最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第832話 感謝の気持ち
ケイノトを見下ろせる高い丘の上。ソフィはここまで案内してくれたシクウに感謝をしつつ、シクウに『金色の目』を使う事を決意する。
『退魔組』と呼ばれる町の自警団のような組織は、ソフィ達の姿を森の中で見ている。このまま一緒に町に向かう事になればソフィ達だけでは無く、シクウと言う男にも疑いの目を掛けられる事になるだろう。
ヌーや死神貴族の『テア』は、用済みならば殺してしまった方が、後々に面倒事を省けるのではないかと考えているようだが、流石にそれはあんまりだろう。
ここまでの案内をしていた事を忘れさせて森の中で目を覚ました後、記憶が曖昧な状態で一人町に戻ってきたという事にしたほうが、互いにとって一番いい形になるとソフィはそう考えたのであった。
「ここからはもう直ぐに、ケイノトにつきますよ」
前を歩いていたシクウは立ち止まり、ソフィ達にそう告げる。
「おお、シクウ殿といったか。ここまでの案内を感謝するぞ?」
ソフィがニコリと笑ってそう礼を言うと、シクウは少しだけ驚いた様子でソフィを見ていたが、やがて笑顔になって嬉しそうに首を横に振った。
まだソフィ達が妖魔である可能性を捨てきれてはいないが、ここまで一緒に来たことでソフィという男が、悪い存在では無いとシクウは思い始めたようである。
「少し心苦しいが、これもお主の為だ。悪い夢は全て忘れて、お主はお主のやるべき日常へ戻るがよい」
「え?」
ソフィの礼を好意的に受け取ったシクウは、これから一緒に貴方の探し人を探すのを手伝いましょうと、そう言うつもりだったが、突然のソフィの言葉に頭が追い付かずに疑問の声をあげてしまうシクウだった。
そして今のはどういう意味ですかと『シクウ』が、問い返そうとした瞬間であった。そのソフィの目が『金色』に輝いたかと思うと、辺りにキィイインという甲高い音が鳴り響き、次の瞬間にはシクウは何も考えられなくなった。
…………
「あ、あれ? 俺はどうしてここに……」
ケイノトの近くの丘の上。シクウは何故ここに自分が居るのか分からず、一人丘の上で途方に暮れる。
「そういえば俺は『加護の森』で妖魔が出現したのを感知してミカゲ様と向かった……ような?」
頭に霧がかかったようにすっきりとせず、何があったかを思い出そうとすると焦燥感に駆られるような、不思議な感覚に陥るシクウであった。
「と、とりあえずミカゲ様の元へ戻らなければ!」
ここにずっと一人で居ても仕方が無いと、どうやら彼は判断したようである。
右手で頭を掻きながら『俺は一体何をしていたのだろう』と呟きながら丘を下ってケイノトへ向かうのであった。
……
……
……
「本当に殺さなくてよかったんだな?」
この場からシクウが去っていく様子を気配を消して眺めていたソフィ達。シクウが完全に去った後、ようやくヌーは口を開いてソフィにそう告げた。
「お主は本当に惨い事を平然と言う奴だな。少しは感謝という言葉を覚えた方が良いのではないか?」
平然と血も涙も無いような言葉を告げたヌーを非難するようにソフィがそう口にすると、ヌーはソフィを小馬鹿にするように笑い始める。
「ククククッ、てめぇが可笑しいだけだろう。そんな事を考える魔族は、てめぇくらいじゃねぇか?」
なぁ? とヌーが横で一緒に気配を消して隠れていた『テア』に言うと、テアはソフィを一瞥した後、困ったように首を傾げるのだった。
死神であるテアも実はヌーと同じような考えを持っていた為、ヌーの言葉に頷きたくなる気持ちはあったが、ソフィの前でヌーを肯定するような言葉を出すのは控えるのだった。
あくまでテアはヌーを契約主としており、本来であればヌーの味方をするのが当然なのだろうが、ソフィという存在を理解した今のテアは、出来るだけソフィと敵対するような可能性は少しでも潰しておきたかったようである。
ヌーもそんなテアの感情は少なからず理解出来る為、それ以上の回答を求めるような真似はせず、去っていったシクウの方角を見つめるのだった。
「さて、それじゃあ俺達も行くとするか?」
「うむ。ひとまず町の中で情報を集めるとしよう。我達の事を知っていると思わしき者が居た場合、直ぐに『金色の目』で忘れさせるのだ。何もせずにその場を離れる事や、間違っても殺すなよ?」
「わぁってるよ」
ヌーも面倒事は避けてさっさとこの世界から離れたいと思っている為、渋々とではあるがソフィの提案に首を縦に振るのだった。
……
……
……
『退魔組』と呼ばれる町の自警団のような組織は、ソフィ達の姿を森の中で見ている。このまま一緒に町に向かう事になればソフィ達だけでは無く、シクウと言う男にも疑いの目を掛けられる事になるだろう。
ヌーや死神貴族の『テア』は、用済みならば殺してしまった方が、後々に面倒事を省けるのではないかと考えているようだが、流石にそれはあんまりだろう。
ここまでの案内をしていた事を忘れさせて森の中で目を覚ました後、記憶が曖昧な状態で一人町に戻ってきたという事にしたほうが、互いにとって一番いい形になるとソフィはそう考えたのであった。
「ここからはもう直ぐに、ケイノトにつきますよ」
前を歩いていたシクウは立ち止まり、ソフィ達にそう告げる。
「おお、シクウ殿といったか。ここまでの案内を感謝するぞ?」
ソフィがニコリと笑ってそう礼を言うと、シクウは少しだけ驚いた様子でソフィを見ていたが、やがて笑顔になって嬉しそうに首を横に振った。
まだソフィ達が妖魔である可能性を捨てきれてはいないが、ここまで一緒に来たことでソフィという男が、悪い存在では無いとシクウは思い始めたようである。
「少し心苦しいが、これもお主の為だ。悪い夢は全て忘れて、お主はお主のやるべき日常へ戻るがよい」
「え?」
ソフィの礼を好意的に受け取ったシクウは、これから一緒に貴方の探し人を探すのを手伝いましょうと、そう言うつもりだったが、突然のソフィの言葉に頭が追い付かずに疑問の声をあげてしまうシクウだった。
そして今のはどういう意味ですかと『シクウ』が、問い返そうとした瞬間であった。そのソフィの目が『金色』に輝いたかと思うと、辺りにキィイインという甲高い音が鳴り響き、次の瞬間にはシクウは何も考えられなくなった。
…………
「あ、あれ? 俺はどうしてここに……」
ケイノトの近くの丘の上。シクウは何故ここに自分が居るのか分からず、一人丘の上で途方に暮れる。
「そういえば俺は『加護の森』で妖魔が出現したのを感知してミカゲ様と向かった……ような?」
頭に霧がかかったようにすっきりとせず、何があったかを思い出そうとすると焦燥感に駆られるような、不思議な感覚に陥るシクウであった。
「と、とりあえずミカゲ様の元へ戻らなければ!」
ここにずっと一人で居ても仕方が無いと、どうやら彼は判断したようである。
右手で頭を掻きながら『俺は一体何をしていたのだろう』と呟きながら丘を下ってケイノトへ向かうのであった。
……
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「本当に殺さなくてよかったんだな?」
この場からシクウが去っていく様子を気配を消して眺めていたソフィ達。シクウが完全に去った後、ようやくヌーは口を開いてソフィにそう告げた。
「お主は本当に惨い事を平然と言う奴だな。少しは感謝という言葉を覚えた方が良いのではないか?」
平然と血も涙も無いような言葉を告げたヌーを非難するようにソフィがそう口にすると、ヌーはソフィを小馬鹿にするように笑い始める。
「ククククッ、てめぇが可笑しいだけだろう。そんな事を考える魔族は、てめぇくらいじゃねぇか?」
なぁ? とヌーが横で一緒に気配を消して隠れていた『テア』に言うと、テアはソフィを一瞥した後、困ったように首を傾げるのだった。
死神であるテアも実はヌーと同じような考えを持っていた為、ヌーの言葉に頷きたくなる気持ちはあったが、ソフィの前でヌーを肯定するような言葉を出すのは控えるのだった。
あくまでテアはヌーを契約主としており、本来であればヌーの味方をするのが当然なのだろうが、ソフィという存在を理解した今のテアは、出来るだけソフィと敵対するような可能性は少しでも潰しておきたかったようである。
ヌーもそんなテアの感情は少なからず理解出来る為、それ以上の回答を求めるような真似はせず、去っていったシクウの方角を見つめるのだった。
「さて、それじゃあ俺達も行くとするか?」
「うむ。ひとまず町の中で情報を集めるとしよう。我達の事を知っていると思わしき者が居た場合、直ぐに『金色の目』で忘れさせるのだ。何もせずにその場を離れる事や、間違っても殺すなよ?」
「わぁってるよ」
ヌーも面倒事は避けてさっさとこの世界から離れたいと思っている為、渋々とではあるがソフィの提案に首を縦に振るのだった。
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……
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