
「それはエイジ殿が匿っている者達の事かい?」
「やはり気づいていたか。どうやらエイジ殿は、裏路地で騒ぎがあったと通報があった奴等を家に匿っているのは間違いないだろうな」
中を探られぬように結界を張っていた事も当然二人は気づいている。そしてそんな事をわざわざしたり、客人を招いていると言っていたのも偶然だとは思えなかった。
「エイジ殿の子供が余計な事をしなければ、客人とやらの正体もつかめたのにな」
「ああ。ゲイン君か……。彼はまだ十に満たない少年だが『妖魔召士』の資質は兼ね揃えているね。俺の『結界』を解除できるのも理解出来る話だったが……、エイジ殿の家に居た客人は、人払いの結界の中でこちらに気配を隠しながら話の内容を探っているようだった。ただの町人というワケではないだろうね」
イバキもスーも『エイジ』が匿っている客人に、どこかキナ臭さを感じているようであった。
「まぁでも今は『頭領』殿の怒りを鎮める方が先だろうな……」
スーがそう言うと、イバキは嫌な事を思い出させられて顔を顰め始めるのだった。
「森に現れた例の『二人組』とやらも面倒な事をしてくれたもんだ。サテツ様の機嫌は悪いのはいつものことだが、輪に掛けて今回は最悪だった」
食事を済ませた後に二人は屯所に戻った後の事を思い出し、同時に溜息を吐くのだった。
「ひとまず屯所に戻るとしよう。そろそろ加護の森への討伐組の編成も終わっている頃だ」
「もう終わっていて、俺達が戻って来るのを待っているかもしれないな」
イバキがそう言うと、再びスーは溜息を吐いて気が重いとばかりに項垂れるのだった。
……
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その頃ソフィ達は、再びエイジの長屋の中に戻ってきていた。そこには先程まで居なかった人物が一人増えており、その人物とは向かいの長屋に住んでいるという人間であった。
ソフィはゲインが再び淹れ直してくれたお茶を啜りながら、新たにこの場に増えた『人物』に視線を向ける。見た目は若く見えるが、少年や青年というような年齢でも無く、中年とまではいかない壮年といった様子の若者で、髪を後ろで束ねて自信に満ち満ちているといった若者の男だった。
ソフィの視線に気づいたその若者は、ゲインのお茶を飲み干した後に口を開いた。
「自己紹介がまだだったな、俺の名は『シュウ」。アンタらの事は軽くだが、エイちゃんから話を聞いている。サイヨウ様の友人と聞いたが、どこで知り合ったのかな?」
その聞き方はまるで『サイヨウ」がこの世界には既に居らず、別世界へ行っているという事を知っているようなそんな口振りであった。
元々別の世界からこの世界へ来たことをエイジに伝えようとしていたソフィは、包み隠さずに別世界からきた事をこのシュウと名乗る男にも、話そうと決意するのだった。
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